▲欧州的登山生活▲

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第60号: 岩登りならここ! (ボジグラン)

発行日
2007/10/08
発行者・筆者
まさ (坂野正明)

まさです。
先の 4月最後の週末、南イングランドのコーンウォール半島の ボジグラン(他)に行きました。 海岸沿いの断崖絶壁でクライマーには有名な場所です。 僕は、英国に来て 1年目に行ったことがあります。岩登り、自炊形式の(山?)小屋 の質とも最高だったのをよく覚えています。山岳部の中でも ボジグランの岩登りが最高だ、という人が少なからずいたものでした。 今回、山岳部OBの友人の一人が企画してくれたので、懐かしい顔ぶれが 15人集まって、皆で岩登りに興じたのでした。

コーンウォールはこのメルマガでは初登場ですね。そこで、 コーンウォール語について簡単な解説もしてみました。 お楽しみ下さい。

目次


登山記録編 〜〜 岩登りならここ! (ボジグラン) 〜〜

午前中、ここボジグラン(Bosigran)の目玉のひとつ、 Commando Ridge (Bosigran Ridge) に行く。 途中、2回の懸垂で波しぶきがかかりそうなところまで 下りていく。2つ目の残置されている捨て縄が、ちょっと不安。絶対大丈夫、 と先導のニックは先に懸垂するが……不安な僕は自分の捨て縄を一つ足して 念には念を入れておく。

僕はアダムとデイブとパーティーを組んで登る。 VDiff なので、登山靴で十分。 まずアダムが最初の 3ピッチをリード。 眼下に波が激しく砕ける直上を登る素晴らしいピッチ! 最高だ。 これぞ海岸断崖岩登りの醍醐味。

その最初の 2ピッチが核心だったようだ。リードを交替して、 あとは一度コンテも交えながら、ナイフ・リッジを進む。 潮風の中、噂通りの気持ちいい 200m のルートを登れて満足だった。

宿泊

今回泊まった小屋は The Count House 小屋。僕が今まで泊まった 英国中の自炊形式(山)小屋の中で、モダンさという意味で最も快適な小屋だ。 英国では、山小屋とはいえ、大抵の小屋に、湯の出るシャワーあり、 台所にはガス(又は電気)コンロあり、オーブンあり、冷蔵庫あり、電気ポットあり、 加えて、暖炉とソファのある居間もある。ただ、小屋によっては、 あまりきれいとは言い難く、特にシャワーを浴びるのにちょっと躊躇する ことは少なくない。

今回の The Count House 小屋はまずきれい! 居間も心地よい雰囲気がある。2階のベッド総数は何床あるか数えてないが、 30床くらいか? つまり、大きな小屋だ。僕ら以外に 2人泊まっていた人がいたが、 それでも総勢 20人に満たないわけで、贅沢に使うことができた。 それに加えてこの小屋は、立地条件も、海岸の岩場まですぐ(徒歩 10分)で、 公共駐車場からアクセスするよりも近い、という最高の場所にある。 周りに見える人家もなく、文明から離れた、という雰囲気も味わえる。 2002年に来た時も満足だったが、今回もそれは変わらず。 また喜んで再訪したい気分になる小屋だった。

(次回につづく)


登山ミニ外国語編 〜〜 コーンウォール語 (Cornish) 〜〜

コーンウォール (Cornwall) は、英国最南西に位置し、西方に細長く伸びる半島です。 ローマ人の侵略を免れた数少ないイングランドの地で、加えて アングロ・サクソン人のブリテン島への侵略時に土地のケルト人が 追いやられた地でもあるため、独自の文化、そして独自の言葉の コーンウォール語(英語なら Cornish; コーンウォール語自体では Kernewek, Kernowek, Curnoack などと綴られる)を持ちます。

こういう歴史的理由で、コーンウォール語は、ケルト語派に属します。 中でもブルトン語(ブルターニュ語)(英国の対岸に 位置するフランスのブルターニュ地方の言語)やウェールズ語に近く、 実際、7〜8割の基本語彙は共通だそうです。 一方、スコットランド・ゲール語やアイルランド語にも比較的近く、 35% ほどの語彙は共通だとか。一方、英語とは大きく異なります(同じ 印欧語族ですけどね)。

ただし、コーンウォールが中世にイングランドに征服されたこともあり、 コーンウォール語の話者の数は徐々に減少し、18世紀には言語的に絶滅した、 とされます(英語版 wikipedia の図がその進展の様子をよく表しています)。
 http://en.wikipedia.org/wiki/Image:Kernow_lb.png
中でも、最後のコーンウォールの母国語話者とされる Dolly Pentreath の今わの際の 言葉は、Me ne vidn cewsel Sawznek! (英語は喋りたくない!) と 伝えられます。

その後、コーンウォール語復興運動が起こり、現在では話者の数 約3500人、うち 300人がぺらぺら(2000年の調査)とされています。 当然、全員が英語もぺらぺら(のはず)。 コーンウォールの地名の一部には、英語名とは別にコーンウォール語名が あります。

さて、登山者にとって、(少なくとも)ひとつ重要なコーンウォール語があります。
 zawn
です。海岸沿いで、急な崖にはさまれた小さな海峡のような場所を指します。
 http://www.ukclimbing.com/articles/page.php?id=33
の一番下の方に zawn の写真があるので、それで感じが掴めるでしょうか。 これは、ガイド本にしばしば登場する単語で、時に地名にも含まれます。 また、ウェールズでもしばしば使われるので、ウェールズ語でもあるのでしょう。 一方、ジーニアス大英和にもリーダーズ英和にも Collins (英英)にも 載ってなかったので、 英語とはみなされていないのだと思います(英国人でもよほどアウトドアに 熱心な人でないと知らない単語です — 英語ではないのだから)。 というわけで、zawn、コーンウォール(やウェールズの海岸)に 登山やウォーキングに行くなら 覚えておきたい単語です — ついでに、コーンウォール語を喋った 気になれるし!? (笑)。

△以上を「登山に関するケルト諸語豆知識」の頁に載せました。
 http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/lang/celtic.html#cornish


Webページ更新情報


次回予告

次回は… 「さいはての岩壁」

See you later!


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