那須の高校生雪崩遭難事故の登山の立場からの検証

2013/07/09 - 19:58 - It was triggered high up in Bezengi Wall (to the left), so it came down for almost 2000 metres.  It causes an explosive noise, which prompted us to have a look from our tent pitched in Austrian Bivourc.  The glacier here (Bezengi Glacier) is roughly 3 km across - that is the scale!Gigantic avalanche 1

コーカサス山地ベゼンギ壁で起きた高度差2000メートルの大雪崩

2017年3月下旬、那須のスキー場近くで、教員に引率された7校の高校生山岳部のグループが雪崩にあい、8人(生徒7人、教師1人)が死亡し、40人が重軽傷を負う事故があった。以下、雪山登山の観点からその論点をまとめる。

背景と事故のあらまし

今回の「春山安全登山講習会」は春休み中、栃木県内の高校8校の山岳部部員を対象に県高等学校体育連盟が主催して 3日間の日程で開催された。 栃木県高体連の通達により、5月の大会出場のためには、山岳部部員は、同講習会への参加が義務付けられていたと報道される。指導に当たったのは県内の高校教師11人で、山のベテランもいると報道されている。 生徒の参加者は51人だった。

最終日の3/27は、教員8人と生徒40人が参加した。 もともとの予定では、その日、那須岳(茶臼岳)を登頂する予定だった。 しかし、荒天を理由に、現場の教師の判断で、那須町湯本の那須温泉ファミリースキー場近くの斜面でのラッセル訓練に切り替えられ、午前8時頃実習を始めた。当時、吹雪の中で、視界もごく悪かったようだ。ラッセル訓練の場所は、ゲレンデよりも上部の勾配30+度の斜面。那須町職員によればゲレンデよりも標高が高い場所では、これまでも雪崩が毎年のように発生していたと言う。なお、同スキー場は、当時すでにシーズンを終えていて、(リフトをはじめ)運営はされていなかった。

午前8時半頃、雪崩が発生し、ほぼ全員が多かれ少なかれ巻き込まれた。 表層雪崩と見られる。 雪崩発生の3時間半後、救助隊が駆けつけた段階でまだ埋まっている犠牲者もいて、中には奇跡的に救出された人もいたものの、結果的に8人の死者が出た(全員が圧迫による窒息死)。 最も深く埋もれた人は、2メートルの深さに埋まっていた、と伝えられる。なお、警察(救助隊)への初報は、助かった教師の一人が下山して旅館から連絡したもので、雪崩発生の約1時間後だったという。実は登山隊と地上本部との間で無線連絡体制が確立されていたにもかかわらず、警察への連絡に時間がかかった背景は、この執筆時点で情報が混乱していてよく分からない。

その前日の26日午前10時半ごろ、宇都宮地方気象台は、同町に大雪、雪崩、着雪注意報を発表していた。 同台は27日朝までの県北部の山地での24時間降雪量を30センチと予想し、警戒を呼び掛けていた。 実測値としては、気象庁によれば、那須町の観測点で、27日午前1時で積雪0cmだったところ、27日午前9時までに33cm積もる降雪があった。

(ソース: 下野新聞, J-Cast他)

グループは、誰も雪崩ビーコンは所持していなかった、と報道される。 駆けつけた救助隊により、(生死はともかく)グループ全員が現場から救助された。

雪崩の基礎知識

雪崩と一言でまとめても、数多くの種類があり、それぞれ発生機構も条件も異なる。 ここでは、当時起こったと考えられる乾雪による新雪表層雪崩について考える。

表層雪崩の発生機構、条件は、複雑であり、一概には言えない。 実際、それまでの降雪履歴、風力風向履歴、温度履歴、日照履歴、地形などが複雑に絡み合う。 しかし、それでも、教科書に書かれるような典型的な発生条件は存在する。 以下に列挙する。

雪が存在すること

新雪表層雪崩は、通常、乾いた新雪によって起こされる。一般論として、新雪の量が多ければ多いほど、雪崩の危険が増し、また起きる雪崩の規模が大きくなる(それ以外の雪の条件でも、例えば全層雪崩などは起きる。そして、起きた時の危険度は、新雪表層雪崩を上回ることは少なくない。ただし、本稿では触れない)。降雪中は、降り積もっていく雪の量が時間とともに増えている分、時間とともに危険度が徐々に増している、と言ってよい。

弱層が存在すること

弱層の上に載る雪が連鎖的に滑り落ちる現象が、雪崩である。弱層の形成過程は複雑多岐にわたる。特に春に多い典型的な例として、氷化した雪面が弱層となる。例えば日中の陽光で溶けた雪面が夜間に冷え込んで氷化した場合、雪面が弱層となる。その上に新雪が積もった場合、それはアイスリンクの上に雪が積もるようなものなので、新雪が滑り落ちることで雪崩を起こす、という条件が整っていることになる。。

斜面であること

当然ながら、見渡す限りの平原では、原理的に雪崩は発生しない。

  • 面発生雪崩は、30°〜45° で最も発生しやすい、とされる。それ未満であれば傾斜が強くないために滑りにくく、逆にそれを超えると降った雪がすぐ流れ落ちるために雪崩が起きるほど累積しにくい。
  • ただし、仮に立っている場所が平坦であっても、そのすぐ近くに急斜面があれば、雪崩は、その場所まで達する可能性がある。仰角(見通し角)18度の場所が、安全基準とされることが多い(高橋の18度法則; 参考までに tan 18° ≒ 1/3)。ただし、文献(Tony Daffern 1992, Ferguson & LaChapelle 2003)によれば、勾配15°の斜面でも雪崩が起きることがある、とされているので、それに従うならば、安全仰角はもっと小さくなるだろうか。

障害物が存在しないこと

端的には、林の中ではないこと。数多くの木が存在していると、雪崩にくい。また、現実に数多くの木が存在している、という事実は、その場では、木をなぎ倒すような大きな雪崩は過去の長い期間、発生していないことを意味する。

谷状地形は、雪崩の通り道になる

雪崩は、斜面であればどこでも発生し得る。中でも、谷部は、雪の累積量が多くなるため、雪崩が発生しやすい。そしてそれ以上に、一旦、発生した雪崩は、川と同じで重力にしたがって低いところに流れる傾向があるため、谷状地形の方が雪崩の通り道になりやすい。

圧雪されれば雪崩にくい

スキー場のピストでは、機械によって雪を圧雪する。これにより、内部の弱層を無くし、、雪崩にくい条件を作る。そのため、営業中のスキー場のピストで雪崩が起きることは(当然ながら)まずない。同様に、数多くの人が歩けば歩くほど、雪が圧雪されるので、雪崩は起きにくくなる(なお、起きない保証がある訳ではない。軍隊の行軍で約30人目に雪崩た、という例も記録されている)。

逆に、スキー場の近くでピストを離れた場所(=オフピスト)は、雪崩の危険度が最も高い場所の一つと言って良い。スキー場がある、ということは、その場所は、雪深くかつ開けた斜面であるだろうことを意味するので、雪崩の絶好地になり得る。

何らかのきっかけがあること

降雪が続いてある段階で限界の閾値を超えた、という自然発生の例は少なくない。 一方、落石や突風、希には地震によって雪崩が誘発される。アルプスのスキー場では、大量の降雪後は、人為的に雪崩を起こすことでコントロールしているところが少なくない(実は同スキー場でも、シーズン中はダイナマイトでコントロールしている、という話を聞いた。事故当時はシーズンも終わってスキー場は閉じられていたので、当然何も行われていない)。

現実の雪崩の事故の多くは、人によって起こされている(人がいなければ雪崩が起きないわけではなく、事故になるような雪崩の場合はそこに人がいる、という要因が大きいだろう)。一般論として、きっかけが強力であればあるほど、雪崩は起きやすい。端的には、同じ斜面に入る人が1人と10人とでは、後者の方が雪崩を起こす確率が高くなる。

雪崩対策の基本

以下が基本中の基本。現実には、もっとずっと細かな注意点がたくさんある。 結局、リスクを最小限に抑えることに尽きる。

  1. 事前に十分な情報収集を行い、雪崩れる可能性が高い斜面には入らない。何よりこれが一番大事。 ただし、リスクは決してゼロにはならないので、そのリスクを見極めた上で行動することが肝要。 交通事故にあいたくなければ家にこもって道に出ないのが一番であるとは言っても、人は外出するのと同様で、リスクを見極めた行動が肝。
  2. 雪の斜面に入る前に、弱層テストなどを行うことで、その斜面の雪崩の可能性を見極める(言うまでもなく、判断できるだけの知識経験が必須)。 現実には、雪崩の可能性は斜面ごとに異なるため、熟練の山スキー屋や登山家は、別の斜面に入るたびに、弱層テストを実施して危険度を見極める。
  3. ルート取りに細心の注意を払う。端的には、開けた斜面ではなく木が多い場所を、谷筋ではなく尾根筋を(それが仮に2mの違いであっても)、30〜45度の斜面を避けて緩斜面(もしくは急斜面)を、そして必要ならば大回りしてでも危ない斜面を避けて通る。
  4. リスクが相対的に高い斜面に足を踏み入れる場合は、一人一人、そしてできるだけ迅速に通過する。危険箇所にいる時間が長ければ長いほど、リスクは高くなる。同じ斜面に多くの人が入れば入るほど、雪崩を誘発する危険が高くなる。また、万一雪崩が起きて誰かが流された時にも、生存者がいれば、救助活動にすぐ入れる。逆にパーティーが全員流されれば、全滅しかない。
  5. 対雪崩対策装備を持参していること。三種の神器は、
    1. 雪崩ビーコン
    2. (スノー)ショベル
    3. ゾンデ棒

    ショベルは、雪質を調べる弱層テストで必須。そして雪崩事故があった時に犠牲者を一刻も早く掘り出すのにも必須。 一旦、雪崩に埋没してしまったならば、一般論として、生存リミットは 15分とされる。それを超えると窒息死、凍死の可能性が急激に高まるのだ。 だから、外部の救助隊を呼ぶのは、遺体捜索以外には役立たないと考えて良い。自分たちで即刻救助活動をした時のみ、雪崩に流されて埋没した人の命を救える可能性がある。

    雪に完全に埋没した人を短時間で発見するのは、雪崩ビーコンなしには、ほぼ不可能。逆に、現代の雪崩ビーコンさえあれば、完全埋没した人の地点を迅速に特定できるため、埋没者が生きている間に救出できる確率がずっと高くなる。 なお、現代の雪崩ビーコンはできるだけフールプルーフになるようによくデザインされているとはいえ、事前の訓練は必須と言ってよい。

    この三種の神器に加えて、ABSリュックサックが存在する。 雪崩に遭遇した時に自己救出するための唯一の装備で、現実の生存確率が桁違いに高いため、特に(バックカントリー)スキーヤーの間では、現代の標準装備になりつつある。 一方、登山家は、多くの荷物を担ぐのが普通であるため、ABSリュックサックを使う例は(今のところ)ほぼ聞いたことがない。

雪崩の視点からの那須高校生雪崩事故の検討

雪崩のリスクの判断は、常に現場の判断が極めて重要になる。 他の場所は安全と判断されても眼前の斜面は危険なこともあれば、逆に一般的には危険と警告されている日でも眼前の斜面は十分安全なこともある。 したがって、一般論として、他者の行動の評価は大いに慎重にあるべきである。

その前提の上で、ある程度の一般論を以下、展開する。

ほぼ確定的に言える点

1. 気象台は大雪・雪崩注意報を出していた

これだけでは雪崩の危険は絶対ではない。文字通り、「注意喚起」のレベル。

2. 前日は降雪がない(?)一方、一晩で大量(33cm)の積雪があった

一般論として、これは表層雪崩が起きる理想的条件。春という時期であることからも前日までに雪面に弱層が形成されていたと疑われ、その上に、大量の降雪があった。

3. 勾配30+度の斜面

最も雪崩が起きやすい勾配。

4. 障害物のない開けた斜面

雪崩が起きやすい条件の一。木がないということは、過去にきっと繰り返し雪崩が起きている。一旦、雪崩が起きれば、逃げ場もない。

5. すでに閉鎖されたスキー場のそば

スキー場という性質上、深雪で開けた斜面がある場所だろう。すでに閉鎖されているので、雪の状態をチェックするスキー場付きの専門家もいなくて、当然野放しになっている。車で(雪深い)高所までお手軽にアクセスできてしまうだけに、ある意味では最も危険な場所。

6. 谷状地形にいた(ようだ)
毎日新聞による那須雪崩事故の概念図

毎日新聞の2017年3月29日の記事(署名: 杉直樹)による、那須雪崩事故の概念図

毎日新聞の航空写真と記事(右図)とから判断する限り、グループは谷状地形を進んでいたようだ。雪崩が一旦起これば通り道になる。

7. 休憩場所の選定

報道によれば、雪崩発生時、グループの少なからずが休憩していた、という。休憩していたグループから死者は出ていない一方、負傷者の数から判断して、相応の怪我を追った人が少なくないようだ。雪崩が起き得る場所の大原則は、とにかく危険地帯をできるだけ速く通過し、休憩するのは安全地帯で行うことにある。死ななかったということは諸事情を鑑みて正しい場所で休憩していたのかもしれないし、怪我を負ったということは休憩地点の選定に問題があったのかもしれない。

8. 雪崩対応装備の不備

パーティーの誰も雪崩ビーコンを装備していなかったと報道される。死者は全員窒息死と報道されることから判断して、もし全員がビーコン(などの必要装備)を持っていてかつ正しく使用できる技術があったならば、犠牲は減った、運が良ければ全員命を取り留めた可能性がある(ただし、今回の事件では、報道によれば、救助隊が到着した時点で、亡くなったうちの少なからぬ犠牲者は体の一部が雪上に出ていたということなので、雪に完全に埋没して捜しようがなかったのが理由ではないかも知れない)。いずれにせよ、一般論として、雪崩ビーコンなしで誰かが雪崩に埋没すれば生還は絶望的だ。

一般論として、ラッセルが必要な状況とは、どこに行くのであれ、(よほど平坦な土地でない限り)雪崩が起きる条件が整っている深雪の場所と同値だ。 この場合にいたっては雪崩の巣的な斜面に向かっていたと言ってよいので、装備に不備があったと言わざるを得ない。

憶測の域を出ない点

装備(衣類)

同団体はそもそも、(一般ルートによる?)春山登頂を予定していたという。 それを、講習期間中に、急遽、ラッセル訓練に変更した、と。

一般論として、一般ルートによる春山登頂とラッセルとは、必要装備が異なる。 後者の装備を整えていた上で前者に調整することは難しくない一方、逆は問題が出そうだ。 特に、(経験が浅くおそらく装備も万全とは言えない人が少なくない)高校生が、(当初予定になかった)ラッセルを前提にした装備を最初からしていたとは少し考えにくい気がする。 もちろん、そんな憶測は邪推で、行動に見合う装備があったならばいいのだが。

[追記] ある(高校生)参加者は、父親が若い時に着ていた登山服を着ていた、と報道された。(想起される家族の感情は別にして)20〜30年前と今とでは、登山用衣服の技術水準は大きく異なる。端的には、現代の服の方がはるかに優れている。また、衣服は古くなれば劣化する。服の材質によっても大きく異なるが、たとえばヤッケであれば、仮に使っていなくても 5年も経てば劣化が目に見えると考えてよい。したがって、厳しい気象条件に耐えることが求められる登山用衣服のようなハイテクの服の場合、なるべく最新の服を着用すべきだ。この件では、生徒の衣服への指導は行き届いていなかったことが窺われる。ラッセルに適した服を(すべての)生徒が用意していたかどうか、疑わしく感じる。

装備(ショベル)

救助隊が雪崩発生の3時間半後に駆けつけた段階で、震えている生存者の近くでまだ体が半分埋まっている犠牲者もいたと報道される(一人は救助されて奇跡的に一命を取り留めた)。 軽傷者の人も少なくなかった、つまり救助活動できると伝えられることから想像すると、周りの軽傷だった人も、パニックに襲われて何もできなかったのだろうか。

そして、これも想像ながら、おそらく(雪山必須装備の)ショベルを持っていなかったのではなかろうか。 ショベルさえあれば、体が半分埋まった人を掘り出すのはごく簡単な作業になる。 如何にパニックに襲われていても、仲間から助けを呼ぶ声を聞いたならば、それは体が動くことと想像する。

逆に、ショベル無しでは、雪崩後の硬化した雪を掘るのには一定の困難が伴う。 とは言え、正気ならば、(きっと持っていた)ピッケルなどを使って、あるいは単に手足(特に靴)を使っても、多少時間はかかってもそのうち掘り出すことはできる。 3時間半もかかることはあり得ない。 仲間を助ける行動を取れなかった、という事実は、生き延びた人にとっても、痛ましいトラウマになりそうだ……。

装備として、十分に安全な尾根伝いの雪山登山(当初の予定はそうだった?)であれば、ショベルが必携とまでは言えないかも知れない —— 必携と主張する人は少なくないにせよ。 しかし、ラッセルが必要なほどの深雪であれば、そこに異議を挟む余地はない。 今回、同グループで(推測ながら)ショベルが必要装備とされていなかったのは(もしくは想像したくないがひょっとして誰も持っていなかったのは)、雪崩ビーコン不携帯と並んで、根本的な装備不十分と言える。

弱層テスト(雪崩状況試験)

相応の雪崩の危険がある斜面に足を踏み入れる前には、弱層テスト(雪崩状況試験)を実施するのが雪山の常識だ。 特に今回のイベントは教育的講習会だったのだから、仮にリーダーが斜面の状況は絶対安全と判断した場合であってさえ、各グループに弱層テストを実施させる、と考えるのが普通だ。 斜面に足を踏み入れる前の習慣としての弱層テストの実施を参加学生に徹底することこそ、教育だろうから(ちなみに、弱層テストは雪山訓練の中では楽しい部類に入るので、生徒たちは喜んで積極的に参加したことだろう)。 あるいは最低限、全員を集めて、その目の前で誰かリーダーが弱層テストを実施するくらいはするものだ。

しかし……、そういう話は全く聞こえてこない。 誰も弱層テストを実施しなかったことが強く疑われる。 実際、もし仮に弱層テストを実施していたならば、雪崩の危険はかなり明白だったのではないか、と推測する(推測の根拠は、前日からの天候と、実際に雪崩が起こったという事実)。

なお、この疑いは、前述のショベル不保持の疑いとも関連する——ショベル無しで弱層テストを実施するのは労働であり、時間もかかる、つまり億劫になりがちだからだ。 雪深い山に入る時にショベルが必携なのは、(1日のうちに繰り返し)弱層テストを行うために必須だからでもある。

リーダー

今回の事件の講習会のリーダーの中には山のベテランもいたと報じられた。 山で指導するのに十分な経験を持った人々だった、というニュアンスだ。

山の事故では、現地で実際に詳細な状況がわからないことには何も言えないことが少なくない。 現実の状況次第では、一見教科書に反するような行動が最善であることも少なくないからだ。 だから、軽々しいコメントは慎みたい。

しかし、今まで報道された事実を積み重ねると、ここまで書いてきたように、どう控え目に見ても、雪山の常識を知らない人がリーダーだった(もしくは率いる教師の中で強い指導力ある人がそうだった)、と言わざるを得ない。 当時の気象状況や地形を聞くに、少しでも雪崩の知識がある人ならば、そんな斜面に足を踏み入れると聞くだけで、恐怖に総毛が逆立つはずだ。 何らかの理由でどうしても足を踏み入れなければならないならば、決死の覚悟で一人ずつ、全速力で駆け抜けたい状況だ。 そんな状況で、ラッセル訓練のような時間がかかる集団行動を行うのは……。

もう一点、一旦、雪崩が起きた後、理想的なリーダーであれば、仮にメンバーが恐慌に陥っていても、それを統率して、生存者の救出に全力を尽くすべきだった。 リーダーさえしっかりしていれば、半身埋まった被害者が放置されるような事態にはならなかったはずだ。 重傷を負ったリーダーもいたかも知れないが、報道される数から判断して、軽傷で済んだリーダーもいたのは間違いないので。 そして、周りには、指示さえされれば救出活動に協力してくれるであろう十分な数の生存者、軽傷者がいたのだから。

なお、ここのコメントは、リーダーを非難しているものではない。 むしろ、登山の専門家でも何でもなく、一教師であるリーダーたちに一生残されるであろうトラウマを考えると心が痛む。 そうではなく、ここでは、事実としてのリーダーの能力不足を指摘しているものだ。 そういう能力不足のリーダーに講習会を任せることになった経過や現状にこそ、本質的な問題があろう。 ただし、その詳細は本稿の議論の範囲を超える。 本稿での議論は、登山の立場から見て、今まで明らかになった事実から、同グループの判断及び行動について検討することに留めているものだ。


2017-03-29
Masa (坂野正明)

Tags: 

コメント

雪崩遭難の件

やっとまともなコメントに出会えた。問題は素人にリーダーを任せて良しとする、組織だ。学校の先生にリーダーを任せるには無理がある。登山ガイドとして。

コメントを追加