▲欧州的登山生活▲

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第46号: 南ウェールズ初体験(ペンブローク)

発行日
2007/03/29
発行者・筆者
まさ (坂野正明)

まさです。
10日ほど前、初めてスペインに行く機会がありました。ところが、 残念ながら山に行く時間が取れませんでした。周りには色々 見えていたのに! 再訪を期したいところです。

今回は、先の 10月に行った南ウェールズのペンブロークでの岩登りの 記録を中心とします。南ウェールズは、一般にはなだらかな丘が続くところ なのですが、海岸線は断崖絶壁で有名で、中でもペンブロークは岩登りの メッカです。あわせて、久々に英国伝統登攀について少し解説します。 ピトンの使用についてです。 お楽しみ下さい。

目次


登山記録編 〜〜 南ウェールズ初体験(ペンブローク) 〜〜

ペンブロークの欠点(?)は、遠いこと。18時半に出発して、 ジョンと交替で運転しながらも、天場への到着は午前 1時。 僕は今回、天幕は持参せず、シュラフカバーのみでビバーク状態。 今回はボルダリングマットを持参しているので、断熱効果も完璧、 非常に快適だ。

翌朝、車で Saddle Head へ。 海岸沿いの岩場にありがちなように、一部のルートは潮加減次第。 今日は、潮のタイミングはよくないので、満潮でも大丈夫なルートが主になる。 懸垂下降、または大周りの下降路(歩登攀)で取付に達することになる。

僕は、ここで一番の人気ルートという Sea Mist 「海霞」(HS 4a) をリードする。 アレットを登る高度感あるルート。 実際、眼下にしぶきを見下ろしながら登る高度感が素晴らしい。 実は、最初の(アレットに達する)これもまた高度感あるトラバースが核心だった。 リーチがない僕のような人には若干難しい(4b?)か。 いずれにせよ、中間支点も豊富ないいルートだった。

続いて、その横の HVS 5a の直登ルートを特に問題なくリードする。 技術的には難しいけれど、Sea Mist のような雰囲気に欠けるかな。 最後、VS 4b の「No Hands」を登る。最後の三角コーナーが相当難しい。 思いっきり手を使って、クリア。どこが「No Hands」やねん!

△以上、記録の一部。全文は、以下に載せました。
 http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/record/uk/20061013_pembroke.jis.html


登山ミニ知識編 〜〜 英国伝統登攀とハーケン (その三) 〜〜

(第37号「英国伝統登攀とハーケン(その二)」からのつづき。 以下、「ハーケン」に換えて、「ピトン」を統一した用語として用いています。)

当メルマガ第37号にて、ピトンの重大な問題点 について書きました。今回は、英国伝統登攀とピトンとの関わりに ついて解説します。

英国でも、かっては、ピトンはそれなりに使われたものでした。 しかし、ピトンの使用に対する嫌悪感は英国のクライマーには伝統的に あったようです。たとえば、すでに20世紀の初め、ポール・プレウス(Paul Preuss; 1200ものルートを登った有名な登山家)は、ピトンは一切使用すべからず、 という原則を提唱、実行していました (参考: http://www.bigwalls.net/climb/mechadv/)。 50年代の英雄ジョー・ブラウンが、自らに 1ピッチあたりのピトンの量に 制限を課していた(2本)ことも、よく知られている話です。

つまり、好き放題打ち込んでいたわけではありません。現代では、 彼ら先達の姿勢は突き詰められ、実質上、 夏の伝統登攀の岩登りのルートにピトンを打ち込むのは「厳禁」となっています。 その行為は、石切り屋が岩を変形させるのと同じことで、ルート破壊と見なされます。 つまり、ピトンを打ち込めなければ登れないようなら、(リードで)登るな、ということです。

実際、現代伝統登攀では、ピトンより数段優れて、設置が速く、岩をほぼ全く 傷つけず、何も残さない中間支点の作り方が、色々発達しています(ほとんど 芸術の域)。 だから、ピトンでなくては困るような場合は、そうありません(と言えば、 言い過ぎ?)。

英国でのこの唯一の例外は、冬のルートです。冬には、岩の裂け目が雪や 氷で詰まっていることが少なくなく、ピトン以外に有力な支点作成法がないことが 往々にしてあるからです。そして、冬のルートは、一般に夏は登れないので、 冬期、それもそのルートを登るために出向く人にだけにしか見えない、 ということで、一応許容されている次第です(逆に言えば、夏も登れるルート なら、ピトンは使うべきではありません)。

結果、少なくとも英国では、半世紀前に打ち込まれたようなピトンを 見かける事が稀にあっても(そしてそういったピトンが「自己責任で」支点と して利用されることがあっても)、その数は減ることはあっても増えることは ありません。

個人的には、この英国伝統登攀の原則は、大いに気に入ってます。 こういった先達が磨いてきた「倫理」感(ethics)のおかげで、現代を生きる僕も、 「クラシック(伝統)」ルートを、初登攀の人が登ったのと同じ(ような)状況で、 (確保者以外の)誰の助けも借りずに、登ることができる次第です。 これは、クライミングの「進化」と僕は捉えるところです。

人工物の一切無い自然のままの岩を登ってみたい皆さん、一度、英国を 訪ねてみませんか?


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次回予告

次回は… 「ピーク地方で敢えて石灰岩(ハルボロー・ロック)」

See you later!


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