▲欧州的登山生活▲

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第103号: 本格的ヘッドポイント初体験 (チャーンウッド石切場)

発行日
2010/10/30
発行者・筆者
まさ (坂野正明)

まさです。
2週間半のアルプスの山旅から帰ってきました。天候に恵まれ、 15日間連続で山に入るというすばらしい休暇になりました。 最初は岩登りから始めて、最後は氷壁登攀で締めくくった、 秋ならではの旅でした。

さて、今回は、本格的"ヘッドポイント"を初体験した時の 記録を主題に据えます(「英国の登攀スタイル用語」 をまとめたので、そちらも併せてどうぞ)。苦労の末に新ルートを開拓でき、 満足感が大きかったものでした。 お楽しみ下さい。

目次


登山記録編 〜〜 本格的ヘッドポイント初体験 (チャーンウッド石切場) 〜〜

2009/04/18。アダムとチャーンウッド石切場を訪れ、 下部岩棚(Lower Tier)で簡単そうなルートを登る。新ルート「H78」(VS 4b)。 すぐ左隣のオーバーハングがそそる。次回のお楽しみ。

2009/05/09。クローディアとアンディと再訪。 前回目をつけたオーバーハングにオンサイトで挑戦。E1 くらいと予想。 思ったよりも難しい……。結局、右の H78 にエスケープとあいなった。無念。

2009/05/30。グレアムとイアンと再訪。 オンサイトは諦め、まず懸垂下降でクリーニングする。 そしていざリードに挑戦。 前回よりはずっとましだったとはいえ、 肝腎のオーバーハングの乗越しが、自信が持てない……。 H78 まで再度エスケープするのは悔し過ぎるので、途中から上に直登 することに。苦労の末、「H78 Direct」(HVS 5b) 初登。 しかし、まだ肝腎のお目当てのルートが未登のままだ!

2009/05/31。一人で再訪。 例のルートを今度はしっかりと(懸垂下降で)クリーニングした後、 シャント(登高器)を使ってソロ登攀で幾度も練習する。 核心は一発では登れなかったものの、ザイルにぶら下がりながら 練習の結果、じきに登り方が習得できた。 悪くない! 中間支点も十分チェック、セットも練習。ラックの仕方も決める。 登り方を忘れないうち、天気がいいうちに、できるだけ早く再訪したい。

2009/06/02。グレアムと再訪。今日こそヘッドポイントの日。 僕の限界にかなり近いルートだから、気合いも入る、というものだ。 ストレッチしながら気分を落ち着けて、いざ登攀開始。

核心前、ムーブを間違えてやり直す羽目になり、 中間支点の一つのセットも戸惑い、力を浪費することに。 こんなしょっぱなから間違えていては……と先が思いやられる ものの、無理矢理不安を打ち消す。

そして核心のオーバーハング。 左手の二本指を頼りに、 右手で悪いクリンプ。左手でそれよりも悪いフィンガーホールドに マッチ……の前に、右足がスタンスから外れた! 何とかこらえて 態勢を立て直す。岩が脆かったか? 一昨日は大丈夫だったのになぜだ? 気を取り直して、左手をマッチ、 両足をシャフル、そして右にフラギングするはずが、体がそうは 動かない……でも右手で上の横クラックが取れたのでひと安心。 オーバーハングの上に乗り越す。ほっ。

中間支点をセット。まず一つ。さらにもう一つ……の前にまた 右足のスタンスが吹っ飛んだ。ホールドがしっかりしている ために難なくこらえたとはいえ、あぶない、あぶない。 「Relax!」と自分に声をかける。確保のグレアムも 「そう、リラックス!」と合唱してくれる。二つ強固な支点を セットしてから深呼吸。技術的な核心は越えたとはいえ、 まだまだとても油断はできない。叫ぶ。「Relax!」

上部、やがて第二の核心へ。 落ちるわけにはいかない。危険すぎる。ホールドが遠く見える。 「Relax!」。グレアムも合唱してくれる。

心を決めて右にロックオーバー、上の悪いフィンガーホールドを 取ってから、その上のフレークに……手が届いた。 慎重に上へ次のホールドへ上へ……、最上部に手が届き ……登り切った!!
感動!!
「Determination (断固として)」(E3 6a) 誕生。

伝統登攀の真髄がオンサイトにあることは言を待たないまでも、 ヘッドポイントにはヘッドポイントの意義も楽しみもある、 ということが実感できた。素晴らしい経験だった。

△以上、記録の一部。全文は、以下に載せました。
 http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/record/uk/20090418_charnwood.jis.html
 http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/record/uk/20090509_charnwood.jis.html
 http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/record/uk/20090530_leicester.jis.html (写真付)
 http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/record/uk/20090531_charnwood.jis.html
 http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/record/uk/20090602_charnwood.jis.html


登山ミニ知識編 〜〜 英国の登攀スタイル用語 〜〜

伝統登攀(トラッド)でルートをリードで登る時、どうやって登るか(スタイル)を 記述する代表的用語を以下でまとめます。なお、伝統登攀の場合、一般的に リーダーが登りながら中間支点をセットしない限り、リードで登った とは見なされません。また、リードの最中に中間支点やザイルに体重を 預けた場合、定義上、フリークライミングではなくなります。中間支点は 万一落ちた時の安全策に過ぎません。

△オンサイト (onsight)
事前の知識なしにルートを初見で登ること。
http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/trivia/climbingbasic.html#onsite
△フラッシュ (flash)
ルートを落ちずに一発で登ること。
△グラウンド・アップ (ground up)
練習することなく、自力リードで下から登ること。
△ヘッドポイント (headpoint)
トップロープなどでルートを事前に練習した後、リードでフラッシュすること。 スポーツ登攀におけるレッドポイントと同じ。

Webページ更新情報


次回予告

次回は… 「大雪山縦走の記」

See you later!


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