2008/12/14--12/20 ラ・グラブ登山記録/感想文 (by まさ)



総括

山域
France/Ecrins Alps/La Grave
参加者
グレアム・B、まさ
期間
2008/12/14 -- 2008/12/20 (5泊6日)
  1. 12/14 Leicester ...(車)... London Luton Airport ...(空路)... Grenoble ...(バス)... Le Bourg-d'Oisans
  2. 12/15 Le Bourg-d'Oisans ...(バス)... Le Freney-d'Oisans ...(ヒッチハイク)... La Grave (Gîte Le Rocher) ... Goulotte Verney ... Le Rocher
    1. Goulotte Verney (I 3 150m; 第2ピッチまで); ソロ
  3. 12/16 Le Rocher ... Le Pylône ... 往路戻る
    1. Le Pylône (Left) (I 3, 70m); Leader まさ (P1), グレアム (P2) (AL, HP)
    2. Le Pylône (Right) (I 4, 70m); Leader まさ (P1), 2nd グレアム (OF; P1の後、懸垂下降で撤退)
  4. 12/17 Le Rocher ... La Croupe de la Poufiasse ... 往路戻る
    1. La Croupe de la Poufiasse (II 4+ 220m); Leader まさ (P3,P4,P7), グレアム (P1,P2,P5(MT),P6), (AL, Os (P4 で 1-fall, まさは、P1,P2 を登ったことあり))
  5. 12/18 Le Rocher (休息日)
  6. 12/19 (La Colère du Ciel (II 3+ 300m))
    1. La Colère du Ciel (II 3+ 300m); Leader グレアム (P1,P3(MT),P4), まさ (P2), (AL, OF, 核心まではソロ)
  7. 12/20 Le Rocher ... 雪上訓練 ... Le Rocher ... (ゴンドラ) ... Col des Ruillans ... 往路戻る
  8. 12/21 La Grave (Le Rocher) ...(バス)... Grenoble ...(飛行機)... England
宿泊
ホステル Gîte "Le Rocher"
天候
  1. 12/14 曇 (@英国)
  2. 12/15 曇
  3. 12/16 晴
  4. 12/17 晴
  5. 12/18 晴
  6. 12/19 晴
  7. 12/20 晴
  8. 12/21 晴

登山編

欧州の氷壁登攀のメッカのひとつ、南仏は La Grave (ラ・グラブ) に グレアムと共に来る。僕にとっては 3年ぶり2回目になる。 グレアムとは冬期登攀も色々と一緒に行ったが、彼にとっては 本格的な氷壁登攀は初めてになる。

かって知ったる場所、前回と同じ自炊形式のホステルに泊まって 氷壁登攀三昧といきたい。季節的に早いので、氷が登れるほど 成長しているかどうかが気になるが、そこは賭けだ。 今年の冬はこれまで 20年ぶりかそれくらいの寒い時が続いていて、 実際、英国では早くも 10月に冬期新ルートが登られたのが ニュースになっていた。賭けの成果は吉と出るか?

12/14 (到着?)

グルノーブル(Grenoble)空港に着くと、相当量の雪がある。 すばらしい。これは期待できそうだ!

市のバスターミナルに行ってラ・グラブ行きのバスを待つと……、 バスが発車しないではないか。その場で一人の少女登山家が親切にも 声をかけてきてくれて、(言葉の壁を)助けてくれた。要するに、 雪が多過ぎて、ラ・グラブへ通じる道が通行止めになっているため、 バスが出ないという! ひぇ〜〜。彼女もそのバスに乗るはずだったが、 そういう事情なので別の路線で目的地に行くとか。しかし、僕らの 場合、その路線以外に選択肢がない……。

結局、この日、行けるところまで行くことにした。途中まではバスが 通じているので、そこまで行って、ホテルに飛び込んで素泊まり。 まともに食事を取ることもできず、スーパーと駅の売店で買った パンとビスケットとキッシュでとりあえず空腹を満たして 床につく。予想外のハプニング。

12/15 (徘徊)

今日もまだ(お目当ての路線の)バスは動いていないらしい。 しかし、道は通じているという。やってきたバスに乗り、行ける ところまで行って……ヒッチハイク! なんとかラ・グラブに到着。 ?????:???????。

荷物を下ろして装備を持ってすぐに飛び出す。 せっかくここまで来たのだから、1本でも登らないと。 Les Mauvaises Années を目指して行く。 (このルートが 3年前の初日 に行ったものと思いこんでいたのだが、実は違って、La Gorge だった……)

……しかし、あるはずの氷壁が捜しても捜しても見当たらない。 雪の斜面をかなり登ったところで、どうも僕のおぼろげな記憶と一致する 場所に出る。これは、3年前に登った Goulotte Verney ではないか? 当時、氷だったが、今は雪が多過ぎて、すべて雪に埋もれている ということでは? と思い至る。つまり、僕たちは、WI 3 のルートを ピッケル 1本のみどころか、クランポンさえ無しで登ってきたのだ! (笑)

時間も押してきているし、他に僕らで登れそうなルートもない。 そこから懸垂下降で降りて、撤退。 ただ雪の斜面をひたすら歩いただけの一日だったということ。疲れた。

ちなみに、この日、山から下りてスーパーに行ったら、あろうことか 時間が遅過ぎて閉まっていた……。小さい村だから、店はごく限られるのに! では、と目をつけていた パン屋に戻ったら、こちらも 5分前には開いていたのに、なんと今は閉まっている! これも閉まりかけていた近くのパン菓子屋に飛び込んで、 今日もキッシュ、そしてエクレア。丸二日間、まともな飯を食べていない。

色々な意味で、明日こそ!!

12/16 (Le Pylône)

Le Pylône, La Grave

Le Pylône (70m)

今日は、Le Pylône を目指す。 WI 3/4 の 70m の氷壁。その前にもっと易しいところで氷壁登攀に 慣れよう、というのが当初の目論見だったものの、昨日丸 1日 無駄にしたこともあって、行ってトライしてみよう、という ことになった。 ちなみに、 3年前に来た時、 最終日はここで最初の 1pitch だけ(フォローで)登った。

相対的に易しい左側に僕のリードで取り付く。 垂直に近くて長いこんなまっとうな氷壁を登るのは随分と久々になる。 バイルがどれだけ効くのかがよく分からないこともあって、慎重に慎重に。 ほぼ垂壁の真ん中でスクリューをセットするのも随分と久々。 幸い、余力を持って第1ピッチを登り終えた。

中間点の左側の岩からリングボルト他で支点を取って、 グレアムを確保する準備を。あっ、バイルが 1本下に落ちていく……。 嘘……。専用紐でそういうことがないようにしていたはずが、 その紐とバイルとを結びつける場所の接続の結び目が不十分だったようだ。 情けなさ過ぎ!!
幸い、バイルは、グレアムに当たることもなく、下の雪面に突き刺さっている。 セカンドのグレアムに持ってきてもらうことに。 第1ピッチで本当によかったというものだった。

第2ピッチは替わってグレアムのリード。 グレアムにとっては、こんな氷壁はまさに初めての経験になる。 とはいえ、問題無く着実に登っていっている。感心したものだった。 ほどなく声がかかって、僕がセカンド。 第一ピッチより少し易しいか。特に問題無く上まで登り切る。 ちなみにこの頃になると、他にも 2〜3パーティがこの氷壁で登っている。 村からも近いし、易しいし、人気があるのも当然だろう。

続いて、せっかくなので、相対的に難しい右側を登る。 僕のリードで。第1ピッチの中間点まではよかったが……、 そこから難しく、そして怖くなった。氷のつきかたが不十分で、 気泡が多く、信頼できない……。スクリューを打ち込むも、 どれだけ効いていることか。とにかく落ちないことだけを目標に 最善のラインを見極めて登っていく。

確保点のある洞穴左まで直登してから、トラバースして、ほうほうの ていで確保点にたどり着く。難しく、怖かった。 ちなみに、トラバースの時はスクリューもほとんど打ち込めなかったので、 セカンドのグレアムにとっても嬉しくなかろう。すまんね。 僕の責任ではなく、氷が悪いのだけど。

グレアムも登るにつれ、氷が不安定なことを十分理解した様子。 自分がリードでなくてよかったよ、という術懐。 いやはや、まったく。
ちなみに、後に地元のクライマーに聞いたところでは、 今はまだコンディションがよくないため、半グレードくらい 難しいだろうね、ということだった。道理で!

時間も少し遅くなってきたので、第2ピッチは登らず、ここから 懸垂下降で撤退することにし、今日の登攀を終えたのだった。

そして、何が嬉しかったと言って、ようやくまっとうな 晩飯にありつけたこと……。

12/17 (La Croupe de la Poufiasse)

Graeme on the 5th pitch in La Croupe de la Poufiasse

La Croupe de la Poufiasse の P5 を登るグレアム

La Meije in the sunset

夕陽に映える盟主 La Meije山

La Grave 村から望んだ時、もっとも目に着く最初の氷壁は 昨日登った Le Pylône。 そして、おそらく最も美しく壮観なのが、 La Croupe de la Poufiasse だ。 3年前に来た時、 第2ピッチまでは登ったとはいえ、核心はその上。 垂直にそそり立つ氷壁がまぶしかったものだ。

難易度的にも、WI 4+ で、僕たちにとって今までに未経験の難易度だ。 しかし、「やろうぜ」というグレアムの声に押されて 今日のルートとしてそれを選ぶ! そう、登れる時に登らなくてはね。

僕が核心をリードすることになったので、グレアムが最初の 2ピッチをリードする。 いいウォーミング・アップだ。そして垂壁の核心に、左側から取り付く。 40メートルのピッチ、もしくは 25メートル程度でピッチを切れるらしい。 最初の垂直部を乗り越えて、ほうほうのていで氷柱にスリングを 巻き付けると共にスクリューでも中間支点を取る。 まだまだ行けるぞ!

ここからは右斜め上に登るのが一番よさそうなラインに映る。
登る。中間支点を取る。
登る。中間支点を取る。
ほぼ垂直なだけに、両腕がどんどん疲れてくる。 そして、疲れてくるから、さらに頻繁にスクリューを打ち込むことになり、 疲れが加速する……。右斜め上に洞穴が見えてきた。ボルトが見える ということは、あそこでピッチが切れる、ということだ。 頑張る! ……そして、なんとか洞穴にたどり着いた。 ふー、大変だった。

グレアムも苦労しながら何とか墜落すること無くフォローしてきた。 セカンドでよかった、と感謝しきりの様子。あはは。

そして、最後の 15メートル。目の前の数メートルで垂直部が終わる。 最初のスクリューはいまいち心許ない。もう一つ。 打ち込む。効かない。打ち込む。……効いた! ザイルをクリップしてひと安心。

両腕を交互に休ませた後、最後の 4メートルを登る。 腕のスタミナに問題がある。フックを多用してスタミナ温存。 片足が滑った、なんの、おっと、フックしていたバイルが 1本離れる、 もう 1本も……離れた……墜落。6メートルほどか。 ぬんちゃくのスクリーマーが少しほつれている。スクリーマーを 使っていて本当によかった!

スクリューまで登り返して休憩を入れた後、今度は横着せずに バイルを氷に叩き込む。一歩、一歩、登る。登る。 ……垂直部が終わりを告げた。ほっ。 斜め左上方にトラバースしたところで、左にナッツを極められる 岩のクラックを見つけた。ほっとすること限りなし。 少し登ってからピッチを終えた。大変だった!

次のピッチは、雪の急斜面なので、コンテで飛ばす。 その次の氷はグレアムのリード。先のピッチよりよほどましとは 言っても、油断するべからず……。油断した僕は、セカンドで 落ちてしまったのだから。

僕のリードで薄い氷(中間支点が相当怪しい)の最後のピッチを登って、 ルートを登り切った。達成感にあふれる!

ここからはひたすら懸垂下降。途中、日が暮れた中、 慎重に間違えないよう下降して、宿に帰り着いた時には 全身くたくただった。登ったという充実感に溢れる一日だった。

12/18 (休息日)

昨日の今日なので、今日は休息日。 遅くに起きてから、村内を散歩。 それと、明日のためのルートの取付を道から軽く偵察して、 早めに床につく。 明日に目指すは La Colère du Ciel。La Grave の最高のルートの 一つとして名高い。

12/19 (La Colère du Ciel)

La Colère du Ciel

La Colère du Ciel (300m) 全景

Graeme high on 1st pitch of La Colère du Ciel

La Colère du Ciel の核心(P1)を登るグレアム

Masa high up on ice-wall

La Colère du Ciel (P2) を登るまさ

今日のルート La Colère du Ciel は、 他のルートに比べて若干、アプローチが長い。 ほとんど汗だくになりながら、取付に達する。 取付の前も結構、急だったので、雪が少ないと そこもすでにルートのようだ。今日のコンディションでは、 単なる雪の急坂、ピッケル 1本で登れた。

「取付」の最初のピッチが核心。 左横の岩にボルトを見つけたのでそこから確保。 グレアムのリード。 そうこうしているうちに、後ろから 2パーティーやってきて、 ずっと下に確保点を取っていた。おぉ、そんなところに 確保点があったとは。気付かなかった

リードのグレアム、右に少しトラバースしてから上に登っていく。 80°はないとはいえ、急。時間をかけて登っていく。後ろの 1パーティーは、少し勾配のきつい氷壁の右側からさっさと登り切っていて、 後続の 1パーティーも右側から後を追うかのごとく登っている。 僕がフォローした後、後続のそのパーティーに先を譲ることになった。

次のピッチも第一ピッチほどではないにせよ、垂直に近い。 僕のリード。垂壁の最初の数メートルが核心で、その後は楽なもの。 問題なく登りきってグレアムを確保。 他の 2パーティーはここから懸垂で降りていったが、 僕らは上まで登り切るべし!

主に雪に時折氷が混じるピッチを交互リードで登って、 最後、谷の最上部に無事着いた。 結局、最初の 2ピッチが氷壁登攀の核心で、あとはほとんどは 雪の急斜面だった。もっと雪が少ない時ならば、氷が露出している こともあるのだろうが。他の 2パーティーが最初の 2ピッチの後に 懸垂で降りていったのは理解できる。

ルート全長を懸垂で降りた後には辺りはすっかり暗くなっていたものだった。

12/20 (雪上訓練と観光)

La Meije viewed from Peyrou d'Amont

La Grave 発のゴンドラ中間駅(Peyrou d'Amont)から望む La Meije山

明日、帰国なので、今日が行動最終日になる。 昨日の今日なので、短いルートということで、Rampe oblique (II 3+) を目指して行く。 ……氷が張っていない、要するに、コンディションが整っていなかった。

そこで登攀は諦めて、多少、雪上訓練を行なう。 雪崩のハンドテストなど。

あとは、一端、宿に帰ってから、ゴンドラで観光に。 ラ・グラブは、オフピストのスキーのメッカなので(なお、 いわゆるゲレンデはない)、僕ら以外、ほぼ全員スキーヤーだった。 皆、雪崩ビーコンに身を固めているのがさすが!

ラ・メイジュ(La Meije)の山が美しい。いつか登りたいものだ!

12/21 (帰路)

こうして 1週間の氷壁登攀の旅を終えた。 これだけ氷壁登攀三昧だったのは初めての経験で、 大いに楽しめた。12月中旬という早い時期に関わらず、 氷に恵まれたのは幸いだった。

12月のこの時期だと、スコットランドの冬山にはまだちょっと早い。 一方、大陸での氷壁登攀なら、コンディションはずっと期待できる。 ラ・グラブから歩いていけるところの氷壁は主なものは登ってしまった とはいえ、この谷にはまだいくらでも氷壁がある。 また再訪したいものだ。


生活編

食事

12/14晩
ピザ (@スーパー)
12/15晩
ピザとエクレア (@パン屋)
12/16晩
ベーコン他のパスタ
12/17晩
パスタ
12/18晩
パスタ
12/19晩
パスタ
12/20晩
レストラン "Au Vieux Guide" で豪勢に (すばらしい!)
05320, La Grave

タイム・テーブル

2008/12/14--12/20 ラ・グラブ山行タイム・テーブル (Masa)
時刻 行動 高度(m) 温度
(℃)
歩数
(複歩)
計器 地図
表注:
高度の表記で (s) は高度計をその高度にセット。 なお、高度計は、TechTrail/AltiTech-2 を使用。 歩数は、その前の項目からの歩数(複歩)。

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まさ