総括
- 山域
- 信州/八ヶ岳 (天狗岳・硫黄岳 周辺)
- 参加者
- H氏 (ラリグラス)、まさ (ULMC)
- 期間
- 2004/02/27 -- 2004/02/29 (2泊3日)
- 2004/02/27 稲子湯〜しらびそ小屋(みどり池)〜中山峠〜黒百合ヒュッ テ〜東天狗岳往復(中山峠経由); 黒百合ヒュッテにて幕営
- 2004/02/28 稲子湯〜東天狗岳〜西天狗岳往復〜根石岳〜夏沢峠〜硫黄岳往復; 夏沢峠にて幕営
- 2004/02/29 夏沢峠〜本沢温泉〜しらびそ小屋(みどり池)〜稲子湯
- 宿泊
-
- 2004/02/26 稲子湯付近にて車中泊 (登山前夜)
- 2004/02/27 黒百合ヒュッテにて幕営
- 2004/02/28 夏沢峠にて幕営
登山編
実に久々(丸2年ぶり)のまっとうな雪山登山、向かうは北八ヶ岳の天狗岳。2000 年の夏に(白駒池から)一度訪れて以来の再訪となる。同行のH氏は、今まで雪山 を3回、それも全部泊まりがけでご一緒させて頂いた、私の雪山の師匠格である。 このところクライミングばかりで、重いザックを背負って歩くことのない私、H 氏に激しく後れを取りそう…。まぁ、そういう時は、ラッセルを全部お任せして ついていくことにすれば何とかなりましょうか(大甘…)。今回、ザックは16kg程 度だったので、そう重くはないのが救いか。
今週、ずっと異常に暖かかったらしく、雪がかなり融けている、とのこと。実際、 清里付近では全く雪がない。26日に少し雪が降ったので、上はそれなりに新雪は あるだろうが、深雪とはならないかも知れない。いざお楽しみ。
2/27
朝、6時半、日の出と共に出発の予定…が、私が大きな忘れものをしていること に気付く。前日、送ってもらったM氏の車に、ハーネス(安全ベルト)、雪崩ビー コン、コッヘル(兼食器)、ストーブ、それに全行動食、非常食を忘れてきてしまっ た! 雪崩ビーコンは単に持っていかないことにし、ハーネスは運よく予備があり、 コッヘル類はH氏に借りられるが…、食糧なしでは山行はおぼつかない。急遽、H 氏の車で下界に食糧買い出しに行く。かくして出発は7時半。申し訳ない…。
稲子湯手前に車を泊めて歩き始めた我々を、一台の車が追い越してゆく…と見れ ば、彼、登山者カード入れのところに車を停めて歩き出すのが見えた。そちらに 車を停めればよかったんですね。まぁ、ウォーミングアップということで。その 彼、速い、速い。新雪に最初のトレースをつける役は彼に譲ることになった。
林道に出て、横切って、再び林道に出て林道沿いに…行くと林道が橋を渡ってい て、先行者の足跡もそれに沿っている。しかし、地図によると、橋を渡ってはミ スコースだ! 200mくらい戻りつ行きつコースを探るも、見当たらない…。地図上 のコースは、コースらしくなく、激しいラッセルを強いられること確実だ。橋の 向こうまで様子見に渡ってみたところ、そこに道標があった。そちらが本道、先 行者は正しかった。なんてこったい。地理院の地形図も登山地図も、どちらも古 かったようだ。
このミスコース騒ぎ以外は特に問題なく、しらびそ小屋(みどり池)を通過して、 一路、中山峠、そして黒百合ヒュッテへ。雪は、登山道に沿っている限り、おお むね踝より少し上くらいまで埋まる程度で、歩きやすい。しらびそ小屋の少し手 前まではつぼ足だった。天候は、雪がちらほら降り、時に軽い地吹雪になるが、 概ね晴れまたは曇で悪くない。稲子岳の岸壁がきれいだった。
黒百合ヒュッテでテント設営してから、軽装で東天狗岳までゆっくりと往復する。 思ったより近い。今日は拍子抜けするほど予定通りであった。
2/28
5:15 起床して、近くの丘に日の出を見に行く。気温-11℃。地平線近くに雲があっ て、もうひとつか。それでも、天狗岳が朝日に染まりゆくのはきれいだった。朝 食後、8:40 出発、中山峠を経由して天狗岳へ、昨日行ったルートを辿る。強い 西風にさらされる東天狗岳では長居せず、西天狗岳へ向かう。コルに降りると風 が弱いのは分かるが、不思議なことに、西天狗岳頂上でも風は弱い。東天狗岳の 強風が嘘のようだ。
今日は雲のほとんどない快晴。この西天狗岳からの眺めは最高だった。蓼科山か ら赤岳、阿弥陀岳の八ヶ岳はもちろん、北、中央、南アルプス、奥秩父、上州の 山々から浅間山系まですべてきれいに見えた。唯一見えなかったのは富士山くら いか。冬山でここまで見事だったのは私の記憶にない。すばらしい! H氏は当然、 写真撮影に余念がない。山頂にいた他の3人と、好天に恵まれた喜びを分かちあ う。
西天狗岳頂上で心ゆくまで過ごした後、東天狗岳に戻り、稜線沿いに根石岳を越 えて夏沢峠に向かう。ここから硫黄岳の間は夏も経験がない場所なので、楽しみ。 東天狗岳から根石岳を越えて樹林帯に入るまでの稜線は、風が強く、稜線上には ほとんど雪がなかった。景色を楽しみながら…と言いたいところだが、岩にクラ ンポンを引っかけないよう、足下に注意が必要なので、なかなかそうもいかない。
夏沢小屋は、冬期休業。天場らしいところがないので…その辺に張ることになる か。天気もいいし、まだ日も高いので、ザックを下ろして硫黄岳へ往復すること にする。しばらく歩くと樹林帯を抜け、吹き晒しの稜線に出る。硫黄岳から東へ 伸びる稜線の北壁が荒々しく、見事だ。じきに山頂に。1998年夏に硫黄岳に来た 時はガスっていて、全く何も見えなかったものだが、今日はいい天気で、ガイド ブック通り360度の眺めが楽しめる。午後になってさすがに空気が濁ってきては いるものの、北アルプスの北端まで見えるのには変わりがない。いいね!
山頂でゆっくりしている間、横岳方面からカップルが来て、足早に赤岳鉱泉の方 に降りていった。あと、途中ですれ違った一人が、夏沢峠からこちらで出会った 唯一の人々。こんな天気のいい週末に! ガスの中、人でごった返していた1998年 夏とは大違い、冬山のよさだねぇ。
あとは、のんびりと夏沢峠まで帰るだけ。風は強いながらも飛ばされるほどでは ない。夏沢峠をほんの少し北側に樹林帯に入ったところでテントを張る。就寝 19:45。
2/29
今日で山もお別れだ。昨日とはうってかわって、激しい風と雪(と小屋の風力発 電)との音の中、起きる。出発して、樹林帯を抜けると、途端に飛ばされそうな 西風が雪を乗せて叩きつけてくる。強い吹雪。今日、稜線を歩くのが30mだけで、 しかも東側へと降りるルートでよかった。
本沢温泉への下降路は、最初の30mが少々急だが、あとはのんびりと降りられる 雪道だ。途中、登ってきた女性の一人が、木製シャフトのピッケルを持っている のに気付いた。「亜麻油塗ってんですよ」と誇らしげだった。渋いねぇ。
ほどなく本沢温泉に着く。知る人ぞ知る日本最高所の天然温泉。ザックを小屋前 に残して、クランポンを装着して、いざ野天風呂(小屋から100m)へ。露天には、 驚いたことに先客のカップルがいて、我々の後からさらに一人やってきた。もの 好きは我々だけではないらしい。以前(2000年)秋に来た時は、お湯は割と熱い、 と思ったものだが…、今日はぬるかった…そりゃそうか。でも、お湯は寒いとい うほどではない。しかし、吹雪の中なので、髪が寒い…。私と入れ違いに出たカッ プルが、着替えながら、寒いよぉ、と悲鳴を上げている。壁一つないところだか らなぁ…。うーん、そういう先のことはあまり考えずに、今は天上のお湯を楽し もう。。。
とは言え、永久に入っているわけにもいかず、ひと時、H氏の写真のモデルを務 めてから、私も出る。全速力で服を着る。みぞれまじりの風が強いのがこたえる。 ただ、一枚着れば驚くほど違った。カップルの助言に従って、着替え中、タオル を足の下(雪の上)に敷いたおかげで、足の指もそれほど凍えずに済んだ。
前から一度、お猿さんのように雪中の露天温泉に入ってみたいと思っていたもの だが、今日、念願叶った。風さえなければいいんだけど…。とは言え、3日間 の山行の後の露天はいいものだ。
今日は、気温が高い。雪というより、雨に近く、しらびそ小屋(みどり池)に着く 頃にはまさに雨になっていた(小屋で気温2℃)。当然、雪も腐り…、小屋までク ランポンを外さなかったもので完全に高下駄状態だった。
小屋で遅ればせながらクランポンを外すと…、今度は道がところどころ凍結して いるではないか。あらまぁ。2回滑ってしまったが、稲子湯まで快調に一気に降 りる。来る時、雪のまっただなかに停めた車は、完全に露出したアスファルトの 上で我々を待っていた。これで、久々の雪山、久々の3日間山行を終えた。厳冬 期ながら、厳しさとは無縁の楽しい山行だった。
生活編
小屋
今回、幕営だったので、小屋に泊まったわけではないのだが、必然的にいくつか の小屋を通過したり立ち寄ったりした。印象的だったのは、黒百合ヒュッテとし らびそ小屋との太陽パネルと山びこ荘の風力発電機と。3年半前に行った時には、 黒百合ヒュッテにもしらびそ小屋にもそんなものがあった記憶はないので、この 3年で急激に変わったということだろう。黒百合ヒュッテには、バクテリアを利 用して汚水を分解する施設も採り入れられていた。ただ…、それを動かすために、 冬でもある程度の気温を保つ必要があるようで、便所は暖かく、かつきれいだっ た。ついでに、暖房便座になっていて驚いた。山小屋とは信じられない…。いず れによせ、(暖房便座はともかく)環境に考慮する潮流が一気に高まっている、と いうことだろう。石油を大量に燃やすより遥かにいい。嬉しい傾向だ。
夏沢峠の山びこ荘は、山に囲まれて日照時間は限られる。一方、風の通り道なの で、風力発電というのは理にかなっている。ただ、冬は人がいなくて整備されて いないせいか、10台くらいある発電機のうち、まともに動いていたのは半分に満 たなかったように見えた。冬の風は強すぎるのか…。春に小屋を再開する時が大 変だろうなぁ、と察せられる。また、この発電機、結構うるさい。それも規則的 なリズムでもなく、時々、プロペラ全体がぐるりと回って奇妙な音を立てる。音 速を超えて衝撃波が立っているのだろうか。その音は、はるか下の本沢温泉にま で響いていた。ここまでうるさいと…それはそれで環境的に問題な気がする。難 しいものだ。
印象的だったのは、しらびそ小屋だ。小じんまりとしてあったかい感じがしたも のだ。私が絵葉書を求めて立ち寄った時、すぐ、暖炉に薪をくべてくれた。すぐ 出ていくのは目に見えていただろうに。小屋の立地から言って、泊まる人が多い とは思えない。それでも通年営業とは驚く。特に冬にはオアシスになるだろうし、 ありがたい話だ。小屋泊まりにはそれほど魅力を感じない私だが、りすの家族が トレードマークのしらびそ小屋は、一度泊まってみたい気がした。
温泉
本沢温泉は、露天に入るのも小屋で入浴券を買う必要がある。夏は、外でザック を担いだままでも入浴券を買えた記憶があるが…、今回、中に入らなければいけ なかった。それも、クランポンどころか、靴まで脱ぐ必要があった。ちょっと頂 けないなぁ。冬こそ、靴を脱ぐのは面倒というのに。冬は外に木箱でも置いて良 心市のようにすればいいのになぁ。
今回、帰る前に、最後、稲子湯に入り直した。石鹸でごしごし垢落とし、と。さぁ 帰るか、という時に、玄関先で、「あれっ」と女性に声をかけられた。どっかで会っ たっけ、と思いきや、「本沢温泉にいらっしゃいましたよね」と。これは失礼、 湯煙の中とは印象が違いまして…。ちょっとどきどき?
タイム・テーブル
時刻 | 行動 | 高度(m) | 温度(℃) | 歩数(複歩) |
2004/02/27 (晴れ時々雪) | ||||
---|---|---|---|---|
4:30 | 起床 (稲子湯付近; 前夜は車中泊) | |||
7:30 | 稲子湯手前発 | 1500 | ||
7:45 | 登山者カード箱 | 1570 | ||
8:40 | 10分休憩 | -7 | ||
9:30 | 15分休憩 (クランポン装着) | 1420 | ||
10:05 | しらびそ小屋 (みどり池) 10分休憩 | 2040(s) | 570 | |
10:55 | 15分休憩 | 1000 | ||
12:15 | 中山峠手前 (10分休憩) | 2350(a) | -9 | 1060 |
12:45 | 中山峠 | 2430(a) 2415 |
||
13:00 | 黒百合ヒュッテ (幕営) | 2390 | ||
東天狗岳往復 | ||||
20:00 | 就寝 | |||
2004/02/28 | ||||
5:15 | 起床 | |||
6:10 | 近くの丘(2433m)で日の出(6:10)を見る | -11 | ||
8:40 | 黒百合ヒュッテ発 | 2390 | ||
9:40 | 東天狗岳 (休憩5分) (風強し) | |||
10:00 | 西天狗岳 (休憩20分) (風なし) | 2646 | ||
10:35 | 東天狗岳 | |||
11:20 | 根石岳山頂 | 2603 | ||
11:30 | コルを過ぎて少し登り返し (15分休憩) | |||
12:25 | 夏沢峠 (20分休憩) | 2435 | ||
13:35 | 硫黄岳山頂 (20分休憩) | 1340 | ||
14:50 | 夏沢峠 | 2435 | ||
19:45 | 就寝 | |||
2004/02/29 (雪、強風) | ||||
5:10 | 起床 | -4 | ||
7:00 | 発 | 2435 | ||
8:00 | 本沢温泉 (野天風呂に入る) | |||
10:10 | 本沢温泉発 | |||
11:40 | しらびそ小屋 (みどり池) 25分休憩 (小屋で午前6時で気温0℃) |
2040 | 2 | 2445 |
(林道に出たところの)橋 | 1665 | 1800 | ||
林道と登山道分岐 | 1650 | 150 | ||
13:00 | 登山者カード箱 | 1570 | 450 | |
13:16 | 稲子湯着 | 1500 |
表注:
時刻は、私が基準。 高度の表記は、(a)が高度計の読み、(s)が高度計をその高度にセット、それ以外 は地図から読み取った高度。
なお、高度計は、YAESUの無線機
VX-5に付属のもの。温度は、H氏の温度計を主に参照。歩数は、その前の項目からの歩数(複歩)。
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まさ