2002/02/15 Bosigran 登山記録/感想文 (by まさ)



総括

山域
West Penwith/Bosigran (他)
参加者 (レスター大学山岳部)
キャプテン・ジョン、ジョン・ボイ、ライナス、ロブ、クレール、 トム、バーニー、ガレス、リック、トゥプス、シェリル、ニック、サム、 サラ、エミリー、ラーニー、マーク、ジョン(新入)、まさ
期間
2002/2/15 -- 2002/2/17 (2泊3日; 以下の記録はまさの参加分)
  • 2002/2/15 Leicester夜発 ... hut
  • 2002/2/16 Bosigran
    (Main Face/Suicide Wall, 210f, E1 (80f; 45f 4b; 25f 5a; ...);
    Main Face/Doorway cliff, 185f, HS (60f 4a; 40f 4b; 85f 4a))
  • 2002/2/17 Bosigran 夕方発 Leicesterへ帰る
    (Main Face/Doorway cliff (昨日と同じ))
宿泊
The Count House hut (self-catering)
天候
  • 2002/2/15 晴
  • 2002/2/16 晴
  • 2002/2/17 曇

登山編

Bosigranは、イギリス(England)の南西端に位置する半島のそのまたほぼ先頭近 くにある、Sea cliff である。クレールによれば、去年の週末クライミングの中 で最高だったと言う。キャプテン・ジョンもこれを一年のうちのひとつのハイラ イトと呼び、今回はミニバス2台を用意して総勢19名の参加となった。初級から ハイレベルまで多彩なマルチピッチルートが楽しめるサイトだ。ただひとつ、問 題は遠いことで、レスターから7〜8時間のドライブ(直線距離でスコットランド のグラスゴーまでと大体同じくらい…)になる。2/15、午前3時前にようやく到着、 夜空の星々が見事だった。きれいな空気ということだ。

さて2/16、適当にコンビを組んで好みのルートに向かう。私はロブ、クレールと、 Main Face/Suicide Wall Cliff の Suicide Wallへ。5ピッチ、210 feet、E1 --- 相手に不足はない。1ピッチ目は腕慣らし、リードはクレール。3人が十分立てる 広いレッジでピッチ終了。ナッツでプロテクションを取る。2ピッチ目、リード は代わってロブ。出だしからこまめにプロテクションを取っていく。つまり…ちょっ と難しそう。斜めに走るクラック沿いのホールドを頼りに細かいスタンスを拾っ ていく。フェイスの向きが変わるところで、ピッチを切る。下まで一気に見下ろ せる高度感ある狭いレッジ。珍しく残置ピトンがあった。とは言え、海岸沿いの 赤茶けた手打ちピトンだからプロテクションを取っても気休めか。そして 3ピッ チ目、ロブのリード。右から左から色々試しつつ、大分頑張るが…ついに、諦め ることとなった。スリング1本残置して、懸垂下降で基部に降りる。この時点で、 登り始めからなんと6時間経過していた。おつかれさまだ。

この時期になると、陽も少し長くなっている。ひと息入れて次のルートにチャレ ンジ。隣の Doorway cliff の Doorpost、そのバリエーション(HVS)を行ってみ る…が、ロブ、最初の2mが登れない…。「It isn't your day.」と慰めるクレー ル。諦めて、直前に登ったトム、サムの後を追いかけて、Doorpost のメインルー トを行く (3ピッチ、185 feet、HS)。怒りの(?)ロブ、速い速い。サムに追いつ きそう。第二ピッチは、クレールのリード。トム、サムにプロテクションを残し てもらっている。結局、このピッチでそのまま上まで一気に行くことになった。

セカンドはロブ。この時点で完全に陽が暮れている。ヘッドランプを忘れたロブ、 私が貸したミニライトを口にくわえて登る。垂壁の中ほどにひとり取り残された 私。孤独だ…。ようやく私のロープが引かれ、登り始める。暗闇の中での「登山 (下山?)」は経験あってもクライミングは初めて。自然と体が力んでしまう。恐 怖があるものだ、やはり。不安定なジャムとパワークライミングとで何とか登り 切る。

クライミング2日目(2/17)、多くのメンバーは、車で別のクライミングサイト Chair Ladder の方に向かう(昨晩、同宿の人に薦められた)。私は、ロブ、シェ リルと共に、昨日の Doorpost に。ロブが何か残置したという。今日は、基部か ら 2ピッチ、私がリードさせてもらう。9mm ダブルロープ、武器は、標準ナッツ 1セット、大きめのフレンズ3つにスリングたくさん。ナチュラル・プロテクショ ンの(本格的な)ルートでのリードもダブルロープでのリードも初めてである。

陽の中で登ると、高度感溢れる楽しいルートだと分かる。ごく近くの岩陰で休む 海鳥に手を振りながら。フェイスを斜登する1ピッチ目に始まり、フィンガーか ら半身入るくらいまでの(2本の)並行クラックを登る2ピッチ目がハイライト (実 は2ピッチ目、ビレイポイントを見過 ごしてしまい、トップまであと数mのとこ ろまで行ってしまった)。レッグジャムを極めてナッツを選べるのは楽でいい。

ナチュラル・プロテクションルートは職人芸が要求されるものだ、ということが 体で実感できた。これくらいか、と選んだナッツが合わずに引き下がる。極まっ たように見えても、上に引っ張ると簡単に外れたり…。特に極めたナッツを引っ 張って効きをチェックした時に抜けたりすると、バランスを崩して焦ったり。そうし て不安定な態勢の中、時間だけが過ぎていき、疲労が溜る。そこまで苦労してセッ トしたプロテクションもどれくらい信用できるか定かでない、とくる。

フォローの人のための支点作りも当然同じ。今回の2回のビレイでは、自己確保 用に2点、後続の確保用に2点、用意した。時間がかかって、かかって…。その点、 フレンズは確かにすごい。私のような素人でも簡単に極まり、そして外したい時 には簡単にはずれる。ただし、ずっと重く、かさばるのが難、というのもよく分 かる。とてもたくさん持っていく気にはなれない。また、簡単に極まったフレン ズが、フォール時の荷重にどれくらい耐えられるのかもちょっと気になるところ だ。

昨日、同ルートをリードしたトムのセットは見事だった。ヘキセントリックや単 なるソーンスリングを上手に使っていた。外す時には簡単に外れるのに、リード 時やフォール時には大丈夫なようになっている。つまりセットも速いということ だ。そのレベルに達するには相当の修行が必要だろう。

結局、このルートを終えた後、ちょっと早めながら、今回のクライミングを切り 上げた。多彩なマルチピッチルートが楽しめる Bosigran、ハイライトというの も頷ける。是非また来てみたいと思わせた。


生活編

hut

2週間前の Froggatt Edge の hut (自炊方式、管理人はいない) は、びっくりし たが、今回は、それ以上に立派だった。家に侵入警報装置までついている。2階 が(広々とした)寝室で1階がそれ以外の生活空間。シャワーはもちろん、乾燥室 も用意されていて、居間にはソファーから(ガス)暖炉まで完備。今回は貸切では なく、(hutの?)「メンバー」の人々2グループ、4人が一緒に泊まっていた。

うち一組は、初老の御夫婦。この辺はかなり登っているらしい。初日に途中で断 念した"Suicide Wall" について話していたところ、「ふふ、その上 が核心なんだけどねぇ。」とのこと。「行かれたこと(have tried)ありますか?」 と訊いたら、「Tried? Climbed(完登した)と言って欲しいな。」と言われてしまっ た。英国クライマーの誇りを見たか?!

スクランブル

今回の hut の夜は、スクランブルが出てきた。スクランブルとは、英単語を上 下左右に作っていくゲームのひとつ。単語の長さや使うアルファベットや置く位 置で点数をつけ、競う。英国では誰でも知っているゲームのようだ。因みにこう いう類の言葉遊びのゲームは、玩具屋に行くとずらりと並んでいる。人気がある のだろう。私もシェリルらのチームに加わらせてもらった。…が、当然、あんま り力にはなれない。「そりゃフランス語だからだめー」「えー、でももう英語化 しているよー」とか、わいわいやるあたり、なんかしりとりに似てなくもない。

language barrier

ジョンとシェリルとが洗いものをしながら何やら話している。シェリルが急に私 に、「○×△?」と話かけてくれたのだが…、よく分からず、「Sorry?」と聞き 直す羽目に。途端、ジョンが笑い出す。シェリルも。わけわからん…。よくよく 聞くと、language barrier (言葉による壁) の話だった。シェリルは北アイルラ ンド出身なので、レスター近辺の人とは発音が少し異なる。だから、時に周りの 人に言葉を理解してもらえなくて language barrier を感じる、と。そういう意 味では、(日本人の)私はもっと辛いわけで、language barrier って大変よねぇ、 と同意を求めて私に話しかけた、というわけ。その問いかけさえ理解できなかっ た私を見て、ジョンは爆笑してごもっともと理解した、というのが真相だった。 うーむ、複雑な気分…。

language barrier は事実厚いのだが、でも、山岳部の連中は気のいい奴が多く、 一緒に過ごしていて気持ちいい。幸せなことだ。


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まさ (正)