2004/10/21--26 スコットランド/スカイ島/キュリン山地登山記録/感想文 (by まさ)

[Japanese / English]


この文章は、日本の読者への便を考えて、むしろ記録の側面に的をしぼっていま す。無味乾燥な点は御容赦を。一方、英 文の方は人に読んでもらうことを前提にした、感想文の形にしています。 よろしければあわせてどうぞ。


総括

山域
スカイ島/キュリン山地/北部、外縁部 etc.
参加者
まさ (単独行)
期間
2004/10/21 -- 2004/10/26 (5泊6日、実質行動日 3日間)
  1. 2004/10/21 Leicester ..(列車).. Glasgow (ホステルに泊まる)
  2. 2004/10/22 Glasgow ..(バス).. Sligachan (幕営)
  3. 2004/10/23 Sligachan ... Side of Bhàsteir Gorge ... North-East ridge ... Sgurr a' Bhàsteir (898m) ... Bruach na Frithe (958m) ... Sgurr a' Fionn Choire (930m) ... Bealach nan Lice ... Bealach a' Bhàsteir ... Sligachan (幕営)
  4. 2004/10/24 Sligachan ... Bruach na Frithe East ridge (標高800mで撤退) ... Am Màm (407m) ... Sligachan (幕営)
  5. 2004/10/25 Sligachan ... Cleir Sron a' Bhealain ... Beinn Dearg Mheadhonach (651m) ... Bealach Mosgaraidh (540m付近) ... Beinn Dearg Mhór (731m) ... Bealach na Sgairde (400m付近) ... Sligachan (幕営)
  6. 2004/10/26 Sligachan ..(バス).. Glasgow ..(列車).. Leicester
宿泊
幕営 (Sligachan Hotel 横の幕営地)
天候
  1. 2004/10/21 晴後雨
  2. 2004/10/22 曇後雨時々曇
  3. 2004/10/23 曇
  4. 2004/10/24 曇後雨
  5. 2004/10/25 曇時々雨後雨時々曇
  6. 2004/10/26 曇

登山編

スコットランドのスカイ島(Isle of Skye)のキュリン山地(Cuillin Hills)は、 英国一のスクランブリング(scrambling)の本場である。イングランドとウェール ズで最高の場所は、(私が年初めに行っ た)クリブ・ゴッホ(Crib Goch)と言われる。しかし、そのスケール、長大さ、 技術的困難さでキュリン山地には、遠く及ばない。本によれば、キュリン山地の 主稜線縦走は、12時間で行けたらなかなかのものという。核心(エスケープルー トもある)は、多少とはいえオーバーハング、VDiff (米国式ならば IV- くらい?) とされる。仮に核心をエスケープしても、Diff は登らなくてはいけない。スク ランブリングとしては、最強のレベルと言っていい。当然、ロープ携行は必須。 日本で言えば、槍穂縦走のような感じか。ただし、英国の例にもれず、梯子、鎖 はもちろん、ペンキ印さえ一切ない。つまり、技術的にはずっと困難。一方、大 キレットのような高度差はない。なにしろ最高点でも海抜1000mに満たないから。

今回、以前から訪ねてみたかったキュリン山地に出かけることにした。英国の秋 は陽が短く、ひたすら雨が続く。つまり時期としては、最悪だが…、その分、人 も少ないことを期待しよう。一応、山仲間に声をかけてはみたが、一週間丸々、 それもこんな時期につきあってくれる人は(当然?)おらず、私一人の単独行となっ た。当然、主稜線縦走は無理なので、山歩き(hill walking)から簡単なスクラン ブリングまでとなる。これだけ長い期間の登山単独行は初めてでもあり、それも 楽しみだ。

イングランドから公共交通機関でスカイ島に行くには、おそらく、グラスゴー (かエディンバラ)まで飛行機で飛ぶのが速いだろう。しかし、今回、安い航空券 が見つからず、グラスゴーまで列車で行くことにした。ブリテン島の西側を通る ルートの方が若干速いが、値段の関係で東側、エディンバラ経由にした。グラス ゴーからは、キュリン山地登山の最大拠点スリガハン(Sligachan)まで、長距離 バスが出ている。季節や都市次第では、イングランドからスカイ島までの直行長 距離バスもあるかも知れない。もしくは、スカイ島の対岸カイル・オブ・ロチャ ルシュ(Kyle of Lochalsh)まで列車で行って、そこからローカルバスを利用する ことも可能だ。ただし、グラスゴーからの列車の路線はかなり遠回りになるので、 決して速くはなく、また乗り換えも少なくない。さらに、イングランド南部から だと、一日で行くのは乗換がかなりタイトだと聞いた(日本のように列車は正確 では全然ないので…これはかなり問題)。

1日目 (10/21): グラスゴーへ

今回、グラスゴーまで乗換2回、座席はすべて指定で取っている。ところが…、 7:29発の列車が、遅れた挙げ句にキャンセルの憂き目にあった。当然、その後の 乗換予定は全部パー。指定席の意味、全くなし。幸い、グラスゴーでの(スカイ 島行きの)バスの乗換には1時間ほど余裕を見ていた。次の列車(1時間後)に乗っ ても何とか間に合うか。

しかし…そんな甘い期待もむなしく、乗換後の列車もこれまた30分遅れ、グラス ゴーからスカイ島行きのバス(1日2本、当然、もともと、午後のもの(=最終便)を 予約していた)に乗れなかった…。やむなくグラスゴー駅前のホステル(Euro Hostel)に泊まることに。バスの切符も予約してあったのだが、バス会社とかけ あって、何とか、予約変更手数料を取られずに済んだ。はー、英国だ…(ため息)。

2日目 (10/22): グラスゴー 〜 スリガハン

グラスゴーから延々 6時間のバスの旅の後、ようやくスリガハンに辿り着く。キャ ンプ場はバス停からすぐ近くのはずが見当たらない…と思いきや、要するに他に 誰もいなかったので、単なる草地に見えていただけだった。そこまで少ないとは! すばらしいではないか。

しかし実は、キャンプ場はすでに(9月末一杯で)閉鎖されていることを知った…。 人がいないわけだ…。本(ガイドブック)にも10月末とあったし、旅行者情報セン ターに尋ねても10月末と言っていたのに! 使うのは自由のようだが、水道も出な いし、便所も使えない。

道路をはさんで隣接するスリガハン・ホテルに行くと、入口に張り紙がある。曰 く「ここのトイレは当ホテルのお客様専用です。一般の方は、○○(=隣町)の公 衆便所を御利用下さい」。隣町って…20kmくらい離れているんですけど…。ホテ ルのフロントでお願いして、ホテルのトイレと(建物外の)水道とを使わせて頂く ことにした。感謝。

ホテルのバーで紅茶を飲みながら、地図とガイドブックとを広げて、明日からの 予定を画策。日暮前にアプローチ道の入口だけ確認して、早々に夕食を済ませ、 寝袋にもぐり込む。陽が短いこの時期、夜明け前の出立は当然だ。

なお、このキャンプ場は、海岸ほぼ脇に位置している。つまり、標高ほぼ0m。キュ リン山地が1000mないとは言っても、地図の標高が、そのまま登るべき標高なの で、それなりの運動になろう。

3日目 (10/23): Sgurr a' Bhàsteir, Bruach na Frithe, Sgurr a' Fionn Choire

5時起床で6時前に発つ。今日の目標は、Sgurr a' Bhàsteir の北東稜 (North-East Ridge) (Grade 1) から、さらにキュリン山地主稜線上の Bruach na Frithe と Sgurr a' Fionn Choire を目指す。同北東稜は、キュリン山地の スクランブリングの最高の入門コースのひとつらしい。スクランブリング中、天 候が悪くなければ、主稜線の素晴らしい眺めも楽しめるはずだ。加えて、このルー トは、スリガハンからキュリン山地への最も近いアクセスでもある。一方、 Bruach na Frithe は、キュリン山地上、唯一の三角柱(日本で言う三角点。人の 背以上の高さの柱が立つ)がある。Sgurr a' Fionn Choire には、Grade 2 また は 3 の短いスクランブリングの場所がある。もし難しいと感じれば、Grade 1 のルートへ容易に逃げることができると言う。

午前6時だとまだ真っ暗だ。昨日のうちにアプローチ・ルート(footpath)の入口 を確かめておいてよかった、というものだ。いくつもの小川を横切って歩を進め るうちに夜が明け(ヘッドランプを消したのが7時20分頃)、やがて、スクランブ リングの取り付きに着く。8時半。その前辺りで footpath は自然消滅する感じ になる。

ここで念のため、ヘルメットをかぶって、いざ出陣。横の Coire a' Bhàsteir のゴルジ(Bhàsteir Gorge)が美しい。沢登りにぴった りそう。一方、残念ながら主稜線はほとんどガスってて見えない。一瞬だけガス が切れて南東の Pinnacle Ridge が見えたが、それは見事だった。

スクランブリング自体は特に危険なところ、緊張するところもなく、楽しく登っ ていける。晴れていたら、両側の景色が見事だったろうが…。9時半過ぎに痩せ 尾根上の Sgurr a' Bhàsteir の山頂(898m)に到着。愉しい単独行だった。

ここで大休止。それから、尾根を南に下り、トラバースして Bruach na Frithe へ。このトラバースの時、北斜面上に雪があったので、思わずキック・ステップ などして遊んでしまった。この季節でも雪があるとは驚きだった。もっともこの 時点で気温5℃だから、下がる時は氷点下になっても確かにおかしくはない。

主稜線上の Bruach na Frithe へのルートは、うまく選べばスクランブリングな しでいけそうだが、ちょっと迷いこめばスクランブリングが必要になるか、とい う感じ。別に難しくはないが。

Bruach na Frithe 山頂(958m)着は、Sgurr a' Bhàsteir の山頂を出てか ら約30分後。山頂横には、非常時(?)にキャンプができそうな場所があった。相 変わらずガスっているが、たまに切れ目があって、Am Bàsteir 方面が見 えたりする。コンパスで方向を確認しようとしたが…、どうもおかしい。山頂か ら2、3歩離れて初めて気付いた。コンパスが狂っている! つまり山頂の岩が磁化 しているようで、コンパスの向きが正常ではなかったのだ。ガイドブックには、 キュリン山地では岩に注意、とあったが、まさにその通り。ここではコンパスは 周りの岩からできるだけ離して使うよう、気を払わなくてはいけないのだ!

今来た主稜線を辿って、Sgurr a' Fionn Choire へ。この西壁に短いスクランブ リング・ルートがある。登ろうと試してみるが…、どうも難しい。早立ちしたお かげで、時間はまだたっぷりある。そこで、ハーネス他登攀具を出してきて、遊 ぶことにする。ロープがあると安心感が違う。数m上の最初のレッジまで着いて、 ふと左を見ると、そこにもっと易しいルートがあるではないか。山頂まで辿り着 いて分かったのは、どうもその易しい方が本ルートっぽい。Grade 1 のルートは さらに東にあったから…。難しかったわけだ。まぁ、楽しめたからよしとしよう。

あとは、下りだ。Sgurr a' Fionn Choire から Bealach nan Lice のコルへ下り、 Am Bàsteir の圧巻の北壁を横に見ながらウォーキングのルートを下る。 ここで、Sgurr a' Bhàsteir の尾根上に3人のグループが見えた。それが 今日の山行中に見た唯一の人々だった。この孤独感がいい。

せっかくなので、主稜線上の Am Bàsteir 東側のコル Bealach a' Bhàsteir まで登り返し、主稜線に別れを告げる。さて、いよいよこれか らは下り一本。ガイドブックを見ても、はっきりしたルートはないようなので、 自分で等高線とにらめっこして、ルートを決める。Pinnacle Ridge の終了点付近か ら東にトラバース、Coire Riabhach の footpath へと抜けることで、湿地帯を 抜けられる。

Pinnacle Ridge の終了点付近までは順調だった。ところが、そこから東を眺め ると、トラバースが思ったより急斜面で難しそうだ。おまけに雨も降り始めてき た。そこで、Bhàsteir Gorge の方へと北に尾根を下る。こちらだと、 footpath まで遠く、いまいち気乗りはしないが…。そのうち、こちらも踏み跡 が無くなったようで、気がつけば、尾根の東側、つまり再び Coire Riabhach を 臨む方面に出てきた。少し高度が下がった分、ここからならトラバースできる気 がする。そこで、ここから東方面に元々目指していた footpath (この時点で見 えている)に向けてトラバースすることにした。

実はこれが、大失敗の目になった…。最初は確かに特に問題なく降りられたのだ が…、どんどん難しくなっていった。斜面が乾いていれば、どうってことはない のだが…、あちこちから水がわき出して流れを作り、それが合流して下では川と なっている。当然、時には苔の部分もある。そんなところをトラバースするのは 神経を使う。途中、よほど斜面を直登して尾根筋まで出ようかとも思ったほどだ が…、気を取り直して慎重に、降り気味にトラバースする。

結果、随分と(特に精神的に)疲れたが、1時間半ほどかけてなんとか footpath に辿り着いた。登攀具を一切使わなかったので、その程度ではあるが…、今日一 番の緊張を要した…。明らかにルートではないようだ…。後から考えれば、途中 で、登り返して引き返すべきだった。ただ…、悪いことに目前に目標の footpath が見えている上、疲れもあって、登り返す気がしなかったのが判断を 誤った理由だったか。

後にガイドブックを見直して顎然とした。最初に読んだ時、なぜか Coire Riabhach の方の footpath へ出る、と思い込んだのだが、ガイドブックには、 Coire a' Bhàsteir、つまり Bhàsteir Gorge の方に北へ下る、 と書いてある! 気乗りしなかったルートこそ、まさに本道であった…。実際、 footpath までは遠いのだが、そこはなんとかする、というわけだった。少なく とも、濡れた急斜面をトラバースする必要はない…。山行中もガイドブックはザッ クに入っていたのだが…。何をやっているんだか…。

15時頃には帰れると思っていたのだが、とんだロスタイムでキャンプ場着17時に なった。それでも、苦労している間、明るかったのは幸いだった。あれで日が暮 れていたら…と思うとぞっとする。早出してよかった、というものだ。

4日目 (10/24): Bruach na Frithe (retreat), Am Màm

この日の晩は、元々は、稜線上のどこかでビバーク泊するつもりだった。しかし、 昨日、思わぬ消耗になったので、今日はおとなしく簡単めのルートに行くことに する。昨日行った Bruach na Frithe に、今度は、北 稜から登る。長く、高度感があって、見晴らしのいい Grade 2 のスクランブリ ングだ。

天幕場を発つのはやはり6時前。Glen Brittle と Sligachan とをつなぐ footpath の途中から、北稜へショートカットするルートもあると言うが、はっ きりしなさそうなので、footpath から直接北稜を登るルートを選ぶ。footpath を Bealach a' Mhaim のところから、別れを告げるルートだ。

しかし…、実際は、そのルートでさえはっきりせず、結局、ジグザグに登って最 終的に北稜にたどり着くことになった。まぁ、稜線は稜線だから、(視界がある 限り)最後にはたどり着けるわけだ。ただ…、後に判明したところでは、本の "crest"(稜線)の解釈を間違えていたようだ。少し分かりにくいが、 北稜の主稜線にすぐ右側から急登するルートが本筋のようだ。

登るにつれ、風がしばしば非常に強くなってきた。普通に歩ける広い稜線上でさ え、しばしば停止を余儀なくされる。これで、もっと厳しいスクランブリングの 箇所に出ることを考えると…。そこで、ツェルトを出して休憩しながら、風の出 方を見ることにした。1時間くらい経った頃、少し風が弱まった気がしたので歩 き出すが…、遮るもののない場所に出ると、時折、風の強さは半端ではないこと が分かった。というわけで、高度800m付近で諦めて、もと来た道を降りることに あいなった。ツェルトで休憩中、親子と思しき二人組が登って行ったが、私と前 後して、同じように撤退することにしていた。下りの最中、さらに二組の登りの グループに会ったが…、彼らはその後、どうしたのだろう?

Bealach a' Mhaim まで下ったのが、12時半。まだ早いので、隣の Am Màm に登っ た。簡単に登れる低い山ではあるが…、とにかく一つは山を登った、ということ で。

以前、キュリン山地に来たことのある友人は、私の出立前に、風には気をつけて、 とアドバイスをくれていたものだが、まさにその通りであった。

5日目 (10/25): Beinn Dearg Mheadhonach, Beinn Dearg Mhor

今日が実質の最終日だが…、残念ながら今日も天気はよくなさそう。そこで、キュ リン山地主稜線ではなく、その東側の Red Hills 「赤い山地」の方に行くこと にする。ここ Sligachan からなら歩いて行けるところだし。

最初は、Beinn Dearg Mheadhonach へ Sron a' Bhealain から北北西稜経由で達 することにする。スクランブリングではなく、普通に歩いて登れるルート。しか し…、道は激しくぬかるんでいて、ところどころ沼地のような感じだ。おまけに 雨まで降り出す。登りにさしかかった後は、道は時には迷う場所もあるようだ --- 実際、一度、コースをそれてしまった。結局、コースと言うより踏み跡で、ルー トはひとつとは限らないから。幸い、Bruach na Frithe 山頂のような極悪なこ とはなく、方位磁針が効いたので、ルート修正できたが。

Sron a' Bhealain (440m付近) のケルンを過ぎ、他に幾つかのケルンを見た後、 ようやく Beinn Dearg Mheadhonach 山頂に立てた。ここで東の海辺をはじめ景 色を眺めることができたと思えば、すぐに霧が出てきた。ぎりぎり間に合った、 ということだ。特に海岸線の景色はなかなか悪くなかった。

ここから稜線沿いに Bealach Mosgaraidh のコルを経由して、ほどなく Beinn Dearg Mhor の山頂に着いた。…が、濃い霧で何も見えない。本来はここから北 東稜を Grade 1 のスクランブリングで下る予定だったが…、この霧ではルート を辿れるとは限らない。そこで予定を断念して、北西のコル Bealach na Sgairde まで下った。とはいえ、この「普通の」下りも濃い霧の中ではとても単 純にはいかない。このルート、稜線でもなんでもないのっぺらな(しかも割と急 な)場所を下るもの、つまり目印になるものが何もなく、例によって踏み跡もはっ きりしない。コンパスで決めた方向だけが頼りだ。ザレ場で少し気は遣ったが、 やがて、無事にコルに着いた。振り返ると霧の中(コルまで降りると、霧はまし になっていた)、道(=踏み跡)らしきものが見えた。私が取ったルートはそう悪く なかったようだ。濃霧の中のナビゲーションは、それはそれでひとつのいい経験 だった。

ここから、元々は Red Hills の最高峰、男体山のような Glamaig (775m) に、 南東稜経由で登る(Grade 2/3)予定だったのだが…、この時点ですでに 13:50。 諦めて Coire na Sgairde 経由で直接 Sligachan に下ることにした。本では、 Coire na Sgairde 経由としか書いていなくて、それ以上の詳細な説明が一切な い。しかし…、地図を見ても、実際に下を見ても、道らしい道は見当たらない…。 どこに道があるのだろう??

とにかく、ルートは Allt Daraich 川に沿っていることだけは間違いない。しか し、Allt Daraich 川は、比較的しっかりとした流れのようだから、歩いて渡れ る場所があるとは限らない(少なくとも橋がないのは明らか)。そこで、右岸(東 側)の羊の牧場を羊用の獣道と思われる踏み跡を辿って行くことにした。どこか でもう少しルートらしい「ルート」に出くわすことを期待して。しかし…、行け ども行けども、それらしいものは全く見当たらない。川の対岸にも。結局、海岸 沿いの主要車道に出るまで、ずっと牧場と、それからスコットランドの沼地の荒 野とを旅することになった。もちろん、人っ子ひとり会うことなく。それはそれ で原始的な感じでなかなか愉しい体験だった。

そして、スカイ島最後の夜は、スリガハン・ホテルのラウンジで夕食を取り、た またま一緒になった他の登山者のグループと談笑したりして、過ぎて行ったのだっ た。

あとで知ったことだが、スコットランドでは、イングランドやウェールズと違っ て、人は、(法的に)どこを歩いてもいいらしい。つまり、牧場はもちろん、人の 家の裏庭を歩いてもいいのだそうだ。もちろん、ものを壊したり無用に騒ぎ立て たりしない、という常識の範囲内で。というわけで、今回の下降路は、行きたきゃ 行けるよ、という感じの「ルート」ではあっても、それ以上ではなかったのだろ う。だから、本にも Coire na Sgairde 経由で、としか書かれていなかったと見 る。すばらしきスコットランド!

6日目 (10/26): 帰路

もうあまり書くことは残っていない。朝のグラスゴー行きのバスはほぼ時刻通り だった。しかし、列車は例によって、いたるところで遅れてくれた。余裕のある 乗り換えだったはずのエディンバラはぎりぎり。ピーターボローではついに逃し て、1時間後の最終を待つことに。ったく、英国なんだから!

全体として、何と言っても非常にスコットランド的と言っていい山行だった。降 り続く雨、いたるところ沼地、どんよりとした天気…。とは言え、それはまぁ、 予想通りではあったと言わねばなるまい。だからこそ、少しの好運に感謝できも するわけだ。もちろんもっと晴天で、風が弱ければよかったことは言うまでも…、 いや、それはきっと贅沢過ぎる願いなのだろう、この季節のスコットランドには。 そして、期待通り、登山、沼地/荒野横断、幕営とたくさん楽しめた。なにより、 期待通りほとんど人に会わなかった。最終日など、車道を離れてから戻るまで人 間は一人も見かけなかった。素晴らしき孤高の時間を持てたのだ。

今回、スコットランドとキュリン山地を存分に愉しみ、そして怪我なく帰宅した。 それこそ、私の願っていたことだった。


情報編

以下、Skye島と Cuillin山地の情報。

案内書、ガイドブック (guidebook)
スクランブリング(と易しいクライミング)には、"Skye Scrambles" (Noel Williams 著; SMC: Scottish Mountaineering Club) が決定版
(以下の情報は、同本を大いに参考にした)
同本には、ウォーキングのルートも多少はあるが、ウォーキングが目的な ら、他にガイドブックがあったはず。
地図
Ordnance Survey (1/25000 ("Outdoor Leisure Map 8: The Cuillin & Torridon Hills), 1/50000 (Sheet 32: South Skye, 23: North Skye)) 基本

Harveys "Skye: The Cuillin" (表が 1/12500 (キュリン山地主要部のみ), 裏が 1/25000)
等高線が 15m区切り、と変則的。細かい地形が省略されていること あり。それでも、1/12500 は貴重。

宿泊
キャンプ場 (4月〜9月が標準的なオープン時期の模様)
Sligachan
Glen Brittle (以上、二つが、Cuillin山地への標準的登山基地)
他、Broadford, Portree 近くなど
YH: ユースホステル
Glen Brittle
他、Broadford, Uig など
その他のホステル
Portnalong に通念開業のところが二つあるらしい
他、Portree など
自炊形式の小屋 (Mountaineering hut)
Glen Brittle Memorial Hut が16人用にあるらしい(4月〜9月)。
他、Portree など
ホテル
Sligachan Hotel が歴史的 (21時まで、来訪者に食事を出す)
交通機関

スカイ島は、交通機関はそう便利ではない。つまり、車が便利。 Glasgow か Eddinburgh まで飛行機で行って、そこから車、など。

Kyle of Lochalsh に橋がかかっていて、本土から島へと渡れる。
列車 (南部から Kyle of Lochalsh に行くのは、大回り)
Inverness 〜 Kyle of Lochalsh
Fort William 〜 Mallaig の便 (Mallaig からはフェリー)
バス (長距離バスを "coach" と言い、普通は "bus")
Glasgow 〜 Sligachan (5時間) 〜 Portree 〜 Uig (2本/1日)
Inverness 〜 Portree
Kyle of Lochalsh 〜 Uig は、もう少し本数が多いが、たかが知れている
ヒッチハイク(!)
(拠点の) Glen Brittle に行く公共交通手段はない。車を持っていな ければ、ヒッチハイクが一般的の様子。郵便配達の車にも乗せて もらえるらしい。
買い物

拠点の Sligachan では、Sligachan Hotel がほぼ唯一のまっとうな商 売施設。Broadford (Portree も?) まで行けば、幾らか店があるようだ


タイム・テーブル

2004/10/21-26 Cuillin 山地 山行タイム・テーブル
時刻 行動 高度(m) 温度(℃) 歩数(複歩)
2004/10/21
(Leicester → Peterborough → Glasgow)
07:29 train → canceled
08:10 Leicester 11
08:16 Leicester発
via Peterborough
Glasgow (25 min delay)
21:30 就寝 (EURO hostel)
2004/10/22
(Glasgow → Sligachan)
06:00 起床
06:20 hostel発
07:00 Glasgow発 by bus
13:00 Sligachan着, set up Tent
15:30 To Sligachan hotel for tea
18:30 Dinner at Sligachan hotel
22:30 就寝 11 (天幕内)
2004/10/23
(Sgurr a' Bhàsteir, Bruach na Frithe, Sgurr a' Fionn Choire)
05:00 起床 7
9 (天幕内)
05:52 8(s)
05:58 Sligachan hotel cross road 290
06:12 Bridge (in the path) 500
06:22 Ford 39(a) 238
06:30 Ford 200
Ford 61
Ford 140
06:40 Ford 58(a) 100
06:47 Ford 69(a) 163
06:53 Ford 91(a) 265
Fall(left) 110
Big Fall(left) 121(a) 100
07:13 Cross roads (go right) 184(a) 350
07:21 Ford 222(a) 314(214?)
休憩 (kill light) 6
07:38
07:46 Fall 240
Ford 47
08:00 two Fords 352(a) 430
Ford: Cross roads? (go left) 50
08:10 Ford 387(a) 125
08:23 Right before Gorge 455(a) 6
休憩 (wear helmet) (Pinnacle Ridge seen)
08:32
08:42 Turn right (a bit flat place) 540 240
09:34 Sgurr a' Bhàsteir 895(a) 5 1191
10:00 898(a)
10:13 End Ridge 867(a) 295
10:32 Bruach na Frithe 956(a) 5 460
(camping possible) 958(s)
10:35
12:16 Sgurr a' Fionn Choire 933(a) 6
(Play at west cliff)
12:29
12:38 Bealach nan Lice 885(a)
13:03 Bealach a' Bhàsteir 827(a) 700
13:12
13:44 wear raincoat 586(a) 932
15:07 Cairn on the path 315(a)
15:23 End marshes 243(a)
15:40 Highest in the path 264(a)
休憩 (rainbow seen) 280ish
15:55
16:14 Bridge (cross roads) 106(a)
150
17:03 Campsite -5(a) 11
8
19:30 Dinner
22:30 就寝
2004/10/24
(Bruach na Frithe (retreat), Am Màm)
05:08 起床 9
05:50 8(s)
06:12 Bridge (in the path) 24(a) 721
06:33 Corss roads with car road
right before Bridge
48(a) 431
06:37 Depart right from car road 112
06:47 Fall 60(a) 243
06:50 Ford 80
07:03 Ford 110(a) 484
07:10 Fords 135(a) 209
07:20 Ford 168(a) 295
07:35 Fords 222(a) 7 490
休憩 (kill light)
07:50
08:00 Ford 273(a) 305
08:09 Ford 293(a) 300
08:20 First Cairn 328(a) 280
Many Cairns (every 50m)
08:40 Bealach a' Mhaim 362(a) 6 545
休憩 (next to Lochan) 344(s)
08:56
09:28 Wide flat place 513(a) 916
休憩 (5min)
09:46 Steep slope start 613(a) 333(233?)
10:08 right before scramble 750(a) 425
休憩 (in bivvy tent)
10:55
11:05 Give up 801
11:48 Cairn at flat space 526(a)
515(s)
12:14 Path (Bealach a' Mhaim) 342(a) 1090
休憩 344
12:32
12:43 Am Màm 410(a) 7 407
休憩 407(s)
12:52
13:03 Path (start raining) 332(a) 9 604
Cross roads to Crest(east) 297(a) 255
14:49 Campsite 8(a) 1758
8
17:30 Dinner
21:45 就寝
2004/10/25
(Beinn Dearg Mheadhonach, Beinn Dearg Mhór)
05:00 起床 10
07:02 8(s)
07:14 発 footpath 5(a) 400
07:20 Cross roads (Gate) (marshy) 20(a) 200
07:43 Fall 44(a) 453
07:55 Go over fence (kill light) 49(a) 55
08:07 休憩 (wear rain-trouser) 65(a) 230
08:18
08:37 Solid ground; seepen 110(a) 576
mis-route (alt. 220m ish), windy
09:11 Back to right route 300(a) 941
09:30 Sron a' Bhealain 408(a) 457
休憩 (misty) 429(s)
09:44
10:17 Two Cairns (flat place) 501 979
10:29 発 (exchange gloves)
10:53 Main ridge (Cairn) 632(a) 5
休憩 (mist cleared) 643(s)
10:58
11:08 Beinn Dearg Mheadhonach 651(s) 251
11:18 発 (get misty)
11:37 End ridge 601(a)
606
586
11:55 Bealach Mosgaraidh 496(a) 430
12:35 Beinn Dearg Mhór 728(a)
731
941
12:45 発 (foggy)
13:09 Cairn (sometimes strong rain, wind) 583(a)
598(s)
13:49 Bealach na Sgairde 425(a)
14:20 休憩 (10min) 279(a)
14:55 Cross river from Glamaig 187(a)
16:02 Main road (A87) (near Quarry) -26(a)
16:30 Campsite -33(a)
17:20 Dinner at Sligachan Hotel
19:20 Back to campsite
21:35 就寝
2004/10/26
(Sligachan → Glasgow → Edinburgh → Peterborough → Leicester)
05:05 起床 5
07:45 Leave campsite
08:19 Leave Sligachan (by bus)
14:25 Glasgow (2min delay)
14:45 Leave Glasgow (by train)
15:44 Edinburgh (9min delay)
16:00 Leave Edinburgh (by train)
Peterborough
Leicester

表注:
高度の表記は、(a)が高度計の読み、(s)が高度計をその高度にセット、それ以外 は地図から読み取った高度。 なお、高度計、温度計は、YAESUの無線機VX-5に付属のもの。歩数は、その前の 項目からの歩数(複歩)。


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まさ