2005/02/25-27 Lake District/Borrowdale 登山記録/感想文 (by まさ)



総括

山域
Lake District (North West)/Borrowdale/Great End, Shepherd Crag
参加者 (レスター大学山岳部)
ニック・R、スティーブ・E、リッチ・S、ベン・H、トム・M、アビ、ライナス、キーナ、エド、ジョン・M、ドム、ジェマー、まさ
期間
2005/02/25 -- 2005/02/27 (2泊3日; 以下の記録はまさの参加分)
  • 2005/02/25 Leicester夜発 ... hut (Bowderstone hut)
  • 2005/02/26 Borrowdale/Great End/Central Gully (Winter Grade II) (リッチ・S、エド、ジョン・M、まさ)
  • 2005/02/27 Shepherd Crag/Ardus (42m, MVS (4a, 4a, 4b)) (アビ、キーナ、まさ)
    Glasmere 夕方発 Leicesterへ帰る
宿泊
Bowderstone Hut
天候
  • 2005/02/25 雨時々雪
  • 2005/02/26 曇
  • 2005/02/27 曇時々晴

登山編

再び湖水地方へ。1年少し前と同じ、 Borrowdale の Bowderstone 小屋へ。今週半ばには雪が降っていて、今でも 残っているようなので、今回は冬山が楽しめそうな雰囲気だ。

02/25

ジョンの車でトムと共に。Kesick 経由で。

02/26

普段は起きるのが遅い部の連中も今日はなかなかのものだ。スティーブや女性陣 は岩登りに行くようだが、冬山を目指す人々は、8:30 には、車で出発、 Seathwaite に停めて、Great End に向けて歩き出す。8:45。1時間半後に、ウォーキン グのルートとおさらば。Seathwaite には全然雪はなかったが、この頃(高度)に は、地面が隠れる程度の雪が積もっている。気温 1℃。

問題は、ひとつにはガスで岩場が見えないこと。もうひとつには、まっとうな ガイド本を持っていないこと…。かくして、岩場に着く前に迷ってしまった。どうも 左に来すぎた感じ。エドやドムの足下や、ピッケルさばきがおぼつかない。ドムは 正月にグレード III を登ったと言うが…、そもそも冬山の基本がなってないん ではないか? 登攀第一の英国らしいと言えばらしいが……。

右に大きく回り込んで、ようやくそれらしい岩場にたどり着く。今日、ジョン、 エド、リッチはピッケル1本だけ持ってきていて、他の人々(ニック、ドム、ベン、 ライナス)はダブルアックスで来ている。そこで、ピッケル1本の3人に僕が相対 的に易しいルート(グレード II)の谷(gully)へ、他の連中はグレード III へと 向かうことに。僕の仲間のリッチとエドとは、先の11月のこの湖水地方での冬山気分スクラ ンブリングで、ジョンとは先の正 月開けのトリドン冬山山行で、一緒した気心の知れた仲だ。

ルートの取付きで、コンテのセット。リッチがリード、エド、ジョン、僕と続く。 岩と雪のミックスから、やがて岩と氷と雪のミックスへと移る。僕が持参した2本 のアイススクリューが大活躍…いや、数がちょっと足りない感じ…。そろそろ ピッケル1本では厳しいか、という頃、後続の二人組が追い抜いていった。彼らに 聞いたところ、どうもルートはまだ 100m くらいあるらしい(あぁ、ガイドブック が欲しい!)。

ここまで時間をかなり使ってしまっている。リッチのリードがちょっと経験が 足りない感じで非効率、また、エドとジョンとは冬山登攀自体の経験不足で ペースがちょっと遅い。しかも核心は上部だということなので、今日のところは 撤退することにした。

ただ、撤退と言っても、都合のいいような木はもちろん岩角もなかなかない。気 温も零度前後の現時、氷も、アイススレッドを作るには心もとない(そもそも都 合のいい場所、厚みではなかなかない)。ここまで100m 近く、50m のシングルロー プで登ってきているので、普通に懸垂下降するなら、4回必要…。僕が持参した ピトンは4本。極まるかどうかは岩次第。

そこで、僕の提案かつセットで、50m ロープで 50m 懸垂することにした。今回、 幸い、スリングや細引き類をかなりの量、持参してきているので、全部足すとほ ぼ 50m に達した。残置するため、ピトンを岩に打ち込む…実は初めての経験。 まず、エド、ジョンが、ヘキセントリックなどを支点に懸垂。次いで、リッチが、 ピトンを支点に、ヘキセントリックをバックアップにして懸垂。最後、僕が、ピ トンを支点に懸垂。ピトンの穴に直接ザイルをかけたのだが、どうも摩擦が大き いので、HMSカラビナをかけて摩擦を小さくした(実はこの摩擦を助けるための HMSカラビナ、後でザイルを引いたときに、その場に落ちてしまって、失った。 バックアップを取ってなかったから当たり前だ…。気づかなかった。あらら)。 懸垂中、時折、ザイルを引いて回収できるか確認してみるが、どうも摩擦が相当 大きい。僕は最後の 10m は歩いて下ることにして、そこで、ザイルを引くことに した。4人でがんがん引っ張って、何とか回収できた…ほっ。

僕が 10m、他の皆の立つ場所に降りた頃には、リッチがそこで 30cm くらいある 大きなチョックストーンにザイルをかけて、次の 50m 懸垂の準備をほぼ終えて いた。リッチ、エド、ジョンの順で最後が僕。さて、僕が懸垂前にロープを引いて みると…、ロープが引けない、つまり回収できそうにない! 30cm のチョック ストーンの摩擦が大きすぎるのだ。そこでその場で、チョックストーンにスリングを かけて、ザイルを 50m 引っ張ってかけなおした。今度は大丈夫だ。懸垂後の回収 も全く問題なかった。最初、ピトンに直接ザイルをかけるのでなく、スリングを かけるべきだった、ということだ。ひとつ勉強した。

ここで、懸垂の場所は終わり。この後は普通に歩いて下れる。日は暮れていて、 ヘッドランプなしでも何とか見えるか、という程度。撤退してよかった、という ものだ。僕が降りた頃には、エドは足の調子が悪いとかで先に下りへと発って いた。……実は、その一人での下りの最中、古傷の膝を脱臼してしまったらしく、 しばらく後に再会した時、相当痛そうな様子だった…。気の毒に。

リッチとジョンとは、今日の回収可能の全長懸垂下降にいたく感心した様子だった。 僕も使うことがあるとは思っていなかったのだが…、何かの時のために覚えておく といいことがあるもんだ。

02/27

昨晩、ベンと明日も冬山に行かないか、と話していて、僕は早起きしたのだが…、 今朝は、ベンも含めて他の連中は(いつものように?)ベッドがお好きな様子。晩 によく飲んでいるから…。結局、小屋を発つのはほぼ正午、冬山は絶望的。 Derwent Water 湖ほとりの Shepherds Crag へ。僕は、マルチピッチは初めて という女性陣二人、アビとキーナとをリードすることにする。 向かったのは、Ardus (42m, MVS (4a, 4a, 4b))、1年少し前、アダムとトライしたが、雨 の中、撤退した因縁のルートだ。今日の天気は晴れ、今日こそ登り切りたい ものだ。

前に登った時は、第2、3ピッチ を一気に行こうとしたのだが、結局、第3ピッチの出だしでつまづいて撤退した。 だから今日は、丁寧に普通にピッチを切る。2ピッチ目まで特に問題ない。キーナ がフォローして来る時、中間支点を外すのを忘れて通過した時にはちょっと焦っ たが。本で、そういうことがあるから、リーダーは気をつけましょう、と読んだ ことはあったが、そういう場面に出会うことが実際にあるとは。

さて、この第二ピッチ終了点のレッジから振返って見る Derwent Water 湖方面の 眺めは素晴らしい。その素晴らしい眺めを背にして、高度感のある左への数m の トラバースが第三ピッチの出だしだ --- 以前、撤退した場所だ。トラバースした 後、縦クラックを上に抜けて、最上部に着く。

このトラバースは、フェースの岩に一本のラインが走っているので、それを頼り に使うことになる。一応、トラバース前に、そのラインを使って、中間支点が取 れる。前に登った時は、そのラ インの上に足を置いてトラバースしようとしたが、手で掴むものが何もなく、膝 が震えたのだった。今日は、逆にそのラインを手のホールドとしてトラバースし てみる --- 意外に足を置くスタンスはそれなりにあって、緊張はあるながらも、 特に難しいというわけではなくトラバースを終えることができた。実はこの後の 最後の縦クラックが核心のはずだが、そちらの方は、中間支点には困らないし、 難しいとも思わなかった。僕にはやはりトラバースこそ核心だ。

アビ、キーナと続いて、気持ち良くルートを終えた。二人とも、このマルチピッチ のルートを大いに愉しんだようだ。いいルートだ。 二人ともトップロープなら E1 くらいまで登れるので、MVS のルートなら特に 問題はなかった。天候に恵まれたのも幸いだった。僕としては、宿題を解いた 気分で、悪くない。

この後は、Brown Slabs で登っていたスティーブらに合流。アビは Diff の ルートで、リードの練習をする。恋人のニックが途中で横で合流して、そのまま 上まで付き添って、支点のセットをアドバイスしていた --- Diff のルートの 「横」ということは、少なくとも VDiff、だがおそらくは Severe 以上? うーむ、そんなルートをフリーソロで登るとは…さすがニック? 真似したくは ないなぁ…。


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まさ