総括
- 山域
- Peak District/Lawrence Field, Stanage Edge
- 参加者
- ゆき、ゆか、マーク、まさ
- 期間
- 2005/05/30 (日帰り)
Lawrencefield- Gingerbread Slab/Snail Crack (18m VD); Bottom rope (まさ以外)
- Gingerbread Slab/Nailsbane (18m HVD); Bottom rope (まさのみ)
- Mantelpiece Buttress Area/Zip Crack (6m M); Bottom rope (まさ以外)
- 天候
- 晴
登山編
ゆきとゆかとが英国までわざわざ訪ねてきてくれたので、一日はピーク地方に連 れ出すことにする。ごく最近、沢登りを始めたゆきは、まだ岩登りは一度もした ことがないようなので、これを機会に本場の岩登りを紹介してみたい、と。マークとも2年ぶりに一緒することになる。 ケイビング(洞窟探検)のガイドをしていたこともあり、岩登りから氷壁登攀まで 幅広い経験のあるマークは、頼もしい仲間だ。言葉が少々問題だが…、ゆきはそ れなりに英語を喋るし、必要なところは僕が通訳ということになる。
朝、発つ頃には小雨が降っているも、ピーク地方に着く頃にはすっかり上がり、 青空が広がるようになった。雨がまた降る可能性もあることも見込んで、雨に強 そうな場所ということで、まずは、Lawrencefield (ローレンスフィールド) に 行くことにする。実は、2年前にマークと 行って以来、ご無沙汰だ。山仲間とは、天候の悪いときに行こう…と話しつ つ、割と天候に恵まれてきたもので。
ゆきは登山経験もあれば、力も運動神経も女性としてはずば抜けているので、HS くらいまではさくさく登りそうな気がする。一方、アウトドアとは縁のないゆか には、むしろあまり怖がらせないような易しいルート --- Mod か Diff くらい が望ましい。残念ながら Lawrencefield ではそのような都合のいいルートはな いが…、開けている Gingerbread Slab で VDiff と HVD とが隣り合っている場所があるので、そこにボトム ロープ(トップロープ)を張ることにする。
というわけで、岩場の上までスワミベルトとギア一セット他担いでセットに出か けたが…、これが大失敗。面倒くさくてスペアのザイルとハーネスとを下に置い てきたのに、どちらもあった方がよかった…。ハーネス自体もさることながら、 ハーネスにくっつけたままにしていた安全環付カラビナ数個と下降器三つが欲し かった…。なんとか手持ちのスリングと安全環付カラビナでセット終了。懸垂下 降に入る前に、あろうことかATC環を下に落としてしまった…。残るはぶたっ鼻、 しかし、11mm ロープ 2本でぶたっ鼻では、摩擦がありすぎて、試みるも懸垂で きない。肩がらみは避けたいから…、カラビナブレーキかイタリアン・ヒッチか。 簡単な後者にしてみる…と思いきやぶたっ鼻を落としてしまった! 下にいた人、 びびらせてごめんなさい…申し訳ない。
イタリアン・ヒッチでも、11mm ロープ 2本の懸垂は、摩擦が効きすぎて、かな り辛かった。相当の苦労の末、何とか下に着く。そしてロープを引くも、どうも 上で引っ掛かっている模様。クラックにザイルをセットしたから、摩擦が効きす ぎているのだ…何かそんなのばっかり。マークがエイト環でさくっと登って(僕 が下から確保)、セットを少し修正してくれた。もっとも頼りにしていたヘックス の位置を少し変えたか?
たかがボトムロープのセットにだいぶん時間を浪費してしまった。僕がセットし ている間、マークがレイバック他いくつかの登り方を下で簡単に披露していたよ うだ。ようやく岩登り開始、ゆきから登る。マークが確保。僕が岩場の真下につ きそってアドバイス。特に問題なく登る。随分、楽しんでいる様子だ。登るのよ りも、ロワーダウンの方がちょっと怖かったみたいだ。続いてゆかの番。「高所 恐怖症なんですけど…。もう、私にこんなことさせるなんて、まさ君くらいよね! いい土産話やわ。」……(申し訳ない、と言えばいいのでしょうか…)。苦労しな がらも、何とか上まで達する。おつかれさま! 初めての岩登りで VDiff を登る とは大したものです!
続いてマーク。左横のフェースの方から取り付いて、途中でクラックに抜けて (逃げて?)、上まで達する。上からは懸垂下降(ケイビングのガイドの経験あるだ けあって、懸垂下降の腕はさすがだ)。ところが、ロープをしゃくって、降り始 めた瞬間、支点の一つが飛ぶ --- マークがセットし直したヘックスだ。 まぁ、あとの二つの支点は十分頑丈で、かつ支点は流動分散でなく、スリングの 長さ調整で分散させていたので、問題は全くないが。ロープをしゃくった時に若 干、上向きの力がかかったのが問題だったのだろう。慌てて登り直して、セット し直すマーク。
最後、僕が隣の HVD で登る --- ゆきに確保してもらう。確保の仕方を教えた時、 しばしば確保の方の右手が一瞬ロープから離れている瞬間があった。恐ろしや…。 絶対それだけはするな、と念を押して登り始める。マークが後ろでバックアップ の確保をしているので、問題はないが。
上までたどり着いたところで、セットを解除、ローレンスフィールドはここまで とする。
さて、お茶休憩の後、今度はスタニッジ・エッジ(Stanage Edge)へ。英国で岩登 りなら、ここに来なくては! スタニッジ最南東部の最もポピュラーと言われる場 所へ行く。Mod の Zip Crack にボトムロープを張る。ゆきは難なく登る。続いてゆかもちょっと止 まりながらも問題なくクリア。
ゆかにそのまま上まで登り抜けてもらって、今度は、ゆきが同ルートを懸垂下降 することにする。下降器はエイト環、Hill & Johnston の本にあるフレンチ・ プルージックでバックアップを取る方法で。摩擦が大きかったようで、なかなか 降りーん、と文句を言いながらも初めての懸垂下降を無事終了。
最後、マークが、隣の HVD を登ることにする。トップロープのセットを少し左 にずらせばいいだけなので。ずらしてみたところ、ちょっと長さが長すぎて、上 より 50cm くらい下で終わってしまう。そこで、安全環付カラビナをはずして少 し短くしようとしていたところ…、あろうことか、カラビナごとザイルを下に落 としてしまった、下でロープを結ぼうとしていたマークのすぐ横に…。今までの 僕の 5年のクライミングの経験の中で、クライミングの最中に道具を落としたの は、ドライブ・インが 1回、スリングが 1回だけだ。それが今日は、3 回も落と す羽目になるとは…。あぁ、情けないといったらありゃしない! 誰にも落とした ものが当たらなくてよかった…。
まだまだ陽が落ちるには間があるが、今日はここで終了とすることにした。ゆか はおっかなびっくりながらも初めての経験を楽しんでもらえただろうか? 少なく ともイングランドらしくない好天の中でピーク地方を楽しんでもらえてたら嬉し いのだが。ゆきの方は、予想通り非常に嬉しそうな様子でなによりだ。
ピーク地方に来る前に説明する時に、僕は「岩登り」に行こうかと思うんだけど どうかな、と訊いた。子供の頃そんなことをやったこともあるし、楽しみ、とい うのが、ゆかの答だった。今日、当日、こんな本格的なものだとは思いもしなかっ た、とのたまっていた。誤解してそうだなぁ、と感じつつ、「岩登り」とは「ロッ ク・クライミング」の訳語ということにはあえて触れなかった僕は、ずるだった かな? (笑)
議論編
ゆきの懸垂下降の時、フレンチ・プルージックでバックアップを取ったが、マー クは、初心者にプルージックでバックアップを取らせるのは好きでない様子。と いうのも、注意が 2カ所に分散してうまく懸垂下降ができないことが多く、かつ、 プルージックがもつれたり、最悪、下降器に絡まることがしばしばある、と。
後者は、(フレンチ・プルージックでなく)普通のプルージックを使うことが問題 なのでは、と反論した(下降器に絡まったりするのは、セット自体がお話になっ てない)。一方、前者は確かに一理ある。特に、11mm ロープ 2本で懸垂する時な ど、摩擦は確かに非常に大きいと言っていいので、うまく体重をかけたり、ある いは、ロープを下降器に出してやるくらいのことが必要になる。
死者の数(割合?)で言えば、クライミングの最中よりも、懸垂下降の方がずっと 危ない、と聞く。実際、一般にバックアップが少なくないクライミングよりも、 一つの間違いが命取りにつながる懸垂下降の方が危険なのは納得できる。だから、 バックアップがない状態での懸垂は僕は避けるべきだと思う。一方、下に人がつ いて上を見ていられる状態ならば、万一懸垂下降中の人が落ちても、下からロー プを引くことで、止めることができる。だから、初心者に最初に教える場合は、 それ(下に人がついていること)を保険として、プルージックなしで始めた方が 「教育的で」いいかも知れない、と僕は考え直したところだ。--- 懸垂下降に慣 れたところで、バックアップを教える、ということで。
いかがだろうか?
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まさ