2005/08/26--29 North Wales/Glyder 登山記録/感想文 (by まさ)



総括

山域
North Wales/Snowdonia/Ogwen/Glyder
参加者
ジョン・M、まさ
期間
2005/08/26 -- 2005/08/29 (3泊4日)
  • 2005/08/26 Leicester ...(車)... Gwern Gof Uchaf (幕営)
  • 2005/08/27 Gwern Gof Uchaf ... (車) ... Ogwen 駐車場 ... Idwal Slab ... Glyder Fawr (999m) ... Y Garn (947m) ... Ogwen 駐車場 ... Gwern Gof Uchaf (幕営)

    At Idwal Slab

    1. Ordinary Route (140m; Diff) (46m, 46m, 24m, 24m); Leader Masa → Jon (Move together)
    2. Lazarus (Severe; 42m) (15m, 27m); Leader Masa → Jon
    3. The Arete (VDiff; 24m); Leader Masa
  • 2005/08/28 Gwern Gof Uchaf ... Tryfan Heather Ridge ... Bristly Ridge ... Glyder Fach (994m) ... ... ... Gwern Gof Uchaf (幕営)
  • 2005/08/29 Gwern Gof Uchaf ...(車)... Leicester
宿泊
幕営 (Gwern Gof Uchaf)
天候
  • 2005/08/26 曇
  • 2005/08/27 曇
  • 2005/08/28 曇一時雨後雨
  • 2005/08/29 雨

登山編

この月曜が祝日(英国の祝日の数は日本より圧倒的に少ない!)なので、三連休に なる。当然、山行を計画し、何人かに声をかけた結果、ジョンと北ウェールズに 来ることになった。よく考えたら、最も最近の英国での山行も、このジョンとのミルストーン・エッジだっ た。その時、8月に北ウェールズに行きたいね、と話していたのが、実現するこ とになった次第だ。それと、よく考えたら、北ウェールズは、ずっと冬にしか来 たことがなかった。4年前に Tremadog の 岩場で岩登りをしたのを除けば、冬期以外に来たことは一度もないのだった。 そして、その Tremadog の岩登りは、 英国で初めての泊まりがけの山行でもあった。何となく縁を感じてしまう。

ウェールズは山がちなことで有名だ(あくまで英国の基準で……)。何しろローマ 時代にローマ人が攻め上ってきた時、山に阻まれてウェールズは手付かずで残さ れたから、独自の言語や文化が残ったといういわくつきの土地なのだから。中で も、北ウェールズは、特に山険しく、そのせいか独自の文化色が色濃く、たとえ ばウェールズ語を母語とする人が少なくない(南ウェールズでは、英語を母語と する人がほとんど)。実際、ウェールズとイングランドとの最高峰は、北ウェー ルズのスノウドン(Snowdon)山(1085m)で、スノウドン山を含めて 1000m峰が 4 峰ある(イングランドの最高峰は 978m のスコーフェル・パイク(Scafell Pike))。

さて、山があるということは、そこで雨が降る可能性が高いということ。そして、 遮るものなく大西洋を渡ってきた偏西風が最初にぶち当たるのが、このウェール ズの山々……というわけで、北ウェールズは雨が多いことで悪名高い。実際、今 まで過ごした中(10日間以上)でまともに晴れたのは、去年末の山行 1日目の午前中くらい しか記憶にない。今回も予報によれば、すばらしいとは言い難い感じだ。ど うなることやら。

08/26

今回の目的は、Glyders 付近でのマルチ・ピッチの本格的岩登りと歩登攀だ。 ジョンの運転で、Gwern Gof Uchaf の天場に向かう。去年末 の山行で僕は利用したことがある。当時は、僕を含めて利用者わずか二人、優雅な 生活を送ったものだった。今回は、8月の三連休、あの狭いキャンプ場で果たし て場所があるだろうか、と不安だったのだが……、来てみると、余裕で大丈夫だっ た。冬場に比べて、天場がかなり拡張されていたのだった。ジョンと二人、それ ぞれ一人用天幕を張り、寝袋にもぐり込む。

08/27

今日の天気は大丈夫そうだ。ならば、と Glyder Fawr 山の下の Idwal Slab に 岩登りに行くことにする。最後、山頂まで歩登攀で突き上げる予定だ。 登山口(Ogwen 駐車場)まで歩いても平坦な舗装道を 2km だが、時間も惜しいの で、そこまで車で出かける。駐車場発 09:10、割と整備されたゆるやかな登 山道を登り、ほどなく Idwal Slab に着く。

すでに10人以上、岩場に取り付いている。僕らが登ろうとしている Ordinary Route (140m; Diff)にも先客がいる。まぁ、仕方ない、待っている間に装備 を整えることにする。ちなみに僕は、歩登攀シューズ、ジョンは冬山用の 本格的登山靴だ。今回は、天場で話した人の助言を容れて、ヘックス にスリングをたくさん持参し、一方、フレンズの 0.5番(WC社)は持ってこなかっ た。

まず、僕のリードでコンテで登り始める。ホールド、スタンスに事欠かず、僕の 靴でも全然問題ない。最初のピッチの終了点で、先行グループに追い付く。2人 の初級者(うち一人がリード)と一人のベテランという風情。同時に登ってもいい かなぁ、と持ちかけるが、いや待っていて欲しい、と断られた。というわけで、 待つ間に、ジョンとリードを交替することにする。

ジョンは、巨大な靴ながら、確かな足取りで登っていく。易し目の Diff かな、 このルートは。次のピッチの終了点でまた待つこと少し、そこで前のグループを 抜いていいことになる。そして、ほどなく終了点に達する。

この上の壁にさらにルートは続く(やめたければ、ここで登りをやめられる)。僕 らは、Severe の 2ピッチのルート Lazarus (42m; Severe)を選ぶ。二人ともクライミン グシューズに履き替えて、僕がリード。取付きまでがちょっと濡れてて嫌らしかっ たので、一応、そこも確保して登る(つまり、計 3ピッチで登ったことになる)。 取付きの後、少し難しく感じてしまう……今までが易しすぎたせいか? とは言え、 所詮 Severe、不安無く第一ピッチを終える。ジョンがフォローしている間に、 トラブル発生。実はジョンはナッツ・キーを忘れてきたことが発覚、僕がセット した 8番ナッツが、どうにも取れない模様。後ろから登ってきたグループにナッ ツ・キーを借りて、何とか回収に成功した。

次の第二ピッチ(=最終)はジョンのリードに。トラバースの後、斜上する。ジョ ン、中間支点が取れないよー、と悲鳴をあげつつ、問題なく終了。僕も気持ち良 く登っていく。高度感のある、いいルートだ。

この後、さらに別の壁で、長い一ピッチの VDiff ルート The Arete (24m; VDiff)を 僕がリードする(歩登攀用の靴で)。ここでようやく僕らだけになれた。ここは 今一つルートがはっきりしないのだが(ガイドブック通りだと難しすぎに思え、 一方、目の前のルートは簡単すぎに感じた……)、とにかく上まで登りきる。こ のピッチ、初めて、TriCam (Camp社) で支点を作ってみたのだが……、ジョンが 登る頃には、外れていたそうな。あらら。まだまだ修練が必要、ということだ (ぬんちゃくの長さが十分でなかったようだ、と後で気づく)。一方、浅目の突起 にかけたスリングに、ヘックス11番(Camp社) で重みをつけたのは、問題 なかったそうな。実は(TriCam より)こちらの方が不安だったのだが……。まぁ、 うまくいってくれて嬉しかった。

ここから、右に抜けてさらに垂壁を目指すこともできたが、僕らは、左に抜けて、 スクランブリングで頂上まで登ることにする。Diff ということだったが、そこ まで難しくは感じなかった。1時間で Glyder Fawr の頂上(999m)に達す る。15:30。ここまで雨が降らず、見晴しも悪くない。幸いだった。

ここから Llyn y Cwn 横のコル(711m)まで下り、さらに Y Garn 山を目指す。ここの下りは、ざれ 場に近く、ルートもはっきりせず、一般ルートとしてはちょっといやらしかった。 コルからは特に問題なく、Y Garn 山の山頂(947m)着 16:35。少し風冷えし、 雲も増えてきたが、悪くない。

小休憩後、山頂の反対側から Pinnacle Crag 近くを経由する径で降りていく。 一般ルートとしてはなかなかの急勾配。一気に高度を失っていく。 駐車場着 17:45。楽しい一日だった。

08/28

昨日が岩登りなら、今日はスクランブルの予定。ただ、今日、雲行きは必ずしも よろしくない。元々は、トレバン(Tryfan; 英語ではトリファンと呼ぶことが多い)山 の東壁の Central Buttress (スクランブリング Grade 1)から始める予定だった。 その後、南稜、Bwlch Tryfan を経由して、目的のブリスリー(Bristly)稜(スクラン ブリング Grade 1)へと向かう、と。しかし、天候の不安定さを考えて、ヘザー・ テラス(Heather Terrace) から、トレバン山頂を経由せず、直接、Bwlch Tryfan に行くことにする。09:05に天場を出発してから、約1時間半後に、Bwlch Tryfan 到着。

この時点でやたら風が強く、石壁の東側で座り込んで休憩。思い起こせば、去年末の山行 3日目にも、強い風 の中、全く同じ場所で座り込んで休憩を取ったものだった。今回、風が強い、と 言っても、普通に歩くのには問題ない。(ブリスリー稜に)僕は行けると思うけど 不安だったら一般道にしよう、とジョンに持ちかける。しばし逡巡したジョン、 では行きましょうか、ということに。一応、ここでハーネスを装着、ザイルもザッ クの中にしのばせてある。Grade 1 だから問題があるとは思えないが、いざとな れば、ザイルを出せばすむ。

最初の壁を登った後、シニスター谷(Sinister Gully)を登る。「sinister」とは、 邪悪とかそういう意味。名の通り、ちょっといやらしい。何と言っても、二、三、 ちょうど手頃なところにある岩がぐらぐら動くのがぎょっとする。これで Grade 1 かぁ、とジョンのコメント。しばらく言って、3m の谷部に降りて登り返すの が、またちょっとした歩登攀。絶対、Grade 1 なんかではない、とジョン のコメント。

さらに歩を進め……、核心は、4〜5m の谷部。降りて登り返す。こりゃ、クライ ミングだよ、とジョンのコメント。ロープを出すほどではないとはいえ。まぁ、 そこまで難しいかどうかはともかく、Grade 1 としては、非常に難しく厳しいの は間違いない。スクランブリング Grade 1 は、山歩きの人にとっての(技術的に) 最高難度なのだが、それを信じてここに来てしまった山歩きの人は、かなり肝を 冷やすことだろう……。僕としては、ここは、Grade 2 または 3 と感じた。楽 しい「岩場歩き」ではあった。ただ、時々「弛い」岩があるので、注意を怠れな いルートでもある。

最後、ガイド本にある通り、突如として岩場が終わりを告げ、ここで一般道 と合流する(ケルンあり)。この頃には、雲の中に入っていて、視界 50m以下。そ して、ここの広い稜線は、悪天候時に迷いやすいことで悪名高い。英国の登山道 の「一般道」には、道標なんてないし。コンパスで方向を定めて、Glyder Fach (994m) の山頂に向かい、じきに無事たどり着く。有名な「ぶら下がり岩」の写 真を撮るジョン。

さて帰ろうか、という時、地図を見直して、ここは実は山頂の手前のピークでは ないか、と二人で合意する。晴れていれば間違えようがないだろうが、この時の 視界 20〜30m では、一見して判別できるはずもなし。コンパスをセットして西に歩 くこと 5分、真の山頂に着く。しかし、岩が濡れていて滑ること滑ること。 去年末の山行 3日目でトレバ ン山の北稜に行った時とまさにそっくりだった。ここの岩は濡れると滑りやすく なる性質なのだろう。

さて、山頂からは、(先に入口横を通ってきた)一般道経由で下る。再びコンパス を頼りに、ほぼ直進。ほどなく無事、辿り着く。30m 未満の視界の中としては 上出来というものだ。この先の一般道、去年下から眺めた時、急勾配だと感じた が……、実際に行ってみると、やはりざれ場的な急勾配の道。慎重に下ってい く。13:15、Bylch Tryfan に着いて一息いれた後、Miner's track (一般道) の方に入り、そのうち左折して、ゆるやかな道を下っていく。雲の切れ間に時折 見えるトレバン山の東壁が見事。天場着 14:35。

08/29

朝からひたすら雨。一向に止む気配無し。二人、どうしようかねぇ、とぐずぐず するも、9時過ぎ、最終決定を下す。雨で見晴しも悪い中、外に出かけても…… というわけで、撤収、帰路につく。車でひた走ってレスターまで帰ると、陽さえ 射していて、テントをすぐ乾かすことができたものだった。

北ウェールズらしい天気で締め括った三連休だった。


情報編

ウェールズの山々と標高

今回登った Glyder Fawr、Glyder Fach はそれぞれウェールズで第 5位、6位に 高い山になる。今まで、第 4位までと第 7位(Pen yr Ole Wen)は登ったので、こ れで、ウェールズ(イングランドを含めても同じ)で 7位までの山は全部登った ことになる。ちなみに、今回登った Y Garn はウェールズ(だけで) 10番目に高 い山。高ければいいというものでもないが。

ウェールズの標高 2000フィート(約610m)以上の山の一覧は、
http://www.soton.ac.uk/~rem/wales-2s.html
にある。中でもスノウドニア(Snowdonia)地域の山(海抜順)は、
http://www.harbach.4ever.org.uk/snowdonia/log.htm
にまとめられている。ウェールズのスノウドニア以外の地域で、900m を超える 山は、Aran Fawddwy (905m) だけのようなので、実は後者の 15位までは、その まま、ウェールズの標高順の山一覧にもなっている。

一方、イングランドとウェールズとの 2000フィート以上の山の一覧は、
http://bubl.ac.uk/org/tacit/marilyns/chapter5b.htm
にある。今まで改めて意識したことはなかったのだが、僕は実は結構登っていた。

なお、英国の高い山はスコットランドに集中しているので、英国全部で見るなら ば、(ウェールズ最高峰の)Snowdon山(Yr Wyddfa)は59位に相当するようだ。もし くは、独立峰の定義次第(他に類無く厳しい?)では、43位に。
http://www.walkingontheweb.co.uk/Munro's.htm
http://bubl.ac.uk/org/tacit/marilyns/chapter4.htm

天場(キャンプ場)

Capel Curig から Betws-y-Coed 地域一般

Ogwen、Glyders といった地域で、最も近い村は、Capel Curig、最も近い栄えた 町は Betws-y-Coed になる。この付近で天場を探すならば、以下が最善だろう。
http://www.croeso-betws.org.uk/acc/camping.htm

中でも最も(山という意味で)核心部に近いのは、 Gwern Gof Uchaf キャンプ場 になる。今回、£3/1泊/1人(約600円)だった。以下のサイトが参考になる。

この Gwern Gof Uchaf から歩 いていける距離にある Gwern Gof Isaf も便利かも。以下のサイトが参考になる。

この二つより少し離れたところでは、たとえば以下が目に止まった。

Snowdonia 地域一般

もし車があるならば、山から少々離れていても差し支えなかろう。


タイム・テーブル

2005/08/26--29 Glyders 山行タイム・テーブル
時刻 行動 高度(m) 温度
(℃)
歩数
(複歩)
計器 地図
表注:
高度の表記で (s) は高度計をその高度にセット。 なお、高度計は、腕時計(Silva/Alta)を使用。温度の in/out は、それぞれ 室内(テント内)気温と外気温(省略時も)。歩数は、その前の項目からの歩数(複歩)。
2005/08/26
(Leicester → Gwern Gof Uchaf (天場))
18:10 自宅発
24:50 就寝 312(s) 13(out)
2005/08/27
(天場 → Ogwen駐車場 → Idwal Slab → Glyder Fawr → Y Garn → Llyn Idwal → 駐車場 → 天場)
06:55 起床 303 11(out)
09:10 Ogwen駐車場発 14
09:25 Lynn Idwal FB 375(s) 13 600
Idwal Slab 取付
13:40 二つ目のルート終了
14:30 クライミング終了
15:30 Glyder Fawr山頂
(15分休)
982 999(s) 11
16:08 Llyn y Cwn ほとりの交叉路 699 711 1150
16:35 Y Garn山頂
(10分休)
928 947 1293
17:35 Llyn Idwal FB 375 2222
17:45 Ogwen駐車場 287
天場
21:45 就寝
2005/08/28
(天場 → Heather Terrace → Bristly Ridge → Glyder Fach → Bwlch Tryfan → The Miner's Track → 天場)
06:50 起床 14(out)
09:05 天場発 312(s) 16
09:35 北稜近くのT字路
(10分休)
530 15 782
Baslow Gully 425
Nan Nan Gully 55
Green Gully 50
10:10 Central Gully 50
10:40 Bwlch Tryfan着(休憩) 732
11:00 発(Bristly Ridgeへ)
11:55 Bristly Ridge終了
(10分休)
948 11
12:15 Y Gwyliwr
(10分休)
984 200
12:30 Glyder Fach山頂
(5分休)
996 994 150
Bristly Ridge終了点 180
13:15 Bwlch Tryfan(10分休) 729 750
14:35 天場 308 17
21:10 就寝 313 17
2005/08/29
(天場 → Leicester)
06:50 起床
09:00 天場にて 307 15(out)
Leicesterまで車で

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まさ