[Japanese / English]
総括
- 山域
- Peak District/Hen Cloud
- 参加者
- アダム、まさ
- 期間
- 2005/10/15 (日帰り)
Hen Cloud- Far Right/Great Chimney (18m S 4a); Leader まさ
- Far Right/Rainbow Crack (18m VS 5a); Leader まさ
- Central Climb Area/Central Climb Direct (38m VS: 14m 5a, 14m 4c, 10m 4a); Leader まさ
- 天候
- 曇後晴 (30 degC @ 11 o'clock)
登山編
ピーク地方へ、アダムと。今回は、4月 以来の Hen Cloud (ヘン・クラウド)だ。前回来たときの印象が素晴らしく、 再訪に躊躇なかったものだった。
今日は、アダムはリードの気分ではない模様。というわけで、僕からリード、 三ツ星(最高のお奨め)の Severe の Great Chimney でウォーミングアップとする。 谷部をまっすぐに登る、スラブのルートだ。ただ、両側にクラックが走っているので、 中間支点には困らないだろう。右側を登ると HS になるが、素直に左側の Severe の方を登ることにする。
さてこれが、ウォーミングアップどころか、相当にハードなルートだと分かった。 着くすぐ前くらいまで雨が降っていて、岩も少し緑(苔むしている)なので、スラ ブでのフリクションが全然信用できない。かと言って、ホールドらしいホールド、 スタンスらしいスタンスもなかなかに見当たらない……。
数メートル登ったところで、ぴたりと進度が止まってしまった。フリクションが どうにも信用できず、登りかけては降りる、の繰り返し。やがて、左の側壁の ちょっと高めの場所に小さなスタンスを見つける。少し登ってから左足を思いっ 切り上げて、そのスタンスを使ってみる。アダムには、「馬鹿なムーブに見える ね。」と声をかけられる始末……確かに Severe のルートのムーブではない。 しかし、そのムーブだと、少なくともスタンスは確か、唯一信用できる、と言っ ていい。そこから上体を引き起こして、次のホールドにようやく手を届かせて、 体をせりあげることに成功した。5b ムーブくらいか。核心だった。
その後、少し難しさは減じるも、Severe にしては、相当に severe。上部で中央 のホールド一つを頼りに右にトラバースして、上まで抜けて、flash。1時間近く かかったのだった……。フォローのアダム、核心では落ちて、なるほど難しい ルートだと体で納得していた。Severe? とんでもない。今日の コンディションならば、少なくとも VS 5a をあげたいところだ。
さて、続けて、隣の Rainbow Crack (VS 5a) を僕のリードで登ることに。 これもまた三ツ星のルート。クラックの ルートだ。しょっぱなからなかなかの難しさ。僕の身長+リーチで大事なホール ドに下から何とか届くのがありがたかった。最初の 3メートルは、支点をセット するのが結構な労働で、フレンズでさくっと逃げた。フェース部にホールドらし いホールドがないので、ジャミングが大切……フィスト・ジャムのルートだ。 苦労しながら中間の大きなレッジまで登って、一息つく。
ただし、このレッジで中間支点を取ると、(シングルロープでは)その後のドラッグ が結構大変そう。というわけで、その上のレッジまで登って、そこで支点を3個取る。 その上が、核心に見える。右側のコーナーのクラックを使ってレイバックで登る のが最も自然そう……レイバックは疲れるし、休めないし、バランスを保つのに 体力も精神力も使うし、中間支点を取るのが至難の技だから僕の好みではない。 しかし、他に登る方法も思いつかない。幸い、2メートル登れば、左の岩角を掴 んで、レイバックから解放されそう。支点は十分取っているので、それを安心材 料として、突っ込む……きれいにクリアできた。「見事! えらく簡単そうに見え たよ。」とアダムからはお褒めの言葉を頂戴した。
その上でもう一段レイバック風の箇所が待っていたが、こちらは、フットジャム で乗り越えた。その方が気が楽だ。こうして、無事、最後まで登りきった。さて、 上まで抜けてみると、確保のための支点が作りづらいことが分かった! 大サイズ のヘックスが欲しいところなのに、キャンプのヘックス11番、10番も、ご丁寧に フレンズ(DMM)4番もすべて使いきってしまっている……。4m ほど離れた岩を 主要支点として、フレンズ 1.5番で横への振れを止めて、支点を作ったのだった。
さて、セカンドのアダムは、大いに苦労して、ロープに体重を預けること多かった。 特に最初のジャミングのクラックは苦労したようで(彼はジャミングが得手では ない)、隣から登るという「反則技」を使っちゃったよ、と告白していた。 実際 VS 5a としては、なかなかにハード、下部の 5a ムーブの連続が結構 きつい……僕ならば HVS 5a をあげたいところだ。
ここで昼食休憩を取って、いよいよ今日のメインコース、ヘン・クラウドならで はの三ピッチの岩に向かう。4月に登った ルートのバリエーション(Central Climb Direct)を登ることにする。 第二ピッチは同じだが、第一ピッチと第三ピッチが若干難しくなる。 このルートはダブルロープで。
第一ピッチ、4メートルほど上部にある、四分の一半身入る程度の洞穴部まで とりあえず登り、4番のフレンズを極めてから、レッグジャムなどで休む……の はいいが、その洞穴部から上に抜けるのが簡単でない。微妙にオーバーハングだ から、洞穴部で休む心地よい体勢からそのまま登るわけにはいかず、一旦、ホー ルド(スタンス)の少ないフェース部に何とか立ちこんで、登る必要がある。その 上にはフィスト・ジャムのクラックが走る……しかし、それしかない! つまり、 まともなホールドもスタンスもない。登りかけては洞穴に再び入り込んで休憩の 繰り返しとなった。
通りがかりのクライマーが、「ああ、これはジャミングで決まりのルートだよ」 と言いつつ、立ち去っていく。結局、覚悟を決めて、左手にテープを巻いて、 フィスト・ジャム、さらに立ち上がって、その上に右手でフィスト・ジャム、 そこに体重を預けて……もう一段、左手でジャミングしただろうか、何とか 洞穴上の核心部を脱して、上に抜けることができた。確かにジャミング以外 どうしようもない、結構シビアなピッチだった。
レッジでの確保支点は、ヘックスで強力なものが取れた。そこで、マジック プレートでの直接確保とすることにする。これは大成功だった。というのも、 このピッチはアダムには厳しすぎたようで(洞穴に入る前で苦労していた。確か 僕は柔軟性を使って登ったところだったような)、ひたすらロープにぶら下がる ことになった。最後、一本のザイルをごぼう掴みしている間にもう一本のザイル を引くことで、実質上、引き上げたりもした。マジックプレート以外なら、確保 する僕の方も疲れきっているところだった。
第二ピッチ。4月に登った時、多少 難しかったところ。どうやって登ったか覚えていない。今日はグリット岩の フリクション頼りで、あまりきれいとは言い難い方法で無理矢理登った。上では 再び直接確保。アダムはザイルに体重を預けること多く、ピッチを終わった頃に は、もう疲労困憊だぁ、と感想。
この時点で暗くなりかけている。最後のピッチ 4a は、アダムがリードするかも、 と言っていたが、この状態ではそれは選択肢に入らない。僕のリードで、速攻で 登ることにする……はずが、必ずしも速攻とはいかなかった。これが 4a? いえいえ、 4b は堅いよ……。予定よりは時間がかかるも、上まで抜けてアダムを直接確保。 疲労の極に達しているアダム、第一ピッチで使ったごぼう掴みの援助登攀も使っ て、ようやく上まで抜けた。その頃には、すっかり暗くなっていた、というもの だ。予想外で、ライトも持っていない。第三ピッチの中間支点は主にフレンズで、 確保支点はヘックスで取ったのは正解だった。この暗さで、クラックの底めがけ てナッツ・キーを使うのは大変なところだった。
僕は、実際に 4番のフレンズを使ったのは今日が初めてだった。しかし、結局、 すべてのルートで 4番のフレンズを使うことになった。これほど役に立つとは! 今日は、ヘックスも大活躍する一方、ナッツの出番は少なく、3番ナッツ(Wild Country)が最も小さいもの、当然、マイクロナッツは単なる重しに過ぎなかった。 同じピーク地方西部のグリット岩地帯でも、Castle Naze ではマイクロナッツが大 活躍したのに比べるとえらい違いだ。
今日の岩登りは、アダムには少々酷だったようだ……。数レベル高かったよ、と 言っていた。かっては VS 5b までリー ドしていたアダムだが、最近はどうも調子良くないようで。セカンドなら、 2、3回落ちるくらいで丁度楽しいところだろうが、今日は結局、全ルート、 ピッチで落ちていたから……。ちょっと申し訳なかった。
とはいえ、今日は、午後からは暑くもなく寒くもなく、蚋もいない、すばらしい 天気だった。そんな中、岩登りを日がな一日愉しめたのは申し分ない。疲れた けど、いい日だったね、とアダムと二人話しながら岩場を後にしたのだった。
情報編
Hen Cloud は、直下の路肩に 15台分くらいの駐車スペースがある。 そこから徒歩10分。少々の登りだが、大した事はない。隣の Roaches から 歩いてアクセスすることもできる。
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まさ