2007/03/10--11 ローチズ登山記録/感想文 (by まさ)

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総括

山域
Peak District/Roaches
参加者
アダム・H、スティーブ・E、ジェマー、ジョン・M、ジョン・S、ニール、ベン・W、アレックス・C、アマンダ、ライナス、キーナ、ドム、ルーシー、エリック、エミリー、アニー他 (ULMC)
期間
2007/03/10--2007/03/11 (1泊2日)
Roaches
宿泊
Don Whillans Memorial hut
天候
  • 2007/03/10 晴
  • 2007/03/11 晴 (8℃ @ 9:45, 10℃ @ 19:15)

登山編

1年少し前に引続き、 西部ピーク地方は Roaches の Don Whillans memorial hut 小屋を拠点に山行。

03/10

他の連中は前日から泊まっているところ、僕は、当日朝に発、10時に着く。 ちょうど、ジョン・M (とドムと)が、彼の悲願の Valkyrie を登り終えてきたところだった。朝一番に登りに行ったという。

ジョン・M は、今まで 2回 Valkyrie のリードを試みたが、いずれも第二ピッチの 途中で断念したという。だから、今回こそは、何としても登り切る、と心に かたく誓っていたそうだ。今回は無事登り切ったとのこと。おめでとう!!

僕も、先の 12月に Valkyrie を 登ったばかり。最高のクライミングだった。だからこそ、難易度(VS)だけ からは窺い知れない難しさ/厳しさがあるルートだ、とよく承知している。 ちなみに、フォローのドムは、随分怖い思いをした、と言っていた。 何グレードも上を登るドムだが(実際、この週末に彼は E3/E4 をオンサイトで 登った!)、その気持ちは分かる気がする。そういうルートだと思う。 加えて、ある意味で、セカンドの方が怖いルートかも知れない(核心が トラバースだから)。

僕は、そこで、ドムや他の連中と有名な Chalkstorm に出向く(小屋からすぐそば)。 周りの他の人々(ジョン・M とか)は、登った事がある人も少なくないようだ。 ドムは前回リードした時に、落ちて、あわや地面まで墜落するところだったとか。

今回は、ジョン・S がリード。 スラブのルートだから摩擦の効きが問題だが、今日の コンディションは悪くない。ジョン・S、特に問題無く登り切る。 僕は喜んでフォローさせてもらう……核心よりは前のレッジから登る ところがやけに難しい。摩擦がどうも信用できないし……(摩擦を信じろ、 と周り中から励まされる中……)。「こうするんだ」という周りからの 助言が入るも……ずるずると落ちることになる。体の小さい僕には そんなムーブは完全に不可能とは言わないまでも恐ろしく難しい、というわけ。 結局、最後には、全然違うムーブを編み出して摩擦を頼りに……そこを 越えた。その上の核心(ドムが落ちたところ)は、実は僕には特に難しくも なかったのだった。そういうものですか。

続いてドムがリード、そしてその後、ドムが(彼の友人の)ジョージに 「こうするんだ」と登り初めを見せようとして……、何を思ったか、 ドムは、そのまま上までフリーソロで登ってしまった! ようやるわ、まったく。 ちなみに、ドムは核心で、以前落ちた時と同じミス、つまり左手で取るべき ホールドを右手(逆だったかも?)で取ってしまって、びびったそうだが、 今回は無事に何とかなって、胸をなでおろしたと言う。

続いてジョージがリード。このルートは、使える中間支点が低いので、確保のドムは、 地表のボルダーにスリングをかけて、(万一リーダーが落ちた時に)いつでも 下の斜面に飛び降りれ(てリーダーの地面墜落を望むらくは防げ)るようにしている。 正しいセッティングだ! ジョージも無事リード。誰かフォローしない? と 声がかかるので、僕が再度フォローさせてもらう。さすがに今度は すらすらと登れた。

そして今度はキーナ! 大丈夫か? 結局、途中まで登った後、徐々に左の クラック(隣のずっと簡単なルート)の方に抜けてしまった。クラック にたどり着いた後、拳で岩をたたいて悔しがっていた。気持ちは分からん でもないが、落ちるよりいいではありませんか、キーナちゃん!

実は、数時間後、キーナは同ルートに再挑戦して、今度は落ちて しまったようだ。確保の(彼氏の)ライナスはとっさに走って、ロープの 緩みを取って、キーナの地面墜落を止めた、という。いやはや、 そう無理なさいませんよう……。

その後は、隣の Commander Energy (12m E2 5c) をリードするドムをフォローする。 これは、ジョン・S にとっては、 (1年少し前に来た時)初めて オンサイトでリードした E2 だ(非常に気に入ったという — 実際、 一般的にも非常に評価の高いルートだ)。上部で舟の舳先のように突き出す部分に 登っていく、強烈なライン。ドムは舳先の前で少し手間取っていたが (ジョン・S とリーチの差がでかいよう)、その後は特に問題無く登り切った。 次いで、僕の番。僕は、舳先の前(のスラブ)でさらに大いに手間取ることに なった。僕はドムよりさらにリーチがないから……。結局、極小の小石を ピンチしてバランスを取って、何とか舳先前のクラックに達する。 さて、ここからどう登るものか……、登れるのだろうか? しかし、舳先を見ると、実は裏側に結構、いろいろなホールドがある(し、 中間支点まで取れる)! つまり、思ったよりはずっと簡単。 なかなかの高度感のもとでの楽しいクライミングでフィニッシュしたのだった。 僕が(試みていたら)リードできたか? うーん、あのスラブでちょっと へこたれたんとちゃうかな、という気がする。その部分は横に逃げられるし。

さて、小屋に帰ってお茶休憩の後、ジョン・M と Upper Tier に。 ジョン・M が Technical Slab をリードするのを確保。 最初のスラブの部分、(下からは一見、そうは見えないのだが)あまり 中間支点が取れないようで、ちょっとランアウト気味。と言っても、4a。 ジョン・M には余裕。上部でルートを外れて、ヴァリエーションの VS 4b の Neb Finish の方に向かうジョン。確保の場所からは完全に隠れてしまった。

ジョンが僕の視界から消えてかなり時間が経っている。もう上に着いた頃かな、 と思い出した頃……、突然、人体が上から降ってきた!! ザイルに逆さ吊りに なっているのはジョン! 大丈夫か?! 荒い息をついているも、ジョンは大丈夫そう。 明らかな怪我もない模様。ほっ。僕もびびったが、ジョンははるかに びびったことだろう。

ジョンが言うには、最上部近くまで達するも、そこでスタミナ切れ、これはだめだ、 とクライムダウンを始めた矢先に落ちたらしい。Neb Finish に入ると 全く中間支点が取れず、つまり最後の中間支点ははるか下 だったため、大墜落となったものだ。大怪我をしなかったのは全くの幸いだった。

(ロワー・ダウンで)下ろそうか、と問いかけるも、大丈夫、ということ。 さすがに Neb Finish は断念するが、そのまま Technical Slab は最後まで登り切った。

僕がフォロー。 ジョンの墜落を止めたのは、10番(WC Rock)のナッツ。 クラックの中で 10cm くらい滑った跡がある。よくぞクラックから飛び出さずに そこで止まってくれたものだ。ただし、それだけのフォールを止めただけに、 ナッツキーやヘックスでこづくもびくともしない。こりゃだめだ、断念。

加えて、その横で、ダブルロープの片方が、(落ちた時の衝撃で)クラックに 思いっきりはさまっている(つまり、ジョンが 2回目に登った時も、この ロープは全く無意味だった — ダブルロープで登っていて幸いだった、 というものだ!)。これもしっかり極まってしまっていて、 全く取れない。結局、それも一旦諦めて、僕は上まで登り切る。

それらの回収のためには、懸垂下降が必要だが、ジョン・M は落ちた時の ショックだろう、いやむしろ安心して余計に現実感がましたのか、少し 震えていて崖のそばに近寄るのも嫌、という感じ。僕が自己確保を取るや いなや、すぐ安全地帯に避難した。分かる気はする。

というわけで、回収は僕の役割。懸垂で下って再挑戦。どちらも全く びくともしない。やむなく、ロープの方は、引っかかった場所の両端で ナイフで切断した(いつもながらの嫌な感触!)。
実はこのロープのおかげで、墜落距離を割と正確に見積もることが できた。— 14m! もちろん、ジョン・M にとって (いや、部のここ数年の歴史でも)墜落距離の最高記録。 実は僕は確保していて、墜落の衝撃は思ったより少なかったのだが、それは おそらく、ロープが引っかかったことも大きいのだろう。逆に言えば、 ジョン・M の墜落は、墜落係数 2 に近かったものかも知れない…… (ぶるぶる〜)

結局、ジョンは、打ち身で済んだようだ。さすがに翌日は痛んだが、 病院に行くこともなく、遠からず完治したそうだ。逆さ吊りになったのも、 落ちた時の最初の衝撃の後だから、頭も打っていない。 オーバーハングでもないルートで 14m も落下してその程度の怪我で済んだのは 非常に好運だったと言えよう。命拾いしたね、ジョン!

僕自身はこの後、スティーブが登る HVS の Diamond Wednesday をフォローさせてもらうことに。でも、スティーブは核心で断念。 核心前も(使うべきでない)木を使っていたし、スティーブには ちょっと難しかったか? 僕がリードを交替して、登る。 割と簡単に感じた。夕闇迫る中、フォローの スティーブ・E とジェマーとを確保して、今日のお開きとした。

03/11

今日は、グレアム・B が日帰りで来て、一緒に登ることに。 グレアムは、 先の 12月に僕が Valkyrie を登った時、 上まで登り損ねたこともあって、今日こそは、と意気込んでいる。 昨日のジョン・M と言い、それが Valkyrie の魅力 ということだろう!

ウォーミング・アップの後、もちろん、今日は グレアムが Valkyrie をリード。 第一ピッチ。前回、自身が見つけたアンダーカットをグレアムはしっかり 覚えていて、多少の苦労の後に、クリア。僕は今回、初めてアンダーカットを 発見。おぉ、これは有用だ!
前回は、(第一ピッチ終了の)確保場所を間違えて、おかげで ロープ・ドラッグが相当だったので、今回はガイド本通りに。

そして問題の第二ピッチ。フレークを斜めに下ってからトラバース……の ところだが、フレークを斜めに下るところですでにかなり怖々の様子(高度感 あるところで、足場も完璧にはほど遠いからよく理解できる)。
なんで俺、これをリードしようなんて思ったんだろう!?
などとつぶやく声が聞こえる — 哲学的な問いですね (笑)。

結局、グレアムは 3回ほどフレークを登り降りした後、断念して確保レッジ まで戻ってきた。つまり、僕がリード、ということ。

前回のロープ・ドラッグを教訓に、今日は、まず(ダブルロープの) 1本を (確保レッジ)直上のクラックのかなり高いところの中間支点に通す。 ナッツとチョックストーンに通したスリングと。 — 実はそのためのムーブ自体 4c だった気がするが……。

もう 1本は三角フレークの最上部に長いスリングをかけて通して、 フレークを斜めに登り降りる。前回リードしたルートとは言え、 やはり怖い。1、2度、登り直してレストを入れた後、最後、ようやく ゴー! トラバース終了。いいルートだ!

そして前回のごとく、やはり その後もちょっと問題。今日の方が、摩擦はいいと思うが、それでも 丸っこいスタンスに全体重を預けて大丈夫な気はせず、前回と同じように テクニカルなムーブでその第二の核心を越える。一応、ムーブの記憶が なんとなくあるから、そしてそれ以上にどこが一番簡単なラインか 悩まなくていいから、やはりオンサイトとは格段の差。しかし、ルートの 質の高さは再確認できたと思う。

フォローのグレアム、フォローだとさすがに大きな問題無く登ってくる。 やっぱり怖いルートだよ、ということは、フォローしてみて実感した 様子。でも、今日こそ二度目の正直で登れてよかったね!

ちなみに、僕らが登り切った後、それを見ていた別のクライマーが ロープワークに感心していた、という話をジョン・S から聞いた。 それは光栄です! まぁ、1回目で大いに懲りて、何をか学んだ、ということすね……。

さて、グレアムはここで帰宅時間となってしまった。後に残された僕は、 グレアムが回収し損ねたナッツ(最初のクラック)を回収したい。 懸垂は芸が無いから、誰か下からそのクラックを直登するルートを 僕と登ってくれないかなぁ、と探すも見当たらない — 多くの人に とって難し過ぎるのと、問題なく登れるであろうドムやジョン・S らは 自分らのプロジェクトで忙しい様子。 やむなく、僕は懸垂下降で回収して、そのため、他のルートを登る時間は 無くなってしまった。

ちなみに、僕らが登り終えた後、少なくとも他に 2パーティー、 Valkyrie を登っていた。最初のパーティーのリーダーは、グレアムがつまづいた ところで大いに時間を使った後、何とかトラバースを終了。 でも今度はそこからどう登ればいいか分からない様子。それこそ、 まさに、僕のオンサイト時の状態! 下で見ていた 僕とジョン・M とに尋ねてきたので、大声で教えてあげた。 しばらくの後、おぉ、登れる、ありがとう! と元気な返事が返ってきた。 それを自分で探すのも楽しみかもしれませんが……、訊かれたら返事します。 なにはともあれ、みんな Valkyrie が好きということですね!


タイム・テーブル

2007/03/10-11 Roaches 山行タイム・テーブル (Masa)
時刻 行動 高度(m) 温度(℃) 歩数(複歩)
(計器) (地図)

表注:

2007/03/10
(Leicester → Roaches)
08:29 Leicester Beaumont Leys発
10:05 Roaches
24:20 就寝
2007/03/11
(Roaches → Leicester)
07:30 起床
09:45 8
19:15 10
19:30 Roaches発
Leek (夕食休憩)
22:18 Leicester

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まさ