2007/11/17 フロガット・エッジ登山記録/感想文 (by まさ)

[Japanese / English]



総括

山域
Peak District/Froggatt Edge
参加者
ルーク、まさ
期間
2007/11/17 (日帰り) Froggatt Edge (以下、リンクは特記しない限り rockfax.com へのもの)
  1. Sunset Slab (Area)/North Climb (12m HVD 4a); Leader ルーク, 2nd まさ; 様式 OF
  2. Sunset Slab (Area)/Sunset Crack (12m VS(HS) 4b); Leader まさ, 2nd ルーク; 様式 GF (6年前にセカンド)
  3. Cave area/Swimmer's Chimney (12m HVD(S) 4a); Leader ルーク, 2nd まさ; 様式 OF
  4. Cave area/Hawk's Nest Crack (12m VS 4c); Leader ルーク, 2nd まさ; 様式 Os (墜落 1)
  5. Sickle Buttress/Sickle Buttress Direct (12m VS 4c); Leader まさ, 2nd ルーク; 様式 OF
様式: O(s) = オンサイト, F = フラッシュ, (A) = (助言少々), G = グラウンド・アップ, HP = ヘッド・ポイント
天候
晴 (9 ℃ @14時, 7 ℃ @17:15)

登山編

実に久々に フロガット・エッジ(Froggatt Edge)へ。 前に来たのは、 定番と言いつつ、いや定番だからか、僕が最後に来たのは、 2年近く前になる。 随分と御無沙汰したものだ。最近は、毎週クライミングに行っている というルークだが、実はフロガットにはまだ来たことがないという。 ならば、一度は来なくては!

というわけで、北の端からアプローチすることに。 僕が落ちて大怪我した Scarper's Triangle を過ぎ、 有名な Sunset Slab (Area) へ。ここで 僕が 4年前に来た時登った、HVD の North Climb をルークに薦める。楽しかった思い出があるルートだ。 では、とルークがリード。予想通り、楽しんでくれたようだ。

今日は天気で気温も低く、岩も乾いている。 そこで、今日こそ、有名な Sunset Slab を登ろうかという気になっていたものだが……、実はルークのリード中に 若干ながら小雨が降った。僕がフォローする頃にはやんではいたが、 これではだめ、とリードする気を失い、隣の VS の Sunset Crack を登ることにする。 6年前に初めてフロガットに来た時に フォローで登ったのを覚えている。ちょうど僕にいいレベルのルートだった。 確か初心者のリックは核心で何度か落ちていたはず。そういうレベルのルート。 さて、当時に比べると格段に成長したはずの僕だが、今ならどんな感じだろう?

実に楽しく登れた。安心感を持って登れるルートだった。それが成長の証という ことだろう。でも、VS としては、ちょっと易しい方かな (後で確認すると、最新の RockFax のガイド本では HS になっていた)。 ルークも問題無くフォローしてきた。

続いて、ルークに Swimmer's Chimney を勧める。バック・アンド・フットで登るチムニーのルート。 屋内壁では経験できない外の岩場だからこそ、のルートだ。 特にスタートで苦労していたが(核心)、あとは「確かに違うねぇ!」と 必死のバック・アンド・フットを楽しんだようだった。

そしてルークは VS 4c の Hawk's Nest Crack をリードへ。ルーク初の VS のリード! ガイド本には、初の VSリードに いいでしょう、とある。1/3 くらい登ったところでちょっと難しそうで、 一度落ちてしまった。中間支点は問題ないから笑い話の程度。 ザイルにぶらさがって休みを入れた後は、上まで登り切った。 僕がフォローして、確かに問題無く登ったが……、これはむしろ 文句無しの VS というべきで、最初の VS リードとしてはちょっときついかも、 と思ったものだった。

もう日没まで時間がおしているが、あと一本リードで登りたいところ、 というわけで、VS 4c の Sickle Buttress Direct を選ぶ。上部でちょっとルートを外したか? 4c というより、5a/5b の ムーブで切り抜けて、日没に追われながらリードを終えた。 楽しいフロガットの一日だった。


情報編

フロガット・エッジ (Froggatt Edge)

フロガット・エッジ (Froggatt Edge) は東部ピーク地方のグリット石地帯で、 スタニッジ・エッジ (Stanage Edge) に次いで、最も有名でポピュラーな 岩場のひとつ(北バーベイジ (Burbage North) と人気を分け合う?)です。 西向きで、ピーク地方には珍しい木立の中(上)にあるため、 風からは心持ち守られます。フロガット・エッジの岩場までが比較的急斜面で、 10m あまりの垂壁の岩場の上が台地になっています。その台地は丘歩きの人にも 人気の高いコースのようで、いつ行っても必ずそれなりの数の(丘歩きの)人々を 見かけます。

アプローチは、フロガット・エッジ北側の道路脇かその近くの ナショナル・トラストの駐車場に車を停めて、台地上の平坦な道を 20分ほどで 岩場に到着するルートが最も一般的でしょう。フロガット・エッジの (100m くらい?)直下にパブがあるので、その辺に車を停めて、急な山道を 歩いてアクセスすることも可能です。フロガット・エッジの南側は、 巨石が散らばっていて、そのままカーバー・エッジ(Curbur Edge)へと 続きます。

フロガット・エッジには、バランスよく、色々な難易度の色々なタイプの ルートが揃っています。つまり、クライマーの難易度によらず、好みの タイプによらず、自分に合ったルートを選ぶことができるので、 人気があるのも頷ける話です。実際、僕の友人のうち二人は、 「フロガット・エッジは世界最高の岩場だ」と主張してやみませんし、 他にもフロガット・エッジのファンはたくさんいます。

フロガット・エッジには、色々なタイプのルートが揃っているとは言え、 なかでもおそらく最も有名なのは、厳しいスラブ岩のルートです。 グリット石の厳しいスラブのルートを登りたければ、確かに フロガット・エッジこそ、一番でしょう。

以下、有名なルートを列挙してみます(「有名」という判断基準には ある程度の独断と偏見が入るのはやむを得ませんが、それでも相当程度は 多くの人の同意が得られるところと思っています)。 中でも幾つかのルートは、英国のクライマーなら、 たとえフロガット・エッジに一度も来たことが無くても、名前は聞いたことがある、 というものでしょう。

Sunset Slab (HVS 4b)
フロガットでおそらく最も有名なルート。ガイド本に曰く、 この伝統のルートが、医学の教科書に素晴らしい骨折の見本を提供してきた (Medical students should note that this classic route has been the cause of some marvellous textbook examples of fractures. – in Froggatt, Peak Climbs Volume 3, 1991, BMC (Distributed by Cordee), ISBN: 0903908867, pp.253)
核心は最上部にあります。 ほぼ真ん中に走る横クラックにフレンズを極めることは可能なので、 もしそれがちゃんと極まれば、地上墜落は何とか免れるでしょう。 しかし、ちゃんと極まるかどうかが保証無い(つまり、リーダーの 技術などによりけり)ようです。
Valkyrie (HVS 5a, 5a)
上記 Sunset Slab に並んで最も有名なルート。 フロガット・エッジの中央に鎮座するピナクル(柱)を登る 2ピッチのルート で、1949年に伝説のジョー・ブラウンによって登られたもの。 西部ピーク地方 Roaches の 同名の同じく 2ピッチのルート (VS 4b, 4c) (2006年12月の記録参照) と人気を二分する。
Great Slab (E3 5b)
同じく、伝説のジョー・ブラウンによって、1951年にオンサイト(!!)で 登られたルート。基本的に中間支点は取れないと聞く。 近くの Millstone にも 同名のルート (HS 4a) があって、それなりに有名だが、このフロガット・エッジの Great Slab には、著名度で及ばない印象がある。 同スラブのフェイスには、他にも Heartless Hare (E5 5c)、 Hairless Heart (E5 5c)、 Hairy Heart (E6 6a)、 Lonely Heart (E9 6c) など、中間支点の取れない厳しいラインの目白押し。
Brown's Eliminate (E2 5b)
名前の通り、伝説のジョー・ブラウンのもう一つの傑作スラブルート。 核心部は、何とか中間支点が取れるようだ。
Chequers Buttress (HVS 5a)
カンテを右側から攻める高度感あるルート。クラシック。
Heather Wall (S/HVD 3c)
フェイスの端を走るクラックを登るルート。 おそらく、フロガットで最も人気のあるルートだろう — (他の有名ルートと比較して)難易度的に易しく、安全なので。
Three Pebble Slab (E1/HVS 5a)
フロガットのスラブ登攀コースの中で、 上記 Sunset Slab に次ぐ 2番目の課題として有名。 何とか中間支点が取れるが、あまり信用できそうにない、という話。
Tody's Wall (HVS 5a)
核心部の(この難易度にしては)独特のムーブで有名、人気のあるルート。 核心部の中間支点は十分。
Downhill Racer (E4 6a)
もうひとつの有名なそして中間支点の取れないスラブ・ルート。
Beau Geste (E7 6c)
目立つカンテを直登するルート。80年代前半には、グリット岩登攀ルートの王様だったと聞く (possibly the gritstone route of the early 1980s — "Froggatt" (Peak Climbs 3), BMC, 1991)
Swimmer's Chimney (HVD/S 4a)
チムニーを登るクラシック。バック・アンド・フットの芸術。 ガイド本に曰く「経験豊かな(=年寄り)クライマーが、 若い岩キチ(=気取り屋)に、失われて久しい技術を披露するのに 最適のルート」 (An ideal route for the more experienced climber (old fogey) to demonstrate long-lost techniques to the young rock-jock (poser). — "Froggatt" (Peak Climbs 3), BMC, 1991)
Strapadictomy (E5 6b)

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