2007/12/16--20 Cairngorms 登山記録/感想文 (by まさ)

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総括

山域
Scotland/Highland/Cairngorms
参加者
グレアム・B、まさ
期間
2007/12/16 -- 2007/12/20 (4泊5日)
宿泊
幕営 @ Coire an t'Sneachda のふもと
天候
  • 12/16 曇
  • 12/17 快晴
  • 12/18 快晴
  • 12/19 快晴
  • 12/20 快晴

登山編

グレアムと共に、スコットランドに 5日間の冬山の旅へ。 グレアムとの冬山は、丁度一年前に 行って以来だ。 もっとも、僕自身、それ以来、雪山は 4月の復活祭の時に かろうじて行ったくらいだから、本格的な雪山はそれ以来ということになる。

場所としては、12月のこの時期は、よほど運が良くない限りごく限られてしまう。 実際、1週間前はなかなかよかったらしかったが、もうかなり雪は融けている、 と聞く。ただ、天気予報によると、今週は冷え込みそうだ。ならば来る場所は ほとんどひとつ、ケアンゴーム(Cairngorms)しかない。 アクセスのよいケアンゴームの北圏谷(Northern Coires)にしよう。

12/16

長距離ドライブ。
ケアンゴームのスキー場駐車場に着いた後、今日はその近くで 天幕を張って一夜だけ過ごすことにする。北圏谷の方に 200m かそこら 歩いた辺りの径のそばに天幕を張る。天気は快晴、小さい天幕だったこともあり、 グレアムは外でビバークすることにする。 夜中、僕が記録しただけでも -7℃まで気温は下がったが、風はなく、 グレアムにとっても快適な夜だったそうだ。

12/17

朝、1時間寝坊してしまったが、どんまい。手早く天幕を畳んで 駐車場まで戻り、4日分の大荷物を持って、北圏谷の方向に向かう。 1時間あまり歩いたところで、径の横、川を渡った平原に天幕を張る。 そしてすぐ Coire an t'Sneachda へとクライミングに出発、今日も天気は快晴、こんないい日を 無駄にするわけにはいかない。

1年前に来た時は視界が無く 全然分からなかったが、今日は、 Coire an t'Sneachda の全容がはっきり見える。素晴らしい! 中央にはっきり見える雪の谷の 3本のラインのひとつ、難易度 II の The Runnel を選ぶ。135m。今季、最初のルートとして、難易度 II は相手に不足なし!

雪の急斜面のピッチをまず僕がリード。いい感じだ。 続いてグレアムがリード。 グレアムにとって、初めての冬季登攀のリードかも? 僕らの前と後ろとにそれぞれ別のパーティーがいる。ポピュラーな感じだ。

第 3ピッチをまた僕がリード。そのまま、上まで抜けようかと思っていたが、 見通しが悪くなることもあり、チムニーの前でピッチを切る。続けて 僕がリード。コンディションはかなり「薄い(thin)」。ドライツーリングに ちょっと近いかも。でも、ピッケルのトルクなどまで使えてしまって、 それはそれで楽しい。最後は、微妙にきのこ雪のピッチを少しランアウト 気味に登り切る。グレアムもフォローを楽しんだようだ。 シーズン最初のルートとしてなかなかのものだった!

今晩も昨日に続いて快晴。今日の天幕は昨日のものよりスペースに 随分余裕があるが……、満点の星空の下でのビバークに惹かれた僕は 今晩は外でビバークする。逆にグレアムは天幕の中で寝たのだった。 あはは。

12/18

今日も昨日に引続き Coire an t'Sneachda へ。今日は、難易度 II としてはこの圏谷中で最高という 120m の Red Gully を登ることにする。昨日、僕が 4ピッチ中 3ピッチをリードしたので、 今日はグレアムに核心を任せることにする。

1ピッチ目。氷が入ってくる。傾斜はなだらかとはいえ。
2ピッチ目。素晴らしい氷壁のピッチ! 傾斜 70°くらいか? ダブルアックスをきっちりと効かせないといけない。 スクリューもまともに活躍。しっかり効いていそうだ。 リードしたグレアムは大満足の様子だった。

3ピッチ目は僕がリード。しかし……薄いコンディションのため、最早 ほとんど雪がない。敢えて雪の部分を求めて登る始末。上まで登り抜ける。 まぁ、2ピッチ目(ガイド本によれば、3ピッチ分?)までがよかったから、 よしとしよう。

Goat Track に沿って降りて、まだ時間があるから、簡単なルートを 速攻で登ることに。 昨日登った The Runnel の隣のルート、135m の Grade I の Central Gully をコンテで登る。雪のガリーのルート。 まず僕がリードして、しばらくいったちょっと難しめのところで グレアムを確保、そのままグレアムが代わって、リード。上まで登り抜けた。 50分で終了。速かった!

ルートを 2つ登ったのに、幕営地に帰り着いてもまだ明るい状況。 なかなかの一日だった。
今日も快晴。でも今日は二人とも天幕の中で寝ることにする。 今まで二晩、天幕がありながら二人とも別々に寝ていたし (笑)

12/19

今日は、ケアンゴームの北圏谷(Northern Coires)のうちのもう一つ、 Coire an Lochain の方に行くことにする。幕営地は、 Coire an t'Sneachda のごく入口の平坦なところなので、Coire an Lochain に行くのも容易だ。 尾根を少し登って、そのままコンタリングすればよい。

圏谷の左方にガリーがひときわ目立つ。 The Vent。 100m の Grade II/III。登ってみよう! 僕がリード。雪の急斜面は特に問題ない。中間点にひときわ巨大な チョックストーンがある。そこが核心。(今日のように)薄いコンディションの もとでは特に問題だとガイド本に言う。

チョックストーンの直下に立派な岩棚があるので、そこでひと休み。 残置ピトンが二つあり、一つは岩棚を離れた横の壁にあって、ご丁寧に スリングとカラビナまでかかっている。

しかし……ここは真剣に難しそうだ。コンディションさえよければ、 雪氷で覆われて簡単に越えられるのだろうが、今日は、空間があるのみ。 岩の左側に薄い氷があるから、そこにピッケルをたたき込んで体をせりあげる ことができるかどうか? フリーではとても難しそうだと悟り、 残置ピトンにスリングをかけて、フレンチエイド、ピッケルを氷に何とか たたき込む。しかし……効いているのかどうかよく分からない。 しかもうまい足場も見つからず、腕力頼りのところ。もう一度 しっかりたたき込みたいところだが……だめだ、その余力がない。 休みを入れた後、再度トライするも、結局、断念、ロワーダウンして もらった。60mザイルの丁度半分、ぎりぎり 30m のところでよかった。

グレアムにリードを代わる。僕が確保……あっ、確保器が……落としてしまった! 何たる大失態! BlackDiamond の ATC-XP、ちゃんと気をつけて扱っていれば絶対 落とすはずのないない確保器なのに……。油断して手順を省いていた報い。 だらしなや。幸い、グレアムが予備の確保器を持っていたので、借りる。

グレアムも、同じところで苦労している。あっ、ピッケルが…… 1本、宙を 飛んで落ちてきた。落としてしまったのだ。大変幸いにして、僕の 5m 下で雪面に突き刺さって止まった。グレアムはもちろんリードを断念、スリングを ひとつ残置して、残置カラビナも借用して、ロワーダウンと相成った。

あのチョックストーンは今日のコンディションでは非常に難しい。 少なくとも IV、おそらくは V かそれ以上の難易度と言えそうだ。

そこで、どれか簡単なルートを登りたいところだが……、 Coire an Lochain の多くのルートは、このルート以上に難しい。 ずっと右方にある、Grade I (150m) の The Couloir を登ることにする。一旦圏谷を下って右に言ってもいいが……、それは時間が かかりそうだし、高低差もわずらわしい。ザイルを使って、コンテで直接 トラバースしてみよう。

(ピッケル回収後)グレアムのリードでコンテ開始。しばらく行ったところで 止まって僕とリード交替。さらに大トラバース。コンテとは言え、 最後の 中間支点の後、50m 支点なしだったりしたので、フリーに近い。 The Couloir の取付(実は、半分以上すでに登っていることになった)で確保支点を作り、 グレアムにリードを代わる。前にパーティーがひと組いるが、かなりもたもた している。特に一人は完全な初心者の様子。リードも頼りがいある ように見えない。彼らが左側を登っているのを幸い、 グレアムは右側を一気に登り抜ける。

60m 行ったところで僕がビレイ解除、 コンテに移る。ナッツが一つ回収できなくて、早々に諦める(この時、グレアムは 氷壁の中でちょっと無理な態勢だったと後で知った。早々に諦めてよかった、 というものだ)。この頃になると先行パーティーも登る準備ができていたが、 挨拶して速攻で先にいかせてもらう……ほっ、待っていた日には何時間かかることやら (実際、僕らが駐車場まで戻った 3時間くらい後に、彼らが通り過ぎるのを見た のだった)。

昨日に引続き、速攻でルートを登り抜けた。コンテで登るのはちょっと リーダーには怖い感じだったかも知れないか。グレアム、お見事。 今日も快晴。ルートの終了点からしばし眺めを楽しんだのだった。

あとは、Cairn Lochain の山頂横を過ぎ、Goat Track から下降して、 幕営地まで。すぐに天幕を畳んで、再び大荷物を担いで駐車場へと戻った。 そして、快晴なのをいいことに、車の横でマットを敷いて、二人 ビバークとした。

12/20

7:45 起床。ゆっくりと片付けしてアビモア(Aviemore)村まで車で下りる。 村に入ってびっくりした。山上の駐車場では、8:30 の時点で 2℃だったのに、 村内では 9:40 の時点で -6℃! つまり、山上の方がはるかに暖かかったわけだ! 期間中、寒いという天気予報の割には気温が高いなぁ、と思っていたのだが、 天気予報は間違っていなかったのだろう。ただ、気温の逆転が起きていたという ことか。

アビモア村で喫茶店で久々に文明的な朝食など摂ってから長距離ドライブ、 イングランドへの帰途につく。

今回、コンディションが若干薄かったとは言え、素晴らしい天候に恵まれた 冬山山行で、満足だった!


タイム・テーブル

2007/12/16-20 Highland 山行タイム・テーブル (Masa)
時刻 行動 高度(m) 温度(℃) 歩数(複歩)
(計器) (地図)

表注:
高度の表記で (s) は高度計をその高度にセット。 なお、高度計は、 Highgear社の AltiTech2を使用。 歩数は、その前の項目からの歩数[複歩]。

2007/12/16
(Leicester → Nottingham → Crew → Aviemore → Cairngorms)
05:15 Leicester発
06:15 Nottingham
Crew
14:50 Aviemore着 3
20:00 就寝 -1 (天幕内)
22:30 -6 (天幕内)
24:30 -7 (天幕内)
2007/12/17
(幕営地(駐車場近く) → Cairngorm駐車場 → Coire an t-Sneachda → 幕営地(Corrie近く))
06:00 起床 -4 (天幕内)
08:45 駐車場発 620(s) 3
09:45 幕営地 869
10:30 5
10:50 ルート取付 1007 3
15:00 リード終了 0
15:30 ルート終了
17:00頃 幕営地 3
20:30頃 3
23:00 就寝(ビバーク) 2
2007/12/18
(幕営地(Corrie近く) → Coire an t-Sneachda → 幕営地)
07:30 7
08:28 ルート(Red Gully)発 2
12:20頃 リード終了 3
12:40 ルート(Red Gully)終了
13:20 ルート(Central Gully)発
14:30 ルート(Central Gully)終了 5
14:55 帰路につく 4
16:00頃 幕営地 4
17:30 0
19:30 1
21:30 就寝
2007/12/19
(幕営地(Corrie近く) → Coire an Lochain → 幕営地 → 駐車場)
06:00 起床
07:00 3
08:05 4
09:15 Crag手前 5
15:20 The Couloir終了 2
15:40 2
Cairn Lochain 1215
16:50 幕営地 5
17:58 4
18:38 駐車場 3
21:30 就寝(ビバーク) 4
2007/12/20
(Cairngorm駐車場 → Aviemore → Crew → Nottingham → Leicester)
07:45 起床
08:30 620(s) 2
09:26
09:40 Aviemore -6
10:30
17:00 Crewe
18:00
19:34 Nottingham
20:50
21:55 Leicester

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まさ