2008/02/17 Peak 地方/Rivelin Edge 登山記録/感想文 (by まさ)

[Japanese / English]



総括

山域
(Eastern) Peak District/Rivelin Edge
参加者
ベックス・A、トム、まさ
期間
2008/02/17 (日帰り)
Rivelin Edge (以下、リンクは特記しない限り rockfax.com へのもの)
  1. The Needle Area (Blizzard Ridge Area)/Jonathan's Chimney (11m HS 4b (VS 4c)); Leader まさ, 2nd トム (断念), ベックス; 様式 OF
  2. Scarlett's Bay (Kremlin Krack Area)/Gardener's Pleasure (10m S (HS 4b)); Leader まさ, 2nd トム, 3rd ベックス; 様式 OF
  3. Scarlett's Bay (Kremlin Krack Area)/Angle Crack (7m Diff); Leader ベックス, 2nd まさ; 様式 OF
  4. Scarlett's Bay (Kremlin Krack Area)/Rivelin Slab (ukclimbing.com) (10m Mod); Solo まさ; 様式 OF
  5. Face Climb Area/Face Climb No.2 (7m VS 4c); Leader まさ, 2nd ベックス; 様式 OF
様式: O(s) = オンサイト, F = フラッシュ, (A) = (助言少々), G = グラウンド・アップ, HP = ヘッド・ポイント
天候
快晴

登山編

このところ、乾いた日々が続いている。そして 今週末は、快晴の天気予報。夜は冷え込む、というから、岩は冷たい? つまりそれは、グリット石にとっては最高の条件、ということではないか? これはピーク地方に来ない手はない!

元々、アンディと来る予定だったところ、前日夕方に風邪でキャンセル、 との連絡がある。えー、それは困った。でも何とかパートナーを見つける ことに成功。ベックスとは今までも一緒したことある。新しい彼氏のトムは、 自然の岩場でまともに登るのは今回が初めてになるそうだ。 楽しんで頂けたら。

場所は、 リベリン・エッジ (Rivelin Edge) を選ぶ。ここには、有名なピラー(Rivelin Needle)があり、以前から ずっと登りたかったものだ。その Needle 以外にもなかなかよさそうな ルートが揃っている、ときたものだ。

何かと行ったり来たりして迷った後、最終的に、リベリン・エッジに着く。 Rivelin Needle が美しくそびえ立ち、そそる! でもまずはウォーミング・アップから。HS 4b の Jonathan's Chimney を選んで、リード。まっすぐのクラックのライン。易しそう。

ガイド本曰く、地上すぐ上がちょっと厄介、とのこと — 確かに 一見して思ったよりは。でも所詮 4b、僕は問題無く超える……が、 セカンドのトムには大問題になってしまって、結局断念。続くベックスは 何とか落ちずに登り切ってきた。本人曰く、今までで外の岩場で登った中で 最難のムーブだった、とのこと。それは何より! ウォーミング・アップとしては、厳し過ぎだが……。

自然の岩場は久しぶりというベックスは、リードの前にもう 1本くらいは フォローしておきたい、とのこと。僕は本来は、Rivelin Needle にすぐ 登りたかったのだが……、20m の HVS 5a なので、トムが登れるかどうか かなり疑問。せっかくの自然の岩場、最低 1本は完登させてあげたいので、 もう 1本、さらに易しめのルートを登ることにする。 Severe の Gardener's Pleasure (BMCの)ガイド本に技術難易度の記述が無いことから判断しても、易しいはず。 すぐ左隣に走る角のクラックが隣のルート (Ulex (Severe)) のものだから、それは使わずに登ることになる。 おりょ、Severe にしては、ちょっと難しいかも。特に、上部の木に達する前が。 ガイド本では、最後の広いクラックが核心、ということだったが? とはいえ、Severe なので、僕は問題無く登り切る。

しかし、確保支点が問題……。右隣のルートを登ってきた 2グループは、 いずれもハイマツみたいな木の幹を使っているが、そいつ、すでに死んでません? 重い人なら、静荷重かけただけでも折れそうな……。とても使う気になれない。 左側 2m 離れたところにマイクロナッツを 2つセット、流動分散をかける。 これは悪くないのだが、ABC の原則に反するから、これを主の支点としては 使えない。横の岩の細いクラックに別のマイクロナッツ(!)をセット、主支点とする。 別の浅い横クラックにフレンズ 3CU 1.75 を極める。 しかし、セットした方向と荷重の方向とが異なることもあり、これも信用できない。 一応、バックアップとしてだけ使うことに。要するに、主支点のマイクロナッツ が飛ぶと死なないまでもやばい、ということ! 頑張って僕が人間支点となるべし……。

しかし、僕がおりょっ、と思ったくらいだから、トムは核心で困難を 極めている様子。休憩を入れた後、隣のルートも使って、(その上部の)木の幹に がしっとしがみついて、何とかそこを超えた — あぁっ、 でも、そんな幹の上の方を持たないで……。梃の原理が働くから……。

しかも、話はそこで終わらない。上部の広いクラックは、僕なら体ごと 入れられるけれど、図体のでかいトムには、ちょっと狭い? やがて、クラックの中に全身挟まって身動きが取れなくなってしまった。 ザイルを頼りに、何とか体をクラックから半分出して、必死の思いで 登り切った。おつかれ。すぐ頂上で横になって息を整えている。 まぁ、登り切った、ということは、ちょうどいいレベルだったという ことだから、悪くなかったね!

次いで、ベックス。Severe だから、彼女ならリードできるくらいのはず。 でも核心で躓いて、墜落。Severe のくせに、とぶぅぶぅ文句を言いながら、 隣のルートを使って超えてきた。最後は、クラックの中、ヘルメットを 脱いで(確保している僕に渡して)登り切った。大変細身のベックスで これだもの、トムにはそれはきついでしょう!

トム曰く、ロープがあるからいいけれど、これリードだったら怖いだろうなぁ、と。 そうね、リードなら、クラックに頼り切らず、外に体を投げ出すところに抵抗が あるでしょうね。 先の 4月に登った コーンウォールはセネン(Sennen)の Demo Route がまさにそんな感じ? 結局、自信を持って体を外に投げ出せれば、 どうということは無い、と僕は思うところ。ただ、そうするだけの 度胸(?)を養うには経験が必要かも。

ここで 15時5分前。12時頃に登り始めたというのに、えらく時間を 使ってしまった。 いけない、今日の(僕の)至上の目的 Rivelin Needle を 登る時間が無くなる! 見ると、他のパーティーがちょうど登り始めたところで、 あと 2人、フォローするという……。駐車場の関係で 17時半にはここを 発たないといけないし、ルートの厳しさを思うと(僕にとっても楽でないし、 ましてセカンドがフォローできるかどうか? 懸垂下降でギア回収の可能性高し)、 今すぐにでも登らないといけないのに……。15時15分までに登り始められそうなら 登ろうか、と昼食休憩とする。と少し待ってみるも、当然無理なので、 断念することに。

では、ベックス、今度は君のリード。ベックスはクリスマスに (WildCountryの)ヘックス 1セット(の新品)とスリング数本を入手して、 今日が初お目見え。嬉しそうに、でも(久々のリードで)ちょっと不安そうに VDiff のクラックのルート Solitaire を登り始める。僕の確保。ヘックスに丁度いいサイズのクラックに見えるが、 極めるのにちょっと苦労している様子。ヘックスは慣れていないんだそうな。

中間点で、つい左のレッジに流れて、そこに立つ……それは、隣のルートの Angle Crack (7m Diff) — ということは本人は百も承知で、あぁっ、こんなところに 来て、中間支点を極めたらだめなのに! と自分に怒り顔。 でも右に戻るのは、試してみるも、不安なようで、結局そのレッジに戻ってくる。 とりあえず中間支点を極めてから、右に戻って、支点を外して、もう一回 極めたら? と僕がアドバイス — 厳密には反則ですけど、 とは内心思うも、それが最善の手かと。

で、ベックスはそうしようとするも、中間支点を極めた後でも、右に戻るのが 大変そうで、結局、元のレッジに戻ってくる。(自分に)大怒り。 下で見守る彼氏のトムに、「恥ずかしいから見てないで、向こうに行ってて!」 と宣う。そういうもの?! 素直に指示に従うトムは紳士かな (笑)

逡巡の後、クライムダウンする、というベックスに、それくらいなら そのままその Diff のルートを上まで登りなよ、と僕は奨める。 その方が絶対いいって、と。その VDiff に登りたければ、また後日なり 来て登ればいいだけだから、と。

僕の助言に従ってベックスは、登ることに。ところが、そちらでも、割と 苦労の様子。「あぁっ、たかが Diff なのに!」と怒号が出てくる出てくる。 そんな怒らなくてもいいのに (笑)。ムーブについての僕の助言と、 自分の工夫とで最終的には登り切る。よかったね (いや、これ以上、 不機嫌になられても困るし (笑))。

さて、シングルピッチのリードの最大の問題は、確保支点をちゃんとセット できるかどうか。そこをしくじると、パーティー全体の命にかかわる。 そこで僕は隣から歩登攀して(← 実は、Mod のルートだったようだ……。 知っていたら、避けたかも?)上に行って、見守りつつ指導。 何とかセットできた後、最後に僕がフォローして、ルートのクリーニング。 ちなみにトムは、履き慣れないクライミング・シューズが痛くて、 今日はクライミングはリタイア。

「Diff なんて、素人のルートなのに……。」と噴懣やる方無い様子の ベックス。まぁ、そう言わないで。ここ 2カ月登ってないそうだから、 それは仕方ないでしょう。「もっと登らなきゃ!」と決意を固くする ベックスだった。

最後、あまり時間がないので、短くて難しめのルートにしましょう、 と VS 5a の Twin Hole へ。最初のムーブが核心で、V1 ムーブという。 盛り上がった三角岩の頂点から出発して、両手を伸ばしてポケットを掴んで、 上のレッジへランジだって。ところが……、僕のリーチではそもそも そのポケットに届かないではないか!! 指先 1本かからない……。 そこまでダイノは可能だろうが、もし取り損ねたら、下の刺々しい 茨の薮の中まで 3m 落ちていくことになる。リスキー過ぎる。 散々、あの手この手で手を伸ばすが、どうやっても届かない。フェイスは つるっつるでどうしようもない。……やむなく断念。うー、あんまりだ!

代わりに、VS 4c 7m の Face Climb No.2 を登ることに。最上部が核心。 中間支点がどこで取れるの? とトム。ごもっともな疑問。 左の Jelly Baby のクラックを支点に使うと、HS だそうな。右側上部にクラックが見えるが……、 どうだろう? 右のルートの side runner と見なされるかも?

まぁ、VS 4c、登れば支点が見つかるかな、と登り始める。 あった、ナッツ 1 のクラックが — 半分しか入らない上向きの 横クラックだからとても信用できないけど。中間地点で、同じような クラックが。マイクロナッツを 2つ (BD MicroStopper 2 & 3)を 極めて、流動分散をかける。まぁまぁかなぁ、でもマイクロナッツの それも小サイズだからなぁ……。

核心前には他に支点が取れそうにない。核心は最上部ということだから、 例のマイクロナッツ、仮に持っても、長さが足りるか? そこで、右の縦クラックも使うことにする。こちらはナッツ 2 がきれいに 極まる。右隣のルート用の side runner と見なされるかどうか怪しいが、 ガイド本には何も書かれてなかったし、いいことにしよう(?)。

あとは、指のよくかかるホールドを使って、上まで登り切る。 クライミングは問題無く、楽しく登れた。4c というより、4b 程度? ただ、例の右の支点を除いて、支点がねぇ。もしあれが side runner と 見なされるなら、このルートは HVS 4b とするべきでしょうよ。 ちょうど、Froggatt Edge の有名な Sunset Slab と同じような シチュエーションなのだから! まぁ、でも、あれはよし、ということに しておきたいかな、今日のところは!?

ベックスが特に問題無くフォローしてきたところで、 今日のクライミングはお開きとした。

このリベリン・エッジ、僕はなかなか気に入った。林の上にあるところとか、 色々な難易度のルートが豊富にあるところとか、Froggatt Edge に似ている。 柱状岩があるところまで! Rivelin Needle が登り損ねたのは残念だったが また来ればいい話。是非是非、再訪したい岩場だ!

後日談になるが、RockFax のページで、 今日のルートの難易度と議論とをチェックしてみた。 最初の 2ルートはちょっと難しめかな、と思った僕の感覚は、そのまま 裏付けられていて、HS 4b → VS 4c、 S → HS 4b と もろに 1グレード上になっているではないか! RockFax の難易度は ちょっと甘めだけど、それを差し引いても、ハードなルートであった ことには違いない、ということだろう。 だからそんなに失望しないでね、ベックス!


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まさ