[Japanese / English]
総括
- 山域
- (Eastern) Peak District/Curbar Edge
- 参加者
- アダム・W、ルーク、まさ
- 期間
- 2008/02/23 (日帰り)
Curbar Edge (以下、リンクは特記しない限り rockfax.com へのもの)- The Toy Area/October Crack (7m HS 4a (VS 4c)); Leader まさ, 2nd アダム; 様式 OF
- The Eliminates Wall/The Peapod (18m HVS 5b); Leader まさ, 2nd アダム, 3rd ルーク; 様式 Os (1 rest)
様式: O(s) = オンサイト, F = フラッシュ, (A) = (助言少々), G = グラウンド・アップ, HP = ヘッド・ポイント
- 天候
- 曇
登山編
アダムとピーク地方へ。今回は、 Curbar Edge にする。 僕は、クライミング目的では、 2004年の 5月に 1度来た のが最初で最後だった。Stanage や Froggatt ほどメジャーではないとは言え、 有名な岩場、1度しか来たことがないのは、ちょっと縁が薄過ぎる。
Curbar Edge には、 The Peapod
という超がつくクラシック・ルート(HVS 5b)がある(ガイド本には、 Mega classic
と)。 先日
Curbar Edge に行ったグレアムも、近く登りたい! と言っていたものだ。
バック・アンド・フットが不可欠なこのルートは、「絵になる」のだろう、 雑誌にもしばしば写真が載っている。チムニー好きの僕には 「そそる」ルートだ。但し、HVS としてはかなりハード、 甘く見てはいけない、ともよく聞く。実際、 初登は伝説のジョー・ブラウン。そしてブラウンのパートナーの これも伝説の剛力ドン・ウィランスが墜落したことでも有名で、 それだけハードなルートとして恐れられている。 当日の気分で決めよう。
まず、The Peapod を横目に、その近くの短い HS のルートを ウォーミングアップに登る。 October Crack、7m。 二つのクラックが走り、両方使っていいそうだから、楽そう。
……ところがどっこい、意外に苦労する羽目に。 中間支点を極めてはクライムダウンすること 2回、最初の核心を越える。 ハンドジャムは完璧とは言えないまでも悪くないが、横からレイバック 気味に掴むのは滑りやすい。そしてその上がまた簡単そうでこれが意外に。 二本、クラックが走るだけに、右から行くか、左から行くか決めかねる。 結局、半身入れ気味に右から強引に切り抜けた。美しくないなぁ。 きっともっと楽な登り方があるはずだが……、うまく見切れなかった。
とはいえ、これはなかなかのジャミング・ルート。フォローするアダムは ジャミングは好きでないので、ちょっと苦労するかも。……数回、落ちて くれた。「今までで最難の HS だったよ、これは!」とのコメント。 まぁね、ジャミング・ルートは、相性が悪い人には難しく感じるから、 それもあるかもなぁ。
実は、遅れてやってきたルークが持ってきた 最新の RockFax のガイド本では、このルート、 何と VS 4c となっていた!
アダムの持ってきていた、 僕が登る前に参考にした旧版 RockFax ガイドでは、HS 4b、 BMCの決定版ガイド(1991年;
Froggatt
)では、HS 4a なのに! いかにジャミングが得意でないとはいえ、アダムがあれだけ苦労したことから
判断して、4a はさすがにちょっときついかな? でも、中間支点は完璧だし、 VS は言い過ぎでしょう。HS 4b に一票。
隣で、VS 5a の Grey Face を
4人で総力をあげて登っていたグループ(結局、半分少し登ったところ までで断念していた)の一人と会話を交わす。
彼: 「The Peapod 登るの?」
僕: 「ええ、多分。そのつもりです。」
彼: 「大丈夫かなぁ? 君が苦労していたルートよりはるかに難しいよ。」
僕: 「登ったことあるんですか?」
彼: 「いや、登ろうとしたことはあるけど。僕には難し過ぎて登れなかった。」
僕: 「バック・アンド・フット系だから、このルートとは違うと思っているんですけどねぇ……。」
彼: 「まぁ、中間支点は問題なく取れるよ。」
僕: 「その言葉が聞きたかったですね (笑)」
うーん、ちょっと不安にさせてくれますな。 昼食を取りつつ、The Peapod の方に移動する。 横では、E1 の The Left Eliminate を登っている二人組の女性(!)クライマーがいる。 一人がリードし終えて、懸垂でギアを回収後、もう一人が同じルートを リードしようという。リードした彼女は、フレンズ No.4,5,6 担いで、 全部使い切っていた。おぉっ! フレンズ No.6 なんて、登山用品店以外では 初めて見た! ギアもただものではないが、レベルもただものでないですね! 女性ペアで二人とも E1 をさくさくリードしようなんて。 ちなみに、もちろん The Peapod は登ったことがあって、 「いいルートだよぉ」とお奨めだった。これはやっぱり登らなくては!
というわけで、ギアアップ。 運動靴からビレイ・ジャケットまで担いだ先のルートと違って、 今度は不要なギアは全部置いていく。 フレンズ No.4 も一度は置いたが、再度ルートを見直すと核心前で 役立ちそうなので、これは持っていく。(Camp社)ヘックス No.11 は もちろん置いていく。そして、バック・アンド・フットに備えて、 前のギアループしか使わない。 最後、ナッツ・キーまで置いて、本気のチャレンジ。
最初の数ムーブが必ずしも自明でない。よく見ると、スタンスに 使えそうなエッジが二、三あるので、それを利用する計算された ムーブが必要だ。ボルダリング・マットを頼りに、中間支点を取ること なく、3m、チムニー部の最下部まで登り切る。5a ムーブか? 最初から楽しませてくれるではないか!
チムニー部は、奥のクラックに中間支点は十分取れる。しかし、 上部ではチムニーが消えて、オーバーハングの乗り越しになるので、 その上でロープのドラッグがないよう、中間支点は十分伸ばしたい — つまり、もし落ちると、チムニーの最下部に衝突する可能性大。 死なないまでも怪我は必定。チムニーの上部の方だと、狭く浅くなっているので、 もっと安全な支点が取れるが……、その狭い空間で中間支点を極める余力が あるかどうかは別問題。よくできている、楽させてくれない、ってきたもんだ!
結局、チムニーの中間部に二つ中間支点を極めた後、クライムダウンして休憩。 2.4m のソーンスリングで、つまり 1.5m くらい伸ばしているからこれの上に 上から落ちると、かなり下まで、多分チムニーの最下部まで落ちそう……。
意を決して、バック・アンド・フット開始。どちらを向くかに 諸説あるそうだが、左を向くことにする。左側の一番外側が足のかかりが 良さそうだし。すぐ奥で細くなっている、つまり平行ではないチムニーだけに、 結構ちゃんと力を入れて突っ張らないと、安定しない……思ったより消耗する。 さらに上部でフレンズを一つ極めた後、スタミナが減ってきているのを自覚しつつ、 チムニー脱出を試みる。ここが核心。
下からは、右上部にフラットな小さなレッジが見えていたが……、実は フラットではなくて傾いているのがここまで来ると見える。フラットな部分は そのさらに 20cm 上部! チムニーがすぼまっているだけに、 バランスを取るのが大変になってきているのに!
何とか右手がレッジにかかる。左手も合わせる。ぶら下がる。フェイス部の フットホールド……見えない。戻る。必然的に態勢が右向きに入れ替わった。 うぅっ、落ちそう。角に極小エッジがあるから、フットホールドに使えるか? 再度、挑戦。体を引き上げる、引き上げる……、うーん、力が……。 不安定なニーバーで何とか落ちずに済んでいるが……上に上がるには 引き上げなくてはいけなくて。
落ちるリスクは冒したくない。「引いて!」叫びつつ、最上部の中間支点を 掴んで体重をゆっくりかけていく。すでに結構、消耗しているのが改めて 分かる。すでに中間支点を持った時点でクリーンとは言えない。 残念だが諦めて、確保者頼りに本格的にレストする。
レスト後、登れるか? 登れるか? 登れるはずだ。登れんでか。 葛藤。内心の不安を打ち消す。登れるはずだ。 今、(肘の怪我の後遺症で)左腕の力が弱いことを考えて、右腕の力を 最大限使うために、今度は、右向きでバック・アンド・フットしよう。レッジに手が 届いた後のフットホールド候補も頭に入れた。登ろう!!
バック・アンド・フットでじりじりと。先ほどよりも若干不安定か? でも大丈夫。問題は上部の狭くなったところだが、レッジに手が届けば 何とかなるはず。登る。狭くなってくる。背が低い僕でさえ、窮屈に なってくる。まだレッジに手が届かない。あともう少し体をせりあげて……、 右手が届いた。でも、足が狭いところにロックされていて、クライム・ダウンは もう困難、つまり登るしかない! この状態なら少しは保持できるとは言え、 そうしたところで体力が減るだけで益はない、今が安定を捨てる時、 右に外方に体を振ってチムニーから抜けて……、さぁ、上に登る。 フットホールドは不安定ながらある。しかし、レッジのさらに上に何か 左手のホールドが無いと……探る、探る、おぉっ、かかりのいいホールドが クラックの中に! これは登れそう、いや登る! 体を引き上げる。もう少し。 ましなフットホールドに足がかかる。眼前のクラックに待望の次の中間支点 を極める? いや、まだだ。この体勢は不安定、このレッジまで登った方がいい。 落ちる可能性の不安をかなぐり落とす。 自分を信じて、登る……登れた!
こうして格闘の末、核心を越えた。立派な中間支点を極めて、ひと安心。 肩で息をしている。ハードだった。精神的にも肉体的にも。
さてこの上部のクラック、下から見るよりは、ここから見た方が少し易しく見える。 少なくともフットホールドには事欠かない。中間支点も申し分なさそう。 実際に登ってみると、結局、ジャミングをばんばん使って登ることになった。 フェイス部は、ホールドとして意外に使いにくく。ここも 4c ムーブの連続か? 核心が終わっても、楽しませてくれることだ!
そして最後、上部に抜けて、この格闘の時も終わりを迎えた。 素晴らしいルートだった!! バック・アンド・フットが必要不可欠な珍しいルートであることもさることながら、 最初から最後まで、楽しみが持続する。それもあの手この手の違った形で! 僕が今まで登った中で、グリット石の HVS のルートとしては、 先の 4月に登った Dovestones Tor の Great Buttress に並ぶ、最高のルートだと言えよう。ブラボー!
ただ、このルート、フォローのアダムは恐ろしく苦労して登ることになった……。 チムニーにたどり着く前に 3回は落ちていたし、チムニーでは 1回に数 cm ずつ 体を引き上げる感じで、僕はずっとロープを張っている羽目になった。 それでも最後に何とか登り切ってきたのはさすが。 計測していないが、ゆうに 1時間以上かかったはず……おつかれさま!
ルークもそれよりは速かったとは言え、核心では何度か落ちていた。 フォローとして、ちょうどいいレベルだったかな?
このルート、3人が登り切るのに 2時間半ほどかかったもので、今日は ここでお開きに。2ルートしか登っていないが、中身の濃い一日だった! ブラボー!
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まさ