[Japanese / English ]
総括
- 山域
- Peak District/Millstone Edge
- 参加者
- ブライアン (Bowline CC)、まさ
- 期間
- 2008/07/13 (日帰り) Millstone
Edge (以下、リンクは特記しない限り rockfax.com へのもの)
- Keyhole Cave Area/Gimcrack (22m VS 4c); Leader ブライアン (F), 2nd まさ
- Corners Area (Great North Road Area)/Great North Road (32m HVS 5a); Leader まさ (OF), 2nd ブライアン
- London Wall Area/Bond Street (22m HVS 5a); Leader ブライアン (1 fall), 2nd まさ
- London Wall Area/Great Portland Street (20m HVS 5b); Leader まさ (OF), 2nd ブライアン
- London Wall Area/Lambeth Chimney (22m HS 4b); Leader ブライアン (1 fall), 2nd まさ
- Keyhole Cave Area/The Whore (20m HVS 5b); Leader まさ (OF), 2nd ブライアン
様式: O(s) = オンサイト, F = フラッシュ, (A) = (助言少々), G = グラウンド・アップ, Hp = ヘッド・ポイント, D(og) = ザイルぶら下がり, AL = 交替リード
- 天候
- 曇 (20℃@11:16, 18℃@14:08, 15℃@16:05)
登山編
木曜日に引続き、 ブライアンとピーク地方に岩登りに来る。 今日は、 Millstone Edge (ミルストーン・エッジ)。
ミルストーン・エッジには思い出がある。 僕が英国に来た時、最初、あまり「高い」岩場で岩登りを したことはなかった。スタニッジ・エッジをはじめ、ピーク地方の 多くのグリット石の岩場は 10メートルそこそこの高さだから。 そんな時、 2003年5月に初めて訪れた ミルストーン・エッジは、 他と違って 30メートルに達する文字通りの垂壁がそびえ、 圧倒的な存在感を感じたものだった。これこそ岩登り、と ひと目惚れしたものだ。特に個人的に 2002年後半〜2003年秋まで 僕はほとんど屋外での岩登りはしなかったため、実質上、 その日が唯一の岩登りの旅だったもので、特に鮮明に記憶に残っている。
2003年のその日、 岩場をよく知るパートナーのマークから、これをトップロープで 登るのを今日のハイライトとしよう、と言われたそのルート、 それが Great North Road だった。その日、結局、その前に登った VS(?) で僕は(ボトムロープで) 何度も落ちる羽目になり、マークも登りかけてすぐ諦めた次第だった。 そのため、それよりも難しく、マーク言うところの「レイバックのマラソン」 Great North Road には触ることもなく立ち去った。しかし、それ以来、 この Great North Road は僕の記憶に深く残り、いつか登ってやろう、 という最大の目標になっていた。
Great North Road は 32メートルの HVS。スタミナが要求されそうだ (「レイバックのマラソン(!)」)。僕は HVS は数を登ってきたとは言え、 スタミナが要求されるルートは登っていない。また、クラックの ルートだからジャミングができたら嬉しいが、ジャミングもなかなか 自信が持てない。そういった少しの不安がなかなか拭えなかった……実際、 Great North Road は下から見上げるだけで、その威圧感をひしひしと 感じてしまうのだ。 そして、ミルストーン・エッジ自体、以来、実はほとんど訪れていない — 易しいルートが少ないもので、パートナーを選ぶ必要が あるのも一因だ。
今日のパートナーはブライアン。 ミルストーン・エッジを選んで問題ない。いや、ブライアンの方から そう提案してきたくらいだから。 最近は、スタミナにも段々と自信がついてきた。 今日、時は満ちたか。
最初、ブライアンのリードで VSを登った後、 いよいよ Great North Road に取付く。 最初のクラックを登り切ってひと休みできるところまで。 — 思ったよりは少し手間取って、もうちょっと疲れを感じる ような。いやいや、大丈夫なはずだ。登るのみ。 Great North Road は、コーナーが主なので、レイバックではなく、 (僕の得意な)ブリッジがかなり使えるから、スタミナは温存できる はずだし。理論的には。
そうして、ブリッジと時にエッジへのクリンプ(またはオープンハンド)を 使って、登っていく。十分な支点は取ってあるはずなのに、なぜか 怖い。高度感のなせる技か。あるいは失敗への恐れか。 グレート(Great)な道(Road)ということだろう。
ルーフ直下に達したところでブリッジでひと休み。ここで直下を トラバースしてから上に抜けるところが、下から見た感じでは、 明らかにもっとも難しく見える箇所だ。とはいえ、ガイド本は、 その前の方が技術的には難しい、という。つまり、僕はすでに 核心は越えてきたということ、登れないはずがない。 必死で自分に言い聞かせる。 ホールドとスタンスとを何度も何度も確認して、いざ突撃。 スタンスを確実に取り、指の力を頼りに左へトラバース、 そして上方へ — ルーフの上へ登り抜けた! ほっ。
とはいえ、まだルートが終わったわけではない。安心するには 早過ぎる。……実際、最後の箇所は、技術的にも結構なもので(4c?)、 中間支点も頼りなく十分怖かった。今までの緊張で、不要な力を 使ったせいだろう、腕も張ってきている。慎重にホールドを選んで 取って、最後、ついにルートを登り切った!!
素晴らしい……。本当にいいルートだった。 惜しむらくは、多分、僕はこのルートを、もっと前に登っておく べきだった。今の僕にとっては、このルートは、自分の限界よりは ずっと下の水準にあるため、(緊張したとはいえ)客観的に見て かなり余力を残した状態で登っていた。中間支点は申し分ないのだから、 もっと前に登っていたら、生涯記憶に残る登攀になったかも知れない。 贅沢なことながら、その点だけが少し惜しまれる。とはいえ、 今まで登った HVS の中でこのルートは、最高だった。
この日、しかもそれだけで終わらなかった。 まず、僕が 3年前にリードした Bond Street (HVS 5a) を今度はフォローで登る。 3年前は必死だったのに対し、 今日はフォローとは言え、相当の余裕を持って登れた。それだけ 成長したということだろう。 僕自身は、その後は HVS 5b を二つリードし、いずれも オンサイトで登った。二つ目の The Whore の核心が意外にかなり難しく、特に支点のセットで体力を使ったことも あって、ぎりぎりだった。 最後まで楽しめて、すばらしい一日だった。
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Masa