科学

AlphaGo—囲碁対戦人工知能の驚異

image: 

李世乭対AlphaGo第5局のある局面

ごく最近、人類最高の囲碁棋士の一人が、囲碁対戦ソフトウェアに5番勝負で 1勝4敗で破れる、という事件がありました。 衝撃的なニュースでした……。 その背景、そして私の思うところをまとめます。

人工知能の歴史

一般に、人間の思考に近いことを計算機(コンピューター)にさせる場合、それを人工知能(AI: Artificial Intelligence)と呼びます。人工知能の概念自体は、古くからありました。たとえば、鉄腕アトムは、人工知能そのものです。あるいは、アーサー・C・クラークの古典SF『2001年宇宙の旅』では、人工知能ハルが登場します。

面白いのは、『2001年宇宙の旅』の人工知能ハルは、人間と普通に会話している一方で、「チェスもかなり強い」(が、最強の人間相手だと負けるかも?)というのが売りでした。つまり、当時、巨匠クラークも、人工知能にとってはチェスよりも会話の方が簡単、と見なしていたんですね。仮に人間の赤子のように人工知能が成長するものであれば、確かにそうなりましょうか。幼子はまず会話能力を獲得し、チェスが指せるようになるのは、ずっと後になってからですから。

Tags: 

ノーベル物理学賞と青色発光ダイオード(LED)

今年のノーベル物理学賞が発表になりました。 日本人三人(正確には、中村修二さんは米国籍ですが)による受賞です。

近い将来、中村さんのノーベル物理学賞は確実だと 15年前に 僕は思っていたもので、むしろ遅過ぎるくらいでしょう。

今回の受賞理由は、(実用的)青色発光ダイオード(LED)の開発成功でした。 過去三十年間以上で、人類の日常生活にまで 直接の多大な影響を与えた物理学上の成果という意味で、 青色発光ダイオードの開発成功に勝るものはないと思います。 ノーベル物理学賞は確実だと、僕も含めて多くの物理学者や 半導体業界の人々が信じていた所以です。

念のため、「物理学上」が鍵です。たとえば、インターネットの隆盛は 間違いなくそれ以上の影響を与えていましょうが、それは明らかに 「物理学」ではありません。GPSも、あるいは計算機(コンピューター)の進化も、 工学の成果であって、物理学ではありません。 もっとも、青色発光ダイオードの開発が物理学と言えるかどうか、 という疑問の声は聞きました。 確かに化学や工学と重なる部分なので、それは一理あると思います。

以下、背景と僕の聞き知るところをちょっと解説します。

Tags: 

科学 を購読