歩登攀(scrambling; スクランブリング)

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歩登攀

英語で、手も使ってよじ登ることを、scramble (動詞; 名詞なら scrambling)と言います。 当サイトでは、その 「スクランブリング」の訳語として、「歩登攀」 という言葉を使っています。 日本なら、槍穂縦走などの険しい稜線歩きが、歩登攀のルートに相当 します。


難易度

英国では、歩登攀(scrambling)のルートの一つ一つに 難易度(grade; グレード)がつけられていて、ルート選択の際の目安に なっています。たとえば、日本なら、前穂吊尾根よりは槍穂縦走が難 しく、それよりも西穂〜奥穂縦走が難しい、とガイド本にはあります が、どれほどの差があるかはよく分かりません。その差を、ある程度 客観的に数値化したものと考えて下さればよろしいでしょう。

scrambling の grade は、(例によって?) ガイド本によって若干の表記の 揺れはあります(特に、難しい方が)。しかし、一般に、最も 易しいものが grade 1、最も難しいものが grade 3、その中間が grade 2 という三段階表記になっています。この grade は、ルート の技術的な(岩をよじ登る)難しさ、長さ、高度感、迷いやすさ、危険度などが 総合的に評価されたものです。山の中のことですから、当然、天候条件や 個人の資質(体力はあるが技術はない人、その逆、高度感に強い/弱い、 などなど)によって、大きく変わり得ますので、あくまで目安として 考えるべき、というのが、常識です。特に冬場は、(言うまでもなく)心するべきです。

一般に、山歩きする人が登る最高に難しいルートが、grade 1 です。 例えば、槍穂縦走は、技術的には grade 1 に相当するでしょうか。 ただし、槍穂縦走ほど長く、高度差のあるルートは英国にはそうないので、 判断は難しいところです。また、英国のルートには、一般に、 鎖も梯子も、道標さえ一切ないので、単純比較は一層難しいですが。

grade 2 からは、ロープの携帯が望ましい、とされています。 ナッツの数個も必要でしょう(一方、ピトンやまして ボルトの使用は御法度)。クライミング経験がある人 ならば、コンディションさえよければ、ロープを使わずに登ってしまうことも 少なくありませんが。

grade 3 よりさらに困難なルートは、技術的にクライミングの世界に入るので、 クライミングの grade が使われるのが一般的です。 ただし、scrambling のガイド本によっては grade 3S (S は severe の S) と いう表記を使うこともあります(比較的最近に大幅改訂された湖水地方の scrambling の決定版ガイド本では、3S の代わりに 4 が導入されましたが)。 3S は、要するに 3 よりも難しい、という だけなので……、クライミングの grade に換算すると、 易しければ Mod (Moderate; UIAA で I級くらい)、最高で VD (Very Difficult; UIAA で III級くらい) まで幅広い難易度があり得る ので、注意が必要です。

一般論としては、scrambling と紹介されたルートでは、 クライミング・シューズは必携ではありません。しかし、III級のルートを 巨大な登山靴で登れるか、など、個人差がありましょうから、 各々が判断するべきところです。登山靴のメーカーによっては、歩登攀用 の靴を出しているところもあります。巨大な登山靴に比べると、摩擦の 効きが全然違います。ただし、重い荷物を背負って丸一日歩くのには向いて いません。イングランドやウェールズの scrambling のルートは、一日未満で 終わる(核心だけなら 2〜3時間以内?)ものばかりなので、重い荷物を背負うこと も稀で、歩登攀用靴が活躍するところです。


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