「すべてのクライマーは、クライミングを始めたらできるだけ早い時期にザイル を購入するべきである」[4]。 ザイルは(に限りませんが)、過去の(損傷の)履歴が非常に大切だから、というわ けです。端的には、リードを始めるタイミングくらいでしょうか。
ザイルは、まず、ダイナミック(動的)とスタティック(静的)に分類できます。登 攀に使うなら、必ず前者です(後者は懸垂下降やチロリアンブリッジなど特殊な 用途専用 -- ケイビングならこちらでしょうが)。ダイナミック・ロープは、さ らに、シングル、ハーフ、ツインと大別できます。それぞれ 1本ロープ用、ダブ ルロープ用、ツインロープ用です。屋内クライミングで使うなら、シングルにな りますし、外でもボルトのルートならシングルでも十分でしょう。一方、アルパ インならば、ダブルロープが多くの点でずっと優れています (C章参照)。
太さは、普通の用途ならば、最も細いものは避けた方が無難でしょう -- 耐久 性に劣るので。逆に、最も太いものも一般には避けていいと思います。当然重く、 一方、無用(?)に丈夫なので100。長さは、ルート次第ですが…、 沢登りや非常用ならば、40m、あるいは 30m でも十分かも知れません。50m が最 も標準です。一方、ヨーロッパ・アルプス(に限らず、外国のルート)に行くなら ば、60m (できたらダブルロープ)を用意しておいた方が無難です。50m を超える 懸垂下降が前提になっているルートが少なくないので。沢や冬山に用いる場合は もちろん、そうでない場合も、ドライ加工されているものの方が優れています。 表面だけでなく芯(コア)もドライ加工されているとなおよいです。ドライ加工さ れていると、(雨などの) 濡れはもちろん、擦れや埃の侵入に強くなり、結果的 にロープ自体の強度が高くなります(高く保たれます)。濡れた時に相対的に軽い ことも利点です。
UIAA によれば、目安として、5000メートル登れば強度は半分に、11000メートル 登れば強度は(新品の) 3割までに落ちてしまう、ということです 101。5000メートルと言え ば、1ピッチ 20メートルとして、250ピッチに過ぎません。週一回人口壁に通っ て 1回 10ルート(例: 5ルート×2人)登るならば、半年で達成できてしまいます。 ですので、本番用のロープは、他とは別に用意した方が無難でしょうか。 なお、人口壁専用で、かつ毎週のように頻繁に使うならば、長めのロープを買っ ておくと、ある程度使ったところで、両端(たとえば) 5m ずつ切って、さらに使 い込むという使い方102ができて経済的でしょう。
(日本の)冬山では、7mm の「ザイル」 -- 売られていない(注: 後述)ので、50m 分、切り売りしてもらう -- がいい、と文献[13]にあります。落ちな いこと、特に垂直の落下がないこと、が前提ならば、それでもいいかも知れませ ん。しかし、一般論としては、7mm の切り売りされている「ロープ」(スリング) は、まず、ザイルの基準を満たしていないので弱く、それ以上に、一般にダイナ ミックではないのでまともに落ちたときの衝撃(落下者、確保者、支点すべて)は、 登攀用ザイルに比べてずっと大きくなるはずです。加えて、通常、ドライ加工は されていないでしょうから、一層弱く、また濡れて重くなりやすくなります。使 用に際しては細心の注意を払ってしかるべきでしょう。2005年現在、ツイン・ロー プならば、7.5mm のものもあります。大雑把に言ってシングルロープの半分の強 度しかありませんが103、切り 売りのスリングの延長よりはましでしょう -- 実際、山歩き用の補助ザイルと して売られているものは、大抵このカテゴリーに入るでしょう。
詳細は、専門書を参考にして下さい104。
なお、ロープの中間に、印が入っている方が何かと使いやすいでしょう。できた ら、両端 10m (5m?) にも印があればさらに分かりやすい105。マジックなどでマーキン グをすると、ロープを(化学的に)傷めるおそれがあります106。ベアール社 (Beal)から、ロープにマーキングするための専用のインキが発売されています (が、どのメーカーのロープに対しても安全を保証しているわけではありません)。
最後、大切なザイルを長持ちさせるためには、ロープバッグの使用がお薦めです。 運搬時のザイルの保護、人口壁やゲレンデでの使いやすさに加えて、保存時、折 り畳む(つまり180度折り返すことを繰り返す)必要がなく、自然な状況で保存で きるのが魅力です。