▲欧州的登山生活▲

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第16号: あこがれのアルプス登山 (その五)

発行日
2006/04/03
発行者・筆者
まさ (坂野正明)

まさです。
「めろんぱん」で本登録になった途端に、読者が10人一気に増えて びっくりしてます。張り合いがでますね。頑張ります。新規登録の 皆様、どうぞよろしくお願いします。

今回は、さらに氷の海を横切り、エギーユ・デュ・ミディ (Aiguille du Midi) 山へ向かいます。エギーユ・デュ・ミディ自体は、ロープウェイ(など)で行く ことができる中で、シャモニー近辺で最高地点。だから当然、近辺で最大の 観光地です。皆様の中で、シャモニーを観光に訪れたことがある方は、 行かれた事があるかも知れません。 山の中から見ると、文明の砦、という感じを受けたものでした。

ちなみに同山の初登頂グループを組織したブイーユ伯爵は、 今後この(厳しい)山が再び登られることがあるかどうか疑わしいものだ、という言葉を 残した、と聞きます。ところが今や、毎日何百人と訪れている状態です。 伯爵は先見の明に欠けていたのかも知れません……。

しかし、いかに目的地が文明の砦であれ、そこに向かう途は古のまま、 スリリングな一日でした。アルプスシリーズ第五回、お楽しみあれ。

目次


登山記録編 〜〜 あこがれのアルプス登山 (その五) 〜〜

  • 山域: 欧州アルプス/フランス・シャモニー
  • 期間: 2005/07/18--08/02 (15泊16日)
  • 参加者: ドム、まさ

(つづき)

07/26 (Aiguille du Midi)

今日は、Aiguille du Midi へ向けての氷河歩行。朝っぱらからこれ が結構、スリリング。クレバスが巨大で、道を見つけるのが必ずしも 容易でない。リードの最中、かなりの急斜面を登る必要があって、 結局、アイス・スクリューで後続のドムを確保することになった。

そしてその後がさらに大変。どっちを見ても簡単そうな抜け道がない! 今来た途を戻るのは、論外。登るのも難しいところを下る気はしない。 結局、前のクレバスの中に降りよう、ということになった。クレバス の底を歩いていった先で歩いて登れそうな場所が見えているからだ。

とは言え、その下りも上から見る限り、僕には自信が持てなかった。余裕で 大丈夫と自信満々の様子のドムに先に降りてもらう。 中程付近で難しそうだったので、声をかけると、確保が欲しい、との こと(だから言ったのに!)。 隣の氷壁で、アバラコフ・スレッドを作り(初めての経験)、 ドムをロワーダウン。続いて 僕も懸垂。その氷壁に陽が当たってきたので、急いだものだった。

ここから先、僕がリードして、クレバスの底を渡っていく。積もった 雪は信用ならないので、両壁面にブリッジしたり、割とテクニカル。 やがて、3mほどの垂壁にぶつかる — フリーで降りるのはちょっと心 もとない。そこで、新たにアバラコフ・スレッドを作って、懸垂下降。 そして、再びリードする。ほどなく、上から見えた、歩いて脱出でき る場所に着き、クレバス脱出。ほっとしたものだ。クレバスの中は、 やはり、あまり精神衛生上よろしくなく。

結局、僕らは、コンタリングすべきところ、少し上に登りすぎたらしい。 結局、いずれは登らなくてはいけないという意識が働いたので(今日の 予定登高標高は、1320m)、クレバスを避ける折り、登りと下りの二つ の選択肢があった時、登りを選びすぎ、結果、嫌らしい大クレバス地 帯に入り込んでしまった、ということのようだ。この後は、下に見えて いる、もっと安全そうな径まで下る — 09:05着。随分と時間を 使ってしまったも のだ。いやはや、クレバス侮り難し。

ここからは、雪で覆われたクレバス地帯を歩く。下に何があるか分か らない分、ある意味、大クレバス地帯よりもいやらしい。 慎重に歩を進める。そのうち、踏み跡にでくわしたの で、それを辿る。もっとも、踏み跡もところどころずぼっと大きな 穴(つまりクレバス)が開いているので、要注意だが。 実際、途中、僕は 2度ほど、雪の下のクレバスに 片足が落ち込んでしまった。うーむ、分からないものだ。

ミディのコル(Col du Midi)に着き、正面に文明の砦 エギーユ・デュ・ミディを見る中、人の数が急に増えてくる。 最後の登りは、ナイフリッジの雪稜。 ドムは疲労の色が濃い。 やがて、ようやく、雪稜の先のエギーユ・デュ・ミ ディの一展望台に着く。観光客と(出発の準備、あるいは到着後の片付 けをする)登山者が入り乱れる面白い場所だ。

岩崎元郎氏の「夏山」だったか、ヨーロッパ・アルプスは観光客と登 山者との区別が厳然としてある、観光客はロープウェイの駅の向こう の雪原に足を踏み入れるなんて考えもできない、一方、日本の山はそ の区別が曖昧で、結果、不幸な事故が後を絶たない、といった記述が あった。このミディの駅はその典型のような気がす る。展望台の柵の向こうは、いきなり両側の切れ落ちたナイフリッジ の雪稜。技術や装備無しでは、文字通り一歩も踏み出せない。メール・ ド・グラスの氷河にしてもそうだ。観光客は、垂壁の梯子を下ろうな どと思いもしない。確かに、その区別は非常にはっきりしている、と 肌で感じた。

さて、実は、エギーユ・デュ・ミディの山頂に行くには、ここから有 料のエレベーターに乗らなくてはいけない。どうしたいか、とドムに 問うと、
「別に行きたいとは思いませんけど。俺にとってはここが山頂ですから。」
恰好いい台詞だぞ、ドム!

(つづく)


おたより紹介

か・ゆさんから

まさ君が渡英してからかな? 日本で「ラルク・アン・シェル」 というバンドが売れました。なのでまさ君が仏語では? と 聞いたと言うくだりに、笑ってしまいました。

——全く存じませんでした。お便りありがとうございました! (まさ)


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次回予告

次回は… 「あこがれのアルプス登山 (その六) 〜〜 初のPD岩雪ルート」

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