△第77号: 風雪のフォースト・ビバーク (ベン・ネビス) (前編)
- 発行日
- 2008/09/05
- 発行者・筆者
- まさ (坂野正明)
まさです。
この夏、イングランドは記録史上最も dullest (日照時間の少ない) な夏だったようです。北アイルランドは wettest
(雨の多い) でもあったとか。 でも、僕は 7月と 8月とは全週末山に入りました。
雨なら雨で楽しみようもあるというものですから。とはいえ……、もう少し 天気がよかったらなぁ、と思わずにはいられなかったのも
正直なところではあります。
さて今回は、3月に英国最高峰スコットランドのベン・ネビス山に雪山登山に 行った時の記録を中心に据えます。件名は、言わずと知れた有名な書の題名を パロディーさせて頂きました。 僕たちとって初めての経験で、記憶に残る山行でした。 あわせて、「ビバークの奨め」(その一)を書きました。 お楽しみ下さい。
目次
登山記録編 〜〜 風雪のフォースト・ビバーク (ベン・ネビス) (前編) 〜〜
復活祭の休暇にクローディアとハイランドのベン・ネビス山へ。 長距離ドライブの後、中腹の CIC小屋まで登る。21時すぎ着。 それなりに風がある。つまりちょっとした吹雪。雪はパウダー。 近くで天幕設営にかかる。 ペグを雪の中になるべく深く埋めて踏み固める。 しかし、雪がパウダーなもので、心許ない。
3本ペグを埋めたところで、突風。すべてぶっ飛ばされた! 張り綱とテントをつなぐプラスチックのリングまで ぶっ壊れた! 冗談……。 おまけにテントのポールの 1本が、端に近いところで折れてしまった。
気を取り直して、まずはポールを補修。 そしてペグを打ち(埋め)直していく。 5本ペグを打ち終わったところで、もう大丈夫だろう、と いう気になってくる……その矢先、先ほどよりもさらに強烈な突風が 襲ってきた。今度は、ペグはもちろん、 中に入れた重いリュックサックにも関わらず、 テント本体まで風で転がる羽目になった。げげげ……。
もうすでに 24時を回っている。 ことここに至り、(恥を忍んで) CIC小屋に入れさせてもらうよう、
お願いすることにした。
……ところが、あろうことか、断られてしまったのだった……!
CIC小屋は、スコットランド登山クラブ(SMC)所有の私設小屋。 営業小屋ではないので、管理人もいない、自炊形式の小屋。
英国ではごく普通の形態の山小屋
。 そして、SMCの方針として、原則としてその場で立寄る人はお断りなのだ、
という。命に関わるような問題、つまり現に山岳救助を求めているような 状況ならば別だろうが。しかし、たとえばこの場合なら、
「天幕が張れないなら、今から駐車場まで戻れ(=下山すれ)ばいいのでは?」 ということになるのだという……。
二人とも既に大いに疲れている。丸一日のドライブの後、 ここまで重い荷物を抱えて登ってきて、吹雪の中、3時間格闘 していたわけで……。 荷物を持って今から下山するのは現実的でない。 やむを得まい。これはビバークですね。 テントがある、ということは、ポール無しで中にもぐり込めば、 贅沢なツェルトになる。 CIC小屋の風下側の壁の横に移動して、そこにテントを 「敷いて」、中にもぐり込む。
僕はフォーカスト・ビバークは数え切れないほどしてきたが、 フォースト・ビバークは初めて。クローディアも同じ、と言う。 ま、これも経験ですね。
風が強いので、二人で足の部分でツェルト(=テント)を 押えながら寝ることになる。 狭いスペースで何とか可能な限りの快適さを確保して横になる。 午前 1時45分。疲労困憊。
(つづく)
議論提起編 〜〜 ビバークの奨め (その一) 〜〜
♪テントの中では月見はできぬ〜
と、僕は時にパロディーします。自然の中で天幕を張るのもいいですが、 本当に自然を感じたければ、やはりテントも無しでないと! 星空を眺め、風を感じ、虫の声を聴き、時には雨の中、 本当に自然に抱かれて眠るのには、テントは邪魔です!?
「ビバーク」とは英語では bivouac
または bivvy
のことで、
日本語では時に「不時露営」「緊急宿泊」などと訳されます。 端的には、テントでなく、まして小屋でもない場所で一晩寝て過ごすこと
を指します。 もともとそう予定している場合(フォーカスト・ビバーク: forecast bivouac,
「簡易露営」)もあれば、予定外にそうなってしまう場合 (フォースト・ビバーク: forced bivouac,
「(緊急)不時露営」)も あります。
人は、(盲目の人は別にして)暗闇には本能的な恐怖を感じるもの だと思います。おばけは大抵、夜に出現することになってますしね。 実際、視覚が遮られるので、よく言って大いに不便です。 人工的な灯に満ちた文明社会を別にして、自然の中では、特に単独だと 原始的な恐怖を感じることも少なくないでしょう。
登山者と言えど、その例外ではなく、ほとんどの場合、日のあるうちに 行動するものです。もちろん実際的にも、暗いと、足を踏み外したり、 道に迷ったりと、潜在的な危険度が一般にはるかに高くなりますから、 これは当然です。こういう客観的な危険度に多分原始的な恐怖とが 少し加わって、山中にいて日没が近づくと、焦りが出てくるのは よくある光景でしょう。そしてその焦りのために、 より一層事故が起こりやすくなっているのもまた事実ですね。 登山の事故の多くは、下山中に、それも遅い時間に集中して起こる、 と聞きます。
そんな時、ビバークの装備と経験とは、このうえなく心強い味方に なります。いざとなったらここで泊まればいい、と腹を括れるため、 無用に焦らなくて済みます(明日の仕事が……とかそういう余計なことは この際、忘れましょう)。事故を避ける大きな秘訣の一つでしょう。
(つづく)
Webページ更新情報
- この記事は、以下にも載せました。
http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/magazine/backnumber/eu077.html - この 2週間前に Ben Nevis山に行った記録を以下に載せました。
天候に恵まれずすごすごと帰ってきたのですが……。
http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/record/uk/20080307_bennevis.jis.html
次回予告
次回は… 「風雪のフォースト・ビバーク (中編) — ビバークの朝」
See you later!
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