電気自動車のアンチ論を論駁する
Electric vehicle at a public charging spot1 第1章: はじめに
2020年代に入り、世界の潮流として、疑いなく(バッテリー式/蓄電池式)電気自動車(通常「EV」。さらに正確にはBEV (battery electric vehicles)あるいは Full EVs、時に「純EV」とも)に移行しつつある。にも拘らず、依然として多くの人々が伝統的な化石燃料を燃やすICE(内燃機関/Internal Combustion Engine)車から離れようとしていない。欠点がない技術など存在せず、EVとてその例外ではない。しかし、圧倒的多数の人々が懸念する「問題点」は、根拠ないものであることがほとんどだ。
残念なことに、多くの人々はフェイクニュースや虚偽の主張、そしてそもそも事実に反する議論――一言で言えばプロパガンダ――に簡単に惑わされる。EVも例外ではない。いや、EV関連についてはその傾向がむしろ一層顕著にさえ見える。反EVプロパガンダの背景として、伝統的産業の主要部門、なかでも老舗自動車メーカーや石油産業といった強力な産業組織にとっては、EVへの移行が、既存ビジネスモデルや利益を脅かすものとして都合悪い、ということは、大いにありそうだ。
実際、日本ではEVに対する反感がとりわけ強いように見受けられる。私が見るところ、従来のマスメディアとソーシャルメディア(SNS)ともに、EVに賛成よりも反対する投稿、議論、記事の方をはるかに多く目にする。私の興味関心から考えて、私はむしろEV推進派の「フィルターバブル」の中にいるはずにしてそういう観測だから、これは驚きと言っていい。日本の主要産業は長らく自動車製造業であり、そんな日本の自動車製造メーカーは、業界の雄のトヨタを含めて、最近までICE車に固執していた。トヨタは、ハイブリッド旗艦車「プリウス」を皮切りに、20年間にわたって従来型(マイルドまたはフル)ハイブリッド車(Hybrid vehicle (HV))で世界を先導してきた。そういう意味で、EVへの反感を持ちたくなる気持ち理解はできる。日本産業界の「王」がEVの分野では敗北に直面しており、それは国家の誇りへの傷になる。しかし、感情的な議論は結局、誰のためにも、世界のためにも、そして将来の世代のためにもならない、というものだ。
私はバッテリー式電気自動車(BEV)である MG 5 Estate (2022年モデル) に2年にわたって乗ってきた。バッテリー容量は61 kWhで、カタログ上の航続距離(WLTP航続距離)は240マイル(約390 km)だ。MG 5に乗ってきた実体験を通じて、理論に留まらず一ドライバー視点でのEVのメリットとデメリットを理解した。
本ブログ記事では、EVに対するよくある誤った主張——いわば迷信——を列挙し、その一つ一つに対してなぜ間違っているのかを説明する。また、EVについてあまり採り上げられないような現実のデメリットとメリットについてもリストアップする。いくつかのポイントはクライマー(登山家)の視点からのものになっている。もしEVがクライマーのような車のヘビーユーザーに適しているなら、EVはほぼ誰にとっても好適と言えるだろう。
注記: 本記事では、特に関連性がある場合を除き、EVの初期費用(車両価格と自宅充電設備)については一般に無視している。車両価格は年によって大きく変動し、総コストの比較は年間走行距離に大きく依るためだ。極端な例として、車を所有するも車庫に入れたままで全く運転しないのであれば、EVを使うメリットが関係なくなる以上、最も安い中古のICE車が経済的にも環境的にも最善となる。
本記事では、距離の単位として「マイル」を使用する。1マイルは約1.6 km (キロメートル)に相当する。
2 第2章: よくある誤解と誤った主張
2.1 航続距離と充電時間
航続距離と充電時間は、非EVユーザーにとっておそらく最大の懸念事項だろう。
典型的な非EVユーザーにありがちな主張の例: 「小型の自家用ICE(内燃機関)車は、たとえばフォードのフィエスタを例にとると、ガソリンタンクの容量が40リットルで約350マイル(約560km)走る。大型車ならさらに長距離走れる。高価な最高級モデルを除けば、これに匹敵する航続距離のEVはほとんどない。加えて、エンジン車の給油は数分で済むが、EVの充電には何時間もかかる。EVは非実用的に違いない!」
2.1.1 私の回答
2.1.1.1 簡潔な回答
航続距離も充電時間も、大半の標準的使用パターンにおいて、実用上の問題にならない。「充電時間」の問題はほぼ「迷信」だ。なぜなら、給油のためにわざわざガソリンスタンドまで運転するICE車と異なり、自宅での充電開始は秒の単位で済み、充電が終わるまでその場で見つめている必要はないからだ。
2.1.1.2 詳細な回答
この主張は、ICE(内燃機関)車に特有の概念に根ざしている。それはEV時代においてはもはや意味をなさない古い概念だ。
(プロのトラック運転手を除き)圧倒的多数のドライバーは、1日に350マイルも運転することが日常だったりはしない。英国での1日あたりの平均走行距離は10〜30マイルと言われている。実際、通勤、学校の送り迎え、買い物などで大した距離は運転しないものだ。
休暇で長距離を運転することはあるかもしれない。しかし、上述の安全のため、休憩なしで140マイル(約225km)以上運転すべきではないとされる。休憩のために停まった時、その時間に車を充電すればよいのだ。
このため、ほとんどの人は実際には350マイルもの航続距離をそもそも必要としない。寝ている間に自宅で充電できるなら、日常生活には航続距離100マイルで十分だろう。(スコットランド北部の)ハイランド地方在住クライマーの私は、英国の他のどこよりも山や岩場が離れている土地柄のため、頻繁に長距離を運転する。それでも、1日に200マイルを超えることはめったにない。私の格安EVの航続距離は210〜240マイルだ。ハイランド地方のクライマーでさえ長大な航続距離を必要としないなら、一体誰が必要としようか?
もう一つの誤解は、「給油しに行く」という概念だ。ICE車のドライバーは、迂回してガソリンスタンドへ行く煩わしさに慣れている。面倒だからこそ、そう頻繁にスタンドに行かなくて済むように長い航続距離がほしくなるのは自然なことだ。対照的に、EVで一番嬉しいことの一つは、ガソリンスタンドに行かなくて済むことだ! 単に自宅で充電する。「迂回時間」はゼロ。プラグを差し込むのは通常10秒で済み、支払いの手間も、ディーゼル給油用の手袋も、ノズルを持って寒空の下で震えながら待つ必要もない。車が充電中、あなたは家でくつろぎ、あるいは寝ているわけで、「充電にかかる時間」は実質ゼロと言っていい。
運転が職業の人でない限り、日常生活で充電時間を気にする必要はそうないことだろう。
2.2 充電所の不足
主張: 「充電スタンドの数が足りないし、建設するのは難しすぎる、ないしコストがかかりすぎる。」
2.2.1 私の回答
2.2.1.1 簡潔な回答
英国にはすでになかなかの充電ネットワークがあり、その拡大も法外に高価なわけではない。電力網は人が住むすべての地域をカバーしているし、充電所は無人であるために運用コストも低い。
2.2.1.2 詳細な回答
[英国では]EV充電所の数はすでにガソリンスタンドの数を超えており、なお急速に増えている。英国において、バッテリー容量が小さなEVであっても到達できない場所はないと思う。例えば、ハイランド地方のごく小さな村であるラガン村およびロイ・ブリッジ村にも充電所が戦略的に設置されている。この2つの村は、ハイランドの東西を結ぶ幹線道路A86号線の17マイル(27km)に及ぶ荒野の両端に位置するものだ。
もっとネットワークが密になれば良いとは(特にスコットランドの僻地において)確かに感じはする。しかし、現状の充電所ネットワークでも大きな障壁になることはない。実際、夜のハイランド地方を走る際、以前乗っていた古いICE車では燃料切れをしばしば心配していたものだが、今のEVの方がその心配は少ない!
建設コストに関しては、充電所を建設するには、電力網(どこにでもある!)と、わずか1平方メートル程度のごく小さな土地があれば十分だ。だからこそ、スーパーマーケットなども簡単に設置できるのだ。ガソリンスタンドとは異なって、常駐スタッフを必要としないため、コストは低く抑えられる。
クライマーや夜に移動する人々にとっての大きな利点は、ほとんどのEV充電所が24時間稼働していることだ。僻地には24時間営業やクリスマスにも営業するガソリンスタンドはほとんどないことと対照的だ。かつてスコットランドを真夜中にICE車を運転中、その場所から目的地までにあるガソリンスタンドはすべて閉まっていて、かつ目的地まで燃料が持たないと気付いたため、35マイル(56km)も逆戻りして運転した、強烈な記憶がある。24時間無人のEV充電所なら、そんな目に遭わなくて済む。
2.3 バッテリーの劣化
主張: 「バッテリーは数年でひどく劣化する(スマートフォンのように)。そして交換には莫大な費用がかかる。」
2.3.1 私の回答
2.3.1.1 簡潔な回答
最新のEVバッテリーは長持ちするように設計されている。10年以上または10万マイル(16万km)以上、潜在的には20万マイル(32万km)以上、十分な容量(80%以上)を維持する可能性が極めて高い。
2.3.1.2 詳細な回答
バッテリーの交換は確かに高価だ(車の残存価値と同じくらいかかることがしばしば)。しかし、実際に交換が必要になることはほぼない。ほとんどのメーカーは、8年または10万マイルで約80%のバッテリー容量を保証している。しかも現実には、長距離走行後でも劣化はこれよりはるかに低いという報告もよくある。
一般に、使用者は、バッテリーが長持ちするよう気をつける(100%や0%の状態で長時間放置しない)べきだが、上述の保証は、どのように充放電しているかに拘らず有効だ[つまりおそらく安全マージンを考慮した数字]。
重要な点として、バッテリーの劣化は電費(効率)(マイル/kWh)にはほぼ影響しない。劣化したバッテリーは、単に少し小さくなった燃料タンクのようなものだ。車は以前と同じエネルギー効率で走り、ただ最大航続距離が少し短くなるだけだ。EVで50万マイル(80万km)走るつもりでもない限り、バッテリー交換は現実問題として必要になることがない。これが、中古EVも比較的、値段が落ちない理由でもある。
このように、EV搭載のリチウムイオン電池の寿命はなかなかのものだ。さらに、近く商用化も期待される全固体電池は、リチウムイオン電池の2〜3倍長持ちすると期待されている。
2.4 重量、道路への負荷、タイヤ粉塵
主張: 「EVは重く(10倍も重い!)、道路を傷め、有毒なタイヤ粉塵を出す。」
2.4.1 私の回答
2.4.1.1 簡潔な回答
「10倍重い」という主張はそもそも馬鹿げている。EVは同等のICE車より10〜20%重い程度だ。幾分重くはあるが、回生ブレーキを使用するため、有毒なブレーキダストの排出は少なくなる。
2.4.1.2 詳細な回答
標準的な自家用ICE車の重量は約1.5トンだ。もしEVが10倍重ければ15トンになり、満載の大型トラックと同じになってしまう! 実際には、重いバッテリー(と軽い駆動系のバランス)で、BEVは同等のICE車よりも約10〜20%重い程度だ。
道路への負荷は、おおよそ軸重の4乗に比例する。つまり、道路損傷の大部分はトラックやバスによるものであり、乗用車によるものではない。そのため、EVのわずかな重量増加は無視できるレベルだ。
環境粉塵に関しては、EVのブレーキは回生ブレーキ(モーターを使って減速する)使用が大半であり、物理的なブレーキパッドはめったに使われないことから、EVはブレーキダスト(主要な汚染物質の一つ)をほとんど排出しない。EVの高いトルクをフル活用してアグレッシブな運転をすればタイヤの摩耗は増えるだろうが、慎重なドライバーであればそれほどタイヤ摩耗することはない。そもそも、ドライバーがスポーツ走行を楽しむということであれば、馬力ある(高級)ICE車を運転するのと何ら変わりない。
最後に、バッテリー技術は進化している。WeLionをはじめとして世界のメーカーが競って、現在の標準的なEVバッテリーよりも数倍高いエネルギー密度の全固体電池を開発中だ(プレスリリース参照)。固体電池の発展次第で、将来のEVはICE車に比べてさえ軽くなる可能性がある。
結局、EVはICE車に比べて現在は若干重いにせよ、総合的に見て、はるかに環境に優しい。
付け加えれば、そもそも、道路へのダメージやタイヤ粉塵への懸念から軽量車を選んだという人を、私は一人も見たことがない。だから、もし誰かがこの理由でEVに反対するのであれば、それはきっと反対のための反対であって、中身のない議論に過ぎないことだろう。
2.5 寒冷地でのEV
主張: 「猛吹雪で立ち往生したら、バッテリーがすぐになくなって凍死してしまう。ICE車ならもっと長く暖房を維持できる。」
2.5.1 私の回答
2.5.1.1 簡潔な回答
間違いだ。EVは車内を非常に長時間暖かく保つことができ、アイドリング中のICE車よりも長く持つこともしばしばある。
2.5.1.2 詳細な回答
これは寒冷地に関するよくある「迷信」だ。昨今のEVは、マイナス20℃の外気温でも車内を一晩中余裕で暖房することができる。
参考までに、日本の冬の北海道で外気温マイナス5℃程度の場合、4人家族の家庭で24時間で消費するエネルギーは約20kWh(主に暖房)だそうだ。一方、MG 5は61kWhのバッテリーを搭載している。つまり、フル充電されたMG 5のバッテリーは、大きな家に住む4人家族の普通の生活を3日間支えられるということだ。イメージが湧くだろうか?
ICE車の暖房効率は悪い。エンジンの廃熱に頼っているからだ。熱を得るためにはエンジンを回し続け(アイドリングし)、燃料を消費しなければならない。EVは電気を使って直接車内を暖める。もしヒートポンプが備わっていれば、極めて高効率だ。そうでなくても、フル充電されたEVには大量のエネルギーが蓄えられている。
緊急時で(もしくは単に勿体なくて)エネルギーを節約したいなら、シートヒーターを使うこともできる。これは車内の空気全体を暖めるよりもはるかに(3〜4倍)少ないエネルギーで済む。私の格安MG 5にもシートヒーターがあり、ありがたさを実感する(特に財布に!)。
冬場にEVの効率が落ちるのは事実だ(車内暖房の使用、空気密度、タイヤの硬化、そしてバッテリーの化学的性質、具体的には電解液の粘度)。しかし、ICE車の効率も冬には落ちる。主な違いは、EVだとデータが画面に表示されるため、運転者がそれに気づきやすいという点だけだ。
最後に、(2026年現在標準の)リチウムイオン電池の化学的性質に起因する冬場の性能低下は、近い将来実用化されるだろう全固体電池において著しく改善されると期待されていることを付記しておく。固体電池は名の通り、液体中のイオン移動に依存しないからだ。
2.6 運転スタイルと電費(効率)
主張: 「高速道路ではEVの航続距離が激減する。」
2.6.1 私の回答
2.6.1.1 簡潔な回答
空気抵抗はすべての車に等しく影響する。しかし、EVは低速域でのエネルギー効率が極めて良いため、高速域での効率低下がICE車よりも顕著に感じられるのだ。
2.6.1.2 詳細な回答
単純な物理学だ。空気抵抗は(高速域では)速度の2乗に比例する。速度をあげればあげるほど、効率は加速度的に低下する。
ICE車では、エンジンは低速域やましてアイドリング時にひどく非効率だ。車速を上げるとエンジンはむしろ効率よく動くようになり、結果、空気抵抗による損失が相対的に目立たなくなる。EVでは、モーターはあらゆる速度域でほぼ理想的に効率的だ。そのため、時速70マイル(約112km/h——英国の高速道路での標準制限速度)での空気抵抗の増加が、エネルギー消費量にそのまま反映されて目に見えるのだ。
リュックサックで喩えてみる。
- ICE車: あなたはすでにレンガという重荷(エンジンの非効率性)を背負っている。そこにワインボトル(空気抵抗)を一本加えても、あまり違いは感じない。
- EV: あなたのリュックサックは空っぽだ。そこに同じワインボトルを加えると、すぐに重さを感じる。
車を空気中で押し進めるために必要なエネルギーは同じだ。EVは他のことにエネルギーを無駄遣いしていないため、車速の「コスト」がより明白になるだけなのだ。
2.7 火災のリスク
主張: 「リチウム電池は可燃性で危険だ。」
2.7.1 私の回答
2.7.1.1 簡潔な回答
ガソリンも引火性が非常に高い。研究によると、EVはICE車よりも火災発生率が低いことが示されている。
2.7.1.2 詳細な回答
EVに搭載されているリチウムイオン電池は物理的に損傷すると発火する可能性がある。だからこそ、恐ろしく頑丈なケースで保護されている。一方、ガソリンタンクは、実質的に爆発性の液体が入った薄い金属のバケツだ! データによれば、火災という意味で、EVはICE車より危険ではない。アクション映画のような壊滅的な衝突事故が起きれば、いずれの車両も発火する可能性はもちろんある。そもそもそのような事故を避けることが最善の防御策であることは言うまでもない。安全運転を!
2.8 休日の利用
主張: 「年に一度の休暇旅行に車が必要だ。EVはそれに適していない。」
(SNS上である日本人がしていた主張。)
2.8.1 私の回答
2.8.1.1 簡潔な回答
用途のうちの1%を理由として車を買うものではない。必要ならその休暇の時だけレンタカーを使えば済む。
2.8.1.2 詳細な回答
年に一度の旅行のためだけに車を所有するのは、経済的に正気の沙汰ではない(購入価格、税金、保険、車検、駐車場代)。都市に住んでいるなら、カーシェアリングやタクシーの方がきっと安上がりだ。もし日常生活で車が必要なら(通勤や田舎暮らしなど)、EVを買うとよい。1年のうち360日に完璧に適応する。そして、ドライブ休暇に出かける残りの5日間だけ、ディーゼル車か長距離用EVを借りればよい。そうすることで、両方のいいとこ取りができるというものだ。
2.9 電力網への負担
主張: 「みんながEVを充電したら、電力網がパンクする。」
2.9.1 私の回答
2.9.1.1 簡潔な回答
気候変動対策して人類が生き延びるためには、いずれにせよ発電量を増やす必要があることは自明。EVは実は電力網の安定化に役立つ。
2.9.1.2 詳細な回答
発想の転換で、優先順位を逆転させて考えよう。
私たち人類は脱炭素化しなければならない。これは、輸送の電動化を意味する。結果、確かに電力需要は高まり、だから、発電容量の増強もまた不可避だ。もしそうしないならば、つまり現状通り化石燃料へ固執するならば、気候変動由来の破滅的災害が訪れることになってしまう。
電力網の安定性の観点から見れば、再生可能エネルギー(特に風力や太陽光)は変動するため、厄介に見える。しかし、EVの充電は柔軟だ。今すぐ充電が必要というケースは全体から見るとごく一部で、ほとんどの車は電力需要が低くて電気料金が安い夜間に充電するものだ。電力会社の「スマート充電」プランとそれに対応する充電器、アプリを使えば、EVは電気が最も安い時(時には負の料金になる時さえある!)に自動的に充電する。これは本質的に、全国のEV車両群を巨大な蓄電池とし、余剰の再生可能エネルギーを吸収し、電力網のバランスを取って安定化させる助けとなる。
2.10 総合的な環境への寄与と害
主張: 「EVの製造は相当の汚染を伴い、電気はどうせもとを辿れば石炭から作られている。EVはICE車と変わらない。」
2.10.1 私の回答
2.10.1.1 簡潔な回答
繰り返し行われてきたライフサイクルアセスメント(LCA)は一貫して、EVの方がクリーンであることを示している。「汚れた」電力網でさえそうであり、再生可能エネルギー源を大幅に取り入れている現実の電力網なら尚更だ。
2.10.1.2 詳細な回答
たとえEVが100%化石燃料で発電された電気で走ったとしても、火力発電所(効率40〜60%)は小型車のエンジン(実用的には効率20〜25%)よりもはるかに効率的であるため、ガソリン車よりクリーンになる。しかも、現実の電力網は100%化石燃料では全くない。2025年現在、英国の電力網は約50%が再生可能エネルギーであり、ノルウェーに至ってはほぼ100%だ。日本は20%と大きく出遅れているが。電力網が年々クリーンになるにつれて、実質上、あなたの所有するEVも年々一層クリーンになる。対照的に、ICE車は購入した日と同じ汚さのままだ。
「レアメタル(稀少金属)」については、まずリチウムは根本的に豊富に存在する(宇宙で3番目に豊富な元素であり、酸素よりも豊富だ)。需要の急増が一時的に価格を押し上げることはあっても、原油のように根本的に限られた資源とは異なり、それは短期的な問題に過ぎない。コバルトは懸念事項(採掘過程に関する倫理的な問題がある)ながら、多くの新しいバッテリー(テスラやBYDが使用するLFPバッテリーなど)はコバルトを使っていない。業界はクリーンなサプライチェーンへと急速に移行している。
[日本語版追記1] モーター用に強力永久磁石ネオジウムもレアメタルの一つだ。これも、ネオジウムを使わないEVもすでに実用化されている。ネオジウムの稀少さがEV普及の致命的な問題にはならないことだろう。
[日本語版追記2] (リチウム電池に替わる)高性能ナトリウム電池の最初の商用生産もついに始まったと[報道された](https://cleantechnica.com/2026/01/23/catl-begins-commercial-production-o... "CATL Begins Commercial Production Of Sodium-Ion Batteries")。ナトリウムは塩から簡単に作られる。つまり地上で最も安価な元素の一つだ。ナトリウム電池は、性能的に、寒冷地には特に強いらしい。
2.11 マイルド及びフル・ハイブリッド車との比較
主張: 「ハイブリッド(HV)の方が安くて効率的だ。なぜわざわざ純EVにする必要があるのか?」
2.11.1 私の回答
2.11.1.1 簡潔な回答
BEV(純EV)はほとんどの日常用途に最適だ。ハイブリッドにはニッチな用途はあるが、機械的に複雑で、依然として化石燃料を燃やす。
2.11.1.2 詳細な回答
日常使用において、環境への配慮に加えて、以下の理由からBEVは(マイルドまたはフル)HVに勝る:
- ランニングコスト: 電気はガソリンより安い。
- 税金: 税制上の優遇措置(場合による)。
- メンテナンス: BEVには整備が必要なエンジンがない。HVは電気システムとガソリンエンジンの両方を整備しなければならない(両方の悪いとこ取り?)。
- 運転の快適さ: BEVの方がはるかに優れている。
他に以下のような代替案がある。いずれも街乗りではBEVのように動作するが、一定の距離を超えるとガソリン燃焼に切り替わる。
- EREV(レンジエクステンダーEV): モーターで駆動するが、バッテリー充電用の小型ガソリン発電機を搭載。通常、BEVよりかなり小さなバッテリーを積んでいる。航続距離の不安解消には良いが、依然として燃料を燃やす。
- PHEV(プラグインハイブリッド): プラグを差して充電することで通常約30マイル(50km程度)の電気走行ができ、その後ガソリンに切り替わる。街乗りではフルHVより経済的で運転も快適だが、それ以上の距離では基本的にフルHVと同じ。
| BEV | EREV | PHEV | フルHV | 従来型ICE | 備考 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 現実的な炭素排出量 | 最低 | 低 | 中 | 高 | 最高 | 街乗り + 時折の長距離走行 |
| バッテリー容量 [kWh] | ≳50 | ∼25 | ∼15 | ∼1 | 0 | 12V鉛バッテリーを除く |
| バッテリー重量(容量) | 最高 | 高 | 中 | 最低 | 0 | 12V鉛バッテリーを除く |
| 機械重量 | 最低 | 中 | 最高 | 最高 | 高 | バッテリーを除く |
| 機械的複雑さ | 最低 | 中 | 最高 | 最高 | 高 | ≒ メンテナンスコスト |
| プラグイン充電可能か | Yes | Yes | Yes | No | No | |
| 電気走行航続距離 [km] | ≳290 | ≳140 | ≳80 | 最小 | 0 | フルHVはユーザー制御不可 |
| 総航続距離 | ≳290 | ∼800 | ∼800 | ∼800 | ∼800 | 中型ファミリーカーの場合 |
| ガソリン走行効率 | —— | 低 | 高 | 高 | 最高 | HVは従来型ICEより重い |
注記: ここでのガソリン走行効率は、高速道路での定速走行のように、車両がガソリン(または化石燃料)の燃焼に完全に依存する場合の、最も厳密な意味での効率を意味する。従来型ICE車は軽量であるため、そういう意味で、ハイブリッド車に比べても有利になる。対照的に、街乗りではフルHVは従来型ICE車よりもはっきり少ないガソリン消費(例えば30%減)で済む。HVは不必要な時にエンジンを自動的に切り、可能な限り回生ブレーキを使用するためだ。
どれが各人の用途に最適かは、本質的に、環境問題の視点に加えて、街乗りと長距離運転の典型的な使用割合、そして(化石燃料走行時の)快適さに劣る運転への許容度などに依存する。その中で、PHEVは、初期投資が相当高い点を除けば、あらゆる側面でフルHVに勝っている。EREVはPHEVよりも低コストで快適な運転(つまりEVモード)を長く楽しめるが、ガソリン走行モードでの燃費はPHEVよりも大幅に(例えば30%ほど)落ちる(日本語追記: 距離あたりの炭素排出量もそれだけ増える)。それがトレードオフだ。 技術的には、長距離移動中にEREVやPHEVを充電することももちろんできる。しかし、BEVよりもはるかに頻繁に停まって充電する必要があるから、わざわざ充電するかという問題がある—EREVやPHEVの最大の利点を無視しているようなものであるし。
クライマーとしては、車中泊をするなら、BEVが議論の余地のない王者だ。暖房やエアコン稼働時に最高に静かだ。ハイブリッドは、(小さな)バッテリーを充電するために20分ごとにエンジンがガタガタと始動し、排気ガスで環境を汚染する上に、睡眠が妨げられる。
結局のところ、HV、PHEV、EREVは、長距離移動の頻度、必要性、緊急性に応じて、一定のニッチ市場を持っている。しかし、環境面のマイナス点を無視したとしても、それらは多くの人が考える以上に「ニッチ」な存在、つまり本当にそれらが最適な人は思ったより少ないはずだ。
3 第3章: EVの現実的な問題点
格安EVであるMG 5 Estate (2022年モデル)に過去2年間乗って、車を買う前には予想していなかったいくつかの問題に気付いた。逆に、問題になるだろうと予想していたことの少なからずが、実際には無問題だった。
これら問題の大半は、結局のところ、私の格安EVのソフトウェアや設計に固有のものか、現在の英国の充電インフラ状況ならびに私の自宅充電環境に起因している。言い換えれば、それら問題のどれもEV自体の本質的な問題ではない。状況は時間の経過とともに右肩あがりに改善していくだろう。実際、それら問題の多くは、高性能な最新EVと自宅に良い充電設備を持つ人にとっては、今でもおそらく問題にならないと思われる。
3.1 充電所に関するよくある誤解
私が見誤っていた中で一番のものは、駐車場のあるすべての店にEV充電所があるべき、という考えだった。買い物をするところならどこでも充電できる未来を想像していた。英国の郊外型スーパーマーケットが客を呼び込むために安いガソリンスタンドを併設するように、EV充電所の設置するとEVに乗る人を惹きつけるのによいだろうと考えていた。
現実には、私はスーパーの充電所を使うことはほぼ全くない。だから、長距離の自動車旅行中を除けば、充電所があるという理由で特定のスーパーに行くことはない。単純な経済学だ—自宅での夜間電力による充電が、車を充電する最も安い方法なのだから。スーパーを含めて一般の充電所は、通常、自宅充電よりもはるかに高価だ(稀にある無料充電所を除く)。自宅から遠く離れた旅行中など、どうしても今、充電が必要な場合を除いて、私は充電所を使わない。加えれば、スーパーの充電器が一般の充電所の中で最安や最速の選択肢であることも稀なので、スーパーの充電所を利用する理由はほとんどないことになる。ただし、最後の点に関しては、(英国の大手スーパーマーケットチェーンの一つである)Tescoが、(充電所プロバイダーの)PodPointと提携してこの状況を変えつつあるかもしれない。
前述の通り、ほとんどのEV所有者は大抵の場合、自宅で充電する。そういう意味で、高密度の充電ネットワークは、多くの人が考えるほど日常生活に重要ではない。もちろん、旅行者(クライミング旅行中の私も含めて!)には充電が必要なので、良い充電ネットワークは不可欠ではある。しかし、十分な充電速度を持つ充電ネットワークが一旦全国をカバーすれば、それ以上のものは、あれば嬉しいおまけ程度に過ぎない、とも言えよう。
重要な例外として、ホテルの駐車場の(特に夜間用の)充電設備は充実していてほしい。駐車場を利用する宿泊客は旅行者であり、夜間充電できるかどうかは大きな違いになる。
別の例外は、車が一日中駐車される、クライマーやハイカー用の人里離れた駐車場の低速充電所だろう(日本語追記: もしくは長時間駐車することが予想される田舎の観光名所やイベント場の駐車場)。自宅から遠く離れた駐車スペース(たとえば英国の田舎の道路によくある道路脇の待避所)まで運転し、低速充電器にプラグを接続して、一日登って車まで戻ってきたら充電完了されていたら、感動する! すぐに実現するとは思わないとは言え、それは私の夢だ。(もしそれが実現せず、目的地駐車場では充電できない場合、それでも山での長い一日の後にすぐに帰路に着きたいというこの特定のケースにおいては、(以下で事実上ニーズを否定している)超急速充電があればありがたいことになる—これは山に行く人々やクライマーのニッチなニーズではあるが!)
報道によれば、ある日本の市役所が庁舎の駐車場に低速(3kW)ながら格安のEV充電所を設置したものの、結局、利用者の大多数が地元市民ではないことに気づき、撤去したという。計画立案者はEVユーザーの需要と充電所利用パターンに完全に無知だったに違いない。おそらく、地元の人々が役所を訪れる30分の間に車を充電することを期待していたのではないか。大いなる誤解だ。
地元のEV所有者は、より便利で通常(はるかに)安い自宅で充電するものだ。充電量にしてわずか1.5kWh(約9kmの航続距離)を得るために、わざわざ30分間(それも高い)充電するようなことはしない。そのような(特に低速の)充電器を使用する圧倒的多数は遠方から来た人、それも役所には用がないけれど充電場所を必要としている人々だ。そういう人が車をそこで6時間充電すれば18kWhを得られるわけで、それは価値ある充電になる。
私は、公共充電ネットワークは、道路と同様に、基本的なインフラの一部であり、その提供は市役所の義務だと考える。とは言え、計画立案者は、そういった充電所は主にその土地を訪問する人々のものであることは理解しておくべきだろう。高速道路のサービスエリアのようなもので、地元の人はめったに使うものではない。
3.2 故障中の充電所
スコットランドでは、一般に利用可能な充電場所(以下、「公共充電所」と呼ぶ。その多くは民間企業の運営)が故障中であることがよくある。これは、特にバッテリーが切れそうな状態で到着したときには、強く失望する。ほとんどの充電所には複数の充電端子があり、通常はそのうちの1つは大丈夫だが、もしそれがすでに使用中だったりするとやはりがっかりすることになる。
一応、スマートフォンアプリが、どの端子が「使用中」か「故障中」かを含め、すべての公共充電所の状況をリアルタイムで教えてくれはする(注: 筆者が確認しているのは英国の話だけだが、日本でも同様と推測する)。充電所に行く前に状況を確認できて便利ではあるが、あなたが着く1分前に誰かが来て使用可能な最後の端子を占有してしまうという(わずかながらの)リスクを排除することはできない!
現実には、EVを買ってから2年になる私の経験では、(スコットランドの)ハイランド地方では需要よりも公共充電所の方がはるかに多いこと、そして少数のお気に入り無料充電所を除いて自宅以外ではめったに充電しないこともあり、この問題ゆえに行き詰まって大いに困ったことは一度もない。スコットランドにおいて改善すべき懸念事項であることには違いないが!
3.3 充電所の料金設定
私が大いに問題視していることに、公共充電所の料金が場所によって大きく異なることがある。
(英国の)ガソリンスタンドの場合、同じ地域内の料金差は通常小さい(約5%以内)。だから燃料代を10円とか節約するためにわざわざ迂回するのは合理的ではない。高速道路のサービスエリアのガソリンスタンドは例外(10〜20%高い)だが、それでもEV充電所の料金差に比べれば微々たるものだ。
EVの場合、事業者や充電速度によって価格差は3倍にもなることがある。スコットランドでは、わずかながら今も残る無料充電所を除くと、最安値は約30ペンス(約60円)/kWh(2025年現在)だが、最も高いところは100ペンス(約200円)/kWhもする。イングランドでは、(私の知識はイングランド北西部からミッドランズにかけてに限られているとは言え)平均価格はもっと高いようで、最低でも40ペンス(約80円)/kWh程度)はして、急速充電はしばしば89ペンス/kWhとかする。
これほど大きな料金格差があるため、頑張って時間をかけて最も安い充電所を探し、迂回してもそこに行くことは、経済的に理にかなう行動になる。最安の(国際)航空券を探すのに似ている(あるいは英国では鉄道も同様に料金差が極めて大きい)。ちゃんと調べなければ、ぼったくられるわけだ。
この状況は間違っていると私は考える。私は常に公共交通機関は均一価格であるべき(例: 往復切符は単純に片道の2倍)を唱導してきた(注: 日本は航空路線を除いてこの状況にかなり近いが、英国はそうではないため、原文では英国の読者を想定してここで断っている)。交通インフラは宝くじであってはならない。(ほとんどの道路に通行料が発生しない)英国の道路網はこれをほぼ達成しており、EV充電も同様であるべきだと私は信じている。不可欠なインフラを利用する際に、市民がぼったくられる心配をする必要がないようにすべきだ。
原注: テスラ社スーパーチャージャーは、家庭の電気料金体系に似た変動料金制(夜間は安い)を採用している。背景として電力網の電力需要があることは理解できる。異なる事業者間での基本料金がもっと一貫しているという条件付きで、私は、時間帯別価格設定も喜んで受け入れる。とは言え、その実現には、おそらく政府の介入が必要と予想はする。
3.3.1 コストの現実
残念ながら、英国の公共充電所は非常に高価だ(ごく一部の例外を除く)。もし夜間料金(例: 19ペンス(38円)/kWh)を使って自宅で充電すれば、距離あたりのコスト(電費)は同レベルのICE車の(燃費の)約半分だ。しかし、スコットランドにおいて、最も安い急速充電所でも約45ペンス(約90円)/kWhかかる。高速道路の充電所は70ペンス〜89ペンス(約140円〜180円)/kWhだ(2025年現在)。これは、EVで長距離旅行に出かけると、電気代・燃料代という点では、ICE車の2倍のコストがかかる可能性があることを意味する。
人々にEVへの切り替えを促すという点において、この料金構造は逆行している。私見では、政府は公共充電所での料金を規制するか、化石燃料への税金を大幅に引き上げるか、あるいはその両方を行うべきだ。
3.4 充電所が見つけにくい
些細ながらイライラする問題に、実際の充電器の場所を特定するのにしばしば苦労することが挙げられる。(スマートフォンの)充電所アプリは位置情報を提供してくれるものの、精度が不十分なことがよくある。数キロメートル先からでも見えるような巨大な看板があるガソリンスタンドとは異なり、EV充電器はごく小さな設備で、しばしば隅に隠れているため、特に夜間は見つけるのが容易でないことがままある。
私は充電所までの最後の100メートルで、充電ユニットを見つけようと駐車場を10分間ぐるぐる走り回ったことが何度もある。この問題は、アプリが5メートル精度の位置情報や、(充電設備がある)私有地内でのGoogleマップにも出てこないような詳細な近傍地図を提供してくれれば解決するだろう。
同じ理由で、運転中に偶然充電所を見つけることはめったにない(高速道路のサービスエリアを除く)。スマホのアプリやEV車載カーナビを使って能動的に探す必要がある。これは、都市部の幹線道路沿いのガソリンスタンドが目立っていてすぐ見つかるのとは対照的だ。公平を期して言えば、充電所には前述のような大きな料金差があるため、いずれにせよどの充電所で充電するかを事前に計画したくなるのが普通で、運転していて偶然見かけないことが問題になることは現状ではまずないが。
3.5 公共充電所で複雑な支払い
ガソリンスタンドでの支払いは簡単だ。給油機あるいはカウンターで普通に支払うだけだ。2025年現在(の英国では)、充電所でのEV充電は、標準的な非接触カード決済を受け入れる一部の高速道路充電所を除き、はるかに複雑だ。(日本語注: この節の以下は、英国の現状についての話になる。)
ほとんどの場合、各(充電)事業者専用のスマートフォンアプリかRFIDカード(無線ICカード)、あるいはその両方が必要だ。結果、私のスマートフォンには充電アプリを6個とかインストールしている。ユーザーインターフェースは様々で、支払い方法も直接のクレジットカード登録から、特定(ないし業者専用)のデジタルウォレットへのプリペイド式「チャージ」まで多岐にわたる。
どのように充電を開始するか、さえ自明ではない。RFIDカードを使うのかもしれないし、アプリの特定のボタンを押すのかもしれないし、充電器の画面の指示に従ってボタンを押すのかもしれない。一方で、一部の事業者の充電器には説明も画面も何もないこともある(日本語注: だから、ネット接続されたスマホのアプリで操作することに全面的に頼る)。また、あらゆる努力をしたにもかかわらず充電がさっぱり始まらないという経験も何度もある。
充電が始まらないことよりも悪いのは、「ケーブル・グラブ」と呼ばれる事象で、EVが(EV側の)充電端子をロックして離そうとしないことだ。これは通常、充電がうまくいかなかった後に起こる。これが起こると、5メートル離れた隣の充電器を試すために車を動かすことさえできないので、恐怖だ。
これが安全機能(高電流が流れるから安全確実な接続が必要)であることは理解しているが、イライラすることに変わりはない。私のMG 5には充電に関するユーザー制御機能が皆無で(それはEVにしては珍しいと聞いている)、結果、充電しようとして今まで何時間無駄にしたか数え切れない……なにしろ、何が起きていて何が問題なのかか全く分からないのだから。EV運転で目的地までにかかる時間は一般的にはICE車と同程度ながら、EVの(長距離運転の)場合、充電失敗による大幅な遅延のリスクは現実にある。
原注: これは私の格安EVに特有のことかもしれない! 他のEVオーナーの経験も聞いてみたいものだ。
ガソリンスタンドとは異なり、公共充電所は無人だ。充電に失敗したら、自分一人で何とかしなければならない。以前、テスラのスーパーチャージャー充電所で充電に失敗したのに、カード支払いの先払い金がすぐに返金されなかったことがあった。その場でサポートに電話するも、20分待たされても繋がらず、諦めた。結局、日を改めて何度もサポートに電話をかけて交渉した末、4週間後にようやくお金が戻ってきた。(スコットランド最大の充電ネットワークの) ChargePlace Scotlandは、待ち時間が短く(約10分)、一般的には相対的にマシだが、あくまで相対的な話に過ぎない……。
この充電の複雑さと失敗率は、新規EV購入者にとって(もし知っていればの話だが)最大の難点と私は考えている。充電速度よりもはるかに深刻な問題だ。
3.6 充電速度
3.6.1 利用可能なEV充電システムの種類
以下に、英国における充電速度をまとめる(注: JPは日本の規格を指す)。ACとDCはそれぞれ交流と直流を指す。
| 種類 | AC/DC | 出力 [kW] | コメント |
|---|---|---|---|
| 日本の家庭用2ピンコンセント | AC | 1 | |
| 英国の家庭用3ピンコンセント | AC | 2 | |
| 最も遅い公共充電器 (JP) | AC | 3 | |
| 最も遅い公共/家庭用専用機 | AC | 7 | 多くのEVの最大AC入力 |
| 一般的なAC公共充電器 | AC | 22 | フルに使えるEVは少ない |
| 最速のAC公共充電器 | AC | 43 | ごく一部のEVのみ。廃れつつある |
| 最も遅い急速充電器 | DC | 40 | CCS2 または CHAdeMO |
| 一般的な急速充電器 | DC | 50 | CCS2 または CHAdeMO |
| 一般的な超急速充電器 | DC | 150 | MG 5は最大90 kW |
| 最高速充電器 (2025年) | DC | 360 | CCS2 のみ |
| トラック用および次世代充電器 | DC | 1000 |
技術的注記: 英国では、AC充電器はType-2コネクタを使用する。DC充電器はCCS2またはCHAdeMOを使用する。CCS2(英国では通常単に「CCS」と呼ばれるが、CCS1はCCS2と互換性がないことに注意)はヨーロッパで多数派規格であり、私が見た限り、英国のすべての公共急速充電所はCCS2用端子を提供している。CHAdeMOは劣勢かつむしろ減っているところで、また最高充電速度も英国ではしばしば50kWに制限されている。
3.6.1.1 充電にかかる時間
私のEVであるMG 5 Estate (2022)は61 kWhのバッテリー容量を持ち、WLTP航続距離は240マイル(約385km)になる。これは2022年の家族向けEVとしては長い航続距離だったが、英国自動車製造販売協会(SMMT)によれば2025年の平均(「平均」が何を意味するかはともかく)は300マイル(約480km)に近いと報告されている。私のMG 5のバッテリー容量だと、(英国標準である)家庭用3ピンコンセントを使って0%から100%まで充電するのに約30時間かかる。英国標準(私は持っていないが)の家庭用EV専用充電器あるいは最も遅い交流(AC)型公共充電所ならば9時間だ。一方、(英国の)標準的な急速充電器(50kW)では、1時間で約70%の充電である(この時間見積もりについては以下の章の項目5を参照)。
なお、上記の見積もりは0%から100%の充電の場合だが、現実にはそのような充電をすることはほぼないことを付記しておく。
3.6.2 EVバッテリーと充電に関する基礎知識
-
急速充電とバッテリーの耐久性: 急速充電は低速充電よりもバッテリーに負荷をかける。しかし、最新のバッテリーではその影響はどんどん小さくなっている。EVメーカーは安全上の理由から雨天時の充電を避けるよう推奨しているが、雨天を常時避けるのは、英国では非現実的だ! これらの点のため、時間がある限りは、低速充電の方が一般的に安全であり、バッテリーをより長持ちさせる、という利点がある。
- 「20-80%則」: リチウムイオン電池は、充電量0%または100%に近い状態に置かれている間は、劣化が早まる。充電量は20%から80%の間に保つのが最善だ。100%までフル充電するのは長旅の直前だけにすべきだ。
- 充電曲線: 充電量は充電時間に対して線形ではない(=比例しない)。50kW充電器に繋いでも、常に50kW引き出せ続けるわけではない。低い充電出力(私のMG 5であればたとえば7kW)でない限り、バッテリーがフル充電に近づく(80%を超える)と、充電セルを保護するために充電出力(つまりは充電速度)ははっきりと低下する。
- 出力制限: 充電速度は充電器と車のどちらかの「最も弱いボトルネック」によって決まり、また制限される。私のMG 5は交流なら最大7kW、直流なら最大87kWを受け入れられる。350kWの充電器から充電することもできるが、最大でも87kWの入力しか得られない。
-
電力共有: 多くの公共ユニットは電力を共有している。もし2台の車が50kWユニットに接続した場合、それぞれ25kWしか得られないかもしれない。個人的には2年間で一度しか経験していないが、起こり得ることだ。
- 超過料金: 多くの公共急速充電器は、45〜60分以上滞在すると高額のペナルティ(例: 1分あたり1ポンド=200円)を課す。ほとんど(一部を除く)の公共低速充電器にはこの制限はない。
3.6.3 EVに望ましい充電速度
実際に必要な最低速度はどれくらいだろうか? 答えは「速ければ速いほど良い」という単純なものではない。夜間に充電するか、移動の途中で立ち寄るかによって完全に異なる。
誰も24時間EVを運転し続けたりしないことを思い出してほしい。睡眠などで長時間停車する際、低速充電で完全に十分であり、通常は(はるかに)安上がりだ。そういう背景で、ほとんどの個人EVユーザーは、9割の充電はおそらく低速充電を使っている(上記ポイント1参照)。もし国内のすべての宿泊施設やキャンプ場に十分な数の低速EV充電器が備われば、長距離ドライブを除いて、急速充電器の必要性は急激に低下するだろう。
3.6.3.1 EVに望ましい低速充電速度(自宅/目的地)
簡潔な回答: 7 kWが英国の第一標準であり、十分だ。
内訳は以下の通りだ。最も一般的な充電シナリオは自宅での夜間充電で、通常は安価な8時間(例: 23:30から07:30)ほどの夜間電力を利用する。
60〜80kWhのバッテリーを搭載した最新の長距離EVを考えてみよう。バッテリーの健康を維持するためには、20%から80%の間で運用するのが理想だ。すなわち、日常的「満タン」充電にはバッテリーの約60%(およそ36〜48kWh)の補充という計算になる。実際にはそれ以下で済むことがほとんどだ。
- 計算: 7 kW(英国の標準的な家庭用備え付け充電器の電力)で8時間充電すると、56 kWhになる。
- 判定: これは、日常的「満タン」充電に必要な36〜48 kWhを容易にカバーする。
3.6.3.1.1 もっと低い電力でも許容できるか?
私は、専用の7kW家庭用充電器を持っていない。標準的な3ピンの英国用家庭用コンセントを使用しており、出力はわずか2.3kWだ。8時間の夜間で約18kWh(私のバッテリーの約25〜30%)を供給する。そして、ほとんどの場合、私にとってはこれで十分なのだ! 空に近い状態で帰宅し、翌朝すぐに満充電で出発する必要がある場合(つまり2日連続でそれぞれ300kmとか走る場合)を除き、この低速「トリクル充電」で私の毎日の走行距離は完全にカバーできる。
3.6.3.2 望ましい急速充電速度(旅行中)
簡潔な回答: 50 kWはほとんどの旅程で実際に十分だが、(利用可能になりつつある)100 kWだと嬉しい余裕ができる。
急速充電が必要なのは長距離移動の時だけだ。安全と健康のために、ドライバーは2時間ごとに休憩を取るよう推奨されている。2時間の高速道路走行で約120マイル(約190km——日本の場合はそこまでいかないことが普通だろう)走ると仮定すると、平均効率3.5〜4マイル/kWh (5〜6 km/kWh)に基づいて、約30kWhのエネルギーを消費することになる(日本語注: 最新の小型車EVは実はさらに効率が高いものが多い)。
理想的には、休憩中にこの30kWhを補充したいところだ。
- 50 kW充電器: 30 kWhの補充に約36分かかる。これは許容範囲だ(下記参照)。
- 100 kW充電器: 30 kWhの補充に約18分かかる。これは「お茶とトイレ休憩」に完璧な長さだ。
- 350 kW充電器: 30 kWhの補充に約5分かかる。素晴らしい(ガソリン給油に匹敵する短時間)が、車が準備完了になる前にトイレに行く時間もほとんどない。
- 1 MW充電器: 30 kWhの補充に2分未満。バスやトラック向け(日本語注: 中国メーカーの最新ニュースでは一般車にも展開を考えているようだが!)。
現実には、一度の停車でその30kWhを完全に補充しなくてはならない状況はめったにない。最終目的地(または次の予定停車地)に到達するのに十分な電気容量があれば、途中で充電を切り上げて出発して全く問題ない。
例えば、航続距離240マイル(約390km)の車で200マイル(約320km)運転する場合、充電量に念のための余裕が欲しいかも知れない。50kW充電器で15分間サッと充電すれば、約12kWh(約45マイル(72km)分)が追加される。これで目的地に快適に到着し、そこで安く一晩充電するのに十分も十分だ。
空から満タンへのバッテリーサイクルを何度も繰り返す必要がある超長距離旅行(例: 1日で400マイル/650km以上)をしない限り、50kW充電器で完全に十分だ。実際、それは運転の自然なペースに合ってもいる。停車し、足を伸ばし、トイレに行き、お茶の一杯でも飲む。そんな休憩が終わる頃には、旅を終えるのに十分な充電が完了している。
3.6.3.2.1 現実世界の制約
- 充電曲線: たとえ350kW充電器にEVを接続しても、車の方がその充電速度を受け入れないことはある。たとえば私のMG 5は87kWが最大充電電力だ。加えて、バッテリーの現在の充電容量が80%を超えると、車はバッテリーのセルを(過熱や過充電から)保護するために充電速度を大幅に落とす。
- 寒冷気候: 冬場、リチウムイオン電池は他の季節ほどの高電流は受け入れない。EVに優れたバッテリー予熱システムが備わっていない場合、充電器がどれほど強力であっても、「急速」充電は30〜40kWに制限されるかもしれない(私のMG 5がそうだ)。最近の高性能EVはこの問題をかなりうまく処理しているようではあるが。これは現在の液体電解質バッテリーの原理的制限としてよく知られている。来るべき全固体電池はこの問題を解決すると期待されている。
結論として、一般大衆にとっては、50kW充電器のネットワークで概ね十分であり、100kW充電器のネットワークが実現すれば、実用上の理想と言っていい。英国は前者をほぼ達成しており、後者に向かっている――イングランドの主要な高速道路のほとんどは後者もすでに達成していると思う。BYDのようなEV及びバッテリー企業が超高出力充電器(1 MW以上)を開発しているが、これらは電気トラックやバスに必要なものであり、一般のファミリーカーには必要ないものだ。
4 第4章: EVか、ICE車か?
4.1 なぜEVを選ぶのか? (メリット)
EVを必要としないのがどういう人かを議論する前に、大多数の人々にとってはEVがICE車より優れている理由をまとめておく。
私にとっては、決定的な動機は倫理的なものだ。EVへの切り替えは、現在享受している移動の自由を保ちつつ気候変動を減速させるために、個人が取り得る最も効果的な手段の一つなのだから。ただ、環境問題を考えなくても、そもそも自動車ユーザーの使用感として、EVはICEよりも優れている。
ICE車に比較してのEVの主な利点を以下に列挙する。
- 次世代への倫理的責任
- 優れた運転体験
- EVの運転はスムーズで、おそろしく静かで、必要となれば瞬時にトルク(加速)が得られる。
- (強力な回生ブレーキを使って減速する)「ワンペダル運転」により、街乗りや渋滞時のストレスが大幅に軽減される。友人の言葉を借りれば、「どんな(安物)EVでも、同等のICE車より気持ちよく運転できる」のだ。
- 信頼性とコスト
- メンテナンス: EVは可動部品がはるかに少ない。オイル交換は不要、スパークプラグも、排気系も、クラッチもない。回生ブレーキのおかげで、ブレーキパッドははるかに長持ちする(ハイブリッド車も回生ブレーキを備えているが、EVの回生ブレーキの方ずっと強力だ)。
- ランニングコスト: 夜間電気で自宅充電できれば、距離あたりのコストはガソリンやディーゼルより大幅に安い。
- 価値(減価償却): 購入費用こそ高いものの、中古EVも価値はそれほど落ちない(中古EV市場は変動するものの、それが現在の傾向)。
- 「車内の環境」(特にクライマーにとっての利点)
- 巨大容量のバッテリーが使い放題だ。
- 車中泊: 一晩中エアコン(暖房または冷房)をかけたまま車内で眠ることができる。静かで、排出ガスがなく、安全だ。ICE車で同じことをするにはエンジンを回し続けておく(うるさく、環境汚染し、排ガスは危険でもある)か、車と独立の冷暖房機器が必要だ。なかでもハイブリッド車ではエンジンが断続的にかかるため、睡眠が大いに邪魔される。比較して、EVの車内で寝るのは至福の体験になる。
- 利便性
- 自宅充電できるなら、毎朝「満タン」だ。迂回してガソリンスタンドへ寄ったり、凍える寒さの中で燃料ノズルを持ってじっと立ちつくす必要は二度とない。
- 特に深夜、空いているガソリンスタンドまで行かなくては、と心配する必要がない(クライマーにとっては切実な問題)。
4.2 ICE車の方が依然合っているのはどんなユーザー層か?
上記の数多くのメリットがあるとは言え、EVがおそらく最適な選択肢ではないというユーザー層は存在するだろう。以下に列挙する。
- 超長距離ドライバー(「ミック・ファウラー」スタイル): 著名クライマーのミック・ファウラー(Mick Fowler)はかつて、ロンドンからスコットランドのハイランド地方まで、週末だけで往復1900kmとかを走破していた。交代で運転しながら夜通し走り、停車は燃料補給のためだけだ。現在のEVではこのような走行を効率的に行うことはできない。もし最長のクライミング時間を確保するために(旅程を)1分でも削る必要があるならば、ICE車は依然として唯一の選択肢だ。(ただし、そのような旅を年に一度しかしないのであれば、その旅のためにはICE車を借りて、普段使いにはEVを所有することを考えた方がいいだろう!)
- 「スピード狂」: EVの効率は、高速域ではがくっと落ちる(空気抵抗は速度の2乗に比例する)。もしアウトバーンを(あるいは英国で違法に)時速150km以上とかで巡航するなら、航続距離は極端に落ちるだろう。
- ICE車愛好家: 電気モーターが入出力、あるいはペダルの踏み込みと加速との間できわめて線形に近い特性曲線を示すのと対照的に、エンジンははるかに変化に富んだ特性曲線を示す。一般のドライバーは前者をずっと好むだろうが、私のバイク乗りの友人の一人は、その癖のある特性曲線の方を好んでいたものだ。それは好みというものだ!
- バンに住むクライマー: バンに住んで人里離れた遠くの岩場へ旅するなら、航続距離が鍵になるかもしれない。重いEVバンは高価であり、キャンピングカーに改造すると(重量のため)航続距離はさらに悪化する。とはいえ、状況は変わりつつある。例えば、シトロエン・ディスパッチのEV版はWLTP航続距離230マイル(370km)あり、多くの人にとって現実的な選択肢かもしれない。
- 自宅に駐車スペースがない人々: これがおそらく最も一般的な障壁だろう。マンションやアパート住まい、あるいは専用駐車スペースのない長屋住まい(日本語注: 英国の都市では長屋はごく普通の住宅形態)の人は、充電のために安価な夜間電気を簡単に使えない。高価な公共充電所に全面的に依存した場合、EVのランニングコストはICE車よりも高くなる(日本語注: 少なくとも英国の場合)。政府が路上充電コストの問題をなるべく早く解決してくれることを願うばかりだ。
- 実は、私は長屋のような場所に住んでいる。住居を探す時、自宅でEVを充電できることが最優先事項だった。私の住まいは、居住エリアは2階にあるが、(専用)玄関は1階で、幸運にもドアには猫用入口(!)があって(電気ケーブルを通せる)、玄関から30メートルのところに専用駐車スペースがある。そのため、35メートルの延長ケーブルを使うことで、私は2階の一般家庭用コンセントから夜間電気でEVを充電できている。夜間充電するたびに35メートルのケーブルを夜に敷いて朝に回収するのは面倒なのは確かだ……。でも実行可能であり、過去2年間そうしてきた。専用の家庭用EV充電器を設置することは今の私の夢になる。
5 第5章: 新規EV購入者への現実的なアドバイス
私はEVのMG 5を買う前にリサーチこそしたが、見落としていたこともあった。以下、新規購入者への私からのアドバイスをいくつか記す。
- 充電コネクタの種類 (日本語注: 英国のEVユーザー向けであり日本の状況は異なる!): 車の充電器がCCS2(DC用)とType-2(AC用)に対応していることを確認しよう。CHAdeMOはヨーロッパでは廃れつつある規格だ(主に古い日産リーフやレクサスのUX300eで使われる)。(少なくとも欧州では)CCSが未来のようだ。
- V2L (Vehicle-to-Load): キャンプ中に車から家電(電子レンジやノートPCなど)に給電したいなら、V2L機能(日本語注: ヴィークル・ツー・ロード機能またはさらに広くはV2G(ヴィークル・ツー・グリッド)機能とは、EVから電気を(コンセントを通じて)取り出す機能)をチェックしてほしい。MG、Kia、HyundaiはType-2アダプター経由でこれを提供している。日産はCHAdeMOで行っている(日本語注: CHAdeMO規格はかなり早い時期からV2Gが備わっている(Wikipedia)——日本での災害対策には幸便か?)。
- 最大AC充電: 車が少なくとも7kWのAC充電を受け入れられることを確認してほしい。11kWや22kWあればさらに嬉しくはあるが、英国(ほとんどの家庭が単相電気)では必須ではない。
- 航続距離: これについては詳しく説明した。ガソリンスタンドに行く必要がないため、ICE車ほど長い航続距離は必要ない。
- 実質航続距離: WLTPの公式数値は無視してほしい。「実世界」の運転では10〜15%差し引き、冬の運転では最大30%差し引いて考えたいところだ。
- 冬用機能
- バッテリー温度管理: 寒い環境で定期的に運転する場合、冬場のパフォーマンスを確認したい。
- ヒートポンプ: 寒冷地(スコットランド!)では強力な省エネになる。
- シートヒーター: 通常の車内暖房の数分の一のエネルギーで体を温めてくれる。
- LEDヘッドライト: 効率的だが熱を出さないため、ライトの前部が雪で覆われて光を遮ることがある。ヘッドランプウォッシャーやヒーター機能があるか確認してほしい。
- 車載ソフトウェアとユーザーインターフェース: 車の車載ソフトウェア/アプリを確認したい。充電のスケジュールや制御ができるか? 凍てつく朝、ベッドから車内を予熱(解凍)できるか?
- 運転支援: 一部のEVはほぼ自動運転に近いことができる。あれば嬉しい(あるいは必須?)機能だろう。(日本語注: 最近のテスラ車では、高度運転支援機能はサブスク制になった)
- ディーラーにて: 充電の実演を頼もう。実際に自分でプラグを差し込み、充電を開始し、終了してみよう。公共充電所がどう機能するかも尋ねてみるとよいだろう。
- 私が最初の(そしてこれまでのところ唯一の)EVを買った時、店を出てから2箇所の違う場所で充電に失敗した。仕組みを理解していなかったからだ。結局、ディーラーに尋ねるために翌朝まで車中泊する羽目になった(家まで何百kmもあって充電なしには帰れなかったから)! 私のような過ちを犯さないように! ディーラーを去る前に遠慮なく「馬鹿な」質問をしよう。



1.1 プロパガンダについて
おおむね確立されている科学的コンセンサスに対して、高等教育を受けた人々でさえ、直感的な「懸念」に基づいて自信満々に(!)反論することは珍しくない。たとえば、「バッテリー製造は汚染を伴う」とか「電気はどうせ化石燃料で発電されている」といった理由でEVは無意味だと主張することなどが典型的な例だ。専門家は、これらのトレードオフをできるだけ厳密に評価(Life-Cycle Assessment (LCA) = ライフサイクルアセスメント)した結果として、EVの方がクリーンであるという科学的コンセンサスに至っているのに対し、上記のような断片的な事実に飛びつき、包括的なデータを無視して技術全体を否定しようとする素人が後を絶たない。
経験則として、関連分野の専門家集団全体でコンセンサスが得られている場合、素人にとってはそれは議論の余地がないものというべきだ。非専門家(たとえばあなた)が、何千人ものプロ科学者が見落とした致命的な欠陥を発見する可能性は極めて低い。専門家は、素人が思いつくような「懸念」を何年も前に精査し、その上で現在のコンセンサスに至っていることだろう。
20年前、科学者であった私の同僚が、人類活動を原因とする地球温暖化に対して反論していたのを覚えている。彼の論拠は、ローマ人が北イングランドでブドウを栽培していたという記録を根拠としていた。その記録は、当時は気候が温暖だったことを示唆する、というわけだ。彼の主張は2つの理由でお話にならない。第一に、局地的で曖昧な歴史的逸話は地球(規模の)温暖化を否定するものにはならない。第二に、気候科学の専門家がそのような明白な歴史的事実を無視しているはずがない。科学界全体が見落としていた事実を(素人の)彼が発見したとは不可能級に考えにくい。
皮肉なのは、その彼が自身の専門分野で論文を書く際には、査読に備えて、分野の専門家が提起しそうなあらゆる懸念を考慮していたに違いないことだ。仮に彼に対して素人が(思い込みの)「決定的」な指摘を投げかけたら、一笑に付して、確かな証拠と論理で一蹴していたことだろう。しかし彼は、専門外の科学分野になると、なぜか「自信満々な懐疑論者」の素人に自らなってしまったのだ。
私はクリティカルシンキング(批判的思考)の信奉者だ。何であれ言われたことは、無批判に鵜呑みにすべきではない。しかし、それは周知のコンセンサスに対する懐疑的な議論に対しても同様だ。その懐疑論自体に対しても、クリティカルシンキングを適用しなければならないというものだ。
何が「正しい」かを判断するのは単純な話ではない。しかし、ある科学分野の業界全体が共通認識を持っていることであれば、それは通常、その時点での人類にとっての最善の結論だ。もちろん、(人間は完璧ではない以上は)根本的な欠陥がある可能性はゼロではないとはいえ、もしそれを発見した人がいれば、その人はノーベル賞かそれに準ずる賞を受賞することになるだろう。
だから、もし素人であるあなたが何かの科学的コンセンサスに根本的な欠陥を見つけたと思ったなら、自分が本当にノーベル賞級の天才なのかどうか、一度立ち止まって考えてみることをお勧めしたい。自然科学において、99.9999%のケースでは、間違っているのは科学的コンセンサスではなく、あなたの論理や知識の方だ。とはいえ、クリティカルシンキングの姿勢で問い続けることには価値があろう。その疑問を解決しようとする努力することが、そのテーマをより深く理解することにつながる。それは定義上、個人的進歩に違いない!
なお、個々の科学者の主張がすべて正しいわけではないことは付記しておく。科学者も自身の背景やスポンサーによってバイアスがかかることはある。だから、コンセンサスのように見える主張を目にしたときには、それが本当にその業界で広く支持されているかどうかを見極めることが最優先事項になる。
耳にした主張を評価するためのヒント:「95%の信頼区間」や「2σ(シグマ)レベル」といった信頼性の定量的表現をチェックしよう。そういった記述は、正真正銘の科学的厳密さのしるしになる。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)による代表的な主張は、その良い例だ。もし記事にそのような表現がないならば、その主張は話半分に聞いておいた方がよいかもしれない。