▲欧州的登山生活▲
△第50号: 新春の英国最高峰北壁登山 (中編)
- 発行日
- 2007/05/30
- 発行者・筆者
- まさ (坂野正明)
まさです。
先週末、春の連休は、湖水地方ですばらしい時を過ごしてきました。
一方、今号は新春の英国最高峰北壁登山の中編、今回から、実際に英国最高峰の ベン・ネビスに北壁から登ります。
一般論としては最高峰だからと言って登山として素晴らしいとは全然限りませんが、 このベン・ネビスは、その北壁の険しさは名高く、
英国最高の冬期登攀の舞台となっています。実際、この冬には、日本の有名な
登山家(馬目弘仁、横山勝丘)が訪れて、地元の(英国最高の)登山家(Dave MacLeod)と
共に新ルートを開拓したのがニュースになっていました。
僕は今までベン・ネビス山に登ったことはないのですが、あまり深く考えずに いきなり北壁の冬期登攀から入りました……随分な経験となったものでした。 というわけで、多分このメルマガとしては初めて、1日の登山の記録を 2回に 分けて配信します。お楽しみあれ!
目次
登山記録編 〜〜 新春の英国最高峰北壁登山 (中編) 〜〜
今日、1/4 こそかのベン・ネビス登山の日。 今回は、中でも、頂上まで直登するルート Good Friday Climb を目標とする。 最終ピッチの確保支点が英国の最高高度にある、つまり頂上の三角柱(!)を 使う、という素晴らしいルート! 150m、Scottish Winter Grade III。
夜明け前に発。ベン・ネビスの標高は 1350m 足らずとは言え、出発地点は 海抜 20m、楽な登山ではない。 暖かい最今、もちろん登山口に雪はない。 北壁の方向に回り込み、やがて登場した軟雪の急斜面を登っていく。 斜度が 45°を越えて岩壁に達したところで、 ピッチ開始。
実は時間が押してしまっていた ため、結局、元々の目標は諦めて、 近くの相対的に易しい (Grade II の) Gardyloo Valley に登ることになった。 ただし、時間が遅いという ことは、速く登る必要がある、ということ。だから、できる限り、1ピッチの 長さを長くしていきたい。
2ピッチ目。60m まで伸ばす。 ルートは雪の谷(ルンゼ)の急斜面で右側は岩壁。 ザイル一杯に近付いたところで、右側に小さなレッジを見つける。 レッジは悪くないが、支点が取れるか? ナッツ(Rock)2番と 3番とを セットするが、あまりよくない。ピッケルでさらにぶちこんでおく。 とはいえ、どれくらい信頼できるものやら(実際、あとで回収したグレアムによれば、 1個は非常に悪くてすぐ取れた、ということ)。そこで、下部にアングル・ピトンを 打ち込む — 謳うピトン — こんなものかな? 大丈夫だろう — と期待する。
今や、僕らは谷のまっただ中。次のピッチで傾斜はさらにいや増す。 ダブル・アックスで軟雪を登っていく。 右の岩壁には、何本かの細いクラックが走ってはいる。しかし、全て ベルグラで覆われていて、中間支点は取りようがない! これが噂に名高い 「支点の取れないベン・ネビス」か……。こんな易しいルートでもそうだとは。 なんとか氷の小滝(というよりつらら)や雪に半分埋もれた岩から中間支点を 3箇所取り、55m の後、運良く都合のいいレッジを見つける。 岩のクラックに残置されたナッツが氷に埋もれている。上にアイス・スクリューを 足して、これで十分な確保支点と言えよう。
次のピッチは、氷っぽく見える。楽しい氷壁登攀の始まりかな? 角度は大したことない。しかし、氷の質はよくない — 空気の気胞が多く……。 結果、この 60m のピッチで中間支点は 3本のアイス・スクリューのみ。 2本目だけ、まぁまぁ信頼できるか、という状態。ひぃ〜〜。 今回、元々のルートは岩がちということもあり、 持参したスクリューは 5本のみ。 しかし、この谷のルートでは、岩の確保支点なんてほとんど取れないではないか! スクリュー 1本はこのピッチの確保支点としてすでに使って いるし、あと1本は上の確保支点用に残して置く必要がある。 だから、3本のアイス・スクリューこそ僕が中間支点として使える 全てであって、まさにそうした次第だ。
運のいいことに、ちょうど 60m のところに 立派なレッジがあった。22cm のスクリューを使ってアバラコフ・スレッドを作り、 スクリュー自体も打ち込んで、負荷分散をかける。ただし、氷の質がいかにも よくない……。 他の支点の可能性を頑張って探したい。しかし、ザイルはすでに 60メートル一杯。何より、暗くなりつつある今、急ぐ必要がある! 幸い、雪のレッジ自体は座って確保するのに、快適で安全だ。 これで妥協とする。次のピッチで僕さえ落ちなければいい。
2人がフォローしてきて僕が次のピッチのリードに発つ頃には 16:30。まだものは見えるが、すでに日没後。ヘッドライトを装着。登る。
(つづく)
登山ミニ知識編 〜〜 英国冬期登攀 (その二) 〜〜
(前号(第49号)からのつづき。)
冬期登攀としてスコットランド 西部で有名なのは、まずベン・ネビス(Ben Nevis)、隣接する グレン・コー(Glencoe)、北のトリドン(Torridon)、スカイ島(Isle of Skye)の キュウリン(Cuillin)山地というところでしょう。トリドンとキュウリンの方がずっと 北ではありますが、標高が 1000m に達するか達さないかしかないため、実際は 1350m あるベン・ネビスの方が条件が整っていることが多くなります — つまり、このわずか 300m〜400m の違いが大きいようです。 東部で有名なのはケアンゴーム(Cairngorm)です。内陸にあって緯度も高度も 高いため、(ベン・ネビス山頂と並んで)英国で最も気温が低くなる場所、 つまり冬期登攀の条件が最も整いやすい場所です。 因みに、「条件が整う」とは、たとえば、滝が凍って氷の登攀ができる ようになることです。液体の水が流れているようでは、登れませんから。
運がよければスコットランドの山々全域どこも条件が整いますが、 運が悪ければごく限られた場所だけ、(冬期登攀に適した)まともな条件に なっている、というのがスコットランドの冬です。特に最近は暖冬続きで なかなか条件にならないのが悩みのたねです。 だから何カ月も前から予約すべき航空券を考えると、○月○日に スコットランドで冬期登山……というのは、ちょっとリスキーな話に なってしまいます。英国の多くのクライマーが(冬期登山のため)欧州本土の方に 行く傾向にあるのも頷ける話でしょう。格安航空運賃もあることですし。 飛行機を使った長距離旅行をすることで、温暖化に貢献しているのは皮肉な話では あるのですが。
Webページ更新情報
- この記事は、以下にも載せました。
http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/magazine/backnumber/eu050.html
次回予告
次回は… 「新春の英国最高峰北壁登山(後編) 〜〜 あれが頂上稜!?」
See you later!
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