△第34号: ピーク地方の「新」岩場(バンフォード・エッジ)
- 発行日
- 2006/09/12
- 発行者・筆者
- まさ (坂野正明)
まさです。
前号でアナウンスしましたように、 今週から一時帰国するので、3週間くらい当メルマガはお休みになります。
今回は、いつものピーク地方東部での岩登りの記録です。同地域はかなり 回ったものですが、今回行った バンフォード・エッジ(Bamford Edge) は、初めての訪問になります。それもそのはず、 スタニッジ(Stanage Edge)に隣り合うこの岩場は、少なくともここ何年かは 立ち入りが禁じられていて、つい何カ月か前に、 クライマーの立ち入りがようやく認められたものです。静かな岩登りが 楽しめたものでした。
あわせて、前号に引続き、岩登りについて 紹介します。今回は、伝統登攀における中間支点の紹介です。一度で 終わるほど単純な話ではないので、まず基本から解説、ということにします。 お楽しみ下さい。
目次
登山記録編 〜〜 ピーク地方の「新」岩場(バンフォード・エッジ) 〜〜
いつものパートナー、アダムと。 着くやいなや、明らかなラインの Magnum Force (VS 5b) が呼んでいる気がする。 グレードから想像できるように、最初のルーフが核心だろう。 アダムと二人、これは登らないとね、と。 ボルダリング・マットもあることだし、いざこれから!
リードは僕の役割。 しかし……、右から左からと何度も試みるも、結局、ルーフを超えられず、 次回への課題となってしまった。残念無念。
気を取り直して、少し下って、Porthole Buttress に行き、 今度こそ、と HVS 5b の Plimsoll Line に取り付く。斜めに登っていくところは問題ないが、最後のスラブが ちょっと怖い。中間支点が限られ、どう取っても、最後の中間支点は、 崖の上から 3メートルほど下になる。その中間支点は完全には信頼できなくて、 本当に信頼できる支点はその 1メートル下。悪い事にそこはレッジだから、 つまり上から落ちるとレッジの上に墜落することになって気持ち良くない……。
何度もスラブの登攀を試みては、レッジまで降りることを繰り返すも……、 結局、諦めて横へと逃げて、上まで登った。う〜〜む。
その後、アダムに上からの確保を頼んで、トップロープで登ってみると、 問題なく一発でクリアした。
トップロープならね。精神的な問題ですか。 とは言え、スラブは登ってみないと分からないところがあるから、
まぁ、今の僕の力だとリードを諦めたのはやむ無しでしょう。
今日、これだけの好天、この季節にしては格別寒いわけでもない今日、 スタニッジなら人がうようよいそうなものだが、バンフォード の空いていることと言ったら! 岩場までの道で山歩きのグループに会ったのと、 ボルダラーが 3人いたのを除けば、誰にも会わなかった。すばらしい! 是非、再訪したい岩場だ。
△以上、記録の一部。全文は、以下に載せました。
http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/record/uk/20060218_bamford.jis.html
登山ミニ知識編 〜〜 伝統登攀の中間支点(基本) 〜〜
(前号(第33号)「スポーツクライミングの中間支点」からのつづき。)
伝統登攀では、中間支点の作り方はまさに状況次第、千変万化(言い過ぎ?)です。 端的には、強そうな支点であれば何でもよく、あるものを徹底的に利用し、 かつ一緒に持って登っているものを応用して使っていって、支点を 積極的に「作って」いきます。
伝統登攀の基本概念は簡単で、そのルートを、今まで誰も登っていない のと同じ状態で登ることにあります。初登攀体験を繰り返す、と言ってもいいです。 スポーツクライミングのルートの場合、岩場のあちこちに鈍い金属が 光っていて、先人の「工事」のあとを示していますし、登る人もそれを 頼りに登っていきます。一方、 伝統登攀のルートの場合、原則、岩場には人工物は一切ありません。 例えば、英国伝統登攀の代名詞とも言うべきスタニッジ・エッジには、 1000をゆうに超えるルートがありますが、一本のボルトも存在しません。
では、何が支点として使えるか? たとえば、スタニッジ・エッジの崖の上部には、何トンもありそうな 巨石(boulder)がごろごろ転がっています。これらは当然、人間が落ちる くらいの力ではびくともしないわけで、(強度と言う意味では)最高の支点 になります。具体的には、その巨石に長いロープを回して、支点とします。 スタニッジ・エッジのこの場合は、後続として登ってくる人を確保するための 確保支点であって、中間支点ではありませんが、感覚は掴んで頂けるかと 思います。もちろん、崖の中腹にそんな岩が都合良くあれば、それを 中間支点として使えばいいわけです。
また、しばしば崖の中腹に立派な太さの木が生えています。木の幹に短い ロープ(スリング(sling)またはシュリンゲ(Schlinge(独語)))などを巻き付けて 支点のできあがりです。木でなく石柱(spike)だと一層確実。 あるいは、岩に(両端の開いた)穴が開いていれば (特に石灰岩に多い)、その穴にスリングを通しても立派な支点です。 支点の強度は、その穴の「(岩の)柱」の強さに依存します。
岩場では、岩にいろいろな裂け目があることが珍しくありません。 時には、そんな裂け目に石や岩がはさまってしっかり固定されている 場合があります。その時、そんな石や岩にスリングを巻き付けると、 これも支点です。強度は、はさまった石や岩とはさまり方、そして はさみこむ岩の裂け目の強さに依存します。
現代伝統登攀では、この原理が使われることが最も 多いです。ただし、受動的に石や岩が都合良くはさまっている裂け目を 探し回るよりむしろ、あえてそういう状態を(一時的に)人為的に創り出します。 端的には、石をポケットに詰めていって、大きさのあった裂け目に、 石を入れ込んでやればいい、という原理です(あくまで原理。実際は そのために開発された金属物を使うのが普通です)。
なぜ、それが最も多いか? 理由は単純で、岩の裂け目ならかなり普遍的に 存在しますが、都合良く木が生えていたり、両端の開いた穴が岩に開いている とは限らないからです。現代伝統登攀では、この岩の裂け目の利用が、 ほとんど芸術の域にまで高められ、昔よりずっと安全な登攀が楽しめる ようになっています。詳しい話はまたの機会に譲ります。
Webページ更新情報
- この記事は、以下にも載せました。
http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/magazine/backnumber/eu034.html
次回予告
次回は… 「ピーク地方の定番岩場(フロガット・エッジ)」
See you later!
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