ピーク地方@イングランドの山情報

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ピーク地方概観

英国をクライミングの聖地と見なすあなたなら、Peak District/ピーク地方の 名は聞いたことはありますね。英国ロック・クライミングの核心地域と言って 異論が出ない地域です。スタニッジ・エッジ(Stanage Edge)をはじめ、名高い 岩壁の数々がここに集中します。 湖水地方と並び、イングランドで最も有名な国立公園 (Peak District National Park)であり、訪れる人の数としては、国立公園 として世界第二位になるそうです。

場所としては、 ピーク地方は、イングランド中央部北寄りに位置する、ペニン山地丘陵地帯 の南端付近一帯を指します。 ハダーズフィールド(Huddersfield)町の南くらいに(国立公園の)北端の境界が あります。

ペニン山地は非常に古い山地なので、丘陵という表現がぴったりで、 山地全域が牧畜に使えます。実際、保護されている領域も小さくないとはいえ、 それ以外の地域ではほぼどこでも羊が草を食んでいるのが見かけられます。 いずれにせよ、産業革命の頃からか、森林は現在までにほぼすべて切り倒されて いるため、たまに林を見かけると目立つ状態です — これはイングランド全域 どこも似たようなもので、ピーク地方もその例外ではない、という話です。

だから、ピーク地方は、(その名に反して!)たとえば剣岳のような険しい登山を 楽しめる場所ではありません。しかし、ロック・クライミングを楽しむのに 100メートルの絶壁は必ずしも必要無くて、10メートルあれば十分 — と思えば、 ピーク地方は天国です。たとえば、有名なスタニッジ・エッジは、高さ数メートルから 20メートルの垂壁が 4km 以上にわたって横に連なる岩場で、 ルートの数は 1000を超えますし、そのスタニッジ・エッジ から歩いて行ける距離に別のそれも複数の岩場があり……と岩場が文字通り集中 しています。多くの岩場は駐車場から徒歩 10〜15分以内で着ける気安さ、 また、英国内にしては天候が比較的穏やかというのも、 売りのひとつでしょう。

ピーク地方の岩登りを特に特徴づけているのが、グリット岩(grit stones)です。 グリット岩は砂岩の一種ですが、丈夫で、摩擦が非常によく効く岩で、 多くのクライマーに熱愛されています。グリット岩はピーク地方の 専売特許というわけではありませんが、ピーク地方には良質のグリット岩の 岩場が特に多くあります。前述のスタニッジ・エッジをはじめ (南)東部グリット岩地帯が、中でもメジャーです。 しかし、東部だけでなく、南西部には ローチズ(Roaches)と いう西の雄のグリット岩場があります。スタニッジほどではないまでも広大な岩場 です。その他、ピーク地方西部、北部にグリット岩場は点在します。

僕の知る限り、 ピーク地方のすべてのグリット岩場には、ボルトは原則として打たれていません。 たとえばスタニッジ・エッジには文字通り 1本のボルト、ハーケン、ピトンも ありません。もちろん、今から登る人がそういったものを使用するのも厳禁です。 このクリーンな倫理観が、ピーク地方グリット岩のロック・クライミングを特徴づける ひとつでしょう。

一方、ピーク地方南部から中心部を南北に横断する形で、石灰岩地帯が存在します。 多くのマルチピッチの岩場が散在します。グリット岩と違い、昔のピトンが そのまま残されている場所も少なくなく、今でもそれを中間支点に利用するのは 普通です(ただし、新たに打ち込むのは厳禁)。また、何箇所かの岩場では、 ボルトが打たれて、スポーツ・クライミング用岩場となっています。確か 2006年現在の英国の最高難度のスポーツ・ルートはここピーク地方にあった と思います。 また、石灰岩があるということは、洞窟も少なからず存在します。だから、 洞窟探検(ケイビング)も盛んです。

では、岩登りをしない人にはピーク地方は単調な丘陵地帯? そんなことは ありません。たとえば、ピーク地方最高点付近のことをキンダー・スカウト (Kinder Scout)と呼びますが、このキンダー・スカウトはほぼ平坦で目印らしき 目印がなく、それでいて地面は高さ 2〜3メートルの畝続きとなっています (人の背丈を越えるような木は生えていません)。 そして、そこには登山道はありません。 つまり、ピーク地方最高点に達することは、 ナビゲーションの技能が試される冒険行になります。 そこは牧場でもないので羊もいなく、時折はねる兎や飛び立つ鳥を見ながら、 おそらく他に訪ねる人もいないかごく少ない中、自然の中の探訪を楽しむことが できます。そしてそんな場所は、キンダー・スカウトだけでもないのです。

ピーク地方には牧場が多いと前述しましたが、これはつまり、 (キンダー・スカウトやブリークロウを除いて)ほとんどの場所では、 なんとなく人工の影があるということでもあります。だから、おだやかな 夏の日なんかに(どうしようもなく道に迷う恐れなく、人里からの完全な隔絶感を 味わうこともなく)気楽にゆっくりと丘陵地帯を歩くのには、 ピーク地方は最適ということでもあります。 遠くに別の(多分もっと高い?)丘の数々をのぞみながら。

文化的には、ピーク地方南部のマットロック(Matlock)町から南にかけての ダーウェント谷(Derwent Valley)が最も有名でしょう。産業革命発祥の地として、 世界遺産に登録されています。ひとつの建物や施設が、というのではなく、 谷全体として文化遺産として登録されているものです。登録スポットをめぐって 一日歩くのもひとつの楽しみかも知れません(僕は一度行って……、個人的には 期待外れでしたが)。なお、マットロックは厳密には、ピーク地方国立公園の わずか圏外になるようです。

公共交通機関

ピーク地方東部に最も近い大きな都市は、シェフィールド(Sheffield)で、 必然的に公共交通機関もシェフィールドを起点にするのが、最も便利だ。 ハーザシッジ(Hathersage)村エデイル(Edale)村に行くには、 シェフィールドから、マンチェスター(Manchester)のピカデリー(Piccadilly)行の 列車を利用できる。 英国の例に従い、往復ならかなり安くなるかも。片道ならば、車内で検札 の時に切符を買ってもいい。プラットホームは、シェフィールド駅の一番 はずれにある。

一方、ピーク地方主要部自体は、 Derbyshire (ダービー県; 競馬の「ダービー」の由来) に含まれる。ダービー県は、「ピーク地方バス列車時刻表」など、 ピーク地方の公共交通機関を取りまとめたものを発行している。

丸1日、公共交通機関を使うならば、「Derbyshire Wayfarer」が割安かも知れない。 (2006年6月現在)£7.90/大人1人で、Derbyshire およびその近辺の鉄道バス1日 乗り放題になる。家族割引やグループ割引も存在し、さらに格安になる。 ダービー県とつなぐ路線なら、シェフィールドまで範囲に含まれるのが 嬉しい(詳細は 「Validity of Derbyshire Wayfarer」のページで確認のこと)。 なお、バスだけなら、たとえば 往復 £2 で済んだりするので、必ずしも安くなるとは限らないことは要注意。

Derbyshire Wayfarer」は、できるだけ事前に入手しておくことが 望ましい。ダービー県庁(Derbyshire county council)に連絡を入れれば、 入手できる(クレジットカード支払、郵送など)。 「Derbyshire Wayfarer」が有効な路線の「主要」バスでは、運転手から 購入することもできる。また、同区域内の鉄道の主要駅で(当日でも)入手できる。

インターネット上の公共交通機関情報

Derbyshire (ダービー県) バス路線図
http://www.derbysbus.info/county.htm
http://www.derbysbus.info/images/derbyshr.pdf
Derbyshire 公共交通機関 (Derbyshire County Council: 県庁)
http://www.derbyshire.gov.uk/transport/public_transport/
http://www.derbysbus.net/
Derbyshire バス・列車時刻表検索 (実体は ukbus.co.uk (?))
http://www.derbyshire.gov.uk/transport/public_transport/timetables/timetable_finder/default.asp
East Midlands Public Transport Guide (中央東部イングランド公共交通機関案内)
http://www.scbeastmidstravel.co.uk/
Chesterfield Travel Guide (チェスターフィールド旅行ガイド)
http://www.scbeastmidstravel.co.uk/ConnectionsFromCfld.html
Travel Line (トラベルライン; 英国全域の公共交通機関; 時刻表検索など)
http://www.traveline.org.uk/
Chesterfield 周辺
http://www.traveline.org.uk/index.cfm?travelModeBus=1&travelModeCoach=0&travelModeTrain=0&travelModeAir=0&travelModeFerry=0&travelModeLeisure=0&travelModeAll=0&mainOption=local&easting=437000&northing=371000&state=4
イングランドのバスについて (名前(UK=英国)ほどにはたいしたことないような)
http://www.ukbus.co.uk/

ピーク地方の拠点

チェスターフィールド(Chesterfield)町

シェフィールド(Sheffield)とダービー(Derby)との中間に位置する町。 中心部の教会の(ピサの斜塔のように?)曲がった尖塔が町のシンボルで、 比較的遠くからでもよく見える。公共交通機関ならピーク地方へは バスでアクセスすることになる。自家用車の場合も、ピーク地方へ行く際、 しばしばチェスターフィールド町の中心部(またはそのすぐ脇)を通る。

Chesterfield では、多くのバスは、町 の中心部(Town centre)のバスターミナル発着で、Chesterfield駅には行かない (これは、英国の街では普通)。Chesterfield駅からバスターミナルへは、歩いて 10分というところか。

チェスターフィールドに関する実用情報サイト

ハーザシッジ(Hathersage)村

特にピーク地方南東部グリット岩地帯の 拠点として有名。シェフィールド(Sheffield)から列車やバスでアクセスできる ので、ピーク地方の中で、公共交通機関でのアクセス が最も易しい村。

この村には数軒の登山用品店がひしめくようにあり、そのうちの一店 (Outside)は特に有名だ。靴のコーナーには、冬のアルプスやヒマラヤへ行くた めの登山靴をお捜しの方は店員にお声をおかけ下さい、なんて張り紙があったり する。クライミング・シューズのコーナーには、各社の各種のクライミングシュー ズに関して、フロント、エッジ、快適さ、など数点についての独自十段階評価の 表が貼ってあったりする。無論、店員の知識も一級品と言っていいだろう(当然、 店員によるわけだが)。

公衆便所、郵便局なども二、三百メートル内に揃っていて、食料品店やパブにも 事欠かない。

公共交通機関でのアクセス

シェフィールドからの列車でのアクセスなら、所要時間 10分くらい、平日ならば 1時間に 1本というところ(土日祝日は異なる)。 料金は、シェフィールドから片道なら£2.15 (2005年5月現在; 約430円)。 Hathersage駅は村はずれにあって、Village centre の矢印 に従えば、村の中心に出られる……が、例によって親切な道標とは言い難い。

南部から Hathersage またはその付近にアクセスするならば、 チェスターフィールド(Chesterfield)が起点の町になるだろうか。ただし、結局、 シェフィールドに出た方が便利なこともある。 Chesterfield からなら、直接、 89A 系統のバスで Hathersage に行くことはできそうだ(ひょっとすると 季節運行かも??)。

バスロー、カーバー、グリンドルフォード村

チェスターフィールド(Chesterfield) とバスロー(Baslow)村の間は、平日(バスの場合は土曜日も含む) ならば 1時間に1本くらい。170, 66, 276, X67 系統がそれだ(どこ行きかは、系 統により、異なる)。ロビンフッド(Robin Hood)(バスロー村はずれでパブが ある所。Birchen Edge, Chatsworth Edge への拠点)は、Baslow のすぐ手前のバス停 になる。料金は片道£1.75(2005年5月現在; 約350円)だった。

チェスターフィールド(Chesterfield)からは、他に、Curbar (カーバー) に行くならば、66 または X67 系統で Calver Sough (カルバー)まで直通で行ける。もしくは、Baslow で 240 (または 174, 214, 276)系統に乗り換えてもいい(Baslow からは 2km 強なので、 タクシーを使う手も)。Froggatt は、Grindleford と Calver との間に位置する。 もし Grindleford まで行くならば、Calver で 65, 240 (または 174, 175, 214, 276, 473) 系統のいずれかに乗り換える(路線があるものは、もちろん Baslow で乗り換えてもいい; なお、Calver から Grindleford は 3km 強)。も しくは、シェフィールドから Grindleford および Calver へは、65, 240 系統 が利用できる。Grindleford 駅は、シェフィールドから見て、Hathersage のひ とつ手前になる。ただし、Grindleford 駅から、Grindleford の村の中心部へは、 1km あまりの距離がある。実際、Grindleford 駅の周りには、ほとんど何もなかっ た。

エデイル(Edale)村

Edale村は、キンダー・スカウト(Kinder Scout)への拠点となる小さい村落。

Edale駅は、シェフィールド(Sheffield)とマンチェスター(Manchester)をつなぐ 路線の中間に位置する。Hathersage 駅より 3つ、マンチェスター寄り。 すべての列車が止まるわけではないので、要注意。

エデイル村の駅の駅前(南側)には、喫茶店(cafe)兼売店がある。 エデイル村中心部は、駅から南に広がっている模様(未確認)。 駅のすぐ北側にパブ(兼ホテル?) The Rambler。その 300m 北側に、天場(キャンプ上)と 情報案内所(Information)がある。さらに北に行って、左側に B&B、 郵便局、喫茶店などがある。ペニン道(Pennine Way)は、郵便局の横から 始まる。喫茶店兼売店以外に食料品店は見当たらなかった。

ペニン道(Pennine Way)が公道と一瞬交差する場所(GR SK102854)では、 喫茶店や売店が 2、3軒あった(2006年6月現在)。

その他

携帯電話の電波受信状況

[2006年6月現在] Edale村内は、通じなかった。Crowden Tower の上では通じる。 Kinder Scout の 636m 最高点では、通じなかった(ちなみに、確認したネットワークは Vodafone、すなわち、最も通じやすい回線のひとつ)。


ピーク地方南東部グリット岩地帯

ピーク地方南東部グリット岩地帯概観

イングランドのピーク地方南東部には、グリット岩の岩場が点在しま す。グリット岩は砂岩の一種ですが、丈夫で、摩擦が非常によく効く 岩で、クライマーに好かれています。そして、このピーク地方南東部 こそ、イングランドの岩登りの伝統の中心地です。

ピーク地方への拠点となるシェフィールド市在住の世界的クライマー がある時、インタビューに答えて言ったとか。「俺なんて、(住んで いる)○○通りで、3番目にうまいクライマーに過ぎない。」

岩場の高さは、どの岩場もおよそ、数m から 15m くらいです。必然 的に、ほとんどがシングルピッチのルートになります。以下、主な岩 場を列挙します。

最も有名なのが、スタニッジ・エッジ(Stanage Edge)。見晴しのいい 荒野の中に幅 4km 以上にもわたって延びる長大な岩場です。 Stanage Edge に隣り合うように東側に位置するのがバーベイジ (Barbage)。南部バーベイジ(Barbage South)には、ピーク地方で最も 難しいルートがあります。逆に西側に位置するのが、バンフォード・エッジ (Bamford Edge)。最近、立ち入り制限が解除されました。 南に下って、ミルストーン・エッジ(Millstone Edge)は、他になく 20m を 超える壁が連なります。そこから歩いて15分の距離のローレンスフィールド (Lawrencefield)は、林の中の静かな岩場です。

さらに多少南に下ったところに、フロガット・エッジ(Froggatt Edge)、それにカーバー・エッジ(Curbar Edge)が続きます。前者は、 スタニッジに次いでポピュラーな岩場と言えましょう。さらに南に 隣接して、バスロー・エッジ(Baslow Edge)。そして、この地域 の南端には、ガードムズ(Gardoms)、バーチン・エッジ(Birchen Edge) とチャッツワース(Chatsworth)が控えています。特にバーチン、バスロー には低難度のルートがたくさんあります。

スタニッジの端からチャッツワースまでは十数km に過ぎません。そ の狭い地域に、メジャーなものだけでも、これだけの岩場が密集して います。だから、一日の間に岩場の「はしご」も普通です。魅力的だ と思いません?

参考(RockFax): http://www.rockfax.com/databases/results_area.html?id=1

実用情報

ピーク地方南東部グリット岩地帯への拠点は、何をさし置いても ハーザシッジ(Hathersage)村。 南部の岩場の最寄り村には(ハーザシッジ村よりずっと小さい)、 バスロー、カーバー、グリンドルフォード村 などがある。イングランド南部からアクセスするなら、 チェスターフィールド(Chesterfield)町経由 になるかも知れない。

各拠点地について詳しくは、上記「拠点」の項を参照。

フロガット・エッジ (Froggatt Edge)

フロガット・エッジ (Froggatt Edge) は東部ピーク地方のグリット石地帯で、 スタニッジ・エッジ (Stanage Edge) に次いで、最も有名でポピュラーな 岩場のひとつ(北バーベイジ (Burbage North) と人気を分け合う?)です。 西向きで、ピーク地方には珍しい木立の中(上)にあるため、 風からは心持ち守られます。フロガット・エッジの岩場までが比較的急斜面で、 10m あまりの垂壁の岩場の上が台地になっています。その台地は丘歩きの人にも 人気の高いコースのようで、いつ行っても必ずそれなりの数の(丘歩きの)人々を 見かけます。

アプローチは、フロガット・エッジ北側の道路脇かその近くの ナショナル・トラストの駐車場に車を停めて、台地上の平坦な道を 20分ほどで 岩場に到着するルートが最も一般的でしょう。フロガット・エッジの (100m くらい?)直下にパブがあるので、その辺に車を停めて、急な山道を 歩いてアクセスすることも可能です。フロガット・エッジの南側は、 巨石が散らばっていて、そのままカーバー・エッジ(Curbur Edge)へと 続きます。

フロガット・エッジには、バランスよく、色々な難易度の色々なタイプの ルートが揃っています。つまり、クライマーの難易度によらず、好みの タイプによらず、自分に合ったルートを選ぶことができるので、 人気があるのも頷ける話です。実際、僕の友人のうち二人は、 「フロガット・エッジは世界最高の岩場だ」と主張してやみませんし、 他にもフロガット・エッジのファンはたくさんいます。

フロガット・エッジには、色々なタイプのルートが揃っているとは言え、 なかでもおそらく最も有名なのは、厳しいスラブ岩のルートです。 グリット石の厳しいスラブのルートを登りたければ、確かに フロガット・エッジこそ、一番でしょう。

以下、有名なルートを列挙してみます(「有名」という判断基準には ある程度の独断と偏見が入るのはやむを得ませんが、それでも相当程度は 多くの人の同意が得られるところと思っています)。 中でも幾つかのルートは、英国のクライマーなら、 たとえフロガット・エッジに一度も来たことが無くても、名前は聞いたことがある、 というものでしょう。 (以下、リンクは特記しない限り rockfax.com へのもの)

Sunset Slab (HVS 4b)
フロガットでおそらく最も有名なルート。ガイド本に曰く、 この伝統のルートが、医学の教科書に素晴らしい骨折の見本を提供してきた (Medical students should note that this classic route has been the cause of some marvellous textbook examples of fractures. – in Froggatt, Peak Climbs Volume 3, 1991, BMC (Distributed by Cordee), ISBN: 0903908867, pp.253)
核心は最上部にあります。 ほぼ真ん中に走る横クラックにフレンズを極めることは可能なので、 もしそれがちゃんと極まれば、地上墜落は何とか免れるでしょう。 しかし、ちゃんと極まるかどうかが保証無い(つまり、リーダーの 技術などによりけり)ようです。
Valkyrie (HVS 5a, 5a)
上記 Sunset Slab に並んで最も有名なルート。 フロガット・エッジの中央に鎮座するピナクル(柱)を登る 2ピッチのルート で、1949年に伝説のジョー・ブラウンによって登られたもの。 西部ピーク地方 Roaches の 同名の同じく 2ピッチのルート (VS 4b, 4c) (2006年12月の記録参照) と人気を二分する。
Great Slab (E3 5b)
同じく、伝説のジョー・ブラウンによって、1951年にオンサイト(!!)で 登られたルート。基本的に中間支点は取れないと聞く。 近くの Millstone にも 同名のルート (HS 4a) があって、それなりに有名だが、このフロガット・エッジの Great Slab には、著名度で及ばない印象がある。 同スラブのフェイスには、他にも Heartless Hare (E5 5c)、 Hairless Heart (E5 5c)、 Hairy Heart (E6 6a)、 Lonely Heart (E9 6c) など、中間支点の取れない厳しいラインの目白押し。
Brown's Eliminate (E2 5b)
名前の通り、伝説のジョー・ブラウンのもう一つの傑作スラブルート。 核心部は、何とか中間支点が取れるようだ。
Chequers Buttress (HVS 5a)
カンテを右側から攻める高度感あるルート。クラシック。
Heather Wall (S/HVD 3c)
フェイスの端を走るクラックを登るルート。 おそらく、フロガットで最も人気のあるルートだろう — (他の有名ルートと比較して)難易度的に易しく、安全なので。
Three Pebble Slab (E1/HVS 5a)
フロガットのスラブ登攀コースの中で、 上記 Sunset Slab に次ぐ 2番目の課題として有名。 何とか中間支点が取れるが、あまり信用できそうにない、という話。
Tody's Wall (HVS 5a)
核心部の(この難易度にしては)独特のムーブで有名、人気のあるルート。 核心部の中間支点は十分。
Downhill Racer (E4 6a)
もうひとつの有名なそして中間支点の取れないスラブ・ルート。
Beau Geste (E7 6c)
目立つカンテを直登するルート。80年代前半には、グリット岩登攀ルートの王様だったと聞く (possibly the gritstone route of the early 1980s — "Froggatt" (Peak Climbs 3), BMC, 1991)
Swimmer's Chimney (HVD/S 4a)
チムニーを登るクラシック。バック・アンド・フットの芸術。 ガイド本に曰く「経験豊かな(=年寄り)クライマーが、 若い岩キチ(=気取り屋)に、失われて久しい技術を披露するのに 最適のルート」 (An ideal route for the more experienced climber (old fogey) to demonstrate long-lost techniques to the young rock-jock (poser). — "Froggatt" (Peak Climbs 3), BMC, 1991)
Strapadictomy (E5 6b)

クライミングのルートのガイド本

メジャーなのは、以下の二つです。当然、さらに選択的なものもあります。

Peak Climbs — Froggatt
BMC, 1991, ISBN 0-903908-86-7
リンク@ukclimbing.com
コメント: これが決定版だが、少し古い。伝統的スタイルのトポと解説。
Eastern Grit
RockFax, 2006, ISBN 1-873341-56-3
リンク@ukclimbing.com
コメント: 選択的(ただし、よほど通い詰める人でない限り、十分な量あると言えるだろう; ルート数にして、Froggatt で約 150、Curbar で 200 載っている)。写真トポと詳しい(詳し過ぎる?)解説。

情報源

カーバー・エッジ (Curbar Edge)

カーバー・エッジ (Curbar Edge) は、東部ピーク地方のグリット石地帯で、 フロガット・エッジ (Froggatt Edge) 南方に隣接する岩場です。 地理的にはフロガット・エッジと同じ線上に位置するので、 フロガット・エッジの一部と見なしてもいいくらいです (もっとも、決してそうは呼ばれませんが)。 実際、両岩場の上を走る登山道は、ほぼ直線にずっとつながっています。

実際、カーバー・エッジは、フロガット・エッジと同じく、その昔には石切場としても 使われていたようで、切り立つ垂壁が広がります。 ただし、垂直の岩場の数々が文字通り隣り合っている フロガット・エッジとは異なり、カーバー・エッジでは、(一直線上とは言え) 岩場が散在しています。つまり、横に 20m 延びる岩場があって、 その横に 100m 普通の斜面が広がってその向こうにまた横に 20m 延びる 岩場がある、という感じになります。それら全てを総称して、 カーバー・エッジと呼ばれます。

アクセスは、南部ならば、Curbar Gap car park (駐車場; 有料; SK 261747) かその近くの道端に駐車してほぼ平坦な道を歩いていくのが普通です。北部は、 フロガット・エッジへのアクセスに準じた方が速いかも知れません。

ルートは、バランス良く色々な難易度のルートが揃っている フロガット・エッジとは少し異なり、有名なものはハードなルートが 多くなっています。HVS 5b の The Peapod を旗印に、上は Elder Statesman (HXS 7b)、Doctor Doolittle (H9/E10 7a) まで。

クライミングのルートのガイド本

クライミングのルートのガイド本は、 フロガット・エッジの項 で紹介したものと同じです。

情報源

ミルストーン・エッジ

Millstone Edge への駐車場は、少し(南に)下ったところにある有料駐車場が本 命。£3 (2005/06 現在)。もしくは、Lawrencefield との別れ付近の道端に数台の駐車スペース がある。

Millstone Edge は、クラックが主なので、プロテクションは一般に豊富。ナッ ツを 2セット担いでいくと安心か。
London Wall Area では、登りきった後の道端にあるポールがセカンドの確保用支点 に最適。10m のスリングがあれば、便利かも知れない(普通のスリングをかけて、 ザイルを通してももちろんOK。50m のザイルならば長さも十分のはず。ただし、 レッジまで下りて確保したければ、長いスリングか、60m のザイルが欲しいかも)。 ただ、そのポールは表面がちょっとごつごつしているので、何かプロテクターの ようなものがあると嬉しいだろう。


ローチズ周辺 (Roaches; @西部ピーク地方)

Roaches (Lower Tier) から Hen Cloud へは(あるいはその逆)、直接歩いて行け る。ガイドには、一旦公道に出るような記述があったが、その必要はなく、 Public Footpath と思われる径がある。

Roaches/Lower Tier の方は、多少、風に当たったのだが、 Hen Cloud は、見事 なくらい、風がなかった。無論、崖の最上部は別だが。うまく陰になっているよ うだ。ただし、Hen Cloud には遮るものがないので、風の方向が悪ければ、まと もに当たることになりそうだ。

ローチズ近辺宿泊施設

ドン・ウィランス記念小屋 (Don Whillans Memorial Hut)

この小屋は Roaches (Lower Tier) の真下に鎮座する、自炊形式の宿だ (定員 12人?)。 小屋から文字通り 1分で岩場。いや、台所の壁から天井の一部にかけて、 おそらくもともとそこに存在した天然のグリット石をそのまま 使っているので、岩場の中に存在する小屋と言ってもいい。 これが雰囲気を醸し出していて実にいい。英国クライミングの 英雄、ドン・ウィランス(Don Whillans)の名に恥じない小屋だろう。 雰囲気と言う意味で、ピーク地方のクライマー御用達の自炊形式の宿と しては、最高だと思う。

その台所の岩にチョークの跡があることから見てとれるように、 ボルダリング可能だ(台所の机を横によせて、ボルダリング・マットを 敷きましょう)。6a/6b (V4–V6?) くらいか?

寝室は 2階に 2部屋に分かれている。ベッドの 2階側はかなり低いので 要注意。ガス、電気が通っている。

コーチ・ハウス (Coach House)

Smithy Cottage と並んで、Roaches、Hen Cloud の正面に位置する 自炊形式の宿。岩場と道路をはさんで反対側にあり、車を横付けできる。 上記のドン・ウィランス記念小屋を 別格として、ローチズとヘン・クラウドの岩場に最も近い宿だ — 最近の天場に比べてさえ近く、日帰りの人の路肩の駐車スペースからの 距離と変わらない。 ここはクライマー御用達に限らない、いわゆる ホリデー観光客をも十分に満足させるだけの立派な内装(たとえば本格的な 台所、テレビ、風呂場など)が揃っている。収容人数 6人〜8人 (2007年夏現在; ただし、ダブルベッドを 2人用と換算して)。 一方、Smithy Cottage の収容人数は 6人のよう。 宿泊費は、何人で借りても同じ。

同じ敷地内に喫茶 The Roaches Tea Rooms もあるので、 そこで朝食を摂ることもできる。

Webサイト: http://www.clickholidaycottages.co.uk/holiday-cottage3218.asp


ピーク地方南部石灰岩地帯

ダブデイル (Dovedale)

ダブデイル(Dovedale)は、ピーク地方最南部、北から南に流れる ダブ川(River Dove)に沿った狭い渓谷です。 南端のソープ(Thorpe)から南北に 4km 〜 8km 続きます。 普通ダブデイルと呼べば、ほぼ「中間」にあるミルデイル(Milldale)までの 4km を指すようですが、ダブ川沿いの渓谷はそこからさらに北方に 4km ほど 延びます。

ダブデイルの目玉は、両岸に広がる石灰岩の奇岩の数々です。 中でも、ソープに近い Tissington Spires、ミルデイルに近い Ravens Tor が立派な絶壁です。そして中間部にある Ilam Rock が 特に目を引く柱状岩です。これらは当然、伝統的に登攀の舞台にもなっています。 また、両岸には、ほとんど登山道(遊歩道)沿いに二、三の洞穴もあります。

一応、両岸とも歩けるようですが、左岸(東岸)の方が遊歩道として 立派に整備されています。この遊歩道はほとんど平坦です — 南北端のミルデイルとソープの(両駐車場の)間の標高差は 40m 足らずに 過ぎません。ピーク地方最南部ということは、ロンドンなどの南部の 大都市から最も近い、ということでもあります。というわけで、 ダブデイルは、ピーク地方のウォーキングとして最も人気のある ルートのひとつのようです。

ダブデイルの最寄りの町は南方約 7.5 km にある Ashbourne です。 ダブデイル南端のソープにある(有料)駐車場は大きく、いつ行ってもほぼ間違いなく スペースはあるでしょう。北側のミルデイルの駐車場は(2008年夏現在)無料 ですが、スペースには限りがあるので、繁忙時は満車の可能性もあります。 ソープとミルデイルにはトイレがありますが、その間には何もありません。

なお、そのソープ有料駐車場からの標準的な(遊歩道)ルートを取ると、 最初に右岸を数百メートル北方に行った後、飛び石伝いに左岸に 渡ることになります — 水量が多いと、飛び石が水面下になって 足が濡れる可能性があります(下手すれば足を取られて川に落ちる可能性も……。 まぁ、浅い川ではありますが)。 その場合は、駐車場すぐ近くの橋を使って先に左岸に渡っておいた方が いいでしょう。

ソープには、ソープ・クラウド(Thorpe Cloud; 287m)というきれいな対称形の 丘(山)があります。標高差 150m 程度です。とは言え、 ダブデイルの遊歩道に比べれば格段に人口密度が低く、相対的に 静かな丘歩きが手軽に楽しめるでしょう。


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