総括
- 山域
- France/Ecrin Alps/La Grave
- 参加者
- ニック・R、ジョン・S、ベン・H、ドム、リッチ・S、まさ
- 期間
- 2006/01/06 -- 2006/01/11 (5泊6日)
- 01/06 Leicester ... (バス) ... London Luton Airport ... (空路) ... Grenoble ... (バス) ... La Grave ... Le Rocher
- 01/07 Le Rocher ... La Gorge ...
L'Edelweiss
La Gorge (Cascade de la Meije) (II 3 150m; 第1ピッチのみ) - 01/08 L'Edelweiss ... Les Valseuses の前 ...
少し戻る ... Goulotte Verney ... Le Rocher
Goulotte Verney (I 3 150m; 第2ピッチまで(ジョン(1ピッチ)、ベン(2ピッチ)リード)) - 01/09 Le Rocher ... La Croupe de la
Poufiasse ... 往路戻る
La Croupe de la Poufiasse (II 4+ 220; 第2ピッチまで) - 01/10 Le Rocher ... Le Pylône ... 往路戻る
Le Pylône (I 3 〜 I 4 70m; 第1ピッチのみ) - 01/11 Le Rocher ... (バス) ... Grenoble
- 宿泊
- ホステル Gîte "Le Rocher", B&B L'Edelweiss (1/7 のみ)
- 天候
-
- 01/06 曇 (@英国)
- 01/07 曇
- 01/08 晴
- 01/09 晴
- 01/10 晴
- 01/11 晴
登山編
南仏は La Grave (ラ・グラブ)。Ecrin Alps (エクレン・アルプス)に近い。 氷滝の氷壁登攀(アイス・クライミング)の舞台として有名な場所のようだ。 実際、正月山行で小屋が一緒になったうちの一人は、ラ・グラブで 氷壁登攀をしたことがある、と言っていた。素晴らしいよ、と。
かっては、英国でも、氷壁登攀は盛んに行なわれていた。いや、今でも、 条件さえ整えば。しかし、実際は、近年の英国の場合、暖か過ぎて、 条件(コンディション)が整わないことが少なくない。1960年代には、 (イングランドの)湖水地方の海抜ゼロ近くの場所での氷壁登攀の 記録もあるが……、今やほとんど夢物語。スコットランドまで出かけても、 滝が凍っていないということが少なくなく、不確定要素が大きい。
そんな中、また近年の格安航空券の普及とあいまって、確実に登れる氷壁を求めて、 海外、具体的にはノルウェーやアルプスに出かける英国人が年々増加している。 ラ・グラブは、その中でも、比較的初級者向けの氷滝が、比較的短いアプローチ 距離の中に揃っている、ということで有名な場所のようだ。
01/06 (到着)
今回の僕の連れは、5人、いずれも氷壁登攀の経験は僕と大差ない。 彼らは、正月明け早々、つまり僕より5日早く、ラ・グラブに乗り込んでいる。 列車、飛行機、バスと乗り継いで晩に着き、無事、皆に合流。
01/07
翌朝、早速、近くの氷壁へ。 一週間登り続けた彼らにとって、今日は、休息日ということで、 以前にも訪れたという、近場の易しい氷壁(La Gorge)に向かう。70°くらいか? 僕が氷壁登攀に慣れるには、ちょうどいい。
氷壁登攀のいいのは、凍っているところなら、ほとんどどこでも登れるところ。 まず、ボトムロープの張られた左の方の氷壁(10mほど?)をフォロー。久々の 感触。懸垂で下降。 次いで、ベンが、右側から登るのをフォロー。奥の2ピッチ目の滝の 様子を見に行く、という……凍っていなくて、水が滝のように(滝だけど)流れ 落ちていた。
初日は、フォローだけのつもりだったのだが、「大丈夫だよ」という リッチの言葉に乗せられて、氷壁の真ん中をリードしてみる。10m 弱? スクリューをセットするのが疲れるが、まぁ、どうということはない。 「フックをもっと使ったら?」とドムから声がかかるが……、フックには まだ自信が持てない。フックしている時はいいが、体をせり上げた途端、 バランスが崩れがちだから。というわけで、ばんばんバイルを叩き込む次第。 氷の質は正直よく分からないが、少なくとも不安はない。
最後、すぐ隣のミックスのルートを皆で代わるがわるボトムロープで登る。 コンディションはいいとは言い難い。特に、5番目に僕が登る頃には、 最初はあった雪とかが、もう掻き取られていて、一層難しくなっている……。 登るに際し、ニックが、彼のバイルを貸してくれた。僕の安物よりは、しっかりした 彼のバイルの方が確かにいいだろう。顔前で刃物を扱っているようなもの なので、そこを気を遣うが、問題なく登りきって、満足だった。
01/08
朝10時にゆっくり発って、アプローチの雪と氷の急登を登る。 他の連中は、ソロで登っていた(難易度 3)が……、僕は、そこまで「勇敢」ではない。 ジョンと二人、ピッチを切って、確保しながら登っていく。 最後に達したのは、見事な垂直の大滝(Les Valseuses)。II 4+ となかなかに難しい。 ドムが挑戦する、という(結局、1度、大きくフォールしながらも、登り切ったそうだ)。
ジョン、ベンと僕とは、懸垂で下って、支沢の相対的に易しいルート(Goulotte Verney)に向かう。 I 3 の Goulotte Verney。比較的緩い傾斜の氷坂。ジョン、次いでベンと リードした段階で、残念ながら時間切れ。あと 2ピッチあったのに……。 まぁ、10時発ではね。翌日に期待しよう。
01/09
昨日、リードし損ねた僕は、今日こそ、と楽しみ。 II 4+ の La Croupe de la Pufiasse へ。遠くからも吃立する数段の滝が見える 壮観のルート。昨日より出発は早くて……と言っても 9時40分、 僕が第一ピッチのリードを始めたのは13時。比較的緩い傾斜の場所から、 やがて垂直の氷の壁へ。腕が疲れる、手が冷える〜、と言いつつ、 ばんばんアイスバイルを叩きつけ、時にはフックも使って登っていく。 垂壁になると、クランポンを効かせるのが思ったより難しいが、まぁ、 これくらいならば何とかというところか。 無事、核心を越えて、滝の左横の岩へ。支点はボルトから取れる。
次いで第二ピッチはベンのリード。第一ピッチよりも若干易しい。 左側の岩が次の確保支点。
そして、次が核心……なのだが、4+ の核心はそもそも誰もリードする気が ないので、ここから懸垂で戻る、ということになったのだった。
上でリードしているフランス人のグループ、なかなかに楽しそうなのが、 ちょっと心残り?
01/10
今日が登攀最終日、有名な Le Pylône (I 3〜4) へ。 ドムが第一ピッチリード後、ニック、リッチとフォロー。確保地点が狭いらしいが……、 二人懸垂で降りてきた。ニックは、手が凍えてもう登れない、という。 えー、もったいない!
ドムの確保で、僕がフォローする。特に難しくはない。 僕としては、是非、さらに上に登りたかったが……、二人、下に待たせて、 というのもなんなので、断念して、懸垂下降して、お開きとなった。
後で二人に聞けば、別に登ってくれてもよかった、とのこと。だったら、 登るんだった! なにしろ、今回、まともに最後まで登ったルートは一ルートも 無いではないか!
01/11
そして今日が移動日、心残りもあるが……、ラ・グラブを後にし、 グルノーブルのバスターミナルで皆と握手して別れたのだった。
今回、最初の一週間は、皆、気合い入れて早朝から日暮れまで登っていた そうだ。しかし、2週目はもう疲れてしまって、あまり気合いが入らなかった 様子。僕の着いたタイミングは悪かったわけだ。正直、不完全燃焼の旅だった が……、まぁ、新しい山域に来たし、幾らかのアイスクライミングはできたし、 経験としては悪くなかったと言えるか。
さて、で、結論、僕は氷壁登攀は好きか? うーん、僕は、「登山」の方が やはり好きだ。氷壁を登る技術は磨きたいと思う。登るのもそうだし、 また確保点が自在に取れるのは、実に素晴らしい。そのために、こうして 旅してもいいが、やはり目標は「登山」であって、氷壁登攀はその手段、 というのが、僕の感覚であることに変わりはない。そう実感したのだった。
面白いことに、これは、他の連中の感覚とはかなりずれているようだ。 今回一緒した他の 5人のうち、ドムは登山「も」楽しみたい方で、 リッチも登山に興味はあるが、他の 3人は氷壁登攀の方に断然興味がある、 という様子だ。見ていると、英国では、登攀か丘歩きかどちらかに興味が ある人が多く、両方が必要な登山に興味がある人がかなり限られる気がする。 英国にまっとうな山があまり無いからだろうか?
生活編
Gîte "Le Rocher" の生活
宿は、自炊形式の宿。英語で予約したようだ(実際、僕以外の連中は、 仏語はほぼ全くだめ)。ラ・グラブは小さな村なので、端から端まで 歩いても10分とかからない。その中では、どちらかと言えば端の方に位置する。 6人が同じ一部屋、二段ベッドに泊まる。洗面所、 シャワーが部屋についている。便所に換気扇が無くて、閉口……。
下の共同炊事場で自炊できるのだが……、やたら巨大な鍋が多い。 宿の管理人を中心に大きなグループ用にと設計されている感じだ。 その割にコンロが少なくて困ったのだが。常温と冷蔵の巨大な食料置場 があって自由に利用できる。
管理人のお姉さんの料理を拝見したが、さすがに英国よりは優れている。 でも……もうひとつ繊細さに欠ける気がしたなぁ。
今回、2日目だけは、宿が満員だったため、近くの B&B (L'Edelweiss) に泊まった。 ジョンとベンとが村の酒場で知り合った人が、そこの女主人ということで、 安く泊められるよう交渉して決めたのだった。さすがにホステルよりは 高かったが、悪くなかった。
食事
- 1/7晩
- ピザ (@ホステルの下のピザ屋)
- 1/8晩
- ベーコンのブイヨン煮とパスタ (ケーキ、チーズ、パンをサービスで頂く)
- 1/9晩
- ソーセージ、ツナ、野菜炒めのパスタ
- 1/10晩
- ピザ+タルト(ミルフィーユ) (@ホステルの下のピザ屋)
情報編
La Grave
ラ・グラブ (La Grave) は、モンブランから南東南に 200kmほど、 エクレン山脈(Des Ecrins; エクレン・アルプスとも?)の片隅(?)に ある、山間の村です。一番近くて有名なのは、南の La Meije山(3983m)でしょう。 岩と氷の厳しいルートが目白押しだと聞きます。
一方、近くの森(Bois des Fréaux)の中を流れる川が冬には凍って、 すばらしい氷壁登攀の舞台を提供します。標高にして 1500m くらいの地点で、 温度が高過ぎも低過ぎもしない、というところです。 La Grave から水平距離もたかだか 1〜3km (垂直距離 100m程度)の間に、 (多くはマルチピッチの)氷壁登攀に適する数多くの滝が集中する、 という素晴らしい条件です。
交通
ラ・グラブ (La Grave) へは、グルノーブル(Grenoble)からバスで行くのが、 最も便利でしょう(約120km)。グルノーブルへは、欧州各都市から飛行機の直通便が あり、またフランス国内からは TGV(高速幹線鉄道)で乗りつけられます(たとえば パリからなら、直通便で 3時間)。 ラ・グラブへは、グルノーブル市の中心バスターミナルから 直通バスで 1時間半程度です。ラ・グラブの旅行情報案内所(Office de Tourisme)の 方で降りるようにしましょう。バスは一日に 3便程度ありますが、曜日や季節によって運行状況は変わるので、事前に チェックしておくことをお薦めします。
See ../../info/ecrins.html .
地図、ガイド本
1/25000 地形図は、La Grave は、 「3435 ET VALLOIRE, AIGUILLES D'ARVES, COL DU GALIBIER」 (の端)に含まれている(Institut Geographique National発行)。 ただし、氷滝が点在する Combe de Malaval は、むしろ南の 3436 ET の地図の方がよい(こちらには、La Meije まで 含まれている)。
登攀のガイド本は、仏語の 「Cascades Oisans aux 6 Vallées, Tome II (de François Damilano, Godefray Perroux)」 が定番の様子。
タイム・テーブル
時刻 | 行動 | 高度(m) | 温度 (℃) |
歩数 (複歩) |
|
---|---|---|---|---|---|
計器 | 地図 | ||||
表注: 高度の表記で (s) は高度計をその高度にセット。 なお、高度計は、腕時計(Silva/Alta)を使用。温度の in/out は、それぞれ 室内(テント内)気温と外気温(省略時も)。歩数は、その前の項目からの歩数(複歩)。 |
|||||
2006/01/06 (Leicester → London Luton → Grenoble → La Grave (ホステル Gîte "Le Rocher")) |
|||||
08:00 | 自宅発 | ||||
08:50 | バス発 | ||||
10:45 | Luton空港着 | ||||
12:00 | Luton空港発 | ||||
(以下、欧州(フランス)夏時間) | |||||
14:30 | Grenoble空港着 | ||||
15:15 | Grenoble空港発(バス) | ||||
18:10 | Grenoble発(バス) | ||||
20:00 | La Grave着 | ||||
23:15 | 就寝 | ||||
2006/01/07 (ホステル → La Gorge → B&B) |
|||||
08:30 | 起床 | ||||
11:30 | 氷滝着 | 3 | |||
17:00 | 0 | ||||
18:30 | 氷滝発(帰路) | -1 | |||
23:45 | 就寝 | ||||
2006/01/08 (B&B → Goulotte Verney → ホステル) |
|||||
10:00頃 | 発 | 1 | |||
??:?? | 氷滝着 | ||||
13:00 | 0 | ||||
15:00 | -1 | ||||
16:00 | -1 | ||||
17:00頃 | La Grave村 | 1 | |||
23:15 | 就寝 | ||||
2006/01/09 (ホステル → La Croupe de la Poufiasse → ホステル) |
|||||
07:30 | 起床 | ||||
09:15 | -3 | ||||
09:40 | 発 | ||||
10:30 | 氷滝着 | ||||
13:00 | 第一ピッチリード終了 | -4 | |||
14:30 | 0 | ||||
15:00 | 懸垂下降 | ||||
谷底 | -10 | ||||
16:30 | ホステル | -6 | |||
23:15 | 就寝 | ||||
2006/01/10 (ホステル → La Croupe de la Poufiasse → ホステル) |
|||||
07:30 | 起床 | ||||
09:20 | 発 | ||||
橋 | -4 | ||||
??:?? | 氷滝着 | ||||
12:00 | -4 | ||||
14:20 | 氷滝発 | ||||
谷底 | -6 | ||||
24:45 | 就寝 | ||||
2006/01/11 (ホステル → Grenoble → パリ) |
|||||
06:45 | 起床 | ||||
07:40 | 発 | ||||
08:00 | -6 | ||||
08:10 | La Grave発(バス) | ||||
09:45 | Grenoble着 | ||||
10:34 | Grenoble発(TGV) | ||||
13:39 | Gare de Lyon着 |
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