総括
- 山域
- Scotland/Torridon Hills
- 参加者
- ジョン・M、まさ
- 期間
- 2005/12/28 -- 2006/01/03 (6泊7日)
- 12/28 Leeds ...(車)... Ling Hut
- 12/29 Hut ... Liathach麓 ... Hut ... Sgurr Dubh ... Hut
- 12/30 Hut ...(車)... Coire Mhic Nóbuil駐車場 ... Tom na Gruagaich ... 往路戻る
- 12/31 Hut ... Loch Coire Mhic Fhearchair ... Ruadh-stac Mòr ... A' Choinneach Mhòr ... Hut ...(車)... Kinlochewe
- 01/01 Kinlochewe ...(車)... Allt na h-Airighe駐車場 ... Leathad Buidhe ... Coille na Gas-leitire ... 駐車場 ...(車)... Hut
- 01/02 Hut ... Coire Grannda ... Sgorr Ruadh ... 往路戻る
- 01/03 Ling Hut ...(車)... 帰路
- 宿泊
- Ling Hut
- 天候
-
- 12/28 晴後曇後晴
- 12/29 晴後曇
- 12/30 雨時々曇
- 12/31 晴
- 01/01 曇
- 01/02 曇
- 01/03 晴
登山編
正月山行として、三たび、トリドン山地、Ling小屋へ来る。 元々、ケルンゴルムの方に行きたく、バーニーらと計画していたのだが、 先方が実家の方に招集がかかって結局、ご破算になった。
今回、一緒するジョンが小屋を予約し、彼は他にも何人にも声をかけたという。 しかし、結局、僕しか乗ってこなかったそうだ。ジョンとは、 一年前、全く同じ場所で一緒した。 僕がここに来るのは、 2001年末に来たのに続いて三回目。 ジョンもこれが三回目。
今回、泊まる場所も、前回、前々回と同じ Ling Hut。 トリドンと言えば、この小屋。周り一面山に囲まれたすばらしい環境の小屋だ。 以前はガスしか無かったこの小屋だが、今年、電化されたと言う。 どう変わっているのだろう? 便利なような、でもちょっと淋しいような?
スコットランドほぼ最北西端に位置するこのトリドン山地、運が良ければ 最高の冬山環境が楽しめる。実際、2001年に来た時は素晴らしかった。 ただし、ケルンゴルムほど内地でない分、気温が下がりにくいので、 暖かい日が続くと、雪が融けてしまう。実際、 一年前に来た時は、 哀しいくらい雪がなかった……。
この冬は、長期予報によれば、20〜30年来の寒さだと言う。実際、 11月末には強烈に冷え込み、イングランドでも雪が見られ、期待が高まった。 ところが、12月に入って、一転、暖かい日が続いた。今回、来る直前まで 天気予報を期待と願望とをもって眺めるも、その傾向に変わりはない様子で、 あまり雪が期待できそうな状況ではないようだった……。12月、経済的に 余裕がない、というジョンのため、僕は、2つ目の雪崩ビーコンまで購入して この山行に備えたのだが、はてさて、出番はあるのだろうか??
12/28
前日は、リーズのジョンの実家に泊まらせて頂いた。 6時前にリーズ発。僕が運転できればいいのだが……、僕の免許では 英国では運転できないため、ジョンが丸一日運転することになる。 インバネス経由で快調に運転し、約11時間後、小屋に着いた。 日が暮れゆく中、最後の片道10分の道を 2往復歩くのがちょっとした労働。 まぁ、ご愛敬。
しかし、予想通り、小屋の周りはおろか、山の上にもおよそ雪が見当たらないような……。
12/29
僕は 5時半起床、BBC4 の船舶海上予報を聞く。
長時間運転で疲れて眠るジョンを残し、外に偵察行に出る。 朝の陽の光の中、あらためて確認するに、確かに山の上にもおよそ雪が 見当たらない……。谷筋に若干残っているくらいか? しかし、Liathach の 北面なら何かあるのではないか、というのが僕の微かな希望で、偵察行の 目的だった。実際、今朝の気温は小屋(標高85m)で -2℃と十分に低い。 降るものさえ降っていれば、気温的には申し分ないはずだ。
一般道に沿って、一年前に登った
Access Gully の方に向かう。近付くにつれ、失望が大きくなる。
去年は、少なくとも谷筋の取付の周りには雪があったのに、今年はそれすらない。
谷筋の中でさえ雪はおよそ全然ないかも知れない、という雰囲気だ。
周りで、時に、水が染み出している場所が凍ってつららのようになっている場所もあるが、 登れるという感じでは全然ない —
少なくとも僕らの技量では。
結局、高度差にして 400メートルあまり登った後、失望とともに小屋に帰った。
僕が小屋に帰った頃になると、ジョンも用意ができていて、小屋の裏の Sgurr Dubh (782m) に登ろう、と話がまとまった。11:17 発。 スコットランドの日は短いが、Sgurr Dubh なら 何とかなるだろう。実は、この Sgurr Dubh、 4年前に来た時、 一旦は目指しながらも諦めた山だった(途中で雪合戦大会になった……)。 Ling小屋からの眺めの中で非常に目立つ山で、而来、一度は登ってみたいと願って いたもの。今日登れたら言うことない。
気温は少し低めで風も強い今日、ソフトシェルの下にメリノ羊毛のシャツを 着込んで登る。悪くない。13時半前には、念願の頂上に立った。頂上が 少し平たい分、眺めは最高とは言い難いが、でも悪くない。 トリドン山地というマイナーな山系のさらにマイナーなこの山、当然、 小屋を出て以来、誰一人見かけることさえ無かった。すばらしい!
頂上の気温は -7℃。かなり冷え込んでいる。僕は、一層の薄手の防水手袋 をしていた。トリドン山地の救助隊御用達という売り文句で売られていたもの。 実際、ロープを扱ったり、登ったりするのには、最高のものだった。しかし、 この気温で風の中では、この手袋では手が凍えるのを防げなかった……。 運悪く、替えを小屋に置いてきてしまっていたので、ジョンに手袋を借りて、 ひと心地ついたものだった。反省!
この日、小屋には、別のグループも到着した。ノッチンガムのOB/OGグループ? あらら、今までのように広いベッドを 2人で占領というわけにはいかなくなった。
12/30
ジョンは、Munro の「収集」に情熱を燃やしている。いや、燃やしたそうな様子、 というべきか。まだ、実際に登った Munro はほとんどないようだから。
今回、残念ながら冬季登攀の条件では全然ない以上、ジョンは、Munro、 つまりとにかく高い山に(歩いて)登りたそうな様子だった。 僕も異存無い。そこで、今日は、Beinn Alligin 山系の Tom na Gruagaich (922m) を 目指すことにする。登山口まで小屋から歩いて行くのは大変だが、 少し車を走らせればすぐだ。
今日は、ジョンの持つガイド本が頼り。僕の持参したガイド本は登攀ルートしか 載ってないから(苦笑)。ところが、そのガイド本が言う最初の渡渉ポイントが どうも見当たらない。仕方ないので、無理矢理、石伝いに渡渉する。その後も 微かな踏み跡らしきものはあるが、はっきりした道らしい道は見当たらない。 しょうがない、方向だけ合わせてスコットランドの荒野を進む。 まぁ、スコットランドの山行はそんなものだ。
雨が断続的に降る中、登っていく。 標高700メートル付近で気温 0℃、この頃になると、時に径の一部が凍っていたり、 若干雪に覆われていたりする。視界がガスで限られる中、稜線に出て、最後 12:25 山頂着。何も見えない……。
山頂に着いた時には、誰もいなかったが、休んでいると、後続が数人追い付いてきた。 まぁ、Munro の一つ、その程度にはメジャーな山か。
下りには、ピッケルを取り出して使う。クランポンは使うほどではないか。 径を辿って降りていくと、いつしか(登ってきた時に比べて)右の方にずれていく。 そう、それが本来の道だった。駐車場からまっすぐ来る登山道があって、 それが本道だったのだ。 ジョンのガイド本の記述が(かなり?)古かったのだろう。
この日、12月に買ったソロモンのダブルの革靴のデビュー戦だった。 ところが……、小屋から駐車場までの道ですでに、違和感を感じていた。 そして、以降、登りも下りもひたすら苦痛、拷問だった……。 靴の横幅が僕にはきつ過ぎるのだった。たての長さは 6サイズ(2.5cm?)程度 上なのに……。思えば、僕の最初の冬靴もソロモンで、数日の山行の後、 地獄の思いをしたのだった。ソロモンとは相性が悪い、と言うことか……。 新品ながら、仕方ない。諦めざるを得ない……。
そのせいで、今日は僕のペースが遅く、連れのジョンには迷惑をかけた。 二人の調子が良ければ、もう一つの山にも登れるか、と言っていたが、とてもとても。 申し訳ないことをした。
一方、今日は、雨がちだったので、ソフトシェルの上に薄手(市場で最軽量?)の ゴアの合羽を羽織っていた。 これがやたら暑く、汗をかきまくった。出発時で 3℃の気温には適応して いなかったか……。しかし、これでだめだと、要するにソフトシェルは、 スコットランドには不向き、ということになるのかも知れない。雨が降るのは 日常茶飯事なのだから。一方、思いの他、手は冷えて、結局、山頂では フリースの上にミトンのオーバー手袋をつけることになった。雨の中、 若干でも濡れたからだろうか?
12/31
今日は、昨日に続いて、Munro の一つ、Beinn Eighe山系の Ruadh-stac Mòr (1010m) へ。 9時前には発つはずが、寝坊したジョンがまたゆっくり用意するもので、出発は 9:45 になってしまった。
4年前に(Liathach目指して)辿った (あぁ、当時は雪道だった……)ごくゆるやかな登山道を歩いていく。 山を巻いて、湖に達したところで休憩。前の岩場は、すばらしい登攀ルートだ そうだが、今はとてもそういう条件ではない。
有名な Triple Buttress の前で、飛行機のエンジンなどの残骸が散乱しているのを 見かける。半世紀前、この Triple Buttress に衝突して墜落した飛行機の 残骸なのだそうだ。半世紀を経て、未だに形を残しているか……。
ここから、コルを目指しての急登。雪が積もっていれば、楽しい(スコットランド 冬季)グレード I だろうが、今の状況では、単なるザレ場、嬉しくない道だ。 コルが近付くと、そのコルに立っている人影が二人見える。例によって、 今日、見かけた唯一の人影。ひと足先に着いたジョンが話しかけている。
そして……、僕が到着して、驚いた!! 僕とジョンとの旧友、同じ山岳部の OB/OG、リッチ・B とローレンではないか! (たとえば僕は、 2003年のクリスマス山行で一緒している。) よりによってこんな地の果てで再会するとは! 何たる奇遇! 彼らが山を続けていることさえ知らなかった。
トリドン山地は、山をやっている人ならば、それなりに知ってもいようが、 普通の一般人に言っても、それ何? 地名?、と聞き返されるのがおちなくらい マイナーな山だ。スコットランドの北西端ということは、交通も不便、 当然、訪れる人も少ない。そして、今日、僕らが目指した山は、(Munro とは言え) トリドンの中でもマイナーな方だ。少し奥まっている場所にあるし。実際、 彼ら二人が、今日、山中で見かけた唯一の人々だったのだから。よりによって、 こんな場所で、しかも、スコットランド最大のお祭り日である(hogmanay) 12/31 に 会うなんて。奇跡的だ!
リッチは、コルに立っていて、ローレンに話しかけたらしい。
「誰か二人登ってくるよ。」
「あれ? なんか、まさの声に似ている気がするねぇ(まさかね)。」
「ちょっと待った、(先に登っている)もう一人は、ジョンと違うか?」
「えーっっ!! ありゃ、ジョンとまさだよ、間違いない!! うゎー!」
と当然、彼らにとっても真に驚きの対面であった……。
山を続けていれば、こんなこともあるのだろうか……。
さて、リッチとローレンとどういうルートで降りるのがいいかねぇ、 と話し合う。登ってきた谷筋はちょっといやらしいので。 稜線沿いに Beinn Eighe 方面に向かい、途中で右に下ればどうか、ということで、 彼らはそちらに向かう。
この時点で13時半(発つのが遅かったから……)、山頂にはまだ 200メートル以上、 登る必要がある。しかし、ジョンは、どうしても登るんだ、と意気高い。 分かった、超速攻で登るなら、と合意して、山頂までぶっ飛ばし、16分で着いた。 我ながら、これは速い! (疲れたけど)
ジョンの(証拠?)写真だけ撮って、すぐにコルまで引き返し、リッチらの辿った であろう、稜線の方に向かう。と、あっと言う間に稜線上でリッチらに 追いついてしまって驚いた。彼らが 50分かけたところを、僕らは 20分で行った 計算になる。リッチはともかく、ローレンがかなり遅かった模様で。
この辺りまで天気はよかったのだが、次第に雲が降りてくる。そんな中、 稜線から勾配の緩そうなところを見計らって、(もちろん道でない)急勾配を 降りていくことにする。ザレ場ではないが、気は抜けない。
最後、川まで降りたところで、ジョンとリッチは石伝いに渡渉して登山道に 出るが……、背の低いローレンと僕とは気乗りせず、渡渉せずに、川沿いに 荒野を進むことにした。この頃には陽もとっぷり暮れていたが。17:46 小屋着。
リッチとローレンとは、近くのキロキュー(Kilochewe)村(15km先?)で自炊形式の宿 に泊まっているという。 そして今宵はホグマニー(hogmanay)、スコットランドで一年で最も大切な 祭の日(クリスマスよりも大切)。というわけで、ジョンと二人、そこまで出かけ、 村のホテル(兼パブ)で再会を祝して乾杯、ホグマニーを祝い、そのまま、二人の宿に 泊めさせてもらったのだった。素晴らしきかな!!
01/01
昨日の今日だから当然、起床は遅くて 10時半。 ゆっくりと英国式朝食(Full English Breakfast)をご馳走になる。
今日は、ローレンとジョンとは海岸線沿いのドライブに、リッチと僕とは 近くの見晴らしがいいという山(Leathad Buidhe; 551m)に登ることにする。 そういうつもりではなかったので、まっとうな登山靴もここには持ってきていなくて、 登山マラソン用の靴なのだが……、まぁ、何とかなろう。 リッチと僕とが駐車場を発ったのが 12:48。
スコットランドに珍しく、至るところにケルンがあって、登山道は実に 分かりやすい(あとで分かったことだが、ハイカーがもっとも簡単に登れる山 という位置付けだったようだ)。雪もほぼゼロ。13:39 には山頂に着いてしまった。 見晴らしはなかなかにいい。雲も少なくないけれど、湖とその向こうの 山々が美しく映える。来てよかったってものだ。リッチも大いに満足していた。
下山は、少し遠回りの別の道を取った。このまま降りたのでは、早く着き過ぎて、 駐車場で延々ローレンらが拾ってくれるまで待つことになるし。景色のいいこの 登山道、時間をかけてゆっくり降りたのだった。
この日の晩は、車で30分くらいかさらに離れた別の村のホテルまで行って、 一緒に夕食とした。リッチとローレンとは翌朝イングランドに向けて発つと 言う。再会を約して、別れたのだった。
01/02
明日が僕らがここを発つ日、したがって、ジョンは今日はハードな山行は 避けたいと言う(運転感謝!!)。前夜、僕が 1ルート提示しておいた。 海岸近くの名もない山。でも、見晴らしはよさそうなところを。 登山道もなければ、周りに何もありそうにないので、他に人に会うことも まずなさそうな場所を。
今朝、ジョンは、結局、海岸近くにドライブと写真撮影に行くことにするよ、 と言ってきた。僕がどこかに行くなら、近くまで車で送って(また拾って)あげるよ、 と親切に言ってくれた。でも、ジョンが行かないなら、僕の目標は決まっている。 Ling小屋を発って、南に登山道を歩いて行くと、そこにまたひとつ奥まった 山(Sgorr Ruadh; 962m)があり、登攀ルートも幾つかある。車で何10kmか大廻りして山の南側から 入る方がかなり近いが、Ling小屋から歩いてだって行ける。ならば、この機会、 行かいでか、という次第。ジョンの車の世話にならなくても済むし。
8:10 小屋発。相変わらず気温は高い。7時で 7℃(@小屋前)。
登山道を歩いていく。何箇所かで渡渉していく。そのうち、 道が道らしくなくなった(帰りに気づいたところでは、渡渉の時に、道を外した らしい)。まぁ、スコットランドではよくある話。aiming off で湖を見つけて、 そのうち、再び、道らしい道に合流した。
天気はよくはないが、視界は、二、三百メートルはあるからそう悪くはない。 孤独な山行を楽しめる。地図通り、峠に出て、ここから道を外れる(一般「登山」道 は、山頂には通じていない)。稜線までのちょっと急な道を登った後、稜線 沿いに山頂を目指す。最後に若干、雪が残っていたが、ほぼ無雪状態に近い。 気温も高く、2℃。11:23 山頂着。独り占め。……なのはいいが、視界もここ では、数十メートルしかない。つまりは、数十メートルの空間を独り占めしている のにすぎないかな? (笑)
ここまでほぼ予定通りの快調のペース。というわけで、下山途中、ちょっと 遊ぶことにする。今日は、アイスハンマーにアイスピトン(ドライブ・イン)を 持参してきているので、1メートルあまりの「滝」を見つけて、アイスピトンを 何度か打ち込んでみた。効率いいとは全然言い難いながらも、打ち込むことは 不可能ではないようで。前に試した時は、ディナープレートが落ちていくだけで 打ち込むこと不可能だったからなぁ。氷の質によるということでしょう。
下山途中、峠から下りて、しばらく行ってから振り返ると、一瞬、晴れ間が あり、三方を取り巻く見事な山の威容が垣間見えた。すぐガスが流れてきたが。 でも、一瞬ながらもすばらしい景色を見ることができてラッキーだった。
Ling小屋にはほぼ予定通り着。 小屋の来客帳に少し書いたり、最後の夜を静かに過ごしたのだった。
01/03
6:40 リング小屋発、リーズ、そしてレスターへとひた走り。21:15 に自宅着。 リーズで 3時間休んだことを考えると、速かった。ジョン、長の運転おつかれさま! 冬山と言い難かったのが(とっても!)残念だったけど、予想外の出会いあり、 山歩きありで悪くなかった山行でした。ありがとう!!
生活編
Ling Hut の生活
電気のある(?)生活
小屋は4年前、 1年前に記録したのと 少し異なっていた。最大の違いは、何と言っても、電化されていたこと! 電化されたおかげで、毎朝のポンプによる水汲み上げの義務もなくなった — 電動ポンプが導入されていたので。もちろんガスランプも 電灯(蛍光灯)に取って代わられていた。あと、ガスと言えば、 コンロとストーブくらいになっている。
大変便利になった。少し、風情が無くなって寂しい気もするが、 まぁ、そういうものだろう。宿泊費が 4割上がったのは、痛いが。
さて、ガス設備は、無くなっているわけではない。ここの電気は、 ガスによる自家発電で、それがたまに止まることがある、と小屋の 注意書きにあった。そういった際には、どうすべきか、という説明まで ある — ようは、僕らが昔来た時のようにガスの生活に戻れ、 というだけだから、僕らとしては慣れたもの、心配するに及ばない。
そして……、この自家発電、本当に、僕らが 1泊した後の翌朝に 止まってくれた! お約束? その後、回復することなく、結局、最初の夜を除いて 1週間、今までと同じく電気無しの生活を送ったのであった。あはは。 (宿泊費 4割返せ〜)
小屋で過ごした人々
2日目からは、他のグループ数人が一緒に小屋に 来てがやがや泊まっていった。ノッティンガム大のOB/OGたちとか。翌日に 合流した人も含めて、8人。 中には、ヒマラヤにまで出かけた強者もいた。 この天候条件では、大したこともできず、hut での生活が中心になった模様。 絶対食い切れまいという大量の食糧を持ち込み、ひたすらビールの缶を 開けていたのが印象的だった(それだけ、片道10分の 山道を歩荷して運んできたわけだ!)。
12/31の夜、彼らのうちのひとりが、携帯用シャワーセット なるものを持ち込んできていた。もともと暑いところで使うもので、 水袋を木の枝などにかけて、その下で袋から出ているシャワー口を使って (重力を頼りに!)下でシャワーを浴びる、というもの。リング小屋では、 さすがに寒過ぎるから……、ひたすらお湯を沸かして、水袋に入れる、という 次第。それを、小屋の乾燥室に持ち込んで、上の梁などをうまく使って、水袋を かける。下に巨大バケツを置いて、人はその中に入って体を洗う(もちろん、 1回に一人ずつ)。 カーテンで周りに水が飛び散らないように仕切って、と色々工夫していた。 人が入るごとに、新たな工夫が加えられ、どんどん使いやすくなっていった らしい。
ホグマニーの祝い前とは言え、よぅやる。その労力に感心。
ジョンは、こんな珍妙な経験は 2度とあるまい(笑)、と使わせてもらっていた。
色々とゲーム類も持ち込んでいた彼ら、 1/1の夜には、僕とジョンも混ぜてもらって、 クイズゲームで遊んだ。2人ペアでチームを組んで。ホンダの開発した ペット犬の名前……最初に僕に来た質問。ラッキー。90年代前半に英国で 流行した……んなもん知るか! わいわい楽しんだのだった。
1/2、僕が小屋を発つ頃にはまだほとんどの連中は ベッドの中だったが、小屋に帰ってきた時には全員きれいにいなくなって いた。2人、もう 2、3泊……と言っていた人もいたが、この天候ではと 去っていった様子。何はともあれ、和気藹々と過ごせてよかった。
食事
リング小屋は、調理用具はそれなりに揃っている。そして、この季節は 天然の冷蔵庫にも恵まれている。だから、キャンプ仕様の料理でなく、 歩荷の手間さえ厭わなければ、相当のものを持ち込んで調理することが 可能だ。 特に、1年前に来た時、 トムが、あひるの丸焼きを作っていたのは刺戟的だった。
そこで今年、パン焼きに挑戦してみた。小麦粉はもちろん型や イーストなど分量分運び込んで。問題は、小屋のオーブンには、まっとうな目盛が ないこと。いや、目盛はあるのだが、数字も何もないので、温度はさっぱり 分からない……。ヤマ勘で焼いてはみたが……、はっきり言って失敗作だった。 食べられないことはないけれど……。ジョンには、「美味しそうには見えないね」 とはっきり言われてしまった。まだまだ未熟ものです。
情報編
トリドン山地へのアクセス
トリドン山地近辺へ南(イングランド)からアクセスするには、大きく分けて 東海岸経由と西海岸経由の二つある。最大幹線路は、グラスゴー(Glasgow; 西海岸 近く)近くからインバネス(Inverness; 東海岸)まで斜めに突っ切る高速道 M80(とA80) から国道 A9、そして A82。これが、僕らが通ったルートだった。 つまり、中央よりは東寄りのリーズから、一旦西海岸(グラスゴー)近くまで出て、 その後、東海岸(インバネス)まで出て、最後、トリドン(西海岸)まで横切る、 という大周り経路だった。この経路の場合、インバネスからトリドンと インバネス直前以外、ほとんど複数車線で快適な道路の旅になるのがメリットだ。
一方、当然ながら、距離的には、グラスゴーから西海岸をまっすぐトリドンまで 上がっていく方が近い — ただし、スコットランドの西海岸は激しく 入り組んでいて(ネス湖など、ほとんど西海岸から東海岸まで突き抜けている のに近い)、道路もそれに沿わざるを得ないので、直線とはほど遠い。 そして、道はこちらの方がずっと悪い。
ジョンは、最初に来た時、西海岸経由で来たそうだが、延々とかかったという。 結果、今回、大周りでもまっとうな道経由を選んだのだ。おそらく、こちらの 方が時間的にも速くて済みそうだ。
タイム・テーブル
時刻 | 行動 | 高度(m) | 温度(℃) | 歩数(複歩) | |
---|---|---|---|---|---|
(計器) | (地図) | ||||
2005/12/28 (Leeds → A1→A66→M6→A9→Inverness→Ling Hut@Torridon) |
|||||
05:45 | Leeds発 | ||||
16:30 | Ling Hut | ||||
22:00 | -2 | ||||
22:15 | 就寝 | ||||
2005/12/29 (Hut → Liathach北面 → Hut → Sgurr Dubh → Hut) |
|||||
05:30 | 起床 | ||||
06:10 | -2 | ||||
08:08 | 発(単独) | 85(s) | |||
08:18 | 舗装道(A896) | 85 | |||
08:58 | Stepping stones前 (以降 pathを外れて北面へ) |
1590 | |||
09:20 | 最初の川を横切ったところ | 512 | -2 | 580 | |
09:57 | Stepping stones前 | 365 | |||
10:33 | 舗装道(A896) | 1670 | |||
10:45 | Hut着 | 0 | |||
11:17 | 発(ジョンと) | 85(s) | |||
11:40 | 休(10分) | 253 | 717 | ||
12:26 | 休(10分) | 541 | -2 | 920 | |
12:50 | 稜線 | 200 | |||
13:24 | Sgurr Dubh山頂 | 848 | 782(s) | -7 | 850 |
13:45 | 発(稜線を長く辿る) | ||||
15:25 | Hut着 | 55 | 2 | ||
23:05 | 就寝 | ||||
2005/12/30 (Hut → Coire Mhic Nóbuil駐車場(発) → Tom na Gruagaich → 往路戻る) |
|||||
05:20 | 起床 | ||||
06:30 | 200 | 4 | |||
08:30 | 3 | ||||
08:45 | 発 | 85(s) | |||
09:30 | Coire Mhic Nóbuil駐車場発 | 35(s) | |||
09:42 | 分岐 | 100 | 527 | ||
09:55 | (Gate過ぎた)Ford渡る (FB存在せず) |
95 | |||
(Alltan Glas川の走る Coir nan Laogh 経由) | |||||
11:35 | 休(5分) (時に雪面、氷化していたり) |
698 | 0 | ||
12:00 | 888 | 0 | |||
12:25 | Tom na Gruagaich山頂 | 967 | 922(s) | ||
12:50 | 発(ピッケル使う) | ||||
14:30 | stile(駐車場直行の径) (5分休) |
155 | 6 | ||
15:00 | 駐車場 | 28 | |||
(晩、クイズゲームに興じる) | |||||
23:25 | 就寝 | 7 | |||
2005/12/31 (Hut → Loch Coire Mhic Fhearchair → Ruadh-stac Mòr → A' Choinneach Mhòr → Hut → Kinlochewe) |
|||||
06:45 | 起床 | 75 | |||
07:30 | 3 | ||||
09:45 | 発 | 85(s) | 5 | ||
09:55 | 舗装道(A896) | ||||
10:37 | Stepping stones前 (10分休) |
351 | 345 | 4 | 2000 |
11:00 | 分岐 | 397 | 391 | 827 | |
11:51 | Loch Coire Mhic Fhearchair前 | 598 | 585(s) | 3 | 2000 |
12:12 | 発 | ||||
12:35 | Triple Buttress下 (飛行機の残骸あり) |
600 | 800 | ||
12:56 | Buttress下の湖 | 696 | 598 | ||
(scree の谷経由でコルまで登る) | |||||
13:20 | 稜線(コル) (リッチ、ローレンに会う) |
871 | |||
13:31 | 発 | ||||
13:47 | Ruadh-stac Mòr山頂 | 1011 | 1010 | 2 | |
14:03 | コル(まで戻った) | ||||
(Beinn Eighe方面へ向かう) | |||||
14:12 | ケルン (Còinneach Mhòr の東のピーク) | 957 | |||
14:22 | リッチらに追い付く | 860 | |||
14:42 | コルの最後、登りへ (5分休; 雲が下りてくる) |
820 | |||
14:57 | 稜線を離れる | 891 | 280 | ||
(東南へ道なき道を下降) | |||||
17:46 | Hut着 | 32 | 6 | ||
20:40 | Kinlocheweのホテル(パブ)着 | ||||
(一時、リッチの場所でシャワー借りる) | |||||
02:00 | 就寝(リッチの場所) | ||||
2006/01/01 (Kinlochewe(車) → Allt na h-Airighe駐車場 → Leathad Buidhe → Coille na Gas-leitire → 駐車場(車) → Kinlochewe(車) → Hut) |
|||||
10:30 | 起床 | ||||
12:48 | Allt na h-Airighe駐車場 | 14(s) | |||
(木の橋) | |||||
13:12 | ケルン | 278 | 305(s) | ||
13:39 | Leathad Buidhe山頂 | 593 | 551(s) | ||
14:00 | 発 | ||||
15:03 | 分岐(左手(北側)へ) | 82 | 113 | ||
15:22 | 駐車場 | -23 | |||
16:10 | Kinlochewe | 31(s) | |||
(隣村のホテルで皆で夕食、別れてジョンとhutに戻る) | |||||
2006/01/02 (Hut → Coire Grannda → Sgorr Ruadh → → Hut) |
|||||
06:40 | 起床 | ||||
07:00 | 40 | 7 | |||
08:10 | 発(単独) | 85(s) | |||
08:42 | Ford?(不明瞭) | 216 | 1480 | ||
08:52 | 休(5分) | 243 | 160 | ||
09:26 | 平たい場所 (10分休む) |
396 | 925 | ||
09:42 | lochan(GR954532) | 417 | 410 | 172 | |
10:18 | lochan(GR954517)近く | 570 | 1092 | ||
10:32 | コル(GR955512) | 667 | |||
10:49 | 稜線 | 778 | 341 | ||
11:23 | Sgorr Ruadh山頂 | 985 | 962 | 2 | 986 |
11:42 | 発 | 85(s) | |||
12:18 | コル(GR953511) | 755 | 960 | ||
小さな氷滝で遊ぶ | 720 | ||||
12:48 | 遊び場発 | ||||
12:58 | コル(GR955512) | 655 | |||
13:26 | 小さなridgeの端(GR951524?) | 512 | 4 | 1006 | |
14:47 | Hut着 | 71 | 9 | 2909 | |
23:00 | 就寝 | 85(s) | |||
2006/01/03 (Ling Hut → Leeds → Leicester) |
|||||
06:00 | 起床 | ||||
06:40 | Ling Hut発 | ||||
06:58 | 駐車場発 | 5 | |||
08:30 | Inverness | ||||
16:00 | Leeds着 | ||||
19:00 | Leeds発 | ||||
21:15 | Leicester着 |
表注:
高度の表記で (s) は高度計をその高度にセット。 なお、高度計は、腕時計(Silva/Alta)を使用。歩数は、その前の
項目からの歩数(複歩)。
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