2006/02/24--26 湖水地方登山記録/感想文 (by まさ)

[Japanese / English]



Summary

山域
Lake District/Borrowdale/Great Gable, Derwent Water
参加者
ジョン・M、グレアム、アダム・H、ニック、アビ、、、、まさ
期間
2006/02/24--2006/02/26 (2泊3日)
  • 2006/02/24 Leicester ...(車)... Bowderstone Hut
  • 2006/02/25 Hut ... (車) ... Seathwaite ... Styhead Tarn ... Napes Needle ... Green Gable ... Great Gable ... Hut
  • 2006/02/26 Hut ... Shepherd's Crag ... Gowder Crag ... Falcon Crags ... Keswick ... (車) ... Leicester
宿泊
Bowderstone Hut
天候
  • 2006/02/24 晴
  • 2006/02/25 晴
  • 2006/02/26 曇後雨

登山編

恒例の湖水地方山行、3回目の Bowderstone hut 宿泊になる。 残念ながら去年のように冬山といけるかどうか微妙な感じ。 一応、冬山装備を持参はしたが、結局、まともな冬山とはいかなかった。 実はおまけに、この週末は僕は風邪気味で体調は万全とはほど遠かったのだった。

しかし、特に初日は、素晴らしい山行の日とあいなった。個人的に、 僕の湖水地方の経験の中で、最高の一日だった。素晴らしい景色、高度感、 喧騒を離れた自然の中の静謐感、きれいな空気、達成感、移りゆく状況、 それを共有する友、そして過去の歴史というスパイスまで — 望むもの 全てがそこにあった!

同行したアダム・H は、このような真剣登山の経験は初めてだったという。 今日はどうだったかと訊いた時、「めちゃめちゃ最高! (absolutely fxxxing brilliant)」と最大級の賛辞で答えた。そう、彼はこの日を 思いっきり楽しみ、以前以上に「登山」に惹かれている雰囲気なのだった。

02/24

小屋で晩、ジョン、グレアム、アダムと 相談し、4人で歩登攀に行くことにする。僕の提案で、Climber's traverse へ。 有名な Grade 2 のルートで、ネイプス・ニードル(Napes Needle)のすぐ脇を通過し、 グレート・ゲーブル(Great Gable)へ突き上げる。

ネイプス・ニードルは、英国岩登りの発祥の地として非常に有名だ。 英国のクライマーで知らない人はもぐりと言えそう。 ネイプス・ニードル自体は、グレート・ゲーブルの側面にそびえる 18メートル のピナクル(柱状岩)。山の側面にあるため、グレート・ゲーブルを臨むような 遠くから見たのでは、実は全然目立たない。近くに寄ると、垂直の 岩で、普通にはとても登れないのは一目で分かるが。1886年、 ウォルター・パリー・ハスケット-スミスが、このネイプス・ニードルを 登ったことは、英国クライミングの金字塔として輝いている。 というのも、このクライミングこそ、「敢えて(山でなく)岩を登る」という 岩登りの伝統の始まりだと見なされているからだ。 それ以前も「山を登る」人はいたし(マッターホルンにエドワード・ウィンパーが 初登頂したのは 1865年)、ただ山頂に達するだけでなく、あえて難しい 岩壁から登る試みもすでに盛んではあった。しかし、山頂でない岩を登る というのは、英国内ではこのネイプス・ニードルが初めてだった。 つまり、ネイプス・ニードルは 英国近代岩登り(ロック・クライミング)発祥の地、と見なされているのだ。

僕自身は、ネイプス・ニードルを未だ訪れたことが無いし、視認したことも ない。だから、今回はいい機会という次第だ。

僕ら 4人は早めに就寝。

02/25

天気予報によると、 しかしそれなりには冷えそうで、少しは雪があるという感じ。 そこで、ジョンと僕とはクランポンを持参し、4人ともピッケルは持っていく。

Styhead Tarn (池)までは普通の登山道、そこからネイプス・ニードルをやはり 途中までは登山道沿いに目指すが、もうひとつはっきりしない。結局、 少し上に行き過ぎたようなので、山の中腹を少し下って、ルートに達する。 もちろんネイプス・ニードルははっきりと見える。眼下に広がる ワスト・ウォーター(Wast Water)湖と併せ、なかなかの眺めだ。

やがて、ネイプス・ニードル下に達する。ここからニードルの脇まで登り、 さらに反対側に降り返すのが、今日の歩登攀のルート(Climber's traverse)の 核心であり、また、始まりでもある。僕、グレアム、アダム、ジョンの順で登る。 僕が登ると、若干、難しい気がしたので、アダムに確保しようと思うが、と 問いかけたが、不要と断られた(確保を断るとはまだまだ青いね、君)。

で、ニードルの脇まで僕が登り切った後、アダムが難しい箇所に入ってくると、 結局、確保を求められた。だから言ったのに……。アダムはその場で 1、2分 立ち止まっていることは幸い問題なかったので、すぐに確保支点をセットして ザイルを垂らす。ジョンは問題なくフリーで登ってきた。

さて、ここから反対側に降り返すのが、ちょっと難しそう。というのも、 日陰になっている関係で、岩の表面に雪が残っていて、そうでない場所も 濡れているから。アダム、グレアムとロワーダウンして、ジョンには (確保付きで)クライムダウンしてもらった。ジョンによればかなり難しい、 とのことだったので、僕はスリングを一つ残して懸垂下降とした(古いスリング を小屋に忘れたので、比較的新しいスリングを残すことになった……あらら)。 なんにせよ、ハーネス他を十分前に装着しておいてよかった、というものだ。

間近で見るネイプス・ニードルの眺め、湖の眺めと共に、 このトラバースはなかなか楽しかった。ニードルにも登ってみたいもの だったが、それは次の楽しみに取っておくことにしよう。

ここからは、Sphinx Ridge を歩登攀することになる。入口がもうひとつ はっきりせず、適当に登るうちにちょっと難しい場所に達し、 先に登ったグレアムが後続のアダムと僕とを確保してくれた。 ここで、コンテのセットをする。僕がリードで、アダム、グレアム、ジョンと 続く。

そして、この歩登攀が実にすばらしかった。僕は実質上、全てソロで登って、 時に雪があったとは言え、特に問題なかった。時折、立ち止まって後続を 確保する必要はあったが(ジョンは、必要かな、という感じのようだったが、 アダムは確保されて嬉しい、とコメントだったので、僕の判断は概ね正し かったようだ)。青空のもと、ワスト・ウォーター湖を見下ろす高度感ある 景観、そこを登っていく感覚は最高に素晴らしかった。

歩登攀が終わった後は、短い山歩きでグレート・ゲーブル(Great Gable)山頂 (899m)に達した。この頃になると、天気が急変していて、吹雪の中での 登頂になった。地面は堅雪で覆われ、僕らは硬派のクライマーみたいでは ないか!

山頂での気温は零度程度とそう低いわけではなかったが、強風のため、 体感温度はかなり低かったはずだ。僕のソフト・シェルが真価を発揮し、 目出し帽とゴーグルを担いで来た甲斐があったものだった。

下山は、Green Gable 側の Aaron Slack の登山道沿いに行った。 全員ピッケルを持ち、僕はアダムを dog-lead した(実は初めての経験)。 結構な吹雪の中なので、ナビゲーションも簡単ではない。 dog-lead をしながら進む僕としては、ジョンが先頭に立って ナビゲーションしてくれたことに感謝した次第だった。

Styhead Tarn に着く頃には天気も落ち着いていて、あとはゆっくりと Styhead Gill 沿いの登山道を下っていった。
最高の一日だった!!

02/26

今日は、他の連中は、スポーツ・クライミングに行くと言う。 僕はスポーツ・クライミングに興味はないし、どちらにせよ体調も優れない ので、小屋からケジック(Keswick)まで岩場を見ながらの偵察(?)ウォーキング とすることにする。

まず、2km ほど歩いて Shepherd's Crag へ。昨年、一昨年と訪れた なじみの場所。次に登ってみたいルートが色々あって、チェック、チェック。 続いて、近くの Gowder Crag。ここは来たことない。滝のそばにあって、 眺めがいい感じだ。ここの 113m の VS ルートは楽しそうだ。 Derwent Water湖沿いに北上して、次が、Lower Falcon Crag、さらに Upper Falcon Crag と進む。Lower Falcon Crag は横に広がる立派な バットレスという雰囲気だ。高さは 50メートル程度。なかなかシビア そう。Upper Falcon Crag は、真ん中に立派なオーバーハングがあって、 さらにシビアな感じだった。僕の(ベスト版)ガイド本では、E3 と E4 しか ルートが載ってないし……。

そうして、じきにケジックに着き、先の年末 にも行ったパブで看板のグーラッシュ(煮込み料理)で昼食としゃれこんだのだった。

今回、風邪で体調不良ではあったが……、一日目は実に素晴らしかった。 風邪をおして来た甲斐があったというものだった!


生活編

今回泊まった Bowderstone hut は、3年連続 3回目。 小屋の来客帳には、僕の名が 3年連続で記されている、というものだ。 ジョンもそう。ニックに至っては 4年連続。僕ら年寄りかな? (笑)


タイム・テーブル

2006/02/24-26 Lake District 山行タイム・テーブル
時刻 行動 高度(m) (計器|地図) 温度(℃) 歩数(複歩)
2006/02/24
(Leicester → Bowderstone hut)
Bowderstone hut 着
??:?? 就寝
2006/02/25
(Hut → Seathwaite → Styhead Tarn → Napes Needle → Great Gable → Hut)
起床
就寝
2006/02/26
(Hut → Shepherd's Crag → Falcon Crags → Keswick → Leicester)
起床
(以下、記録なし)

表注:
高度の表記で (s) は高度計をその高度にセット。 なお、高度計は、腕時計(Silva/Alta)を使用。歩数は、その前の 項目からの歩数(複歩)。


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まさ