2006/08/26--28 湖水地方(他)登山記録/感想文 (by まさ)

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総括

山域
Lake District/Fairfield, Bowfell; Northern England/Wadsworth Moor
参加者
クローディア(08/26--27)、まさ
期間
2006/08/26--2006/08/28 (2泊3日)
  • 2006/08/26 Leicester ...(車)... Patterdale ... Pinnacle Ridge ... Fairfield ... Patterdale (幕営)
  • 2006/08/27 Patterdale ...(車)... Great Langdale ... Bowfell ... Langdale ...(車)... Preston (車中泊)
  • 2006/08/28 Preston ...(車)... Clough Foot ... Wadsworth Moor ... Clough Foot ...(車)... Leicester
宿泊
  • 2006/08/26 幕営 (@Patterdale)
  • 2006/08/27 車中泊
天候
  • 2006/08/26 雨後曇時々雨
  • 2006/08/27 雨時々曇
  • 2006/08/28 曇時々雨

登山編

8月末の三連休を利用して、湖水地方に来ることにする。 今回、夏期中、西海岸で働いているクローディアと、途中で落ち合って、 一緒に山行を楽しむ予定。ただし、クローディアは三日目は仕事があるので、 その日はどこかで僕は単独行ということになる。今回、天候はあまり 思わしくなさそうなのが気がかりだが……、こればかりはどうしようもない。 何とかなることを願おう。

クローディアと一緒の「山行」は随分と久々、実に 1年半前のコーンウォール以来と なる。現在もアウトドアの分野で働き続ける彼女は、僕が技術的にほぼ 全幅の信頼をおける(英国で)唯一の友人だ。

08/26

朝 4時すぎに車で出発……するも、途中で高速で間違えまくって(インターチェンジ で 3回間違えた……逆方向に走ったり)、待ち合わせに 1時間半も遅れてしまった。 申し訳ない!

今日、目的地はまだ決まっていない。 天候の思わしくない今日、岩登りは避けよう、ということでこれはすぐに一致。 そこで僕が候補を 3つほど提案。うち一つは、 Grade 3 の歩登攀ルート、ピナクル・リッジ(Pinnacle Ridge)、 湖水地方の歩登攀ルートの中でおそらく 5本の指に入る有名な ルート。僕は、出発地点のパターデール(Patterdale)に入り込んだことは まだ一度もないので、それも楽しみだった。

クローディアは、はるか昔に行って楽しかった記憶がおぼろげにある、と言う。 ただ、ルートの名前は覚えてないし、違うかも、と。でも、それが一番 楽しそう、ということで、、、今日行くルートが決まった。ピナクル・リッジ からフェアフィールド(Fairfield)山を登り、Hart Crag 経由で下山、と。

下山地点に近い Brothers Water湖近くの駐車場に車を停め、平坦に近い整備された登山道を 登っていく。途中、道の左側に小屋が見え、立ち寄るクローディア。 何かの時にビバークに使えるかも、とチェックしておく、という。 なーるほどね。結局、それは羊小屋らしく、あまり積極的に使いたいとは 思わない(し、使わない方がいい)感じだった。

Grisdale の中ほどから予定通り、一般登山道を離れ、斜面を登っていく。 途中、目ざとく野草のブルーベリーを見つけるクローディア。 それがブルーベリーでしたか。知らなんだ(実は店で一般に売られている ブルーベリーとはまた違うらしいことが後に発覚)。先にブラックベリーもしっかり 見つけるし、嗅覚(?)が発達しているなぁ、と感心。

ピナクル・リッジはあれかなぁ、と目指して登っていっていたら、休んでいた カップルに、いや、(通り過ぎた)左側のあいつだよ、と指摘された。ちゃんと ガイド本見てなかったから……。でも、思ったより(ルートの場所が)目立っている わけではないのも確かだ。

やがて、岩の取り付きに達したところで、ギア装備。ザイルはザックの 中にしまっているが。グレード 3 だし。クローディアが先に登り始める。 敢えて、直登ルートを取って登る彼女。実際、いくらでも横に逃げられる ルートだ。

写真を撮っている間に、単独行の男性が一人、追い抜いていく。 そしてすぐに明らかにそれと分かる核心。真ん中を走るクラックを直登すれば Mod の岩登りだが、僕らは右から登ることにする(左から登る、とする ガイド本もあった)。確かにここは Grade 3 の難易度か。

歩登攀はもう少し続く。相変わらず、あえて直登を選ぶクローディア。 岩の「トンネル」を抜けて上に出たり。僕はそこは横に避けたら、 「あぁ、ずるっこ〜!」と声がかかる……。そういう問題ですか(笑)。 僕としては、高価な合羽を岩で擦るのが嫌だったのだった。

そうしてまもなく、短か過ぎるルートは突然終わりを迎えたのだった。 クローディアは、これはその昔登ったルートだと納得していた。でも、 今日の歩登攀は随分と楽しく大いに満足した、とも。楽しめたようで何よりだ。 一方、僕としては、歩登攀のルートとしては、いまいちだと感じた。 ほとんどどこでも逃げられるし、高度感ももう一つだし。 湖水地方なら、むしろ Grade 1 の Jack's Rake (2年前に行った) の方に分を挙げたい。ただし、下を眺めればたくさん山歩きの人の見える Jack's Rake と違って、こちらは静かな山行(途中抜いていった男性が、ピナクル・リッジ のルート中で今日会った、唯一の登山者)と深い風景とが楽しめるので、 それはなかなか悪くない。

ルートの終わりからは、稜線に出て、何グループかと行き会いながら、 フェアフィールドの山頂に達する。天候がかなり悪くなっていて、 視界が無いのが残念。Hart Crag の方向に下り始める。

今日は降ったりやんだりの雨がちの天気だった。そんな今日、 下山の途中、きれいな虹に出会えた。半円の両横と上部とが光っている。 見ている間にすぐ薄れてしまったが。雨がちの天気も悪くないものだ。

Hart Crag から、クローディアの提案で、近くの洞穴探索に出かけることに する。僕が 3年前だったかクリスマスプレゼントに贈った山の本に載っていた そうで、ビバーク場所として最適なんだそうだ。地図では大体の場所しか 分からないので、崖の中を探し回ることになる。

この崖、結構広いため、探すのに少し手間取ったが、やがて、目的の洞穴を 見つけることができた(実は思っていたより、ずっと明らかな形であった)。 奥行き 3m、幅 8m くらいの岩の窪みという感じで、東向き、つまりご来光が 拝める向きに開いている。横殴りの風雨にはちと辛いが、それさえなければ 快適なビバークが楽しめそうな洞穴だ。

来客帳他、いろいろな「遺産」があり、来客帳を見るにかなり人気のある 場所、ということが分かる。バーベキューの跡もそこかしこにある。 それはいいのだが……、ゴミが結構残されているのがかなり残念なところだ。 見かねたクローディア、掃除を始める。僕も異義無くつきあう。 問題は、デパートの袋一杯に残されている瓶缶類。かなりマナー悪いなぁ。 驚いたことに、クローディア、それも担いで帰ることに決める。ザックに 背負って。感嘆ものです!
最後、来客帳に、ゴミを捨てるな、とクローディアはメモを残した。 というわけで、同来客帳の2006年8月の名無しコメントは僕らのものです!

洞穴からの下山時、実は、非常にはっきりした登山道がごく近くまで あることに気づいた。これならほとんど迷いようがない。 洞穴が人気のあるわけかなぁ。

さて、駐車場まで戻って、今夜の宿を決める段になる。幕営なのだが、 どこで幕営するかがまだ決まっていない。僕は今まで、(ビバークで なければ)どこかの天場を使っていたのだが、クローディアは その辺に天幕を張るのが常なのだそうだ。もちろん僕に異存はない。 というわけで、車で、よさそうな場所を探して出かけることに。

条件は、少なくとも車道からは見えないこと。特に、夜でも車通りが あるような車道から見える場所は論外。一方で、日暮れも近い今日、 車からあまり長い距離を歩く場所は望ましくない。もちろん、下が平坦で 濡れていない場所がいい。湖水際で朝日が見えるような場所なら最高?

とは言え、車で走り回るもそういう理想的な場所はなかなか見つからない。 そのうち、日も暮れてきて……。 やがて、田舎道のマイナーな道の傍らで、クローディアがここならどうかな、 ちょっとマナー悪いけど、と場所を提案する。マナーが悪い、というのは、 道からちょっと近過ぎて、下りの車からは見えないが、登りの車からは はっきり視認できてしまう点だ。朝、すぐ天幕を畳んで出発するなら 許してもらえるとしよう、とクローディア。 僕がその横に(登山?)道らしきものを見つけた ので、それを下っていったところに、少しスペースを見つけた。そこなら、 車道からは存在が気づかれようがない、というわけで、そちらを選ぶことにした。 朝、そんなに慌てる必要もない、というのも大きな利点。 微妙に傾きがあるが、草の上だし、そんなに悪くない。

というわけで、日没と競争しながら、僕が天幕設営、その間にクローディアが 夕食を手早く支度する。そして夕食を終えて、天幕に入り込む頃には、結構強い雨が 降り出した。元々、ビバークにするか、テントにするか、とクローディアは 言っていたものだったが、この天気では、テントにしてよかったってものだ。 そして、今朝 3時半から動き詰めの僕は、 ほとんどばたん・きゅーで眠りに落ちたのだった。

08/27

天幕設営場所がそう悪くなかった、ということで、しっかり朝寝、 9時起床となった。遅い(!)が……、相変わらず冴えない天候だったのも その一因で、早起きする気がしなかったものだ。

それでも起きた時には日が射していたので、フライシートを車の上で 乾かしていたのだが……、やがて雨が降り出し、車の中に仕舞い込む頃 には、以前と同じくらい濡れていたのだった。意味なし。

さて、今日、どこに行くか? この雨がちの天気では、どこかに山歩きが 妥当だろう。僕の提案で、ラングデール(Langdale)の西側奥地に行くことにする。 ボーフェル(Bowfell)山を含む周回ルートに。 僕はラングデールも、その向こうのスコーフェル・パイクやその東側の 谷も行ったことがあるが (いずれも2年前)、 その間の山系には足を踏み入れたことがない。そのエリアには、 素晴らしい Diff の登攀ルートとか色々ある、という話は聞くも。

ラングデールの New Dungeon Gill ホテル近くの駐車場に車を停め、 ほぼ平坦な道を歩き始める。ひと組、ひと組と追い抜いていって、 Angle Tarn(池)前に着く頃には、周りに誰もいなくなっていた。

一般登山道は、その峠から Angle Tarn 湖畔まで下って、また登り返す のだが、僕らはそこで道を外れて、下らずに直登することにした。 見るに、比較的楽に登れそうだったから。いかにも英国らしいコース 取りだ。峠の両側に広がる風景が美しい。

問題は、この頃になると雨足が次第に強くなってきたことだ。 合羽に感謝。視界も少なくなってきている。やがてボーフェル山頂を踏んで 小休憩の後に発つ頃には、相当の風雨となってしまった。
「どう? このすばらしい英国の天気は? (笑)」とクローディア。

しかし、そんな雨もそう長くは続かないのがやはり英国的。 雨が上がり、ガスが去った後には、きれいな風景、そして見事な 半円の虹が残ったのだった。すばらしい! こんな風景が見られるなら、 悪天候も悪くない、というものだ。

Crinkle Crags の山頂を越え、下っていく。その下りの一部、いやらしいところが あった。1箇所だが、ちょっと難しい歩登攀で 3〜4メートル下りる場所があった。 僕は、最初の場所を降りようとして、途中で諦めて登り直して、隣から 降り直したくらいだから、相当なものだ。歩登攀でグレード 2〜3 に相当 するのではないか? 濡れていたから余計にいやらしかった、というのは あるにせよ。実際、後から来たクローディアも苦労していた。 一般登山道とは思えない。

それ以外は、特になにごともなく、下山していく。風が強いおかげで、 靴の中以外は大抵乾いてしまった。「運がいいわね、私たち」とクローディアが 言った矢先、それを聞いていたのか、再び雨が降り出して……、駐車場に 着く頃には、かなり濡れてしまったのだった。やっぱり英国だ……。

帰り道、アンブルサイド(Ambleside)で僕の友人に二人で会った後、 プレストン(Preston)まで高速をひた走り、クローディアと別れて、 この日の山行の締めとした。今日は、二人、それぞれの車で車中泊だ……。

08/28

起床 9:00。 マンチェスターの友人に連絡するも、都合が悪い、ということで、 予定通り、どこかに単独行に行くことにする。 再び湖水地方や、あるいはヨークシャーデール(Yorkshiredale)まで 北上する気はせず(その後、南下して帰らなくてはいけない!)、 かと言って、よく訪れるピーク地方に行くのもなんだかなぁ、と いうことで、ピーク地方とヨークシャーデールとの間にある 荒野(moorland)を歩いてみることにする。純粋に楽しみの丘歩きと いうことで。(あとで地図を見ると、一応、ペニン山地南部ということに 分類されるようだ。あまり山地という感じではないが。)

地図を見ていると、Wadsworth Moor というのが目についた。 あの(詩人)ワーズワースの名を冠している? 綴が少し違う気もするが……、 記憶違いかも知れない、まぁ、違ってもいいだろう、ということで、 そこに行くことにした(実際、後で調べて、違うことが分かった。 詩人のワーズワースは Wordsworth)。幾つか滝があるようなので、 荒野の中で滝巡りと洒落込んでみるかな?

駐車場を発ったのは 14:38、最初はペニン径を辿る。Walshaw Dean Middle Reservoir(貯水)湖の なかほどから、いよいよ荒野に向けて乗り出す。見事な深い草原と 紫のお花畑に。くさむらは膝から腰の高さまである。そして、足を踏み入れる まで、その高さがさっぱり分からず、また、地面の形も分からない、 というのが難だ。特に、地面の形は激しく波打っているようで、 おまけに、軟らかいから、体重を乗せると動いたりする。

これは面白い、と歩いていったのはいいが……、10分後に、右足首を 捻ってしまった。非常に悪い、というわけではないが……、2週間後に 5日間の山行を控えているし、今日は無理はしないことにして、そこで 引き返すことを決めた。今日、楽しみ一番と言いつつ、ペーシング(pacing)は していた。そんな中、こんな深い草原は予想していなくて、遅くなったペースを 速くしようという潜在的な気持ちが働いたのが敗因だっただろう……。 こんな地では、速く歩くのは無茶と言うものだった。 捻挫は必然の結果だったかも知れない。

仕方ない、せっかくのくさむら、寝っ転がって、昼寝と興じる。それは なかなかに気持ちいい。……が、10分と立たない間に雨が降り出してくれた。 やっぱり英国だなぁ。。。

元の一般登山道に戻り、その後、もと来た道を引き返すのも芸が無いので、 その道(馬・自転車道)経由で周回ルートを取ることにした。 荒野を歩くのに比べたら面白くないが……、まぁ、 仕方ない、次の楽しみに取っておくとしよう。 ゆっくり歩いて駐車場着 17:45。

こうして、三連休は数え切れないくらいの回数との雨と共に過ぎていった。 土砂降りではなかったが……、実に英国らしい、というべきか。 多分、10人中9人は「最低」という天気だったろうが、クローディアは言った ものだ 「(激しく降られることが無くて)私たち、運がよかったわね!」
登山家、かくあるべし!


タイム・テーブル

2006/08/26-28 Lake District 山行タイム・テーブル
時刻 行動 高度(m) (計器|地図) 温度(℃) 歩数(複歩)
表注:
高度の表記で (s) は高度計をその高度にセット。 なお、高度計は、腕時計を使用。 歩数は、その前の項目からの歩数[複歩]、 括弧「(...)」内は予測値。 GR は、Grid Reference Number で、省略時の頭文字は、8/26, 27 は NY、 8/28 は SD。
2006/08/26
(Leicester → Patterdale → Pinnacle Ridge → Fairfield → Hart Crag → Patterdale → Dockray 近く)
04:20 Leicester発
11:40 Low Wood駐車場発(GR401135)
12:17
12:33 755
12:46 三叉路
13:02 羊小屋
14:20 Pinnacle Ridge取付(ハーネス着用) 15
16:00 Cofa Pike山頂
16:08 Fairfield山頂 873 13
16:35 Hart Crag山頂 822
18:15 Cave 発 12
19:35 Low Wood駐車場着(GR401135)
22:40 天幕設営終了/就寝準備
2006/08/27
(Dockray → Great Langdale → Bowfell → Great Langdale → Preston 近く)
09:00 起床
12:30 Ambleside
13:23 駐車場発 17
14:15 三叉路(GR261073)(5分休) 17
15:03 Angle Tarn近く(GR247075)
(登山道離れる)
610 1350
15:35 650
15:57 Bowfell山頂 903 9
16:55 Crinkle Crags山頂 860 9
18:15 駐車場着
22:00頃 Ambleside発
23:30 Preston発
25:30 就寝
2006/08/28
(Preston近く → Clough Foot → Wadsworth Moor → Clough Foot → Leiceste)
09:00 起床
14:38 Clough Foot 駐車場発(GR947324)
(Pennine Way経由)
17
14:59 Walshaw Dean Lower Reservoir最下流ダム 895
15:11 Walshaw Dean Middle Reservoir最下流ダム 650(650/1km)
15:21 Grouse Butts 入口(GR969338) 400(470/670m)
15:30 17
15:40 ストップ/昼寝
15:50 帰り始める(High Rakes 経由; Bridle way)
17:45 Clough Foot 駐車場着(GR947324)

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まさ