2007/04/14 Peak 地方/Derwent Edge/Dovestones Tor登山記録/感想文 (by まさ)

[Japanese / English]



総括

山域
Peak District/Derwent Edge/Dovestones Tor
参加者
アダム・W、まさ
期間
2007/04/14 (日帰り)
  1. Route 1 (Gargoyle) Buttress/Route 1 (16m VS 4c) (+ The Shylock Finish (6m HVS 5a)); Leader Masa, 2nd Adam
  2. Route 1 (Gargoyle) Buttress/Lancaster Flyby (14m HVS/E1 5b); Leader Masa, 2nd Adam
  3. The Great Buttress/Great Buttress (20m HVS 5a); Leader Masa
天候
靄後快晴 (18℃@12時頃; 23℃@15時; 21℃@12時)

登山編

1月以来、3カ月ぶりのアダムとの岩登り。
予報では、今日はかなりいい天気になるはず。レスターを発った時にはそれなりの 霧だったが、ピーク地方に入る頃にはすっかり晴れ上がっている。 こんな日は……今まで行ったことのない Derwent Edges、中でも最大の Dovestones Tor なんてどうか、ということで意見が一致している。 Derwent Edges は結構遠い(ガイド本によれば 40分)のがある意味で難だが、 こんな天気のいい春の日には、歩いて行くのもなかなかおつなものだろう、 という次第(加えて、この頃は日もかなり長くなっているから)。

駐車場を発って、乗馬道(Bridle way)をゆるやかに登っていく。 今日は何台もの自転車に会った(馬は一頭も見なかったけど)。ポピュラー なのだろうか? やがて乗馬道を離れて、普通の登山道へ。眼下に見える ため池(Ladybower Reservoir, Derwent Reservoir)や遠くのキンダー(Kinder)の 山々が素晴らしい。

やがて、右に特徴的な巨石 Wheel Stones が見え、到達。 巨石の上に登るのはちょっとした歩登攀(Grade 2/3?)。 ガイド本によれば、巨石の下部には、いくつかのボルダリングの課題がある。 実際、チョークの跡が幾つもある。 そこからしばらく行って、今度は左に White Tor。 (横方向に)小ぶりとは言え、10を超えるルートがある。

この時点で、歩き始めた時から 1時間半近く経過している。 確かに Wheel Stones や White Tor に立ち寄ったりしたとは言え、 これは 40分の距離ではないぞよ。実際、道のり 3km 以上、垂直距離 200m以上 あるから、それを 40分は相当厳しいでしょう。まして今日、僕らはリードの ためのギア 2セット(つまりそれぞれ 1セット!)、シングルとダブルのロープ を両方(!)、それに大ボルダリング・マットまで担いで歩いているから…… (おまけに、僕の道具の中には、アイス・スクリューまで紛れ込んでいた! 無駄、無駄、無駄ぁぁぁ〜〜)。

最後、ようやく Dovestones Tor にたどり着いた頃には、結構な運動を こなしたことになっていた。12時を回っている。すぐに昼食。特に暑くも なく、素晴らしい天気だから、気持ちのいいアプローチではあった。 こんな日だから、よしとしよう。

なかなかの面構えの Dovestones Tor。でも、今日登っているのは、 僕らの他には、若者3(+見物人1)人と白髪の 2人の翁のみ。遠いからね。 こんな日に、スタニッジ(Stanage)とかだったら交通渋滞ものですねぇ、 ここは素晴らしきかな、と 2人の翁とおしゃべり。

さて、最初は、三つ星の VS 4c Route 1 を僕のリードで登り初め。天辺にガーゴイル(壁面で水が出てくるところに 施された彫刻の怪物のこと)がある双子の Gargoyle Buttress のうちの 右側(Route 1)の方で、実際にガーゴイルがある(なぜか、ガーゴイルが ない左側の方が Gargoyle Buttress と呼ばれ、こちら右側の方は、 Route 1 (Buttress) と呼ばれるらしい。紛らわしい!)。

下から見るに、二つのオーバーハングが相当に難しそうに見える。 4c ムーブには見えないが……。 VS 4c なんだから、そんなに悪いはずはないと信じて、登り始める。 実際に登って見ると、最初のオーバーハングは全然悪くない。 核心とされる二つ目のオーバーハングの前の岩棚で、とり急ぎ中間支点を 3つセット。 うち 2つは equalette で分散までかけたから、申し分ない。 いざ登ろうか、と見てみると、結構簡単そうに見える — 簡単だった! 4c ムーブは妥当だろう。

ここから、本来のルート自体は右斜めに簡単なクラックを登っていくが、 バリエーションとして、ガーゴイルの方にトラバースして直登する ルートがある(The Shylock Finish (6m HVS 5a))ので、 そちらに行く。意外に簡単だったが(実は、本来下側の水平クラックを使う べきところ、上側の水平クラックを使ったから、らしい)、高度感があって、 なんと言ってもガーゴイルまで直登できるのがいい。

アダムは、最初のオーバーハングで油断したか、1回フォールしたが、 後は問題なく登ってくる(The Shylock Finish は避けた — もし落ちると 振られるので)。なかなかのルートだね、ただ、 (この1月に登った)Bamford Edge の Gargoyle Flake には及ばないかな、とアダムの感想。全く同感。

今日はアダムはもう一つリードに気乗りがしないようなので、では、この バットレスにいる間に、と僕が Lancaster Flyby をリードすることに。
「難易度分かってんの?」とアダム。
「ん? HVS 5b でしょ?」
「(アダムの持つ)RockFaxのガイドでは E1 だぜ。」
えっ?! そうなの? 急に心配になって、下からルート全体を再度見てみる。 そんなに悪くは見えないが。少なくとも中間支点は十分、つまり十分 安全らしいから、問題はなかろう。登り始める。

指の力に頼るところ大きなルートではあるが、別に悪くない。 中間支点もなかなかのもの。ダブル・アップできる場所が多いし。 ただ、E1(?)と聞いたばっかりに、それが精神的に 乗しかかってきて、腕に余計な力が入っている気がするのが気にかかるが。 とはいえ、さほど苦労することもなく、上まで登り切る。 一方、細身のアダムは、力のいるルートは得意でない。フォローしてくるのに かなり苦労してきて、登り切った頃にはパンプしていたようだ。

E1? うーん、HVS の方が妥当なような。確かに 5b ムーブの連続ではあるかも 知れないが。でも、易しめの 5b ムーブだと思う。 二つ星? うーん、どうかなぁ。特筆すべきことは特にない普通のルートに思えたが。

さて、思ったより時間がかかったとはいえ、まだ余裕がある。 この Dovestones Tor の目玉と目される 20m の HVS 5a、 Great Buttress を僕のリードで登る。ガイド本では、この難易度でピーク地方最高のルートの一つ、 と声が大きい。登らいでか。

このルート、途中、三つのルーフを横からなめるようにかすめていく。 直登ではないとは言え、それでも相当のオーバーハング。5a には見えないが……、 ガイド本によれば、ホールドも中間支点も素晴らしい、ということだから、 大丈夫なのだろう。何と言っても HVS 5a、中間支点さえ十分なら、問題なかろう。

スタートはいいが、ルーフ下のトラバースがちょっと力要る。中間支点が欲しい。 Peanut の 4番をとりあえず極めるが、これでは、特に第一支点としては心もとない ことこのうえない。横にうまいヘックスのクラックが見つかったので、それで ひと安心。ただ、ちょっと力を消耗したか?

横に 2m 行った後、このルーフを左上方に抜ける前に、もう一つ中間支点が 欲しいところ。ランアウトを避けるために。左手の水平クラックにフレンズを。 一つ目……ちょっとだめ。二つ目……やっぱりだめ。結局、5つ目でようやく 極められた! 情けない!! ルーフの下でそんなに時間を使ったから、 腕のスタミナが……。まだまだ先は長く、核心はずっと後なのに、大丈夫か?

とりあえず、ガイド本の説明通り、ホールドはほとんど申し分ない。 それを頼りにこの最初のルーフは問題なく抜けられる。
「うーん、ここで中間支点が欲しいなぁ。」
「もちろん、頼むから(そこで支点を取ってくれ)!」とアダム。
確かに中間支点はここで問題なく取れるのだが、オーバーハングのこの状態で 取るのがちょっと消耗する、という話。しかし、ここでランアウトする わけにはいかない。先はもっと厳しくなるのだから。腕を交互に休めながら、 中間支点をセット。ふぅ。

そして、上方、さらに右側へ斜めに。ホールドは確かに素晴らしい。 傾斜も……つまり、ずっとオーバーハング。途中、中間支点をもう二箇所、 三つ取って、登り続ける。 ルーフの上あたりでちょっとした窪みに半身入れて、ここで中間支点を。 この窪みを越える相当のオーバーハングが核心か? 相変わらず休めない……。 片腕を交互に休めることができるだけ。

この上がどうなっているのだろう? 途中のホールドは見える。2回ほど 手を伸ばして確かめてみて、たしかになかなかよさげと確認。しかし、その シークエンスの最後に当たる、岩棚の部分への乗り越しは? グリット石特有の 摩擦勝負のパーミングか? うーむ、登ってみないとそれは分からない。 今までに相当消耗しているとは言え……、今の場所も依然オーバーハング、 あまり「休み」過ぎるとかえって疲れる。最後の中間支点(フレンズ No.4 (DMM))に 体重を預けて休む誘惑にかられる。でも、今ならまだ何とかなるだろう。 中間支点も悪くないし。気力を奮い起こして登ることに。

予定通り、岩棚に腕がかかるところまでは問題ない。ところが、岩棚にホールドが ない — グリット石ではよくある話。手どころか両腕全て使って、最大限の 摩擦を確保。しかし、それでもちょっと心許ない……左足が伸びているから。 大丈夫か? 摩擦を信じて体をせりあげる! 左足を蹴る。せりあげる……あっ、 左足が何かホールドにかかった。素晴らしい。これで大丈夫。岩棚に無事達して 完全休息。ほっ。
左足のそのホールドは予定外だったのが甘かった。先に見通しておくべき だったか。まぁ、登れて何より。

岩棚ですぐ中間支点を取りにかかるが……、フレンズのサイズ 3 かひょっとしたら 2 でも何とかなるところ、今までにすでに持参のフレンズ 2, 2.5, 3, 4 まで 全て使い切ってしまっている! ありゃりゃ。ヘックス 9番を何とかねじこむが、 ちょっと心許ない。

岩棚に立ってさらに上を目指そうという時、素晴らしいチョックストーンを 発見。なんだ、これで完璧だ。ちょっと怖くなっていて、(最初の中間支点を 取る前に)岩棚で立って辺りを見回せなかったからなぁ。そうしていれば、 すぐ見つかったはずのものだったか。

このルート、中間支点は大抵、窪みにあって、ルート自体はオーバーハングの 連続、つまり、ほとんどの中間支点について、相当、スリング他で伸ばす必要が あった。おかげで、もう、5m スリング以外、すでに全部使い切っていた。 ここでは、ヘックスのスリングを利用する羽目になった。これは珍しい。 伝統登攀では長いぬんちゃくに、スリングも多めに持ってきたのを、 フル活用している感じだ。

ここからは、右のクラックを辿る。クラックへの取り付きがちょっと 問題だったが、それでも (VS) 5a というところ。素直に越えて、 あとは一直線。登り切った。ふぅ。

高度感溢れるいいルートだった。途中、完全休息が取れた岩棚まで、 下から 15mかそこら、ほとんどずっとオーバーハングのなかなか スタミナの要求されるルート。ホールドは(核心は別?)ほとんど完璧だから 確かに HVS か。いや、HVS でこれだけのルートが登れるのは、素晴らしい と言えよう。

確保支点は、ほぼメインザイルで作れる。 フォローのアダム、このパワフルで長いルートを登ってこられるだろうか? すでにパンプしている様子だったし……。実際、最初から 苦労している模様で、結局、ロワーダウン、ということになった。 後で聞いたところでは、最初のトラバースで落ちたら振られるのが怖くて、 直登しようとしたが、無理で、結局断念した、ということだった。 つまり、中間支点はまだ全て残っている。

そこで、僕が懸垂で回収することに。5m スリングで二つの支点(一つは車より大きな 巨石にザイルをかけている — それだけで十分過ぎるだろうけど)に 負荷等分散をかけて、懸垂のセット。安全環付カラビナの数がもう足りないので、 カラビナ二つを 2、3セット使って。もうあまり数が残っていない。 これだけギアを使うのも珍しい、というものだ。

このルート、オーバーハングの上、中間支点は窪み、しかも、ルートは 右に左にと曲がっている。だから、実は懸垂での支点回収も全く容易でない。 下からアダムに(ビレイ環を使うなどして)がんがん引っ張ってもらったりして、 苦労の末、何とかすべての支点を回収できた。高いフレンズを残置せずに 済んでよかったってものだ。

後始末を全て終えて、岩場を立つ頃には 20時。駐車場まで下りの道を 降りた頃には 21時。日没少し後、というところで、何とかヘッドランプ なしで済んだ。しかし……、下りで 1時間かかるのに、登りで 40分は どう考えても変ですな → ガイド本。

この Dovestones Tor、岩場の質としては、まぁまぁか。 (僕の登れる難易度としては)今日、ハイライトは登ってしまった感じだ。 そういう意味では、まだまだたくさん登りたいルートのある Bamford Edge には 及ばないか。しかし、moorland のただ中にある Dovestones Tor は、 景観という意味で、立地条件は素晴らしい。遠いだけに、クライマーで 混むこともあり得ないだろうし。一日快晴の続いた今日、 それは大いに楽しめた。そういう意味で、再訪の価値は大いにあると言えよう。


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まさ