2008/05/24--26 ウェールズ/スノウドニア登山記録/感想文 (by まさ)

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総括

山域
North/Central Wales/Snowdonia/Cadair Idris, Llanberis Pass
参加者
アダム・W、まさ
期間
2008/05/24--2008/05/26 (2泊3日)
(以下、リンクは特記しない限り ukclimbing.com へのもの)
様式: AL = 交互リード, MT = コンテ, O(s) = オンサイト, F = フラッシュ, (A) = (助言少々), G = グラウンド・アップ, Hp = ヘッド・ポイント, D(og) = ザイルぶら下がり, E(s) = 諦める/エスケープ, C(d) = クライム・ダウン
宿泊
幕営 @ Shell Island campsiteの近くの臨時天場
天候
  • 2008/05/24 曇時々雨
  • 2008/05/25 雨時々曇
  • 2008/05/26 曇一時雨

登山編

5月末の三連休、アダムと北ウェールズに来る。 アダムとは、 丁度一年前の同じ連休に湖水地方を 訪ねたものだ。また、 2004年の5月はじめの連休にも湖水地方を 訪ねている。 その前のアダムとの泊りがけの山行は、 2003年11月の山岳部山行で、 これまた湖水地方。 というわけで、アダムとウェールズに来るのは初めてになる。

実際、アダムは、湖水地方はいつ行っても天気に恵まれているのに対し、 ウェールズはいつ行っても雨なんだそうだ……。今回、大丈夫か?

05/24

早朝発って、ウェールズに向かう。 今回は、カデー・イドリス(Cadair Idris)山の歩登攀(難易度 3S、 登攀難易度にして Diff)ルートを主目的にしている。 僕はウェールズに行った回数はもう覚えていないが、 少し遠いこともあってカデー・イドリス山付近を初めとする 中央ウェールズには一度も足を踏み入れたことがない。 なかでもカデー・イドリス山は素晴らしいと噂に名高いので、 一度訪ねてみたかったものだ。アダムも同感で、今回、二人の呼吸が ぴたりと一致した。

行き当たりばったりで天場を探し当てて(この三連休用に、農場(牧場)を解放した 臨時の天場だったようだ)、天幕を張った後、 いざカデー・イドリス山に。 駐車場でレンジャーの人と会話を交わす。今日、当地で登山マラソンが あるので、その警備(医療とかの)に当たるという。僕らのルートは 幸い登山マラソンとは関係ない(まさかザイルを担いでマラソンをする 人もいまい!)。

ウェールズ雨男のアダムと一緒ではあるものの、今日は晴れ。 登山道を登って行くと、そのうち前方に鮮やかに急峻な稜線が浮かびあがってくる。 間違いようのないルート! わくわくするぅ!!

ルート前の湖畔で荷物の重量を減らし(=昼食を摂って)、 いざルートへ。開始地点の岩にルート名が彫られていると ガイド本にはあって、確かに見つけることはできたが、 知らなければ見過ごすこと確実なくらいぼんやりとしたものだった。 何はともあれ、ルート取付にいることが分かって何より。

いきなり急峻なので、ザイル(30m、ツインロープをシングルで使う)を 出して、アダムがリード。振り返ってみると、ここが核心だったか。 とは言え所詮 Diff、そう難しいわけではない。ただし、高度感は それなり。

第二ピッチは僕、第三ピッチはアダム、……と第五ピッチまで 交互にリードする。 僕が持参したガイド本は歩登攀のものだし、確保地点が書かれている わけではない。つまり、確保はザイルの長さとの兼合いで適当に見繕っている次第。

両側に 100m 切れ落ちている、とまではいかなくて、たとえ落ちても 落ちる側を選べば命は助かりそう? とはいえ、時折高度感が楽しめる。 特に、眼下に見える湖と僕らが登るナイフリッジの対比が素晴らしい。

最後、少し平たくなってきたところでコンテで少し登って、ルートを 締めくくる。結局、4時間弱の易しい登攀で、満足!

平たい稜線を山頂まで歩き、下山は一般道で。 下山のだるかったこと! ベン・ネビス山の一般道のような単調な登山道だった。 僕らは正しいルートを選んだ、というものだ!

05/25

僕の希望でウェールズ北西端の島、Anglesey に向かう。 島とは言え、ごく細い海峡で本土と隔てられているだけなので、 橋がかかっていて車で渡れる。

……しかし、ウェールズを車で縦断するのはおそろしく時間がかかるのだった……。 結局、Anglesey への中間点にも達しない Beddgelert (村)に 着いた段階で断念、 犬の墓を見たり軽くウォーキングするだけにとどめ、天場まで帰った。 ドライブしただけに近い一日だった。まぁ、昨夜は遅かったし、 今日は雨がちの天候だったし、そういう日があってもいいでしょう。

05/26

今日こそは何をかしませう。 北ウェールズの Llanberis Pass まで出て、道路脇で岩登りでも?

Llanberis Pass とは、北ウェールズの山岳地域の主要道(片側一車線)の 一つの名前ながら、道の両脇に岩場が散在することから、岩登りでは、 その地域全体を Llanberis Pass とも言い慣わす(ただし、慣例として スレート岩の岩場は除くことが多い)。 北ウェールズのクライミングの有名な地の一つながら、 僕はその中で Clogwyn Gafr (Craig Fach) でいずれも雨がちの 日に登ったことが二度ある (2005/032007/11) きりだ。 今回は是非、違う岩場を登りたい。アクセスが近くて 比較的低難度のルートがある Craig Ddu を選ぶ。

ルートは、VS 2ピッチの Yellow Groove。 Joe Brown と Don Whillans のルート。 僕のリード。 易しい第1ピッチの後の第2ピッチが核心。4bムーブが続く。 風が強くなってきているのがちょっと問題で慎重に登って、 ほどなく登り切る。VS としては易しいかな。悪くないルートだった。

アダムも風に吹かれてちょっと苦労している様子。 というわけで、早いがここでお開きとした。 スランベリスに立ち寄ってから、帰ることに。

今回の 3日間、後半はちょっと残念ではあったが、初日は 文句なく素晴らしかった。ウェールズの山行として立派なものだと言えよう。


生活編

強風と天幕

初日は朝に天幕を張ってから山行に出かけた。 晩に帰ってきて夕食を食べている頃はまだよかった。 ところが段々と風が強くなってきて……、ついに天幕が風で 潰されてしまった! (その時、テントの中にいなくて幸いだった)

今回の天幕は、アダムが比較的最近、(廉価で有名な)スーパーで購入した 安物。6人用で、二つの部屋と真ん中に大きなフリーなスペースとがある 巨大なもの。なにしろテントの内側の真ん中にテーブルを置いて、椅子を並べて 食事ができるくらいだから(そのスペースは寝る場所とは別!)。

しかし……耐風能力には問題があったようで(さもありなん……)、 それほど強いとも言えない風であっけなく倒されてしまった。 ポールが 2本折れている。一応、補修を試みるも、風が相変わらず 強いのでこれは絶望的……。やむなくその天幕は畳むことにした。 暗闇の中で。

幸い、アダムは、予備の(!)天幕(2〜3人用)を持ってきていたので、 それを張って中にもぐり込む。10年選手で、トレッキング用テントなのだが、 こちらは一晩、そしてその後の日も余裕で持ちこたえてくれた。 そのテントへの信頼を新たにしたアダムだった。

翌朝、起きてみると、テントが壊されたのは僕たちだけではなかった ようだ。3〜4張のテントが壊れているのが見える。 後から知ったところによれば、この日、すぐ近くの巨大天場 Shell Island campsite では、3000人ほどが滞在していたその夜、 300張ほどのテントが壊された、と言う (BBCの記事)。 それほど激しい風というわけではなかったのだが。たとえば、 歩いていて飛ばされるような危険は皆無。実際、もし これが山中なら(Shell Island は海岸沿いの天場。僕らが泊まったところも 海岸すぐ近く)、ずっと激しい風に見舞われることは珍しくないものだ。 多くの人が安物テントを使っていて、安物テントはそういうもの、ということか。


情報編

有料橋

ウェールズには、いくつか有料の橋がある。 橋を使うことで湾や川の河口部を直接横切れるので、 行く場所によっては、ドライブの時間を大幅に短縮できるだろう。 料金は 50ペンス(約100円)とかその程度。一日有効の場合が多いので、 特に往復で使う場合など、切符を無くさないように持っておきたい。

なお、有料だからと言って立派な橋や設備を想像してはいけない。 この木の橋が車の重みに耐えられるのだろうか……と疑問を持ちたく なるかも知れない。普通の(無料の)橋かと思いきや、突然道端で手を挙げた おじさんに料金を徴収されるかも知れない。交互通行が手旗信号で制御されている かも知れない。ウェールズを甘く見るべからず! (……すべて実話)


タイム・テーブル

2008/05/24-26 Snowdonia 山行タイム・テーブル (Masa)
時刻 行動 高度(m) 温度(℃) 歩数(複歩)
(計器) (地図)

表注:
高度の表記で (s) は高度計をその高度にセット。 なお、高度計は、TechTrail/AltiTech-2 を使用。 歩数は、その前の項目からの歩数[複歩]。 GR は、Grid Reference Number で、省略時の頭文字は SH。

2008/05/24
(Leicester → campsite → Cyfrwy Arete → Cadair Idris → campsite)
03:44 Leicester発
07:45 天場
10:10
11:30 駐車場着
11:43 24.1
12:06 鉄門 350(s) 23.6 700
12:50 Lynn y Cadair
(昼食休憩)
597 560
13:30 17
14:10頃 ギアアップ 14.7
17:00 第5ピッチ終了 12
17:50 ザイル解く
18:10 13
18:38 Cadair Idris頂 946 893(s) 14.6
19:09
19:50 Stile分岐 555 558 1800
20:18 鉄門 341 14.5 800
20:31 鉄門 292
20:58 駐車場着 144 14.6
21:10
22:00 天場
24:50 就寝
2008/05/25
(天場 → Beddgelert → 天場)
10:00 起床
12:45
14:00 Walks駐車場着
14:25 Beddgelert駐車場着
16:50
17:55 天場
23:20 就寝
2008/05/26
(天場 → Llanberis Pass → Craig Ddu → Llanberis → Leicester)
07:10 起床
09:20
10:40頃 Craig Ddu前駐車
11:15頃 取付 14.6
14:15 昼食 16
14:50 風邪強くなってくる 14
15:25
17:25 Llanberis発
19:40 Meir Park
20:15
21:23 アダム宅
22:28 自宅

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まさ