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: 登高器 : 各用具選びのワンポイント・アドバイス (その二) : カラビナ


確保器、下降器など

最初にもう一度、使用する確保器(下降器)が対応しているロープの口径は 確認しておくことを強調しておきます。また、「進んだ」確保器であれば あるほど、その用途や限界は十分に理解しておくべきです。 たとえば、ペツル社のグリグリは高名な確保器ながら、ダブルロープには 使えませんし、(たとえシングルロープ使用でも)アルパインには向きませ ん(理由は後述)。あるいは、ニューアルプは、用途によっては優れた確保器 ながら、制限も確かな欠点もあります[24]。 なお、確保器に関しては、現在、格別な決められた標準はありません。

確保器は、原則として、よく制動がかかることが求められます。ただし、アルパイン (や冬山)に使う場合は、適当に流すことができることも条件になります。 一方、下降器は制動がかかりすぎないことの方が求められます90。つまり、両者の要求には少し矛盾するところがあります。しかし、両者 とも適度に制動をかける、という目的では一致するので、現代の多くの確保器は 両方の目的に使えるように設計されています。

英国登山評議会(BMC)は、確保器を以下の4種類に分類しています。

  1. 平坦なもの (ベッタブレーキなど)
  2. 筒型のもの (ATC環など)
  3. 8環の類いのもの
  4. 自動ロック型

よく制動がかかる、という意味では、自動的にロックのかかるもの(4)が最善で しょう。代表格はペツル社のグリグリです。この種のものは、登高器としても使 えます。ただし、副作用として、通常の確保器よりも最大過重はほぼ常に大きく なる91ので、アルパインには向きません。 また、ロワーダウンさせる時にも、油断からの事故がしばしばあるようです。だ から、格別よく使用条件を理解した上で購入・使用するべきです。

確保器の制動という意味で、次いで優れているのは、平坦なもの(1)、つまりベッ タブレーキ(ぶたっ鼻) の類です[25]。摩擦を増やすだけでなく、ロー プを噛む動作が、制動に加わるので。ただし、この「制動のかかりやすさ」には、 それと裏返しの欠点があります。まず、リードの確保中に、ロープを出す時に引っ 掛かりやすく、注意が必要です92。同じ理由で、動的 確保(ダイナミックビレイ)も非常に難しく、また、下降器としても少し使いにく いでしょう。筆者としては特にお薦めしません93。 特にシュテヒト環については、付録B.1章にコメントを書きました。

伝統的には、8環(エイト環)(3)がよく使われてきました。今でも下降器としては、 優れていますが、一方、確保器として使うのには、他の確保器以上に技術を要し ます。特に、ダブルザイルの時は、ロープ溶融の可能性があるため、確保器とし ての使用は不可です。付録B.2章で詳しく議論してい ます。

現在の汎用確保器・下降器の本命は、筒型確保器(2)です。各 社競って色々な種類を出しています。4.17章で、筆者の初心 者への一推しは Blackdiamond社の ATC-XP と書きました。ATC-XP は、 climbing.com の No 223 のレビュー94でも一推 しとされている、初心者からベテランまで広くお薦めできる確保器です。 Blackdiamond社の(普通の) ATC は、9mm 未満のロープには対応していませんが、 ATC-XP は、8.1mm から 11mm まで対応しています。(通常の)ATC環はロープ口径 が細くなればなるほど、(対応していると保証されていても)現実には制動がかか りにくくなりますが、ATC-XP は、その効果をできるだけ抑えることに成功して いることで、これが可能になりました。これは、同時に、体重差のある人を確保 するのも比較的容易、ということでもあります。(非対称構造ながら、初心者が、 向きを)間違えてもそれほど悪い結果にならないという利点もあります。そして、 下降器としても悪くないものになってます。さらに、普通の ATC環以上に制動が かけられる一方で、ベッタブレーキの弱点だったロックは非常に起こりにくく、 つまり、リーダー確保時にロープを流すのも比較的容易です。

ATC-XP 以外にも、最近の筒型(2)確保器は、使い方によって 制動の大きさを変化させられるようになっているものが少なくありません。中で も有名なのは、ワイルドカントリー社のバリアブル・コントローラーでしょうか。 ただし、向きを間違えると制動が効きにくい(だから下降器としては優れている のですが)分、ATC-XP のように初心者にもお薦めとはいきません。あと、時にベッ タブレーキ(ほどではありませんが)のように多少ロックがかかることがあるのも 難点です。

他に特筆すべき確保器として、ペツル社のルベルソ95に代表されるマジックプレートを挙げます96。シングル、 ダブルロープ両方に対応していて、制動の程度を変えることができ(つまり、下降器 としても重宝)、なにより、(後続の確保に対して)自動ロックをかける使い方が できます。さらに、登高器の代わりにもなります。これだけ多機能ということは、 それだけ複雑ということでもあります。だから、初心者にはお薦めできませんし、 使用に際してはそれなりの練習が当然必要になります。しかし、一旦マスターす れば、他に替え難い用具となります。

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坂野正明 2005年 10月 8日