概観
シャモニー(Chamonix)は、ヨーロッパアルプスの中で、最大の登山基地で ありましょう。シャモニーを含むシャモニー谷からは、 盟主モンブラン(欧州アルプス最高峰)をはじめ、 グランド・ジョラス(おそらくアルプスで最高の北壁)、 エギーユ・デュ・ベルト(人を寄せつけないアルプスの奥地の山)、 ドリュ(唆り立つ針峰)と有名な山々が目白押しです。 列車で少し行ったり、あるいは山に登ると、そこはスイス領になったりします。 つまり、フランスとスイスの境界(のフランス側)に位置します。
シャモニーは、夏は登山にハイキング、冬はスキーと年中賑わう観光地でも あります。そのため、観光地としての施設、たとえば旅行者情報センター なども充実しています。特に、2005年夏の段階で、シャモニー村の旅行者 情報センター内には、日時は限られるながらも、日本語を喋れる観光案内の 人までいました。 その必然の結果か、シャモニーは、物価が高いことでも有名です。とは言っても、 外国としては、の話なので、東京に比較すればましですが。 一方、シャモニー村を少し離れてシャモニー谷の方に入ると、途端に静かな フランスの村々になります。 なお、シャモニー村を含めて谷内の各村では、そこかしこに湧き水が出ていて、 飲料水として使えます。
登山としては、天候情報サービス、登山ガイド、救助隊、など非常に 充実しています。ただし、シャモニーから登れるアルプスの山々のルート の多くは、かなり厳しいものが多く、必ずしも初心者向けとは言い難いと 聞きます。無論、ルートは無数と言ってもいいほどあるので、たとえば 初級者が 1カ月過ごしたければ全く問題ないでしょう。高望みをしなければ。
以下、情報は、断りない限り、2005年夏現在のものです。
シャモニーへの交通機関
最寄りの空港は、ジュネーブ空港@スイス(言うまでもなく、ガスボンベは飛行機 では運べないので、ご注意)。シャモニーまで車で 1時間強。2005年現在、空港 では、一応、ユーロは通用する。ただし、釣銭はスイスフランで返ってくるかも。 一方、シャモニーはフランスなので、原則ユーロ。スイスフランはそれなりに 通用しそうだが。
ジュネーブ空港からシャモニーまでは、4通りの交通機関を挙げておく。
- 私企業のシャトルバス・タクシー。乗合形式だとかなり安い。キャンプ場 やホテルまで直接送迎してくれるかも。一般に、事前の予約が必要。2005 年現在の最安は AlpiBus で、条件によるが片道 30ユーロ弱。他は、40 ユーロほどが標準。
- シャモニー駅とジュネーブ空港とを結ぶ路線バス。多分、最も安い。 便数が限られるのが問題だが。途中、いろいろ停まることもあって、時間 も余裕を見ておきたい。
- 空港でレンタカーを借りるのもメジャーな方法。
- ジュネーブ空港とシャモニー間の鉄道はかなり面倒。2回ほど乗り換える 必要があって、時間も相当かかる(2時間半以上?)らしい。値段は悪くない ようだが。
いずれにせよ、欧州の常として、(片道でなく)往復で買った方がかなり割安、 また、早めに予約すると、相当割安になる可能性が少なくない。空港への 発着時刻はかなり以前から決まっているだろうから、事前にインターネットや 電話であらかじめ予約しておくのがお奨め。
シャモニー谷内の交通機関、ロープウェイなど
シャモニー谷の中
キャンプ場などで、カード(Carte d'Hote)を発行してもらうことができる(ひょっ とすると、シャモニー町以外のキャンプ場でのみかも知れない)。これを携帯してい ると、シャモニー谷内部の交通(バスと鉄道)が原則、無料になる。鉄道ならば、 スイス国境手前の駅までは無料。
まず、谷に沿って、鉄道が走る。谷の内部なら 2ユーロくらい(シャモニーから アルジェンティエールの場合)。
ChamonixBus という公共バスが運行されている。1.5ユーロ。鉄道より、こまめ にバス停がある。シャモニー町内を出る前に町内の数ヵ所のバス停を循環する。
ChamonixBus には、夜間運行版もある。これには、Carte d'Hote は関係なく、 運賃を支払う必要がある。2ユーロ。アルジェンティエール行き鉄道の最終便は シャモニー発20時くらいだから、その後では、夜には最も安い交通手段。
タクシーは街中で見かけた記憶がない。もちろん電話で予約することはできる。 レ・ショザレからシャモニーまで朝の 5時半に予約した時は、15分の道に片道な んと 30ユーロ取られた(ジュネーブ空港まで行けそう!)。
登山電車、ロープウェイ、リフト
ロープウェイなどの切符は、往復で買った方が断然お得。路線によって、値段が 異なる。1日のうちに何度も使うなら別だが、そうでない限り、他に割引らしい 割引はないようだ。
いずれも、一日のうちの最初の便は登山客で込み合う。逆に言えば、登山する気 がないならば、最初の数便はパスした方がいいかも。エギーユ・デュ・ミディの 頂上駅では、一日中(?)乗る前に整理券を配っていた。
リフトは、3つの席のうちの真ん中の席をザックなどの荷物置き場として使うの が普通の様子。
宿泊
シャモニー村自体は、ホテルにはもちろん事欠かない。当然、値段もそれなり のはず。一方、人数さえ集まれば(最低、家族単位くらい?)、自炊形式(調理 用具とかは備え付けられている)のアパートや宿は、かなりお得と聞く。 実際、欧州では、レストラン代はかなり高いのに対し、食材は安いので、 自炊するとずっと経済的。ただし、すべての村にスーパーなどの食材店が あるわけではない。 ユースホステルなどのホステルもきっとあると思うが……、未チェック。
谷内での登山者に一番人気は、シャモニー谷内に散在する天場(キャンプ場)での 幕営(テント泊)。シャモニー村から離れた谷内の村の方が、安くなる模様。 予約は特に必要ない。天幕設営前に、ちゃんと事務所に顔を出して、 手続きすること。
幕営生活の難点を三つ。 もちろん自炊(が主)になるだろうが、自炊形式の宿と違って 冷蔵庫がないから、日中 30℃になる夏場は、食品の保存には注意が必要。 同様に、電気が利用できない可能性が高いので、携帯電話の充電などには 注意が必要か。携帯式充電器(手動や太陽光)を持参すると無難か。 支払には、クレジットカードは通じない可能性がある。現金を用意したい(レ・ショザレ では、出発時に払えばよかった。ただ、最初に、一定の保証金を取られる 天場があっても驚かない — 最初に多少の現金は持っておくと無難?)。
以下、僕の滞在した Les Chosalets (レ・ショザレ) camping の話(他の天場も多かれ少なかれ似たようなものだと思われる)。
レ・ショザレ・キャンピング(Les Chosalets camping)は、半分くらいの 面積はキャンピング・カーで占められていた。そして、残りの半分は、車で来た 人のためのもの。車に横付けするような形で、天幕を張れる。下は、草地。多少、 傾斜があったりする。この辺、英国の天場とよく似ている。
便所はもちろん、シャワー、各種水道(洗面用、洗濯用、食器洗い用)が揃ってい る。石鹸(シャンプー)、洗濯石鹸、食器用洗剤やスポンジは持参する必要がある。 便所のトイレット・ペーパーは備付。原則として湯が使えるが、晩(22時以降?) は水しか出ない。ただ、シャワーの湯は、あまり温かくなかった。飲料水は、水 道から取ってもいいのだろうが、キャンプ場の隣に湧き水からパイプが引かれて いるので、そちらを主に使った。日本よりはずっと硬水だが、それほど悪くない。
必要なら、乾燥機も有料で使える。夏のシャモニーは、昼は十分暑いので、晴れ の昼間なら、テントの上などに広げておくと 3時間で乾くが。洗濯挟みは是非持 参したい。ピッケルを地面に立てて、テントとロープでつなげて即席物干し竿に している人も少なくなかった。
値段は、テントの数と全員の人数に応じて課金される。また、車を駐車する 場合は、その分、高くなる。車なしなら、大雑把に一泊1000円程度(2005年夏現在)。
レ・ショザレ・キャンピングは、天場として、比較的大きな規模のようで、 賑わっている。しかし、シャモニー村からは 5km 以上、離れ、喧騒からは 遠く離れている。最寄りの(買物ができるほどの)村は、 アルジェンティエール(Argentière)で、2km ほどの道のり。 (Carte d'Hote による無料)シャモニー谷内バスで移動するか、歩くか。 アルジェンティエールには、(小さい)旅行者情報センターがあり、 そこでは、天気予報が毎日張り出され、重宝する(つまり、シャモニー村まで 出ない限り、実質、ほぼ毎日、アルジェンティエールまで出ることになる)。 最寄りのバス停は、天場から 100m のところ、シャモニー村まで約 15分。 一方、最寄りの列車の駅は、アルジェンティエール(Argentière) と レ・ジュ (La Joux) が同じくらいで約 2km。 Grands Montets行きのロープウェイまで歩いて行けるのは嬉しい。
地図、ガイド本
1/25000 地形図は、Chamonix では、「3630 OT CHAMONIX, MASSIF DU MONT BLANC」があれば、モンブランはじめ主要な山々はおおよそカバーされている。 防水ではなく、日本の国土地理院の地形図よりははるかに大きいので、折り方に 注意が必要。等高線の間隔が、仏側が 10m 間隔に対し、スイス側は 20m 間隔! 要注意だ。なお、上の地図では、モンブランは地図のほぼ 端に位置してしまう。周辺の地形まで見たければ、「3531 ET ST-GERVAIS-LES-BAINS MASSIF DU MONT BLANC」も入手しておいた 方がいいだろう。
一方、1/50000 地形図は、「A1 PAYS DU MONT-BLANC」(RANDO EDITIONS社)。 いずれも、登山用品店で入手可能だが、シャモニー村の本屋ならばさらに確実。
登攀のガイド本は、日本語では、 「アルプス4000m峰 登山ガイド」(リヒャルト・ゲーデゲ著, 島田荘平・島田洋子共訳, 山と渓谷社, ISBN: 4-635-17810-2, 1900円) が存在する(他にもありそう?)。英語ならば、 「easy ascents in the MONT-BLANC range」(F. BURNIER, D.POTARD共著, VAMOS社, ISBN: 2-910672-09-3) (約15ユーロ)が入門用として優れている(原版は仏語; Facile から PDまでのルート)。 さらに詳しいガイド本として、 「Mont Blanc Massif」(L. Griffin著, Alpine Club発行, ISBN: 0-900523-57-3(第1巻), 0-900523-58-1(第2巻)) の2巻セットが定番だ(Alpine Club は、英国の登山家の会。つまり、 このガイド本は、仏語の翻訳ものではないはず)。英語(もちろん仏語も)のガイド本は、 シャモニーの山岳センターで無料で閲覧できる。有料でコピーも可能だったはず。 英語のガイド本は、シャモニー現地でも購入できるだろう(ただし、当然、仏語 ガイド本に比べるとずっと手に入りにくい)。
山歩き/ハイキングのガイド本は、日本語では、 「スイスアルプス・ハイキング案内」(小川清美著, 山と渓谷社, ISBN: 4-635-53605-X, 3786円) を見かけた。 英語では、 「Mont-Blanc Trails」(R. BOZON他著, C. BAXTER-JONES他(英)訳, SENTIERS DU MONT-BLANC社, ISBN: 2-910639-02-9) (夏のウォーキング、ハイキングのルート 175個; 地図つき)を見かけた。
言語
シャモニー村内では、英語でほぼ問題ない(ただし、フランス語なまりは覚悟)。 特に、旅行者情報センター(インフォメーション)では、英語で問題ない。 情報センター内には、日時は限られるながらも、日本語を喋れる観光案内の 人までもいた(2005年夏現在)。 一方、谷に入ると、必ずしもそうではなくて、仏語でないと 通じない場合がある。実際、山小屋や天場の管理人の中には、 仏語しか通じない場合もあった。ただし、大抵、周りに一人くらいは 両方使える人がいるだろうから、英語ができるなら、仏語が喋れなくても、 度胸一番で、あまり心配することはないだろう。シャモニー村内なら、 日本人もそれなりにはいるので、(英語で)どうしても困ったら大声で周りに叫んで みる手はあるか? 逆に、シャモニー村から外れると、日本人はほぼ皆無。
山道具屋の店員は、英語で「ほぼ」問題なかった(もし問題あれば、 英語を喋れる店員を連れてきてくれるだろう)。 シャモニー最大の登山用品店 Snell Sports には、 日本人店員がいた(その筋では有名な方?)。 あと、登山センターでも英語で概ね通じた。
安全対策
シャモニー村にある登山センターが、この地域の中心。ルート情報など 最新の情報が真っ先に入ってくる。できるだけ頻繁に立ち寄りたい。 この登山センターの外に、毎日、最新の地域天候情報が 張り出される(アルジェンティエール(Argentière)他、何箇所か でも同じものが張り出される)。最も詳しい仏語版に並んで、簡略版の 英語版もある --- 英語版でほぼ問題ない。 この登山センターの中には、さらに詳しい天候情報センターがある。 なお、登山センターは、昼食後に休憩時間で閉じられたりする(フランス ですから!)ので、開いている時刻には注意したい。
同登山センターでは、下山報告も(無料で)受け付けている。つまり、登山前に ルートと予定下山時刻を届け出ることができる。予定下山時刻を大幅に 過ぎて下山報告がなかった場合、救助隊が出動するもの。利用の際には、 確実に下山報告すること(当然!!)。
シャモニー谷と近辺の山々では、携帯電話はほぼどこでも通じる。 つまり、多くのルートの場合、無線を持ち歩く必要はない。シャモニーの 救助隊の番号をメモするのを忘れないこと。
その他
シャモニー村内では、買物に困ることはない — 先立つものさえあれば! 低額の買物でも、大抵クレジットカードで大丈夫(ただし、JCBは通じない ところもあるかも? VISA と Master なら確実に大丈夫)。 登山用品店も集中している。店によって値段も違うので、安くあげたければ、 足で稼ごう。なお、スーパーであっても、日曜日は閉まっている店が少なくない。
電話は、カードを購入してかけるもののよう。つまり、硬貨ではかけられない。 カードは、煙草屋で手に入る。
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まさ (坂野 正明)