欧州山情報

英国/イギリス

概観 登山文化 登山情報 地域別紹介(別頁)[蘇格蘭 | ウェールズ | 英蘭 | 北愛蘭]

概観

英国は、国自体には山らしい山は少ないのですが、登山の伝統という 意味では世界一かも知れません。エベレストを初登頂したヒラリー、 マッターホルンを初登頂したウィンパーを初め、傑出した登山家に事 欠きません。そして、今でも、他に類を見ない、ある意味で厳しい、ある意味でもっとも原点に近い登山の伝統が 強く息づいています。

地理的には、 英国は、海外の島々(フォークランド諸島とか)を除けば、四つの地方 からなります。イングランド、ウェールズ、スコットランド、北 アイルランドです。前者三つがブリテン島(とその周りの小島)にある のに対し、後者はアイルランド共和国と国境を接します(実は、現在、 北アイルランド住民は申請すれば、アイルランド共和国のパスポート ももらえます。生まれながらの二重国籍のような状態)。

外から見れば、皆、英国人ですが、当人たちの意識は、むしろ、英国 人である前に、スコットランド人、ウェールズ人であるように見受け られます。つまり、これら「地方」への帰属意識の方が強いのです。 サッカーやラグビーのワールドカップでも、別々の「国」として出場 していますよね(ワールドカップの出場「国」の中では例外的ですが)。

山がちの地形の順で言えば、スコットランド、ウェールズ、 イングランド、北アイルランドの順になりましょう

なお、英国の緯度は、サハリン並みで、かつ、夏には夏時間が導入 されます。そのため、夏はイングランドでさえ22時くらいまで明るく、 逆に冬のスコットランドだと16時前には暗くなります。行動時間には 要注意です。

英国の四つの地方についてのそれぞれの 詳しい紹介は、以下(別ファイル)をどうぞ。

英国の登山文化とスタイル

英国の登山文化は、ひとことで言うと、「最初に登ったように登る」 ということになると感じます。そして、かなり徹底的に、人工物を廃 します。だから、日本の山でお馴染の道標を見かけることはまずあり ません(今までに一度も見た記憶がありません……舗装道から山道へ の入口にあるものを除いて)。ペンキ印やテープなどもご法度です(同 じく見たことありません。木の棒が立っているのを見たことが 1度あ ります)。唯一、山頂や分かれ道では、ケルンが立っていることがあ ります。そのケルンさえ、しばしば是非が議論されているくらいです。

スコットランドにはかなり真の荒野が残っています。しかし、 イングランドやウェールズだと、実はほとんど牧場化されています。 ロビンフッドの時代には物語の通り、まだ深い原生林が残っていたよ うですが……、今ではすべて開発され尽くした、という雰囲気です。 湖水地方でさえ例外ではありません。山の真ん中を横切るある線以下 が緑……つまりそこから下が牧場化されていて、上はがれ場となって いたりします。

そういう意味で、現代英国の登山に対する倫理観は、過開発の過去に 対する裏返しのような気もしなくはありません。残された自然(本当 に「自然」かどうかは置いておきます。街の生活ではないという意味 に受け取ってください)と接するときには、せめて(?)可能な限り、人 工物を廃する、という態度でしょうか。

というわけで、英国の山(丘)には、目印がおよそありません。加えて、 日本の山道のように石が敷き詰められて整備されている、ということ もごくごく稀です。そして、林がごく少ないですから、森のなかの道 のように「道」がはっきりしてもいません。つまり、踏み跡が不明瞭 なのも日常茶飯事です。だから、山歩きする人にとって、英国の山 (丘?)では、読図能力は必須です。英国全土がルートファインディン グ山行と言っても過言でないくらいです。まぁ、日本ほど山深いわけ ではないので、迷ったとしても、大抵、数時間も(道なき道を)歩けば、 舗装道につきますが。

この倫理観は、岩登り、また冬期登攀の世界ではさらに顕著になります。日本の山の 「壁」だと、どこに行っても、ハーケンがたくさん打たれているもの ですし、フリークライミングの岩場なら、自然の岩に打ち込まれた多 くのボルトが鈍い金属色を放っています。一方、英国の岩場は「きれ い」です。最も有名なスタニッジ・エッジには 1000を超えるルートが ありますが、岩場全体で、一本のボルトもピトンもありません。 だからそこを登る場合も、ピトンを打つのも、ましてボルトを 打つのなんて厳禁です。ナチュラル・プロテクションで登ることが前提になっているものです。「最初に登ったように登れる」わけであり、 クライマーにもその倫理観を順守することが求められます(ただし、一部、スポーツクライミング用の岩場とされている場所もあり、たとえば世界初の F8c+ (5.14c) と言われる Hubble など有名なルートもあります)。

(特にスコットランドで名高い)冬期登攀も同様で、ピトンこそ散見されるものの、ボルトは一切ありません。こちらも基本、ナチュラル・プロテクションです。

個人的には、この倫理観に惚れています。これこそ登山だと!

英国の登山情報@インターネット

山の一覧

英国の山の一覧は、Nuttall と呼ばれる一覧が 有名です。以下をご参照下さい。 ただし、スコットランドに限っては、 別の一覧の方が有名でしょう。

http://en.wikipedia.org/wiki/Nuttall_(hill)
Nuttall @wikipedia (英語)
http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_Nuttalls_in_England
その山の全リスト @wikipedia (英語)

その他

http://www.thebmc.co.uk/
BMC: The British Mountaineering Council (英国登山協会)
http://www.ukclimbing.com/
UKClimbing.com (UKC) (英国クライマーにもっともポピュラーなサイト; ニュース、岩場・ルート説明、フォーラムなど)
http://www.climbmagazine.com/
月刊誌Climb (ボルダリングから高所登山まで; BMC刊行)
http://www.climber.co.uk/
月刊誌Climber (特にクライミングに重点)
http://www.rockfax.com/
RockFAX (著名なガイド本出版社; ルート説明など)

仏国/フランス

アルプス/シャモニー

シャモニー(Chamonix)は、ヨーロッパアルプスの中で、最大の登山基地で ありましょう。シャモニーを含むシャモニー谷からは、 盟主モンブラン(欧州アルプス最高峰)をはじめ、 グランド・ジョラス(おそらくアルプスで最高の北壁)、 エギーユ・デュ・ベルト(人を寄せつけないアルプスの奥地の山)、 ドリュ(唆り立つ針峰)と有名な山々が目白押しです。
……(詳しくは、別ページでどうぞ)。

エクレン・アルプス/ラ・グラブ

南仏は La Grave (ラ・グラブ)。Ecrin Alps (エクレン・アルプス)に近い。 氷滝の氷壁登攀(アイス・クライミング)の舞台として(また、オフピスト のスキーで?)有名な場所のようだ。
……(詳しくは、別ページでどうぞ)。


スイス

概観

欧州の山を語るなら、この国は外せないのがスイスですね。 アルプスの少女ハイジで名高いように、 ほぼ全土をヨーロッパ・アルプスが覆う国ですから。 アルプスの最高峰(モンブラン)こそフランスに譲るものの 他の数多くの有名な山々が連なります。 中でもスイス第一の山塊が、スイス南西部、イタリア国境にまで拡がる ヴァリス(Wallis)山群です。アルプスの顔と言うべきマッターホルン (Matterhorn; 4478m)、アルプス第二の高峰モンテ・ローザ(Monte Rosa; 4634m) はじめ、数々の 4000m峰が軒を並べます。
……(詳しくは、別ページでどうぞ)。

ツェルマット

言わずと知れた、スイスアルプスで最も有名な登山基地の村。 マッターホルンを見上げる眺めは感動。 ツェルマット村内では、ガソリン車、軽油車は禁止されていて、 結果、電気自動車と馬車とが行き交います。おかげで静かで空気がきれい。 はじめ、数々の 4000m峰が軒を並べます。
……(詳しくは、別ページでどうぞ)。


独国/ドイツ

ライン河中西部 (ケルン周辺)

この地域は、ドイツ中西部、ライン(Rhein)河沿いに広がる地帯で、 ベルギー国境に近い。雄大なライン河に沿うだけあって、高い山は 見当たらないが、なだらかな丘陵地帯が広がっている。
……(詳しくは、別ページでどうぞ)。


西国/スペイン

エル・エスコリアール周辺

エル・エスコリアール(El Escorial)は、スペインの首都マドリードの郊外 北西約50km にある町(人口 14000人@2007年)。高度 1000m。それに隣接するのが ……(詳しくは、別ページでどうぞ)。


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この文書について

リンクなどはご自由にどうぞ。 なお、このページのURIは、以下です。
http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/info/mountain.html


まさ (坂野 正明)