スコットランドの山情報



概観

スコットランド(蘇格蘭)は、英国の中ではかなり山がちな場所です。 中でも中北部は「ハイランド」と呼ばれる美しい場所です。 イングランドに比べて人口密度が圧倒的に低いので、原野が楽しめます。

私は,休暇でロンドンに行ったという人は哀れに思う.湖水地方に 行ったという人に対しては優越感を感じる.そしてハイランドに 行ったという人にはこの上もない嫉妬を覚える.
http://square.umin.ac.jp/~massie-tmd/site.html

英国の山を高い方から数えると、上位50位くらいは、 蘇格蘭の山だけで占められてしまいます。 中でも、スコットランドの 3000フィート(914.4m)を超える山を(最初に数え上げた 人にちなんで) マンロー(Munro)と言います。英国版「深田久弥の百名山」ですね(全284座)。 加えて、2000フィート(=609.6m)を超える山々を Corbett と言います。
http://www.siliconglen.com/Scotland/16_13.html
http://www.walkingontheweb.co.uk/Munro's.htm

スコットランドの元々の言葉は(スコットランド・)ゲール語です。しかし、現在 ではほとんどの地元民は英語しか喋り(れ)ません。ただ、地名(特に 山の名)はゲール語が多いため、発音に窮するところです。

スコットランドが素晴らしいのは、私有地であれ、(法的に)基本的に どこを歩いてもいいことです。牧場の柵があれば、乗り越えて歩いて も構わない。原理的に人家の裏庭に入っても構わない(街中なら別で しょうが) --- ものを破壊したり、悪いことをしなければ。ほぼあら ゆる場所に「所有者」がいる現代、これは素晴らしい法律です!

2014年、スコットランド独立を問う住民投票を受けて、日本でも話題になりました。
スコットランド独立を問う住民投票を間近にして
という拙文において、スコットランドの地勢、歴史から背景までかいつまんで解説したので、興味があればご一読をどうぞ。

この広大なスコットランド、何カ所か登山の見所を挙げます。

Fort William (村) と Ben Nevis (ベン・ネビス山)
前者はおそらくスコットランド最大の登山基地で、英国最高峰 のベン・ネビス山をはじめ多くの山々への拠点。
Glen Coe (グレン・コー)
美しさで有名。英国一厳しい登山の舞台。
Isle of Skye (スカイ島)
非常に有名な観光地でありながら、自然が保たれている。南部の Cuillin(キュウリン)山地が白眉。英国最高の縦走ルート。
Torridon Hills (トリドン山地)
スカイ島のほぼ対岸に位置する、人里離れた美しい山々。
Cairngorms (ケアンゴーム山域)
スコットランド中央部、英国で最も山深く、寒い場所。

スコットランド冬期登山

スコットランドの冬期登山の最大の特徴は、ひとつは伝統登攀、つまり ボルトなどの固定支点はなく(ピトンが残されていることはありますが)、 支点は基本的に自分で全てセット(+回収)する、ということにあります。 もうひとつは…… (以下、詳しくは、別ページでどうぞ)。


ロッホアーバー県 (Lochaber)とグレンコー

概観

ロッホアーバー(Lochaber)は、 スコットランドのハイランド(Highland)の 8県のうちの一つで、 ハイランド南西部に位置します。

(スコットランド・)ゲール語では、 lochは「湖」aber(abar)は「川の合流点」「河口」を意味しますから (参考: Wikipediaの頁 Aber and Inver as place-name elements)、 ロッホアーバー Lochaber は、「湖口」という意味になりますね。

英国の最高峰ベン・ネビス(Ben Nevis; 1344m)が、このロッホアーバー県にあります。 そして、同じく「高」山が林立するグレン・コー(Glen Coe)はこのロッホアーバー県 の南部に隣接した Argyll and Bute地方にあります。また、南西部にある、ということは、ハイランドの中では、 イングランドに最も近い県でもあります。 そのため、ハイランドで最も有名な県と言えましょう。

参考リンク

Ben Nevis (ベン・ネビス山)

英国最高峰として、(英国人の間では)非常に有名なベン・ネビス(Ben Nevis)山。 ただし、その標高は 1344m に過ぎないので、世界的には高山とはとても言えません。 しかし、その険しい北壁は、すばらしい登攀の舞台を提供していることで 有名です。 そして、冬期でも全てのルートが日帰りで登れます(もちろん十分な技術がある、 と仮定の上での話ですが)。 だから、世界から、登山家があえて登りに来ることも珍しくありません。 2007年 2月には、 日本から馬目弘仁と横山勝丘とが訪れて、 Dave MacLeod と共に、(冬期)新ルートを開拓していました。

ベン・ネビスの登山口は幾つかありますが、 最も標準的なのは、 フォート・ウィリアム(Fort William)町の ユース・ホステル(Glen Nevis Youth Hostel)前の登山口でしょう。 海抜 20m なので、1300m 以上の高度を自分の足で稼ぐ必要があります。 ここの一般登山道は Pony Track (または Tourist Track)と呼ばれ、 山頂までずっと整備された 単調な道が続きます。ただし、山頂手前の稜線は冬(1年の半分?)は雪で覆われる ため、注意が必要です。

ただし、北壁へ向かう場合は、北壁駐車場(North Face Car Park; NN144763)を 使う方がどちらかと言えば多いようです。 フォート・ウィリアム町から北東へ A82 経由で 4km くらいの場所にあります。 上記の ユース・ホステル前の登山口と標高差は変わりませんが、 こちらの方が、(北壁に向かう方面の)道が若干よく、アップダウンが若干少なく なるため、距離が少し長くなるとはいえ、アプローチの時間が 若干少なくて済むようです。 また、(天候条件が悪くない限り)アプローチの間に 北壁をずっと望めるので、北壁のコンディションが遠目に見られます。 それ以上に、(北壁を望むことで)期待が高まるのが心理的に大きいかも知れません。

とはいえ、上記の ユース・ホステル前の登山口を使っても何ら問題はありません。 特に、登攀後に直接下山するなら、ユース・ホステル前の登山口を使う 方が(下山に一般道を使えるため)利点がありそうです。 一般道経由で下山して北壁駐車場に行くこともできますが、ただでさえ長くて だるい下山がさらに長くなることになります(……から、その場合(北壁駐車場に 戻る場合)はむしろクライマー専用(?)の急な下山経路を使うことが普通のようです)。

北壁登山(登攀)では、山小屋「CIC hut」(予約必須; いわゆる営業小屋ではない) が目印または拠点になります。 北壁駐車場からであれ、ユース・ホステル前の登山口からであれ、 この小屋までは比較的歩きやすい道が通じています。 とは言え、小屋近くの 500m くらいは踏み跡がはっきりしない場合も 少なくありませんが……。

北壁には、夏に登れる(岩登りや歩登攀の)ルート も多くありますが、夏は岩が脆いため、細心の注意が必要です。 昔は北面の奥の Coire Leis に 避難小屋がありましたが、今は撤去されています。一方、山頂には、緊急避難 シェルター(小屋)があります。ただし、あくまで緊急用と考えて下さい。

ベン・ネビスの頂上稜線は悪天下には迷いやすいことで有名です。 そして、ベン・ネビス山で悪天というのは全然珍しくなく……。 もし迷えば、(下降時として)右は北壁の絶壁、左も険しい崖なので、 非常に危険です。明らかな北壁の危険を避ける心理のあまり、 左(南面)の崖に迷い込む事故が後を絶たない、と聞きます。 また、頂上稜線は遅くまで雪が残り、雪庇も発達して いるので、もし雪庇を踏み抜けば、それまでですし……。 悪天時、ベン・ネビス頂上からの下降は、以下のようにナビゲーションする のが推奨です。 (参考: Ben Nevis — Summit Safety (by the SMC)
http://www.mountaineering-scotland.org.uk/safety/nevis_bearing.html )

  1. 頂上三角柱から(真北から) 231°の方向に 150メートル
  2. 次いで 282°の方向に歩く — ジグザグ一般道に突き当たる

(2007年6月 初版
  2008年9月 改訂版 (Norce Face駐車場について、他))

参考リンク

Glen Coe (グレン・コー)

歴史と美しさで英国一有名な渓谷だが,”美しい”言葉を一般的に捉えてはならない. ”ここは地球ではない”.グレンコーについて間もないある日本人がこの場所を訪れて 思わず漏らしたこの言葉が,より正確な表現である. (Massie池田氏のページより)
http://sq uare.umin.ac.jp/~massie-tmd/site.html#Glencoe

地球ではない Glen Coe (グレン・コー)は、フォート・ウィリアム(Fort William)町 の南方 20km弱の場所にある渓谷です。その北西端に Glencoe(グレンコー)村が あり、そこから渓谷は約12〜15km にわたってほぼ東西に広がっています。 渓谷は、途中で横切る分水嶺を挟んで、西側が River Coe、東側が River Coupall の二つの川に沿っています。なお、River Coupall の方は、 Buachaille Etive Mòr 山(群)と Meall a' Bhùiridh山との間を通って 南西に流れる River Etive へと合流していて、この River Etive が作る Glen Etive (渓谷) がグレン・コーのお隣さんになります。

グラスゴー(あるいはイングランド)など南方から フォート・ウィリアム町に行く時には、ほぼ必然的にグレン・コー渓谷を 横断することになります。その(主要)道が A82、Pass of Glencoe (グレンコー街道)と呼ばれ、道沿いにちょっとした駐車スペースが並び、 よくバスツアーの観光客が立ち止まっては景色を鑑賞しています。 街道の両側、特に南側に、そびえる険しい断崖絶壁が一番の見もの。 また、道のすぐ近くに見えるコー川の滝も有名です。

グレンコー街道から南西に延びる Buachaille Etive Mòr 山(群)が グレン・コーの(東の)玄関口とよく称されます。 ただ、そのさらに東南数km の場所に、Meall a' Bhùiridh山 (1108m) があり、その北東面が、グレンコー(Glencoe)スキー場となっています。 冬は、ほぼ山頂までスキー・リフトなどでアクセスできます。

Buachaille Etive Mòr 山(群)の西に平行に走るのが Buachaille Etive Beag 山(群)です。その西に、平行に走るのが グレン・コー近辺の最高峰 Bidean nam Bian (1150m) を盟主とする 大きな山群で、グレンコー街道から見て南に、三つの険しい北壁 The Three Sisters (三姉妹) が臨んでいて、 よく写真に収められているものです。

グレンコー街道の北側には、Aonach Eagach (アオナッハ・イーガッハ)の 険しい稜線が東西に延びています。この稜線縦走は、ブリテン(Britain)本島内 で最高の稜線縦走(歩登攀 Grade 2)と評価の高いルートです。 その北側は、東西に長く延びる Loch Leven (ルベン湖)に向かって落ちていて、 西の方では、Glencoe(グレンコー)村もルベン湖に面しています。

グレン・コーは、その険しい山容から想像できる通り、季節を問わず、 厳しい山岳登攀の舞台として有名です (お隣の Glen Etive も忘れてはいけません)。 登攀を志すあなたにとって、グレン・コーは外せない場所と言えるでしょう。

宿泊

Glencoe村内は、ごく小さい村ではありますが、ホテルや B&B、 あるいは自炊形式(self-catering)の宿がいくつもあります。

村から南東に 2.5km ほど離れたところ(A82道沿いではなく、その北側の 側道沿い)には、ユースホステルがあります。 2007年春現在で、朝食すら出されないので、自炊が基本になります。

そのユースホステルからさらに 1.5km ほど道沿いに南東に離れたところに、 Clachaig Inn があり、ホテル(兼レストラン兼パブ兼喫茶店)となっています。 周りに何もないだけあって、登山家にはそれなりに知られる場所のようです。 ユースホステルから飲みに来ていると思しき人々も見かけたものでした (ユースホステルからは多分、もっとも近いパブになる)。

交通

グラスゴー(Glasgow)から/までは、長距離バス(coach)が走っています (CityLink社; Fort William行)。 グレン・コー渓谷内もバスがあるはずですが……、本数が限られるので、 注意が必要です。

参考リンク


ケアンゴーム山域(Cairngorms)

スコットランドで最も山深い場所が、ケアンゴーム山域(Cairngorms)です。 最も遠い場所は、おそらく英国で最も舗装道路から離れた場所になります。 冬であれば、雪の状態にもよるでしょうが、アプローチだけで丸 1日か それ以上かかりそうです。

ケアンゴーム山域は季節を問わず登山の舞台になっていますが、 中でも冬期には、その本領を発揮します。というのも、 内陸に位置し、高度もあるため、(ベン・ネビス山頂と並んで)英国で最も気温が 低くなりやすい場所、つまり、特に冬の初めには、冬期登攀の条件が最も 整いやすい場所になるからです。加えて、盟主ケアンゴーム(Cairn Gorm)山 (英語の綴に注意。"s" があるかどうかと、二語に分かれて いるかどうかで区別されます)の北面山麓には、スキー場がある関係で かなり上まで除雪された舗装道を車でアクセスできるため、登攀ルートへの アプローチが短くて済む(日帰り冬期登攀山が十分可能)こともあって、 クライマーに特に人気です。

ケアンゴーム山域の北の盟主が、ケアンゴーム山(Cairn Gorm) 1245m です。山域の最高峰は中北部の Ben Macdui山 (1309m)になります。 他にも Braeriach (1296m)、Cairn Toul (1291m) をはじめ数多くの Munroが並び立ちます。

ケアンゴーム山域の北西端の拠点になるのが、 アヴィモア(Aviemore)村です。 村からケアンゴーム山へのアクセスは、スコットランドの山々の中で 最も便利なものの一つになっています。一方、中央東部の拠点になるのが、 ブリマール(Braemar)村で、村から西に延びた車道の最西部(Linn of Dee; 村から約 10km)およびそこから東に戻った終点(Linn of Quoich)にある 駐車場がケアンゴーム山域中央部へのアクセスの出発点になります。

地図とガイド本

この付近の地図は、OS社、Harvey社が 1/25000 地形図を出しているのに加え、 BMCから主に登山者を念頭にしてこのエリア全体を 1枚の 1/40000 にまとめた 防水地図(ISBN: 978-185137453-3)が発売されています。

登攀ガイド本は幾つかありますが、2008年現在での決定版は、
「The Cairngorms」 (SMC、2007年、ISBN: 978-0-907521-96-9)
で決まりです。

ケアンゴーム(Cairn Gorm)山と北圏谷

ケアンゴーム(Cairn Gorm)山は標高 1245m。頂上の 150m下付近まで 登山列車が通っていて、また列車の駅から山頂までの道も整備されて いるので、スコットランドで最も楽にアクセスできる山の一つでしょう。 登山列車の山頂近くの終点(標高約1090m)には、レストランもあります。

ケアンゴーム山の北斜面(特に Coire Cas(カス圏谷))は英国一のスキーリゾート になっています。内陸にあって標高の高さも加わって温度が低いため、 スコットランドつまりは英国でもっとも(雪の)条件が整う可能性が 高い場所ですから、さもありなんというところでしょう。とはいえ、 気温や降雪量の関係で、2月でさえ地肌が顔を出すこともあり、 全面オープンしているかどうかは時の運です。特に近年(2008年現在)は 温暖な年が続き、スキー場の経営は四苦八苦しているようです……。

ケアンゴーム山へのアプローチは、通常、北側の Coire Cas car park (コリー・ カス駐車場; Cairn Gorm car park とも言う)が起点になります。 登山列車やリフト、あるいは主要登山道も、ここが起点です。 公共交通機関では、最寄りの アヴィモア(Aviemore)村 からコリー・カス駐車場へのバスが何便か出ています。 自家用車でアクセスする時は、短時間滞在用と長期滞在用とで 駐車場で停める場所が違う(隣り合っていますが)ので要注意。 なお、コリー・カス駐車場横には、山岳レンジャーの事務所が あり、そこで天気情報などが手に入ります。

ケアンゴーム山の南西隣の Stob Coire an t-Sneachda山の南西 1km (NH020992(*)) にある小ピークの(Coire Domhainに面する)北斜面は、 付近の他のどこよりも雪がよく残っていて、しばしば雪洞に使われるようです。 特にその時に皆が排泄物を残していくのを憂えた様子で、 2007年度冬期の段階で Poo Project と言う、 排泄物持ち帰りキャンペーンがなされていました。 コリー・カス駐車場で、排泄物(大の方)を入れるための容器が貸与(無料)されて、 駐車場まで帰ってきた時にそれを所定の場所に入れる、という単純なものです。 義務ではありませんが、泊りがけで山域に入る場合は、是非一考なさって下さい。

この付近で クライマーに特に人気が高いのは、ケアンゴーム山の北壁(のうちの二つ)です。 正確には、ケアンゴーム山のすぐ隣の山の北壁ということになりますが。 あわせて、ケアンゴームズ北部圏谷(Cairngorms Northern Coires)と 称されます。東側に位置し、駐車場(あるいはケアンゴーム山頂)に 近い方が Coire an t-Sneachda、 その西側隣の圏谷が Coire an Lochain です。 ルートはいずれの圏谷でも 50m から最長 200m 程度なので、 日帰りで二本かそれ以上登るクライマーも少なくありません。

北部圏谷を登った後、駐車場まで帰るには、ケアンゴーム山の方に (広い)稜線に沿って歩いた後、Fiascaill a' Choire Chais の稜線から 下降するのが普通のようです。ただし冬は、Goat track から Coire an t-Sneachda に下りて、そちらの登山道を辿る方がいいかも知れません。 岩場付近では登山道ははっきりしないので、注意が必要ですが。

Coire an t-Sneachda

Coire an t-Sneachda には低難度のルートが揃い、 アプローチの短さもあり、初級者にも最適な場所と言えます。 したがって、冬期にはスコットランドで最もクライマーの 人口密度が高い場所でしょう。天気のいい週末に人気ルートに行けば、 行列ができている可能性が少なくありません。 一方、2007年度冬の時点でスコットランド最難の 冬期登攀ルートの The Hurting (XI, 11) を筆頭に、高難度のルートも 揃っていて、上級者まで十分に楽しめる場所です。

(圏谷を登った後に) 圏谷の取付まで下りるのは、Goat track が最もポピュラーです。 しかし、時に雪崩ることがあるので、要注意ではあります。

Coire an Lochain

Coire an Lochain の No.2 Buttress から下方に比較的急な斜面が 広がっています。ここは、雪崩ることで有名です。 過去に何度も悲劇がありました。「地面」が広大な花崗岩のスラブなので滑り易いのが一因です。加えて、 クライマーの数が多いので、雪崩にあう 人数も必然的に多くなる、ということもあります。なお、英国の クライマーの雪崩に関する意識は決して高くないので、 他の人が行っているからという理由で後を追うのは無謀かも知れません。 言うまでもなく、 SAIS他、 必ず自ら情報収集して自分で判断すべき問題でしょう。

アヴィモア(Aviemore)村

スコットランドの特に冬期の主役のひとつであるケアンゴーム(Cairngorm)山への 登山基地となるのが、アヴィモア(Aviemore)村。ケアンゴーム山は英国屈指(条件 が整いやすいという意味で、おそらく最高)のスキーリゾートでもあるので、 アヴィモア村が栄える由縁。スコットランド南部(たとえばグラスゴー市)と 北部最大の拠点インバネス(Inverness)市を結ぶ幹線道路 A9 沿いに位置する。 ユースホステルをはじめ、宿泊施設にも事欠かない。

アヴィモア村には、有名な屋内人工壁がある。(過去形「あった」です。2014年現在、ありません。最寄りの屋内壁は、Glenmore Lodge 内の小規模なものか、ハイランド首都のインバネスまで行かねばなりません。)

Aviemore Indoor Climbing Wall
http://www.extreme-dream.com/

ここの(共同?)オーナーは、特にミックスの登攀で有名なスコット・ミュイール氏。 そのためでもあろう、2007年1月の段階で、ここは、英国で唯一、 ドライツーリングが通年で許されている人工壁だ(ただし、クランポンの使用は禁止)。 ただし、ドライツーリングをするためには、一度、登録して、人工壁のスタッフ から安全指導を受けることが条件。現実には、僕らが 3回行った限りでは、 ドライツーリングをしている人はほとんどいなかったが。

ボルダリング用ルートも豊富にあり、リード用の壁でも 5〜7メートル程度の高さ しかない。しかし、その後、天井を延々とルートが這ったりするので、 少なくともハードコアな人々にとっては、持久力が養えない、という不満もなかろう (10歳以下に見える少年少女が喜々として天井を這っているのは衝撃だった……)。 片隅には、キャンパスボード他、色々とクライミング用のトレーニング設備も 整っている。これはスコット・ミュイール氏の個人トレーニング施設ではないか、 と感じてしまった、僕らには厳し過ぎてとても手が出ないものも多数……。


トリドン山地 (Torridon Hills)

トリドン山地の主は、東西に走る Liathach 山系。すぐ北側をほぼ平行に走る Beinn Eighe 山系も見逃せない。
Ling Hut からは、東南東の Sgurr Dubh も目を惹く。ちょっと気づきにくい ところでは、南の Sgorr Ruadh へもアクセスできる。

トリドン山地の登山は、冬こそ真骨頂とされているようだ。岩がもろいため(砂岩)、 夏は、あまり適さない。例外として Beinn Eighe 山系西端の Coire Mhic Fhearchair 付近の岩場が、よく夏期登攀されているそうだ。実際、地図を見る限り、山頂まで 達する一般道(path)は見当たらない。(夏場の)ウォーキングのルートはあると 聞くので、それなりのガイド本を探せば見つかると思うが。

Liathach も Beinn Eighe 山系も Allt a' Choire Dhuibh Mhóir 川沿い の道(path)が、アクセスの基本になるだろう(もちろんどこを登るかによる)。駐 車場は、(Ling Hut へ行く場合も含めて) Glen Torridon (トリドン川沿いの地 域のひとつ) の National Trust の駐車場 (GR(枠参照番号):959569) が無料で 使えて、かつ便利な場所にある。幹線の A896 の道端には、しばしば停められる ところがある。

地図、ガイド本

Torridon Hills 付近の地図としては、 Ordnance Survey (OS) の 1/25000, 1/50000 地図が例によって基本。 Harvey の地図もある。

登攀のガイド本は、SMC (Scottish Mountaineering Club) の
「Northern Highlands — Rock & Ice Climbs: Volume 1」
が基本。なお、トリドンを含む地図は、裏表紙の方にある。

交通アクセス

トリドン山地近辺へ南(イングランド)からアクセスするには、大きく分けて 東海岸経由と西海岸経由の二つある。最大幹線路は、グラスゴー(Glasgow; 西海岸 近く)近くからインバネス(Inverness; 東海岸)まで斜めに突っ切る高速道 M80(とA80) から国道 A9、そして A82。 距離的には大周り経路ながら、インバネスからトリドンと A9の一部以外、ほとんど複数車線で快適な道路の旅になるのがメリットだ。

一方、距離的には、グラスゴーから西海岸をまっすぐトリドンまで 上がっていく方が近いものの、 スコットランドの西海岸は激しく 入り組んでいて(ネス湖など、ほとんど西海岸から東海岸まで突き抜けていると言っていい)、 道路もそれに沿わざるを得ないので、直線とはほど遠い。 そして、道はこちらの方がずっと悪い。 だから、ドライブ自体を楽しむつもりなら別にして、時間距離的にはインバネス経由の方が近かろう。


スカイ島 (Skye)

スカイ島南部のキュウリン山地(Cullin Hills)は、英国屈指(最高?)の登山の舞台。 中でも、主稜線縦走ルート(行程12時間ほどの歩登攀; 核心は VDiff)が有名。 また、Munroで唯一、 頂上に登るのに登攀が必要な山 (Inaccessible Pinnacle) が存在する。

キュウリン山地登山の標準的登山基地は、 スリガハン(Sligachan)とグレン・ブリトル(Glen Brittle)の二つになる。 前者はホテルが、後者にはユースホステルがあるが、店などは一切無いはず。 買い出しは、20km(?) くらい離れた隣村(Broadford村; Portree村でもいいかも?)に 出かける必要がある。

地図、ガイド本

地図は、以下の二つ。

Ordnance Survey
1/25000 ("Outdoor Leisure Map 8: The Cuillin & Torridon Hills"), 1/50000 (Sheet 32: South Skye, 23: North Skye)
例によって、基本。
Harveys
"Skye: The Cuillin"
これは表側が 1/12500 (キュリン山地主要部のみ)、裏が 1/25000、 等高線が 15m区切り、と変則的。細かい地形が省略されていることもあり。 それでも、1/12500 は貴重。

ガイド本は、歩登攀(スクランブリング)(と易しいクライミング)には、"Skye Scrambles" (Noel Williams 著; SMC: Scottish Mountaineering Club; 2011年) が決定版
(以下の情報は、同本(の前版)を大いに参考にした)
同本には、ウォーキングのルートも多少はあるが、ウォーキングが目的な ら、他にガイドブックがある。

宿泊

天場/キャンプ場 (4月〜9月が標準的なオープン時期の模様)
Sligachan
Glen Brittle (以上、二つが、Cuillin山地への標準的登山基地)
他、Broadford, Portree 近くなど
YH: ユースホステル
Glen Brittle
他、Broadford, Uig など
その他のホステル
Portnalong に通年開業のところが二つあるらしい
他、Portree など
自炊形式の小屋 (Mountaineering hut)
Glen Brittle Memorial Hut が16人用にあるらしい(4月〜9月)。
他、Portree など
ホテル
Sligachan Hotel が歴史的 (21時まで、来訪者に食事を出す)

交通アクセス

スカイ島は、スコットランドでも北東端に近い。本土から橋で渡れる分、 他の離島よりははるかにアクセスは楽だが、それでも相当に時間がかかる ことは覚悟した方がよい。

「最寄りの」空港は Inverness。「最寄り」とは行っても、 Inverness からの旅程も相当あるが。 南部からのアクセスで、飛行機を使わないならば、Glasgow からの 長距離直通バス(Citylink社)を利用する手がある。 ただし、5時間程度かかる(実は列車で行っても似たようなもの — 大回り するので。かつ、スカイ島までは線路は通っていないので、結局最後は バスになる)。また、1日 2便程度しかないので、運行時間には要注意(曜日に よって異なるかも?)。

実際は、島内では自家用車がないとかなり不便なので、 グラスゴー(Glasgow)やエディンバラ(Edinburgh)まで飛行機で出て(可能なら Inverness がずっと近いのだが、便数や発着空港、航空会社が限られるという 不便さがある — つまり格安航空券が手に入りにくい?)、そこから レンタカーという人も多いようだ。

以下、手段別に列挙する。

Kyle of Lochalsh に橋がかかっていて、本土から島へと渡れる(有料)。
Mallaig からフェリーで渡る手もある(夏のみ?)。
列車 (イングランドなど南方から行くのは、どう行っても大回りになる)
Inverness 〜 Kyle of Lochalsh (Kyle of Lochalsh からはバス)
Fort William 〜 Mallaig (Mallaig からはフェリー)
バス (coach(長距離バス)/bus(普通のバス))
Glasgow 〜 Sligachan (5時間) 〜 Portree 〜 Uig (2本/1日) (2004年10月現在で Glasgow–Sligachan往復£25)
Inverness 〜 Portree
Kyle of Lochalsh 〜 Uig は、もう少し本数が多いが、たかが知れている
ヒッチハイク(!)
(拠点の) Glen Brittle に行く公共交通手段はない。車を持っていな ければ、ヒッチハイクが一般的の様子。郵便配達の車にも乗せて もらえるらしい。

アロッハー・アルプス (Arrochar Alps)

Arrochar Alps (アロッハー・アルプス)は、 スコットランドのハイランド最南部、 ロマン湖(Loch Lomond)北部のすぐ西側に位置します。 最高峰 Beinn Ìme山(1011m)を筆頭に、 5峰のマンローを擁します。

しかし、アロッハー・アルプスで最も有名なのは、 The Cobbler (ザ・コブラー)の愛称で知られる Ben Arthur (ベン・アーサー)でしょう。 南・中央・北峰の三峰が、三兄弟のように並び立つさまは 壮観です。最高点の中央峰の(ごく狭い)山頂に立つには、 最後の何メートルかの(歩)登攀が必要で、もし確保なしで 落ちるとよくて大怪我は確実です。実際、死亡事故も何例も 報告されています。

もちろん無理に最後の山頂まで登る必要は全くありません。 大都市のグラスゴーから近いこともあり、 その風景を楽しみに来訪する山歩きの人で四季を問わず 賑わう山です。

コブラーの三峰のどれも、冬期登攀の舞台です。 その地理的位置(スコットランド南西部)、高度(800mあまり)の ため、残念ながら冬期登攀の条件が整う期間は限られます。 しかし、もし幸運にも条件が整った時は、すばらしい 登攀が楽しめることでしょう。

参考リンク


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この文書について

リンクなどはご自由にどうぞ。 なお、このページのURIは、以下です。
http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/info/scotland.html


まさ