副ブログ記事一覧 (社会・科学・その他)

音楽著作権とYoutube動画

88 (Eighty eight)という音楽グループが、同チャンネルのかなり以前のあるストリートピアノ演奏Youtube動画につき、 Youtubeから著作権にかかる警告を受けて、強制削除された。とし、それに伴い、チャンネル閉鎖のリスクを避けるために過去のカバー動画をすべて(約1000本)自主的に削除したと先日、報告しました。 ぎょっとしました。もし仮にカバー演奏動画がダメならば、他の音楽家のポップスのカバーやアレンジ動画ほぼすべてだめになりかねないので、これは重大問題です……。

本稿では、Youtube上の音楽の著作権について私の理解をまとめ、この問題について以下の順に考察します。2022年4月1日にJASRACの方で制度に大きな変更があったので、それも考慮します。

  1. Youtube動画での音楽著作権侵害のリスク
  2. 著作者人格権侵害について
  3. 文化的側面から見た著作権

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BBC報道以降のジャニーズ事務所と芸能界と性加害

ジャニー喜多川こと喜多川擴氏(以下、敬称略)は言わずと知れたジャニーズ事務所の創業者であり、死ぬまで最高経営責任者と君臨していた。そしてジャニーズ事務所こそ、何十年にもわたって数々の若手男性タレントを輩出してきた、日本でおそらく史上最大の芸能事務所だ。 実際、同氏は

  • 「最も多くのコンサートをプロデュースした人物」
  • 「最も多くのナンバーワン・シングルをプロデュースした人物」

というギネス世界記録を持つ。

そのジャニー喜多川に、事務所所属への少年への性加害疑惑が報道された。実は性加害疑惑自体は1990年代から文春報道をはじめ取り沙汰されていた。当時は大きな問題にはならなかった——少なくともジャニーズ事務所の経営にも、まして事務所存続にも何の問題もなかった。しかし、2023年にBBCがドキュメンタリーPredator: The Secret Scandal of J-Pop」として特集して以降、一気に問題がクローズアップされてきた[……]

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英国EU離脱(Brexit)の2019年3月の現状

2019年3月30日現在、英国のEU離脱(Brexit)は極端に混迷を深めています(今までの歴史は、本稿後半の「英国のEU離脱の歴史のまとめ」を参照ください。2016年の英国のEU離脱を問う国民投票の日に書いた記事「EU離脱を問う英国国民投票」もあわせてどうぞ)。

本来のEU離脱日である 3/29 は 4/12 に延期されたものの、現在、英国議会と英国政府との間の折衝が暗礁に乗り上げたまま、先が見えません。EUとの交渉の再延期の見通しも立っていません。本稿では、そんな英国の現状を批判的に解説します。

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日本での夏時間導入の問題点(2018年)

2018年8月、日本政府が夏時間導入を真剣に検討している、という報道があった。政権の現在案は……どれを取っても、暴論だ……。筆者の貧弱な想像力のはるか上をいく酷さだ。
その問題点を工学的、社会学的視点から考察する。

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震撼の重力波

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Artist's impression of merging neutron stars by ESO/L. Calçada/M. Kornmesser (CC BY 4.0)
この2年間、最先端の物理学研究が、素晴らしい成果を見せてくれた。私が生きている間でこれほどのものはもう出会えないかも知れない。重力波の直接検出と、その発生源の確かな観測的特定だ。私個人にとっては青天の霹靂に近く、誰にとっても興奮するニュースであったことに違いない。ごく最近あった大発見の直前には、天文学者の友人には厳しい箝口令が敷かれていたようだった。組織全体に箝口令とは天文学の世界では珍しい。それは興奮する発見に違いない、と予想されたし、実際、そのすぐ後の発表は、期待を裏切らないものだった。

本稿は、重力波は素人の私ながら、その何が重要で、その示唆するところが何かについて概観しようという大胆な試みである。

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EU離脱を問う英国国民投票

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EU flag

今日、英国にて、EU(欧州連合)からの離脱を問う歴史的な住民投票が行われました。その結果、拮抗した結果(52:48)ながら、EUから離脱することが決まりました。 衝撃の結果でした……。身近に目撃した政治決定という意味では、私の人生最大です。 本稿では、その背景を英国在住の私の観点から見ていきます。

そもそもの背景

英国は、日本や他の多くの国と同じく間接民主主義制なので、 ある議題をめぐって英国全国民による国民投票が行われることは極めて稀です。 歴史上、これが3回目になります。 1回目は 1975年のEU加入を問うもの、2回目が 2011年の選挙制度改革を問うものでした。

どういう場合に国民投票が実施され、またその結果の強制力がどうであるかは、英国法律上、憲法上の規定はありません。 今回、この国民投票は、英国下院(庶民院)与党の保守党キャメロン内閣によって提案され、 議会にてその実施のための関連特別法律が可決、制定された後、実施が決まりました。

その背景には、EU離脱をそもそもの党是とする、UKIP(英国独立党)が 2014年の欧州議会選挙で躍進し、同議会の英国選出議席中で第一党になったことがあります(UKIP 24議席、労働党 20、保守党 19)。 (EU離脱を問う住民投票を要求する)UKIP党の影響が無視できなくなったことに加え、 保守党党内からの圧力もあり、保守党政府は国民投票実施に踏み切り …

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AlphaGo—囲碁対戦人工知能の驚異

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李世乭対AlphaGo第5局のある局面

ごく最近、人類最高の囲碁棋士の一人が、囲碁対戦ソフトウェアに5番勝負で 1勝4敗で破れる、という事件がありました。 衝撃的なニュースでした……。 その背景、そして私の思うところをまとめます。

人工知能の歴史

一般に、人間の思考に近いことを計算機(コンピューター)にさせる場合、それを人工知能(AI: Artificial Intelligence)と呼びます。人工知能の概念自体は、古くからありました。たとえば、鉄腕アトムは、人工知能そのものです。あるいは、アーサー・C・クラークの古典SF『2001年宇宙の旅』では、人工知能ハルが登場します。

面白いのは、『2001年宇宙の旅』の人工知能ハルは、人間と普通に会話している一方で、「チェスもかなり強い」(が、最強の人間相手だと負けるかも?)というのが売りでした。つまり、当時、巨匠クラークも、人工知能にとってはチェスよりも会話の方が簡単、と見なしていたんですね。仮に人間の赤子のように人工知能が成長するものであれば、確かにそうなりましょうか。幼子はまず会話能力を獲得し、チェスが指せるようになるのは、ずっと後になってからですから。

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2015年ノーベル物理学賞

標準理論が含む素粒子の一覧。ウィキペディアより。

2015年ノーベル物理学賞は、梶田隆章氏およびカナダのアーサー・マクドナルド氏に授与されました。受賞研究は、ニュートリノ振動の発見です。以下、まずその科学的背景について、僕の言葉で解説します。後半では、その文化的考察も述べます。

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二つの風船の実験の解説

ここに二つの風船があります。 それぞれを異なる大きさに膨らませます — 小さい方と大きい方とに。 さて、この二つの風船の口をつなげると、何が起こるでしょうか? 考えてみて下さい!

Schematic view of the two-balloon experiment quiz.

これは、比較的有名な問題で、「二つの風船の実験」と呼ばれます。 結果は、実は直感に反するものになります。

本稿では、何が起きて、そしてなぜそうなるかを解説します。 第2章では、古典物理の法則を用いて性質を導き出します。 第3章では、方程式を使うことなく直感的な解説をしてみます。

ウェブ上に解説はいくつか散見されたものの、いずれも満足のいくものではなかったこともあり、書きあげたものです。

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情報リテラシーの育て方

玉石混淆の情報の氾濫する現在、 「受取った情報の中で正しいものを選び取る」 にはどうしたら良いでしょうか? 政府の公式情報は常に信頼できるでしょうか? マスコミは偏向していませんか? ネット情報は有象無象の人々が嘘八百を述べているかも知れませんね!

先日、 「Risk by Dan Gardner」 というブログを書きました。 リスクが、人間の日常の判断にいかに大きな、多くの場合不要かつ有害な、影響を与えているか、ということをクライマーの視点からまとめたものです。 以下では、それも踏まえて、「受取った情報の中で正しいものを選び取る」技術、つまりは情報リテラシーをどのように深め育て、涵養していくか、自分なりの指針をまとめてみました。

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