△第31号: ラ・グラブの氷壁 (その二)
- 発行日
- 2006/08/31
- 発行者・筆者
- まさ (坂野正明)
まさです。
日本は、今年は猛暑だったと聞きます。欧州でも、特に 7月には記録的な
暑さとなりました。一転、最近の英国は、涼しい日々が続いています。おかげで この三連休、ひたすら雨だったりしましたが……。
以下、南仏の La Grave (ラ・グラブ)の氷壁登攀の後編です。 少しは「涼」を感じて頂ければいいのですが。
また、ひとつ追悼文を書きました。日本の登山雑誌には載ってないだろう からせめて、とも思いまして。夏とは言え、本来そういう話は遠慮したい
のですが……それも人生の一幕でしょうか。
目次
登山記録編 〜〜 ラ・グラブの氷壁 (その二) 〜〜
△1/9
昨日は遅発ちすぎて、僕はリードをし損ねた。 今日こそ、と楽しみ。 II 4+ の La Croupe de la Pufiasse へ。遠くからも吃立する数段の滝が見える 壮観のルート。僕が第一ピッチのリードを担当。比較的緩い傾斜の場所から、 やがて垂直の氷の壁へ。腕が疲れる、手が冷える〜、と言いつつ、 ばんばんアイスバイルを叩きつけ、時にはフックも使って登っていく。 垂壁になると、クランポンを効かせるのが思ったより難しいが、まぁ、 これくらいならば何とかというところか。 無事、核心を越えて、滝の左横の岩へ。支点はボルトから取れる。
次いで第二ピッチを登り、その 次が核心……なのだが、4+ の核心はそもそも誰もリードする気が ないので、ここから懸垂で戻る、ということになったのだった。 上でリードしているフランス人のグループ、なかなかに楽しそうなのが、 ちょっと心残り?
△1/10
今日が登攀最終日、有名な Le Pylône (I 3〜4) へ。 ドムが第一ピッチリード後、ニック、リッチとフォロー。そして……、 あれれ、二人懸垂で降りてきた。ニックは、手が凍えてもう登れない、という。 えー、もったいない!
ドムの確保で、僕がフォローする。特に難しくはない。 僕としては、是非、さらに上に登りたかったが……、二人、下に待たせて、 というのもなんなので、断念して、懸垂下降して、お開きとなった。
後で二人に聞けば、別に登ってくれてもよかった、とのこと。だったら、 登るんだった! なにしろ、今回、まともに最後まで登ったルートは一ルートも 無いではないか!
今回、最初の一週間は、皆、気合い入れて早朝から日暮れまで登っていた そうだ。しかし、2週目はもう疲れてしまって、あまり気合いが入らなかった 様子。僕の着いたタイミングは悪かったわけだ。正直、不完全燃焼の旅だった が……、まぁ、新しい山域に来たし、幾らかのアイスクライミングはできたし、 経験としては悪くなかったと言えるか。
さて、で、結論、僕は氷壁登攀は好きか? うーん、僕は、「登山」の方が やはり好きだ。氷壁を登る技術は磨きたいと思う。登るのもそうだし、 また確保点が自在に取れるのは、実に素晴らしい。そのために、こうして 旅してもいいが、やはり目標は「登山」であって、氷壁登攀はその手段、 というのが、僕の感覚であることに変わりはない。そう実感したのだった。
面白いことに、これは、他の連中の感覚とはかなりずれているようだ。 今回一緒した他の 5人のうち、ドムは登山「も」楽しみたい方で、 リッチも登山に興味はあるが、他の 3人は氷壁登攀の方に断然興味がある、 という様子だ。見ていると、英国では、登攀か丘歩きかどちらかに興味が ある人が多く、両方が必要な登山に興味がある人がかなり限られる気がする。 英国にまっとうな山があまり無いからだろうか?
△以上、記録の一部。全文は、以下に載せました。
http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/record/eu/20060106_lagrave.jis.html
登山ニュース編 〜〜 追悼 〜〜
「Climb」今月号に、二人の女性登山家のお悔やみ文が載っていて、驚きました。 スー・ノット(Sue Nott)とカレン・マクニール(Karen McNeill)、 おそらく当世最高の女性登山家の二人です。 アラスカの山に消えた、という次第のようです。
以前、英国の一線の登山家イアン・パーネルがノットとグランド・ジョラス 北壁の恐ろしく難しいルートを登った時のコメントが印象に残っています。 自分は核心を前にして身震いして、ノットにリードするかと尋ねると、 「もちろん、なかなか楽しそうじゃない? (Looks kinda fun.)」と気軽に 返された、と。
ノットは30代半ば、身長 160cm に満たない小柄な体ながら、その内に秘めた 気魂はすさまじいものがあった様子が伺われます。(高所登山での!)二日くらいの 絶食は大したことないよ、とか……。二人が、2004年のデナリのカシン稜を (女性だけのパーティーとしては初めて)登った時の話は、僕の記憶に残ってます。 大抵の登山家はベースキャンプから一歩たりとも外に出る気がしないような 荒天の中、二人はルートに向かい……、やっとヘリが飛ばせるようになって 救助隊がヘリで向かったところ、山頂近くにぽつんと張られたテントから陽気に 手を振る二人の姿があった、と。
一方、二人とも着るものの見た目に相当 気を遣うとか、サングラス蒐集とか、女性的(feminine)な側面も強くあった、
ということです。二人の気が合った理由のひとつでしょうか。 一流登山家は、男性の方が圧倒的に多いだけに、その中にあって輝く
女性登山家はいっそう目立ちますし、尊敬します。
強く惜しまれる二人です……。
ノットには、大胆な(bold)、という形容詞がしばしば使われるのを見かけた ものでした。大胆さもほどほどに、でしょうか……。
Webページ更新情報
- この記事は、以下にも載せました。
http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/magazine/backnumber/eu031.html - ラ・グラブの情報に地図、宿泊などの項を加筆しました。
http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/info/ecrins.html#lagrave
次回予告
次回は… 「冬はグリット石の季節(スタニッジ・エッジ)」
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