▲欧州的登山生活▲

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第45号: (番外編)台風と競争の穂高縦走

発行日
2007/03/13
発行者・筆者
まさ (坂野正明)

まさです。
今回は、番外編として、 先の 9月に行った西穂高岳〜奥穂高岳縦走の記録を主とします。 本メルマガ第10号 で登場したゆきと二人連れの幕営山行でした。併せて、僕が英国で 経験を積んだ自然支点の日本の登山への応用について、議論してみました。 お楽しみ下さい。

目次


登山記録編 〜〜 台風と競争の穂高縦走 〜〜

9月の連休中、ゆきと北アルプスは穂高連峰に登山に来る。 一般登山道の中ではおそらく技術的に最高グレードの西穂〜奥穂縦走を 含む槍ヶ岳までの黄金縦走ルート。 しかし……、日程が近付くにつれ、天候がただならないこと がはっきりしてきた。南から大きな台風が日本に近付いてきている! 直前に日程変更、5日の予定を 3日に切り詰めて、行けるところまで 行くことにした。

9/16早朝、上高地入り、 森の中のはっきりした登山道を登っていく。こういう森の中の径が、 日本の山の落ち着くところですね。雨がぽつぽつ来はじめたところで、 西穂山荘に到着。 山荘で天気予報を確認するに、台風は大丈夫そうなので、行けるところ まで行くことにする。

雨のせいだろう、登山者が一人二人と減っていく。12時に 独標を過ぎた後は人の姿が消え、 ゆきと二人、静かな山行を楽しめることになった。 14時前に西穂高岳山頂着。 山頂わきに 2人なら十分の立派な(?)スペースが あるではないか。すばらしい。 ツェルト・ビバークを覚悟していたが、天幕が張れるとは。 夕食の後は、ばたん、きゅー。

翌朝 7時半に発。小雨。これなら何とかなりそう。 今日は最初からハーネスを装着して、コンテのセットをする。 一日の最初からして、(西穂山頂からの)急下降から始まるので、 念のためゆきを確保して。

このルート、意外に鎖場は少ない。それなりに高度感があって、 安全至極の道というわけでは全然ないのだけど。 岩は濡れている今日、 時にはゆきをちゃんと確保して、慎重にコンテで進んでいく。 ゆきがちょっとバテ気味。登れぇとばかりザイルで引っ張って進んでいると、 なんか犬の散歩みたい(ぶぅ)、とコメント。 ほぉ、よく気がついた、これは英語ではその名も dog-lead というテクニック なのですよ(笑)。

やがてジャンダルムの頂上へ立ち寄った後、 奥穂へ向けての行程再開。すぐに鎖場。 この鎖場は他よりは難しそう。でも……やっぱり鎖が必要なほどではない。 残念なことだ(と人工物がない山ばかり登っていると思うようになった)。

奥穂が近くに迫ってきた頃、ルートももう終わったか、と思っていたところ、突然、 「うまのせ」のペンキ文字が。えー、「馬の背」って、 本当にそういう名前であったんだ! 実は、この山行の前、(5年前の段階で 5.11 を 登っていた)山仲間が、先日、このルートに来た時「馬の背」が結構怖かった、と言って いたのだった。それを聞いて僕は、ヘルメットにハーネス、ナッツ、ザイルなど 用意することにしたのだ。僕は、「馬の背」とは、痩せ尾根を指す一般名詞 だとばかり思っていた……。実際にそういう固有名詞の場所があったとは! ということは、ここが核心ですね。ルートが終わったと思わせておいて 核心が登場するとは。西穂縦走侮り難し!

1ピッチ目で登りの場所を終え、ゆきを確保。ゆきの自己確保を確認して、 2ピッチ目のナイフリッジのトラバース。30m のザイルをフルに使う。 今日、ナッツは今までもよく使ったが、ヘックス 7番(キャンプ社)はここで初登場。 持ってきてよかったってものだ。ここが核心。高度感がいい。 これが西穂縦走ですね!

この後は、普通に奥穂高岳山頂を経由して穂高岳山荘着 17:00。 天幕を張って、20時過ぎに寝る頃には、結構な雨足になっていた。

翌朝もまた雨。 でも、山荘で天気予報を確認すると、台風は、九州から日本海側に抜けたようだ。 つまり、今後、天気は回復に向かう、ということのよう。つまり、 5日間の縦走も実は可能だった? まぁ、とはいえ台風のことは結果論。台風の進路・速度次第では、この地ももっと 影響を受けただろうから、今回のプラニングは、まぁ、妥当だっただろう、 と自分を慰めて、予定通り、この日に下山したのだった。

今回、ゆきとの日本での山行、天候には 恵まれなかったとは言え、なかなか楽しかった。さすが北アルプス、 山のスケールが大きい。 3日間、悪条件の中、ゆきが常に明るく笑顔でいたのは、本当に感心した。 素晴らしい、貴重な才能かな。山人として、それは得難い徳性です! 今後とも安全に、山を楽しまれますことを!

△以上、記録の一部。全文は、以下に載せました。
 http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/record/japan/20060916_hodaka.jp.jis.html


議論提起編 〜〜 自然支点と日本の登山 〜〜

今回、シュリンゲやカラビナ類に加えて、ナッツ数個とヘックス1個とも 持参しました。いわゆるナチュラルプロテクション(中国語なら自然支点?)を 得るための登攀道具類です。 事前に、「そんなの要らないでしょう」と山仲間には言われたものですが、 結局、持参していて本当によかったと思いました。持参した道具は全て 役に立ちました。

ナッツ類なしには、夏山高山縦走では、(鎖場や完璧なボルトがない限り)岩角に シュリンゲをかけるくらいしか十分な支点を作る方法はないと 思います(多くの人は、それもなくただ単に絶対落ちないと信じているだけ のように見えますが)。 あとは、なんとなく丈夫そうに見えるハイマツが運良く生えているか、 赤茶けた、ん十年前からの残置ピトンに命を預けるか。 それくらいなら、その横にでもナッツをセットするだけで、随分と心の 平安が得られるところでしょうに。

自然支点を使いこなすには、確かに相当の訓練と経験と(知識と)が必要では あります。でも、落ちたら終わりの山を歩く(登る、下りる)なら、それだけ の手間をかける価値は十分あると個人的には思います。 日本全国の山での 平均遭難者数は 1日あたり 3人(!)にものぼるとか。ほとんどは それ以前の問題だとは思いますが、安全性を向上させる努力はしておいて 損はないかと。明日も楽しく山登りができるように。

△この文章は、以下にも載せました。
 http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/doc/naturalproinjapan.html


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次回予告

次回は… 「南ウェールズ初体験(ペンブローク)」

See you later!


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