△第99号: ラ・グラブの氷壁再訪 (後編)
- 発行日
- 2010/06/23
- 発行者・筆者
- まさ (坂野正明)
まさです。
英国もようやく夏を迎えた様子です。他の季節はともかく夏の英国は 快適ですばらしいと思います。先々週は、4回、ピーク地方に
岩登りに出かけました。平日は夕方からになりますが、 それでも、1日で 120メートルほど登れたりするので、 不満ありません!
もっとも、ばちが当たったのか、その後、体調を崩して病院に二日ほど お世話になってしまいました……。それはいいんですが、 今週の
4回の岩登りの予定が全てパーになってしまったのが 残念至極です。天候には恵まれていたというのに。
お蔭でメルマガを書く時間が取れたのですが。
さて今回は、ラ・グラブの氷壁の記録の後編です。 1週間で登ったのは 3つの氷滝に終わったものの、 極めて良質のルートだったので、大いに満足でした。 はじめて氷壁登攀のコツが掴めたように思ったものでした。 あわせて、前号に引続き、 神奈川県の下山家さんから頂いたお便りへの 御返事のつづきも書いています。お楽しみあれ。
目次
登山記録編 〜〜 ラ・グラブの氷壁再訪 (後編) 〜〜
休息日の後、当地最高のルート(の一つ)として名高い La Colère du Ciel (大空の怒り)を目指す。300メートル、 WI 3+ のルート。
最初のピッチは、雪で覆われて、アプローチの一部と化している様子。 そのため、「取付」から核心。 グレアムのリード。 80°はないとはいえ、急。慎重に登っていく。 後ろから追付いてきたパーティーが 2組、 少し勾配のきつい氷壁の右側からさっさと登り切って僕らを抜いていった。 速度が違う〜〜。
次のピッチがお楽しみの続きで 僕のリード。垂壁の最初の数メートルが核心で、その後は楽なもの。 問題なく登りきる。
後は主に雪に時折氷が混じる数ピッチを谷の最上部まで登り抜けた。 結局、最初の 2ピッチが氷壁登攀の核心で、あとはほとんどは 雪の急斜面だった。雪が多かったせいもあるのだろう。 他の 2パーティーは最初の 2ピッチの後に 懸垂で降りていったのだが、今はそれも理解できる。 ルート全長を懸垂で降りた後には辺りはすっかり暗くなっていたものだった。
△以上、記録の一部。全文(および写真)は、以下に載せました。
http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/record/eu/20081214_lagrave.jis.html
おたよりへの御返事 〜〜 イギリスの山岳会 〜〜
神奈川県の下山家さんから頂いたお便り(第97号)への御返事のつづきです。 なかでも、イギリスの山岳会について、の一般的な話です。
山岳会内の組織としてのつながりが緩い状態では、 会の意義は日本ほど無いのでは、という疑問がわきそうです。 当たらずして遠からずかも知れません。一方、全国組織的には、英国の方が ずっとしっかりしています。最大の組織は、英国登山 協会(British Mountaineering Council: BMC)です (スコットランドは、Scottish Mountaineering Council: SMC)。活動的な 山岳部の多くは、BMCに所属しています。BMCは、ちょうど日本の日本勤労者 山岳連盟のように、山岳保険も提供しています — 労山の労山遭対基金に比べて カバーの額もカバーの範囲(エベレスト冬期登攀とか)もはるかに充実しています。 それだけ、財政的に BMCが大きい、ということでもあるのでしょう。
現在の BMCは、山岳部の上部組織というだけではなく、多くの個人会員に よっても支えられています。BMC会員だと、山関係の多くの店や施設で 割引がきくので、相当のメリットがあります。BMC加盟山岳会所有の ヒュッテを利用するためには、BMC会員またはBMC所属の山岳会員であることが しばしば要求されます。加えて、山岳保険(スキー保険、 旅行保険も)目当てで BMC個人会員になる人も少なくないと聞きます。 BMCとして、会誌とは別に何種かの一般向け登山月間誌を発行し (日本で言う「山と渓谷」に相当)、登山教科書やルートガイド本 と言った書籍も出版しています。登山やクライミング関係のイベントも、 当然ながら BMC主催や共催や協力のものが少なくありません。
余談ながら、BMC会誌の今季号の表紙は、中島徹氏がコーンウォールで E8を登っている写真が飾りました。5月初めに BMC主催の国際登山の会が 開かれた時、氏も訪れたものです。同会は隔年開催で、端的に言えば、 世界のクライマーに英国のクライミングの魅力を伝える、 ことを目的にしたものです。滞在費は BMCが負担で、客員クライマーそれぞれに 英国の(名立たる)クライマーがついて、最高の岩壁に案内する、という次第。
BMCの活動の最大の意義は、クライマーのコミュニティの意見を代表して、 外部と交渉したり、その取りまとめをすることにあります。 たとえば、ある岩場でのクライミングの許可を求めて 地権者(往々にして地方公共団体)と交渉するのは、BMCの活動の柱の一つです。 政府に対するロビー活動も行なっています。実際、政府から毎年、 相当額の助成が出るため、それを(登山史に残るような)海外遠征の助成費と してあてています — つまり、ヒマラヤでのある初登攀を目指すような チームがその助成に応募して、もし認められれば、BMCが相当額を助成するという 次第です。 ……ただし、現在は、2012年のロンドン・オリンピックに 向けて、英国政府がオリンピック種目以外のスポーツへの助成を 激減させたため、その(遠征助成)予算が切れたという話ですが。
結局、BMCが結成されたのは、登山家として外部にものを言うためには 烏合の衆の声では弱いため、統一した組織をまとめたい、という 動機にそもそもは基づいたものだと理解しています。 実際、一人の通りすがりのクライマーが「あなたの裏山登りたいんですけどぉ」と 言うのと、「英国登山協会の○○と申します。こちらは顧問弁護士の△△です。 さて、今日お話に伺いましたのは、お宅の裏山のことなんですが……」と 言うのとでは、重みが全然違いますよね。
会の内部でのつながりという意味では、日本の山岳会の方が ずっと強いと思います。極論すれば、大学の体育会の延長のような 山岳会がしばしばあるような。英国の山岳会では、今年は忙しいから 退会しますと言って抜けて、3年後にまた復帰する、というような 気軽さがあります。一方、対外的な面では、英国の 山岳会組織の方がずっとしっかりしている、という印象です。 比較すると興味深いかも知れません。
Webページ更新情報
- この記事は、以下にも載せました。
http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/magazine/backnumber/eu099.html
次回予告
次回は… 「コブラー三峰」
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