2006/07/15--16 湖水地方ピラー山登山記録/感想文 (by まさ)

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総括

山域
Lake District/(Buttermere)/Pillar rock
参加者
まさ
期間
2006/07/15--2006/07/16 (1泊2日)
  • 2006/07/15 Leicester ...(車)... Buttermere ... Scarth Gap Pass ... Black Sail Pass ... Pillar (ビバーク)
  • 2006/07/16 Pillar ... Kirk Fell ... Green Gable ... Brandreth ... Dubs Beck ... Buttermere ...(車)... Leicester
宿泊
ビバーク(Pillar 山頂)
天候
  • 2006/07/15 快晴
  • 2006/07/16 快晴

登山編

週末、天気が良さそう……ということで、湖水地方まで一人で遠出してみる ことにする。片道 4〜5時間のドライブがちょっと辛いが、それもまた経験、と。 (自家用)車がある、という自由度を最高に生かしているとも言えるかも?

どこに行くか……、せっかくだから、今まで一度も訪れたことのないエリアへ、 ということで、ピラー・ロック(Pillar Rock)に行ってみることにする。 湖水地方最奥の場所の一つだ。そのふもと近くにある Black Sail ユースホステルは、国で最も人里離れた場所にあるものだ。最寄りの駐車場(など 車や公共交通機関で行ける場所)から歩いて 1時間半はかかる、という立地。 ここに泊まってみようかと、3日ほど前に連絡してみたが、残念ながら予約で 一杯だった。団体客の予約が入っているんだとか。12人(?)くらいしか泊まれない 場所だし、無理ないか。

……ならば、久々にビバークとしゃれこんでみようかな? ついでに、Black Sail ユースホステルも見るだけ見てみよう!

07/15

今回、湖水地方に住む旧友アレックスに会えないか、と思い、事前に 連絡していたが、返事が無かった。で、途中の(高速の)サービスエリア で携帯メイルを入れると、あろうことか、その丁度同じ時に同じ サービスエリアにいることが分かって……、1年ぶりに再会できたのだった! なんたる恐るべき偶然!!

今回、山に入るのは Buttermere湖からにする。この湖水地方の奥地 Buttermere湖まで 足を踏み入れるのも今回が初めてになる。どうせ今晩はビバークだしぃ、と思って ゆっくりしていたら出発が少し遅くなってしまって、12時を回っていた。 とはいえ、さして急ぎもせず、山をひとつ越えて、やがてブラック・セイル (Black Sail)ユースホステルに着く。今日は泊まらないが、どんなところが 見ておきたいのもあって、それを考慮して今日のコースを決定した次第(ちなみに 僕の取ったコースは、距離的には最短だが、標高差 320m の登りと 140m の 下りがあるため、同ユースホステルに行くコースとしては、一般的ではない)。 確かに、周りに何もないところだ(管理人用の林道は通じている — つまり、 車が許されない登山者にとっては、マウンテンバイクでアクセスするのが最速)。 二人、今日の宿泊者という人がぶらぶらしていた。まだ管理人が到着していなくて、 小屋が開いてないそうで。次は僕も泊まってみたいところだ。

ここから、峠まで登り、尾根づたい、次いでトラバース気味に Pillar Rock の 北側を目指す。Pillar Rock のひとつ High Man は、イングランドで唯一、 歩いては、つまり登攀なしには、登れない山だ。最も易しいルートの登攀グレードは Moderate なので、僕なら、条件さえよければ単独でも問題ない、と期待して、 行ってみる次第だ。

壁の下、ここかな、というところまでたどり着いて、持参のガイド本を頼りに ルートを調べてみる。どうもはっきりしない……。他にクライマーがいることを 期待していたのだが、周りにおよそ人の影が無い(こんな快晴の素晴らしい日に!)。 つまり、人に訊くこともかなわない。 ここかなぁ、と当たりを つけて登り始めてみる。もうひとつ自信が持てない — 結局、登るのは 断念した(帰ってから、別のガイド本を見てみると、やはり、取り付きからして 全然違う場所にいたらしい。うーむ……。重量の関係で一番薄いガイド本を 持ってきたのだが、それは説明が一番はっきりしないものだった。情けなや。 ちゃんと事前に調べておくべきだった)。

岩場のふもとから、少し元来た方に戻ってから、歩登攀(グレード 1 くらい?)で 稜線まで出て、あとは比較的なだらかな登山道をピラー山頂まで登る。19:08 山頂着。 気温 18℃。

ピラー山頂からは、High/Low Man もはっきり見える。登れなくて残念だったが、 山は逃げない。また来る機会もあろう。こんなに来たいのだから!

時間が遅いとは言え、この時期の英国はまだまだ余裕で明るい。 登山者が二組やってきた(ひと組は、ちょうど High Man を登ってきたらしい)のを 見送って、山頂の風避け石組みの陰でビバークの準備。西の水平線に沈む夕日が 美しい。湖水地方からこれほどきれいに海が見えるとは知らなかった。 空が星で埋め尽くされる前に僕は眠りに落ちていた。

07/16

6時に目覚める。当然、陽はすでに上っている。もう少し……と惰眠を むさぼって 7時に起床。誰もいないピラー山頂での貴重な 時間なのだから、よしとしよう。よく眠れたってものだ。今日も快晴。 スコットランドの山々までよく見える。素晴らしい……。

今日は、Kirk Fell から Green Gable へと稜線沿いに大廻りして、Dubs Beck 川 沿いにゆっくりと Buttermere湖の方に下りていくことにする。Green Gable は、 半年前に来た時、帰りに寄るつもりが、 ガスの中、断念したものだ。今日が再挑戦(?)の日か。

山で泊まると、翌朝は誰にも会わないのが保証できるのがいい。静かな 山行。とは言え、Green Gable に着く頃には、11時すぎ、さすがに それなりに人々に会うことになる。

その後の Brandreth までの山道は人に会うこともほとんどなかった。 マイナーな山なのだろう。確かに特筆するような山ではないし。 ここから乗馬道(Bridleway)までの下降路で途中、道を外してしまった ようで、丘を突っ切ることになったのはご愛敬。それもまた英国の楽しみの ひとつというもの。現在位置は常にほぼ完全に把握していたつもりだから。

こうして、のどかな山歩きの二日目を終えた。帰り道、アレックス(とマイク)の家を 訪ねて旧交を温めあった後、帰路に着いた。天候に恵まれたいい週末だった。


情報編

「ブラック・セイル」ユースホステル

英国ユースホステル連盟のWebページ (http://www.yha.org.uk/find-accommodation/the-lake-district/hostels/Black-Sail/index.aspx) の紹介文は、 Black Sail is a legend, (ブラック・セイルは伝説(のホステル)だ) から始まります。 実際、ブラック・セイル(Black Sail)ユースホステルは、 英国内のユースホステルの中で、ある意味で抜群にすばらしい立地にあります (英国内の他の「人里離れた」ユースホステルのリストは、 http://www.yha.org.uk/inspire-me/wild-and-remote/wildandremote.aspx をどうぞ)。

ほとんどのユースホステルが、当然、車(少なくともタクシー)を横づけできる中、 このブラック・セイルだけは、そういうわけにはいきません(事前に予約確認取れば、 四駆 1台に限って許されるという噂も聞いたが、嘘かも?)。 ブラック・セイルの最寄りの駐車場は、Ennerdale Water 湖近くにあって、標高差 100m、たっぷり 6km 離れています。水平距離的には Buttermere の Gatesgarth駐車場 の方が近くて、3km 程度ですが……、こちらは標高差 320m の登りと 140m の下りの 峠を越えていかなくてはいけないので、時間や体力的には、必ずしも近いわけ ではありません。

Ennerdale Water 湖からの道は、林道または登山道が使えます。 地図を見るにごくなだらかな径のようです。 林道は、ブラック・セイルの管理人のためのものですが、 (オフロード)自転車ならここを走ることはできますから、実質上、 それが最速のアクセスになります — せっかく人里離れた ユースホステルに敢えて速く着きたいと思うのならば、ですが。

そして、ブラック・セイルは、Liza川に沿った Ennerdale 谷の中にあるため、 文字通り、辺りには全く人の気配を感じさせるものがなく、 ブラック・セイルからの眺めは、英国には珍しく、自然に囲まれたものになって います。特に、Ennerdale 谷は、(イングランドには珍しく)ちょっとした 森林になっているので、ブラック・セイルからは森林を眼下に眺め下ろす 風景になります。

ブラック・セイルに一度に泊まれる人数はごく限られます(12人??)。 人気のあるホステルなので、早めに予約を入れておくのが無難です。 一応、立地の条件上、当日、門を叩いた人を断ることはしないそうですが (日本の山小屋のようなもの)、当日客には、多分ベッドなんてないだろう、 と予想します。先方の準備の都合もありますから、緊急事態以外、 事前に予約しておくことを強くお薦めします。

ブラック・セイルの管理人は、朝食後、ホステルを閉めて町に戻り、 夕方に帰ってくるのが普通だと聞きます。つまり、ホステルに早く着いても、 多分、閉まっていて中には入れませんので、要注意(当然、トイレも使えないし、 雨宿りさえ無理そうでした)。

一度はこの伝説のブラック・セイル・ユースホステルに泊まって みたいものですね!

ケジック村

ケジック(Keswick)村は、湖水地方では、アンブルサイド(Ambleside)に次ぐ 登山の拠点村。たくさんのアウトドア店も軒を並べます。中でも、 Needle Sports が クライマーに人気の店。 特に、Webページは 英国最高級の情報量と選りすぐりの品揃えを誇ります。 一方、この店、店構えは実はかなり小じんまりとしていてそう目立ちません。

ケジック村にある Dog & Gun というパブでは、Goulash (肉と野菜の煮込み料理)が 名物。ガーリック・トーストもついてきて、なかなかの量があって、 割と美味。


タイム・テーブル

2006/07/15-16 Pillar @ Lake District 山行タイム・テーブル
時刻 行動 高度(m) (計器|地図) 温度(℃) 歩数(複歩)
表注:
歩数は、その前の項目からの歩数[複歩]、 括弧「(...)」内は予測値。 GR は、Grid Reference Number で、省略時の頭文字は NY。
2006/07/15
(Leicester → Buttermere → Scarth Gap Pass → Black Sail Pass → Pillar)
05:17 Leicester発
06:50 Keele Service着
07:30
09:50 Keswick着
10:44
11:30 Buttermere着
13:25 Gatesgarth駐車場発(GR196150) 120
13:39 四つ辻(GR188148) 140 563
14:13 コル(Scarth Gap)着 440 1265
14:41
15:04 Black Sail YH着 300 910
15:11
15:17 橋(GR197121) 280 305
15:43 峠(三叉路)着(GR192114) 540 940(830/46分)
16:01
16:17 ケルン(分岐; 右側へ) 630
16:45 Robinson's Cairn着 649 882
16:57 17
18:13 岩場発(歩登攀) 1
18:50 主稜線
(10分休)
1
19:08 ピラー山頂 892 18 307
21:05 就寝 18
2006/07/16
(Pillar → Kirk Fell → Green Gable → Brandreth → Dubs Beck → Buttermere → 帰路)
06:00 目覚める
07:00 起床
07:30 11
08:10 892
08:59 峠(三叉路)着(GR192114) 540 2128
09:34
09:50 Sail Beck上部 562
10:03 Kirk Fell山頂着 802 555(1050(→1117)/50分/1km/260m↑)
10:15
10:25 Peak(Kirk Fell東)(GR199107) 786 370
10:44 Beck Headコル(GR205107)
(3分休)
620 730
11:00 Gable Crag横分岐 663
11:14 コル(GR214105) 432
11:19 Green Gable山頂着 801 170(1250(→1263)/32分(→32分)/1.2km/180↑(200↑))
11:37
11:53 コル(池)(GR215115) 660 750
12:02 Brandreth山頂着 720 21 362
12:10
12:16 Stile(交叉点) 313
Stile(交叉点) 60
Stile 45
12:28 Stile(交叉点)渡る 315?
12:56 道(すぐ川渡る) 1050
13:04 Bridleway 225
13:48 Buttermere/Gatesgarth駐車場着 120 26 1543
(以下、車)
15:00頃 Keswick着
19:00過 Ambleside発
22:40 Keele Service発

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まさ