▲欧州的登山生活▲

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第48号: これぞ岩登り伝統登攀の真骨頂! (ローチズ)

発行日
2007/04/24
発行者・筆者
まさ (坂野正明)

まさです。
復活祭の休暇には、スコットランドまで遠征してきました。 英国全土、天候はよかった週末だったのですが、僕が行った スコットランド北西部だけ例外で、「なんでわざわざ行ったの?」 と友人には笑われる始末でした……。 今週末は、(懲りずに?)有給まで取って、コーンウォールの海岸絶壁 岩登りに行ってきます。次の配信は再来週以降になりますが、あしからず。

今回は先の年末に行ったピーク地方のローチズ(Roaches)の 登攀記録を主とします。今回、グリット石のルートの中で、最高の ルートの一つと評価の高いヴァルキリー(Valkyrie)に挑戦しました。 実際、英国登山協会(BMC)のロック・クライミング(指導者)の資格を 取るための標準参考書とされている 本の表紙は、このヴァルキリーを登るクライマーの写真です。 結果、素晴らしい登攀になったものでした。
併せて、登山用語「オンサイト」に ついて解説します。お楽しみあれ。

目次


登山記録編 〜〜 これぞ岩登り伝統登攀の真骨頂! (ローチズ) 〜〜

有名なヴァルキリー(Valkyrie)にチャレンジ! なんだかんだ言っても(難易度は) VS に過ぎない。 僕にとって問題あるはずがない。— と思ったのだ。ところがどうしてどうして、 恐ろしく苦労することになった! (2ピッチに 4時間以上かかった……)

苦労して第一ピッチを終えた後、核心の 第二ピッチ。左にリブ(尾根状の場所)までトラバース して、そこからリブを上に登るピッチ。 行き着くべきリブは見えているが、(最後の)下部で切れ落ちたフェースの部分の トラバースは、どのラインを取るかがはっきりしない。

まず目についたのは中間部。……でも確信が持てない。 少なくとも(ムーブを逆転して戻って来られる)静的なムーブでは できそうにない。では、上部の直接トラバースは? これも同じ理由で結局却下。 ならば、最下部か? 最下部では手のホールドはアンダーカット。だから、 もし足が滑ったらそれまでになってしまう。 目を皿のようにして、手がかり足掛かりを探し出す。極小スタンスがあった。 こいつかな?

その極小スタンスを使いつつ、右手は小さな小石を ピンチしてバランスを維持しながら、 フェースに乗り出していく。遠くの丸っこい足場に左足を届かせる。少しずつ 体重を乗せていく。いいぞ、できる。手がかりを持ち替える。次の ホールドを左手で取る。完了!

そして、易しい数ムーブの後、ついにリブにたどり着いた。トラバース時の 高度感は実に素晴らしかった! 最後の中間支点は、フレークの天辺辺りで、 それは完全に信頼できるものだった。そういう意味では、(落ちても)死にはしない。 しかし、ロープの流れの関係で、その最後の中間支点は かなり後方にあることになって、もし僕が落ちていたら相当大きく振られる ことが不可避だった。まったく、神経が摩耗するトラバースだったってものだ。

これで核心は過ぎた、と一旦は安心しかけた。ところがどうしてどうして。 次のラインがまたはっきりしない。最終的にこちらだろうと判断した ラインもこれまたムーブが見えない。おまけに、リブにロープが擦れて、 登る時のロープ・ドラッグも相当なもの。 不安定な足場の上で……。 再度の悪戦苦闘の末、最終的に何とかリブの基部を越え、 上部までクライミング。登り切る。やった、至福の時!!

このルートは最高に愉しめた。強烈な高度感と、 素晴らしいとは言えないまでも悪くない中間支点。僕は、いくつかの候補ラインから 最善のラインを自力で見つけ出さなくてはいけなかった。これぞ 冒険としての登攀の原点ではないか? 最初は恐ろしく難しく見えたムーブも 注意深く見ることで何とかなることを見つけ出すことができた。というわけで、 大いに楽しめたルートだった。このローチズのヴァルキリーは、今まで僕が登った ルートの中で最高のものの一つだと言えよう。
素晴らしきかな!!

△以上、記録の一部。長文の全文は、以下に載せました。
 http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/record/uk/20061221_roaches.jis.html
なお、これは英語版を先に書いて、日本語版はその翻訳です。 英語版は同ページの先頭からリンクが張られています。


登山ミニ知識編 〜〜 オンサイトの意味 〜〜

「オンサイト (on-site)」という言葉を聞いたことはありますか? フリークライミングの話ではよく登場します。例えば、世界的クライマーの 平山ユージ氏がどこそこのオンサイトにチャレンジした記録のテレビ番組が 放映されたこともある、と聞きます。尾瀬あきら作の漫画の題にも なっていますね。

登山の原点は、今までに誰も登ったことがない山を登ることにあり ましょう。もちろん、飛行機やヘリで頂上に着陸したのでは登った ことにはならなくて、やっぱり下から自分の足で登って初めて 「登山」と言えます。今までに誰も登ったことがないのだから、たとえ ばどこが危ないとかの情報も原則ありません。せいぜい、下から 双眼鏡で観察するくらいのもの。ましてや、たとえば槍穂の縦走路の ように、途中で鎖があったり梯子がかかっていたりもしません。

こういう登山の原点の流れをそのまま汲むのが、「オンサイト」で す。つまり、誰かがあつらえてくれた事前の準備(梯子とか)はなく、 それだけでなく事前の(例えばどこが危ないとか、何の道具が必要と か)情報も無く、あるルートを登ることを「オンサイト(on-site)」 と言います。今の時代、登るのは山頂である必要は全然なく、新し いルートでも十分ですし、あるいは誰かがすでに登ったルートであっ ても、登る人(またはパーティー)自身がそのルートについて全然知らず、 誰の助けも借りないなら、それは「オンサイト」と見なされます。 現実には、フリークライミングであるルートをオンサイトした、と 言った時には、もしポピュラーなルートなら、そのルートは今まで に何百、何千という人によって登られている、ということは珍しくありません。

実際には、フリークライミング、特にスポーツクライミングでは、 「オンサイト」の意味が異なってきています。 その解説はまたの機会に譲ります。ただ、 「オンサイト」の精神は上に述べたことにあるのには変わりありません。


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次回予告

次回は… 「新春の英国最高峰北壁登山」

See you later!


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