▲欧州的登山生活▲

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第81号: 徹夜奮闘の雪上岩登り (ピラー・ロックス) (前編)

発行日
2008/10/06
発行者・筆者
まさ (坂野正明)

まさです。
今回は、4月中旬に行った湖水地方登山の記録を主とします。 パートナーは、第77号から 3部作で お送りしたスコットランドの「風雪のフォースト・ビバーク」で 一緒したクローディア。今回は楽な山行にしたいね、と話し合って いたものでしたが……さてどうなりましたか。

あわせて、登山/登攀に使われる技術英単語の紹介も書き始めました。 お楽しみ下さい。

目次


登山記録編 〜〜 徹夜奮闘の雪上岩登り (ピラー・ロックス) (前編) 〜〜

目指すのは、ピラー・ロックス(Pillar Rocks)のうちのハイ・マン(High Man)、 イングランドで唯一、登攀無しには登れない山頂。 そこを、 有名な New West Climb 経由で登る (VDiff または Diff)。 僕はほぼ一年前に登って (第63号)、楽しかった記憶も新しい。

登山道からやがてハイ・マンのルート取付に 近付く。げっ、結構、雪が積もっているではないか。おまけに雪が少し 降っているし……。僕らはもちろんピッケルやアイゼンはない。 今日は完全な岩登り仕様。 しかも僕は合羽のズボンを忘れてきた! 何とかなることを願う。

登り始めたのは 15:15 (遅い!)。 4ピッチ、4時間はかからないだろうから、何とか日のあるうちに 登って降りられるだろう。 易しいルートだから。 雪がついているのが気になるが……。 気温 1℃。

クローディアのリードで登攀開始。 やはり雪がついているのが嫌らしいようで、時間がかかっている。 僕が第一ピッチのフォローを終了した頃には、きっかり 1時間かかっている。 これは頑張らないと。

第 2ピッチ。 リードの クローディアがアレットの向こうに 消えてから結構時間が経っている(速く登ろうよ!)。
突然、叫び声が聞こえる。これは! 瞬間的にザイルを少し引いて待ち構える。 次いで衝撃。墜落だ。

「大丈夫?! 怪我は?」
ややあって、返答
「うん、大丈夫。ちょっと打ったくらい。怪我はないわ。」
よかった!
「大丈夫? まだ登れる?」
「大丈夫。いける。でもちょっと休ませて。」

そして長い確保の後、ようやくビレイ解除のコールを聞く。ほっ。
僕がフォローしていくと、これは……、ルートを外している! 道理で少々難しかったわけだ。 おつかれさまだった。

僕がフォローを終えた段階で 19時頃。暗くなりかけている。 早くしないと本当にまずいわ、とクローディアは本気で心配している。当然。 ここから懸垂下降で撤退する手もあるにはある。しかし懸垂するなら、できたら 頂上まで登ってからの方がいい。確保支点がはっきりしていて、 下降先も見えるから。 ただし、すでにルートを外していて、頂上までどれだけあるのか 分からないのが賭けになる。 賭けよう!

リードはもちろん僕。墜落後、 よくぞ登ってくれました。おつかれさま、クローディア。 僕はクライミング・シューズに履き替えて、手袋も脱いで本気モード。 もし 15分トライして埓があかなければ、そこから懸垂下降で撤退する、と合意。 だから何も恐れることはないよ、と抱きしめて軽く頬に接吻して、 いざリード開始、19:20。

最初の取付でちょっと戸惑うも左、右、と試して無事越える。 そのままぶっ飛ばして登っていく。「5分!」の声を聞く。あと 10分。

上に壁が見えて、その向こうが見えない。つまり運がよければそれが頂上だが……? 「10分!」の声を聞く。 その壁に支点をセットして、壁を登る — 頂上だった! すばらしい! 間に合った!
手早く確保支点を取って、「ビレイ解除! 頂上だよ!」

クローディアも難なくフォローしてくる。
「『ビレイ解除』を聞いて、あとどれだけあるのかと思ったら、 『頂上だよ』って信じられなかったわ。速いリード、お見事!」
「どうぞ 1分だけ、この(夕暮れの)風景を楽しんで! これが君に見せたかった光景なのだから。」
「うん、素晴らしいわ!」

今日、頂上はもちろん、登攀中も、どころかアプローチ中も 誰一人見かけなかった。湖水地方の最上の場所という認識を新たにする。 しかし、日没を過ぎた今のこの状況は一刻も速く脱して まともな登山道に着かなければ!

(つづく)


登山ミニ英語編 〜〜 登山/登攀の技術英単語 (その一) 〜〜

今回から、折に触れて、登山、登攀に使われる英単語を紹介していきます。 実は、標準訳語が英語そのまんま、というものも少なくありませんが……、 その場合は、もう少し丁寧に述べていく所存です。

  • party(ies): パーティー。ある山行、ルートを一緒に(協力しあって)登(ってい)る仲間、一団、部隊、グループ。
  • (climbing) rope(s): ザイル、ロープ。登攀では、通常、直径約 1cm、長さ 20m〜60m のものが使われます。「ザイル」は独語由来 (独: Seil)。
  • belay [動詞/名詞]: ビレイ(ビレー)、確保。ザイルを頼りに道具(または人体)を用いて、登って(降りて)いる人が落ちた時、その墜落を止められるようにしておくこと。またその確保支点。
  • belayer(s): ビレイヤー、確保者。確保する人。
  • ropework: ロープワーク、ザイルワーク。ロープ(ザイル)を用いて結び目を作ったり、確保したりする所作。

△以上、以下の「登山ミニ英語編」にも載せました。
 http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/lang/english.html#climbing-technical


Webページ更新情報


次回予告

次回は… 「徹夜奮闘の雪上岩登り (後編) 〜〜 切るや切らざるや」

See you later!


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