△第90号: 極端登攀の壁 (スタニッジ・エッジ)
- 発行日
- 2009/05/07
- 発行者・筆者
- まさ (坂野正明)
まさです。
先週末、 前号で出てきたミルストーン・エッジに
行きました。岩場で先着の友人連中のところに着いて、 手始めにこのルートをフォロー
しなよ、と薦められたルートを登ったところ……何度も落ちる 羽目に。 リードした彼は、僕が苦闘した後になって、
自分ならこのルートをウォーミング・アップには選ばんねぇと、 にやりとしていました。薦めたのは誰だぁ、と
突っ込みどころ満載。殺生な野郎です(笑)。
さて今回は、僕のクライマー人生の中の一里塚となった日の 記録を主とします。一足とびに難しい難易度に挑戦したものです。 あわせて、 岩登り難易度の感覚 (その五) の解説もしています。 お楽しみ下さい。
目次
登山記録編 〜〜 極端登攀の壁 (スタニッジ・エッジ) 〜〜
スタニッジ・エッジにて。 気楽な一日のつもりの今日。ところが…… Black Hawk の垂壁 がどうも気になる。 なぜか登れそうな気がするのだ。 中でも、 Black Hawk Bastion にそそられる。E3 5c!
僕は、未だ Extreme (極端に厳しい) の難易度のルートは一つもリードしたことがない。 人口壁の難易度をそのまま屋外に換算すれば、僕は E4 くらいまで なら登れておかしくないはずなのだが……、 現実には、不本意ながら HVS でさえしばしばクリーンに登れない ことが続いていた。 ようやく安定してきた最近、 Extreme に、それも一足とびに E1 を超える Extreme に 挑戦できそうな気がしているのだ。
そしてこの Black Hawk Bastion。 核心は下から見ても明らか。ルーフから左上方へ抜けるところ。 E3 ながら登れそうな気がする! 右から左から……と丁寧に 検分後、決断、登ることにする!!
ルーフ直下にたどり着く。 立派な中間支点を極める。 次が核心。右手のいいホールドが無いのが嫌らしいところ。 だからこその 5c にせよ。
よくよく目を凝らすと 前の壁の細いクラックに(右手)指先がかかることが判明。 これは都合いい!
トラバース時のスタンスを再度確認して、 いざ核心のムーブへ。右足左足と伸ばしてスタンスを取り、
さらに体を左に振って、左側のカンテを取りに行く……取れた。 思った通り、かかりは悪くない。上に滑らせてさらに安定させる。
右手を合わせる。いける! 両足が離れる……素早く壁を歩いて、 両手を引付ける。上のホールドを取る。登る、登る。
そして上のレッジに着いた、やったぁ! 核心を越えた!!
思ったよりさえ、簡単だった。上部を慎重に登って、完了。感無量。
こうして今日の日は、僕のクライマー人生の中で、記念すべき一日と なった。 Extreme が登れれば世界がぐっと広がる。 今後が楽しみだ!
△以上、記録の一部。全文は、以下に載せました。
http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/record/uk/20080726_stanage.jis.html
登山ミニ知識編 〜〜 岩登り難易度の感覚 (その五) 〜〜
(第89号「岩登り難易度の感覚 (その四)」からのつづき。)
http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/trivia/climbinggrades.html#gradesrockclimbing_uk
にて解説したように、英国の難易度(のうちの形容難易度)は、 HVS までは通常の言葉、つまり形容詞の苦心の(?)組合せで
表されています。しかし、ある難易度、つまり "Extremely Severe" (極端に厳しい)から
上になると、ネタが尽きたのでしょう、E1、E2 などと数字も 組合わせて難易度表記されます。VS または HVS が最高難易度だった
昔はそういう問題はなかったのが、クライマーの 水準が向上した結果、「最高の」難易度の中の差が大きくなり
過ぎたのが問題になったということだと容易に推測できます。
だから、"Extremely Severe" の難易度とされる ルートは、昔なら最高級に難しいとされていた(だろう)もの、 もしくは単に不可能だったものです。 (フリー)クライミングの用具が発達して昔よりずっと安全にまた容易に 登れるようになり、また技術水準の向上も目覚しいとはいえ、 昔なら全国的に一流のクライマーでも登れるかどうか、という 難易度のルートを登るのは、現代の日曜クライマーにとって 厳しい挑戦になるのは当然のことです。
というわけで、E1 が岩登りの英国難易度の中で 最大の壁だと言う人が少なからずいます。少なくとも精神的には それは的を射た表現でしょう。 実際、この "Extremely Severe" をリードするのは、 現代のクライマーにとっても、一つの、あるいはしばしば最大の一里塚に なります。生涯記憶に残るような。 E1 ともなれば、運で登れる難易度ではありませんから。 (例外はあると稀に聞くものの)才能だけで登れる難易度でもありません。 だからこそ、E1 をリードする気になるほど上達している、という 事実ひとつを取っても、その人がそれまで相当の時間と努力とを クライミングに費やしてきたことは疑いありません。 一里塚になるのも道理です。
ただし、 前号で解説した ように、(E1 の下の) HVS は非常に幅の広い難易度のため、 HVS の中の難しいものは E1 と大きく重なっている様子です。 なので、HVS を確実に登れる人なら、E1 の全てとは言わないまでも 大半を登ることができるでしょう。一方、HVS のうちで易しいものは 運や才能でも登れてしまえるので、そこが違いです。
そういう意味で、「HVS をリード(したことがある)」と 「E1 なら大抵リードできる」との間には、非常に大きな開きが あります。 一方、E1 から上は、しばらく難易度間の開きが小さくなります。 「E1 なら大抵リードできる」人は相当の数の E2 をリードできる でしょうし、E3 でもリードできるルートがそれなりにありそうです。 また、E1 を登れるくらいまで努力した人ならば、その努力を 継続していくことで自然に難易度の階段を上がっていくという 側面もあるため、E1 から E3 や E4 への上達は比較的自然に進むようです。
(つづく)
Webページ更新情報
- この記事は、以下にも載せました。
http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/magazine/backnumber/eu090.html - この月に行った Glyders、Dovedale、Wildcat の登山の記録を以下に載せました。
http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/record/uk/20080718_glyders.jis.html
http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/record/uk/20080723_dovedale.jis.html
http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/record/uk/20080724_wildcat.jis.html
次回予告
次回は… 「英国湖水地方で沢登り入門」
See you later!
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