△第102号: 英国随一の本格的登山ルート
- 発行日
- 2010/09/29
- 発行者・筆者
- まさ (坂野正明)
まさです。
今年の日本は、9月に入っても残暑がことのほか厳しかったと聞きます。
英国では、からからに乾いて始まった夏の後半から現在に至るまでひたすら雨で、 長袖で過ごすのが当たり前でした。週末ごとに雨なのは
うんざりでした……。 欝憤をはらすべく、来週から 2週間半、 アルプスはシャモニー谷へ登山に出かけます。お天道さま、よろしく!
そんな夏の最中、グループで岩登りに出かけた時、同行した友人が、 (イギリスで名声を馳せている)中嶋徹さんが英国登山協会主催の 昨春のクライミング週間に訪英した時に 一緒に登った、と言っていました。クライマーの世界は狭いですね。 友人自身、F8a+ (5.13c) まで登る強者ですが、 中嶋徹氏のクライミングには感心していました。
さて今回は、英国随一の本格的登山ルートとして名高い、ベン・ネビス山の タワー稜(Tower Ridge)を昨年の復活祭の休暇中に登った時の記録を 主題とします。600メートルのナイフリッジのルートです。 難易度は夏ならば Diff (UIAA II級くらい)とはいえ、 雪と氷のついた状況では 相応に厳しいルートになります。ガイド本には「ビバークを 余儀なくされるパーティーも少なくない、侮るべからず」とあります。 また、 神奈川県の下山家さんから頂いたお便りへの 御返事のつづきも書いています。 お楽しみ下さい。
目次
登山記録編 〜〜 英国随一の本格的登山ルート 〜〜
今年の復活祭休暇は、英国最高峰ベン・ネビス(Ben Nevis)山へ北壁の冬季登攀に、 グレアムと。 一日目は、Good
Friday Climb
を無事完登。 ちなみに、 2年前に
同じグレアムと一緒に来て目指すも、時間の関係で近くで相対的に易しい Gardyloo Gully
を登ることに結局なってしまって、爾来、再来を期していた、 という因縁のルートだった。 余談ながら、その時のもう一人のパートナーの
ベン・H は、その後、英国軍に入ってアフガニスタンにも派遣され、 銃弾飛び交う戦場も経験したと聞く。ところが、 ベン・H
は、アフガニスタンの戦場よりも Gardyloo Gully
の方がよっぽど怖かった、と後に聞いた……。ベン・ネビス山、恐るべし!?
さて三日目、 英国冬期登攀ルートとしおそらく最も名高い Tower Ridge を 目指す。600メートル、難易度 IV 3。難易度が示す通り、技術的には そう難しくないものの、高度感あふれるトラバースが延々と続き、 5時間〜6時間が標準タイム。英国随一の山岳登攀ルートだ。
4月中旬現在、暖かくてコンディションがちょっと安定していないが、 (氷壁ルートなどと違って)稜線ルートの Tower Ridge
なら、大きな問題にはなるまい。 また、4月の今、日照時間が長いのも保険になる。やらいでか。
04:45 出発。ルート取付を 6時発。
まずは雪が少ない岩場をソロでかっ飛ばす。 技術的に易しいとはいえ、高度感には事欠かないので慎重に。 しかし、じきに岩上に張るベルグラにぶつかった。 クランポンの出番だ。 クランポンをつけるやいなや、足元が急にしっかりするのが感じられる。 やがて、切れ落ちる強烈な高度感に足が震える Eastern Traverse に。 万一、落ちた日には 200メートルくらい? 十分な雪があるので、ピッケルを雪中に深くさしこみながら、ソロで 一歩一歩慎重に。
そして、核心の Tower Gap。3メートル垂壁を降りて、その後、 登り返す場所だ。ここではじめてザイルを出した。 僕のリード。リーダーとしては下降は精神的には悪くない。 上から確保されている形になるから。 一方、登り返すのが、精神的にはきつい。ザイルの流れを考えると しばらく中間支点は取れないから。幸い、登り返す方は技術的には 易しく、問題なく上まで登り切った。グレアムも易々とフォロー。
この後、再びソロで、頂上稜線まで登り抜けた。 なんと、3時間で登り切ってしまった。 予想外のスピード!
それにしても、高度感と緊張感とが持続する素晴らしいルート! 今まで英国で僕が経験した山岳登攀の中で最高のルートだった。
もう少し見晴らしがよければ言うことがなかったが、 それは贅沢と言うものか。
4月中旬の今回、コンディションがどうなるか、と賭けだったが、 結果的にはすばらしい復活祭雪山山行となった!
△以上、記録の一部。全文は、以下に載せました。
http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/record/uk/20090409_bennevis.jis.html
おたよりへの御返事 〜〜 イギリスの山岳会とヒュッテ 〜〜
神奈川県の下山家さんから頂いたお便り(第97号)への 御返事のつづきです。 前号で、イギリスの山岳会所有の ヒュッテについての一般的な話を書きました。 今回は、具体的な例を挙げます。
僕の所属している ボウライン登攀会(Bowline Climbing Club)は、レスター県のクライマーの集まり(の一つ)で 現在 100人あまりのメンバーがいます。北ウェールズの スノウドニアの一角、レスターから車で 3〜4時間の場所にヒュッテを一軒、 保有・運営しています。ちなみにスノウドニアは湖水地方と並んで、スコットランド の南では最大の登山メッカです。同ヒュッテは、その登山基地ハンベリス村まで 車で 5分、隣村のはずれにあります。 定員12人です(定員は、法定火災基準によって制限されているようです。 寝室つまりベッドのスペース的には、倍の人数は泊まれるので、少し勿体ない……。 もし多くの人数が押しかけた時には、ヒュッテの周りに天幕を張るのが通常です)。
当然、車を横づけできて、電気・ガス完備で、全館暖房もシャワーもありますし、 蛇口をひねるとお湯が出ます。台所は、四つ口コンロ2台、シンク二個、 オーブン、グリルなど大抵のものは揃っています。 寝室の寝棚には、(どこから入手したのか知りませんが)潜水艦のベッド用の 狭いマットが敷き詰められています。加えて、ソファもある巨大な リビングルームがあります。
参考までに、同ヒュッテの写真は以下から見られます。
http://www.bowline.f9.co.uk/hut.htm
http://www.flickr.com/photos/alpiniste/sets/72157624934226689/
(つづく)
Webページ更新情報
- この記事は、以下にも載せました。
http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/magazine/backnumber/eu102.html
次回予告
次回は… 「本格的ヘッドポイント初体験 (チャーンウッド石切場)」
See you later!
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