[Japanese / English]
総括
- 山域
- Peak District/Stanage Edge
- 参加者
- アンディ・Ri、テリー、スティーブ・B、まさ、(ダンケン)
- 期間
- 2008/07/26 (日帰り)
Stanage Edge/Popular (以下、リンクは rockfax.com へのもの)- Manchester Buttress Area/Manchester Buttress (15m HS 4b); Leader まさ (OF), 2nd アンディ、スティーブ、テリー
- Black Hawk Area/Black Hawk Bastion (16m E3 5c); Leader まさ (OF), 2nd アンディ、スティーブ、テリー、アンディ、テリー(以上、全員失敗)、(通りがかりの 50代クライマー)ダンケン
- Mississippi Buttress/Mississippi Buttress Direct (22m VS 4c); Leader テリー (OF), 2nd スティーブ、アンディ、まさ
- Pebble Area/The Pebble/Delivarête (Sit start) (V4 (6b)); 成功 テリー、まさ
- Pebble Area/The Pebble/Pebble Flakes (Pebble #4) (V1 (5b)); 成功 テリー、アンディ、スティーブ、まさ
- Pebble Area/The Pebble/Thin slab (V5 (6b)); 全員失敗
- Pebble Area/The Pebble/Pebble Arête Left Hand (V3 (6a)); 成功 まさ
様式: AL = 交互リード, MT = コンテ, O(s) = オンサイト, F = フラッシュ, (A) = (助言少々), G = グラウンド・アップ, Hp = ヘッド・ポイント, D(og) = ザイルぶら下がり, E(s) = 諦める/エスケープ, C(d) = クライム・ダウン
- 天候
- 晴 (25℃@15:00, 27℃@15:50, 21℃@19時頃)
登山編
アンディと、アンディがフォンテンブローで知合ったという、テリーとスティーブ と一緒に、ピーク地方はスタニッジ・エッジで登る。テリーは、1年半前頃に クラミングを始めたというが、もう Extreme も登り始めているようだ。わぉ。 とは言え、岩登りの聖地ここスタニッジ・エッジに来るのは初めてだという。 晴上がった今日、温度が高いと言う意味で岩登りに最高のコンディションとは 言えないが、気持ち良く登れそうだ。
ならば、 Popular から始めないといきますまい。 適当に立ち止まって候補を見繕う。 僕が自らの経験からお薦めしたいところだが……、スタニッジ・エッジは 広大過ぎて、僕も有名なルートで登っていないのが五万とある。 ガイド本を見ながら、 Manchester Buttress (HS 4b)、 Crack and Corner (S 4b) あたりに当たりをつける。いずれも三つ星ルート。 すぐ左手の Black Hawk Area の顔つきもなかなかいい……が、ちょっとハード。
僕がアンディの確保で前者をリード、同時にテリーが後者をリードする。 Manchester Buttress は、アレットからスタートする。 途中で一旦、左に回り込んでからもう一度、アレットに戻ってきて、 高度感を楽しみながら、フィニッシュ。 確かに素晴らしい HS のルートだった。三つ星も頷ける。 アンディの後、先に隣のルートを終えたテリーとスティーブもフォローする。
さて、次は何を登るか? すぐ左手の Black Hawk Area がどうも気になる。ハードではあるが……、登れそうな気がするのだ。 中でも、 Black Hawk Bastion にそそられる。E3 5c! ガイド本によれば、「Essential E3 tick」。
僕は、未だ Extreme のルートは一つも登ったことがない。 以前から登りたいとは思いつつ、しばしば HVS のルートでさえ クリーンに登れない状態がこの 2年ほど続いていた。 僕は、屋内なら F7a までオンサイトしたことがあるし、F6c なら 大抵オンサイトできる。それをそのまま英国技術難易度に換算すると、 6a、つまり E4 程度までなら登れておかしくないはずなのだが……。 実際、4月には友人の スティーブ・Eとジェマーとが E2 をリードしている。僕は 彼らよりは少なくとも 1グレード、おそらくは 3グレードくらい 上を登れるはずなのに……。
一方で、Extreme と HVS とのギャップが、英国の難易度の 中で最大の開き、だという説を目にする。僕自身はどうも そうは思えない。むしろ、HVSを完璧に登れるクライマーなら、 E1 どころか E5 でも半分くらいのルートは登れてもおかしくない気さえする。 ……しかし、Extreme を(リードで)登ったことの ない以上、僕に否定する資格はない。
HVS で長く足踏みしている僕としては、今や E1 ではなく、 少なくとも E2、できれば E3 か E4 を最初の Extreme のリードと したい、というのが最近の気分になってきている。 最近は、ようやく、HVS をおおよそ問題なく登れるようになってきた。 ここ半年でクリーンに登れなかったのは、
- The Peapod (HVS 5b; 2月, 休み 1回)
- Suzanne (HVS 6a; 5月, 諦める(クリーン))
- Orpheus Wall (HVS 5c; 5月, 墜落→諦める)
- Dead Eye (HVS 6a; 5月, 諦める(クリーン))
くらいで、いずれも HVS としては非常に困難なルートだ。逆に言えば、 通常の HVS はほぼ問題なく登れるようになってきた。 今なら、Extreme に挑戦できそうな気がしているのだ。
そしてこの Black Hawk Bastion。 核心は下から見ても明らか。ルーフから左上方へ抜けるところ。 E3 だが……登れそうな気がするのだ。 何より、核心前に十分な中間支点が取れるのが下から見て明らかなので、 危険は限られる。右から左から……と丁寧に 検分後、決断、登ることにする!!
ルーフまではコーナーのクラックを登っていく。 予想通り、そう難しくない。 ルーフ直下にたどり着く。ルーフの右端、下から延びてくるクラックの 上部に立派な中間支点を取る。ここから 2メートル、ルーフに沿って トラバースして、最後、左上方に抜けるのが核心だ。左手にはいいホールドが あるが、右手で右から取れるいいホールドが無いのが嫌らしいところ。 もちろん、だからこそ 5c なのだろうが。
下から見た時には分からなかったが、その場にたどり着いてみると、 前の壁の細いクラックに(右手)指先がかかることが判明。
これは都合いい! トラバース時のスタンスを再度確認して、 いざ核心のムーブへ。右足左足と伸ばしてスタンスを取り、
さらに体を左に振って、左側のカンテを取りに行く……取れた。 思った通り、かかりは悪くない。上に滑らせてさらに安定させる。
右手をマッチさせる。いける! 両足が離れる……素早く壁を歩いて、 両手を引付ける。上のホールドを取る。登る、登る。
そして上のレッジに着いた、やったぁ! 核心を越えた!!
思ったよりさえ、簡単だった。クラックに指先がかかったのが 大きかったか。両足が離れたのはちょっと頂けないが、 手のホールドは完璧だったから、まぁ、よろしかろう。
十分な中間支点を極めて、上部に目をやる。 必ずしも易しくないフェイスのクライミング。 ここで落ちたら目も当てられない。 慎重に登るべし。5a くらいか? ……そして登り切った! 感無量!
確保支点を極めてから、「レスターから、まさ!」と叫ぶ。 なぜ? 登る前に、テリーに叫ぶんだよ、と言われたから。あはは。
3人がそれぞれフォローしてくる。いや、フォローしようと努力するも、 皆、核心のムーブで落ちた。オーバーハングなので、そこで一旦落ちれば、 岩には戻れず、ロワーダウンするしかない。 アンディーとテリーとは 2回挑戦したが、いずれも成功せず、 ロワーダウンと相成った。
その間、隣のルートで確保していた人(ダンケン)と会話を交わす。 「見事なリードだったよ」「ありがとう」と。 50代のダンケンは 20年前にこの Black Hawk Bastion を登ったことがあるという。 僕の相棒が誰も登り切れず、上部の中間支点が残ったままだったので、 ダンケンに登ってきてもらって、支点を回収してもらうことにする。
ダンケンはこれほどのルートは、久しく登っていないのだろう。 核心付近で落ちたが、とは言え、岩に戻れる程度まではすでに 体をせり上げてきていた。2、3度、ザイル頼りに休みを入れながらも 上まで登ってきて支点を回収してきてくれた。サンキュー、おつかれ! ダンケンも随分と楽しんだようで何よりだった。
こうして、無事、僕の初めての Extreme のリードを オンサイト・フラッシュ (onsight flash) で成功させることが できた。大満足だった! 今から考えるに、「Extreme と HVS とのギャップが、英国の難易度の 中で最大の開き」という説は一理あるかも知れないと思う。 つまり、僕が E3 をリードできたのは、HVSとのギャップが 少ないと言うより、E1 と E3 との開きが少ない、というべきなの だろう。HVS という難易度の中の開きが極端に大きいため、 難しい HVS は、E1 (どころか E2?)と遜色無い、というだけなのだと思う。
その後は、テリーが Mississippi Buttress Direct (VS 4c) をリードして皆でフォロー(僕は 2004年に オンサイト・フラッシュしたことがある)。 さらに、Stanage Plantation に場所を移して、The Pebble で しばしボルダリングに興じた。20℃を大きく上回る温度だったのに、 V4 の Delivarête (Sit start)、 V3 の Pebble Arête Left Hand を登れたのは我ながら嬉しかったものだった。
こうして今日の日は、僕のクライマー人生の中で、記念すべき一日と なった。 2年前、 アダム・H がそれまでの難易度 VDiff から一気に HS までリードした時、 ガイド本を見ても登れる可能性があるルートの数が一気に増えた、 と感激していたのを思い出す。今、僕も同じように感じるものだ。 実際、ここしばらくは、E1 とかなら登れそうな気がしても、 遠慮していたものだったが、今後は遠慮無く登れる、というものだ。 まだ E3 だとルートを選ぶ必要があるだろうが、 E1 ならきっと大丈夫だろうという気がするし。 特に、ピーク地方の石灰岩地帯だと、Extreme が登れると世界がぐっと 広がる。今後が楽しみだ!
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まさ