2008/10/30--11/03 北ウェールズ・スノウドニア登山記録/感想文 (by まさ)

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総括

山域
North Wales/Snowdonia/Llanberis Pass/Carreg Wastad, Tremadog
参加者
クローディア、アンディ・Ri、ルーク、まさ
期間
2008/10/30--2008/11/03 (4泊5日)
(以下、リンクは特記しない限り ukclimbing.com へのもの)
  • 2008/10/30 Leicester ...(車)... hut
  • 2008/10/31 hut ...(車)... Tremadog ... Craig Bwlch y Moch ...(車)... hut
    1. Grasper Area/Valerie's Rib (HS 71m (10m, 34m, 27m)); Leader ルーク (OF; 1-pitch目半ばで Gilljo (VD) にオフルート; 上まで 2ピッチで登り切る), 2nd まさ
    2. The Fang Area/The Fang (HVS 61m (24m 5a, 37m 5a)); Leader まさ (OF), 2nd ルーク
  • 2008/11/01 hut ...(車)... Llanberis Pass ... Carreg Wastad ... Stack ...(車)... hut
    1. Ribstone Crack (VS 52m (34m 4c, 18m 4a)); Leader まさ (OF), 2nd アンディ
  • 2008/11/02 hut ...(車)... Tremadog ... Craig Bwlch y Moch ...(車)... hut
    1. Plum Area/The Plum (E1 5b 42m); Leader まさ (OF), 2nd クローディア
    2. Vulcan Wall/One Step in the Clouds (VS 69m (27m 4b, 27m 4c (決定版ガイドでは 2ピッチに分かれる), 15m 4b); Leaders (AL, OF) クローディア (1,2-pitchesを 1ピッチで), まさ (3,4-pitches を 1ピッチで; Hail Bebe (VD) にオフルート)
  • 2008/11/03 hut ...(車)... Llanberis ...(車)... Leicester
様式: AL = 交互リード, MT = コンテ, O(s) = オンサイト, F = フラッシュ, (A) = (助言少々), G = グラウンド・アップ, Hp = ヘッド・ポイント, D(og) = ザイルぶら下がり, E(s) = 諦める/エスケープ, C(d) = クライム・ダウン
宿泊
幕営 (Bowline Climbing Club hut)
天候
  • 2008/10/30 曇一時雨
  • 2008/10/31 晴一時雨 (13℃@10:45, 17℃@13:00, 8℃@17:00)
  • 2008/11/01 雨後曇 (7℃@12:00, 8℃@16:10)
  • 2008/11/02 晴 (11℃@11:30, 8℃@16:00)
  • 2008/11/03 晴

登山編

クローディア、アンディ、ルークと共に ハンベリスの Bowline CC の山小屋を拠点にして 3日間の登山。 アンディもこれをきっかけに Bowline CC に加わることになった (山小屋のメンバー割引がある!)。

10/30

いつものドライブ。

10/31

天候がちょっと怪しいもので、西海岸のトレマドッグ(Tremadog)に 行くことにする。スノウドニアの山々に雨が降っている時も トレマドッグはしばしば大丈夫だから。 そして……期待通り、大丈夫だった! 人々がトレマドッグを 好む理由も分かるというものだ。

ちなみにトレマドッグは、英国にて僕が初めて泊りがけで 来た岩場だ(2001年!)。 とはいえ、それ以来、訪れたのは 1年半前の 1回 (登ったのは 1ルートのみ!)……。再訪が楽しみだった。

僕はルークと組む。ルークのリードで 1本、2ピッチで ルートを登った後、Joe Brown の古典ルート The Fang (HVS 5a,5a) をリードする。 1ピッチ目、ガイド本通りハードながら HVS、問題なく登り切る。 確保点の高度感がすばらしい! 切れ落ちた垂壁にほぼ爪先だけで立つレッジ! 2ピッチ目用の最初の中間支点を取って、クライムダウンしておく。 もし(難しいと聞く) 2ピッチ目の最初で落ちれば、正真正銘の墜落係数 2に なってしまうので、その予防のために!

そして 2ピッチ目。確かに取付きが難しい。バランスと指の力とのムーブ。 中間支点を取っておいて本当によかった! なんとか越えて、左にトラバースしてからスラブを上に登る。 スラブでは中間支点が心許なく、クールな頭の勝負。 スカイフックまで登場する次第。 慎重に上まで登り切る。

素晴らしいルートだった! ただし、HVSとしては相当にハードでシリアスだと思う。 特に、2ピッチ目の最初である核心では、墜落係数 2になりかねないし。 経験と技術両方が要求されるルートだった。

ルークは、2ピッチ目の最初で猛烈に苦労していた……。 最近は VSをどんどんリードしているルークだが、 曰く「これが HVSかぁ!? 俺、HVSをリードなんて永久に無理だよ!」 と。 いやいや、これは HVSとしてもハードだと思いますよ、ルーク! 登り続けるのみ。いずれ HVSを登れるようになりますって!!

11/01

South side of Llanberis Pass in late autumn

ハンベリス・パス南方の晩秋

今日の天気は何とかなりそう。というわけで、 Llanberis Pass の方に出かけることにする。 同エリアはウェールズの岩登りのメッカながら、 僕の経験はごく限られる。 Clogwyn Gafr (Craig Fach) でいずれも雨がちの 日に登ったことが二度 (2005/032007/11)、 半年前に Craig Ddu で 1ルートだけ登ったことが一度あるに過ぎない。 スノウドンやグリデールの山域にあるため雨がちで 登る機会が限られ、また相対的にハードなマルチピッチが多い、 つまりパートナーを選ぶ必要があるなどの理由がある。 だから、今日、登れるものなら Llanberis Pass は歓迎、という次第。 今日の天気はあくまで「何とかなりそう」という程度なので、 道から近い Carreg Wastad に行ってみることにする。楽しそうな E2 のルートに目をつけておく。

Llanberis Pass 方面に車を駆っていくと……、山の上の方は 雪をかぶっているではないか! げっ……。下界での雨は上では 雪だったというわけか。幸い、岩場はぎりぎり雪のラインの下に あるので、何とか登れそうだ。とはいえ、ところどころ濡れている 様子が伺える。E2 はアウト。もっと易しいルートを選ぼう。

今日は僕はアンディと組む。昨日、僕とのタフなクライミングでルークが ちょっと参ったようで、アンディがまさと登るべきだ、と主張した 次第。。。(自然の岩場ではルークの方が圧倒的に経験豊かなものの、 人工壁ではアンディの方が登れる、つまりセカンドならば(加えて クラックのルートでなければ!)アンディの方が登れる)

ルークとクローディアは Severeの Crackstone Rib を選び、 僕とアンディとはその横の VS の Ribstone Crack を選ぶ。僕のリード。クラックの第1ピッチが楽しいこと! レイバック、ジャミングからニーバーまでテクニックの オンパレード! 自然の岩場ならではのルートだ。 4c (5a に近いか) が後から後から続き、VSとしては相当ハードだと 感じる。

アンディにとっては不得意なタイプのルートだろう。 とはいえ、苦労しながらも墜落することなくフォローしてくる。 ずっと易しい 2ピッチ目を無難に登って、ここで今日はお開きとする。 太陽は出ていないし、寒かったのが難な一日だった……。

ちなみに、同じ山小屋に来ていたブライアンとアンディ・Ra とは、 この日、トレマドッグの方に登りに行っていて、トレマドッグは一日、 晴れていたそうだ。選択を誤ったか!

11/02

Craig Bwlch y Moch in autumn

秋のクライグ・バルホ・エ・モッホを登るクライマー

昨日に懲りたもので、今日はおとなしくトレマドッグを選ぶ。 Craig Bwlch y Moch。 一昨日にルーク、昨日にアンディと組んだ僕は、今日は クローディアと。42m の E1 5b The Plum を選んで、僕がリードする。 ルークとアンディとはすぐ隣の Christmas Curry (トレマドッグで おそらく最も有名なルート)を登っている。

「落ちないでね」とクローディアが心配そう。 アンディが僕がどう落ちたか、という話をしていたからなぁ。 どういうわけか僕はアンディと登った時にハードな墜落を しているもので、アンディに語らせたら、確かに僕はよく墜落している ことになるだろう。トータルで見ると、僕は滅多に落ちることは なくて、本当はもっと落ちた方が、つまり落ちるくらいのハードな ルートを登った方がいいくらいなのだが。

さて、所詮 E1 だから、このルートで僕が落ちることはまずないはずだ。 しかし、絶対に落ちない、という決意がかえって体を硬くする……。 確保者を信頼していない状況に近い。 そういう意味で、精神的にベストなコンディションにほど遠い。 そして、取付の細いクラックを登るのがなかなかにハード。 中間支点を一つセットしてからクライムダウンして少し休憩。

もちろん、正しい戦略なのだが、クローディア的には心配を 募らせている様子が見てとれる。ネガティブ……。
休憩の後、登っていく。そのハードなクラックの部分を無事越えて、 上の広いクラックに中間支点をセット。 少し休憩後、左のアレットに……トラバース成功! 難しいというより、トラバースなだけに神経を使う部分だった。

アレットを登り切った後、再びクラックが少し神経を使う。 最後のアレットは、Christmas Curry の有名な Micah Finish (HS)と 共通。高度感がすばらしい! 左手で Christmas Curry を登るルークらを 見ながら、上まで登り抜ける。なかなかのルートだった。満足。

フォローのクローディアは取付付近でかなり苦労している様子。 上からは見えないが、何度もザイルに体重を預けているのが感じられる。 とはいえ、やがて上まで登り切ってきた。
「あなたがどうやって登ったのか見当がつかないわ、まったく」
とのコメント。

さて、隣のルークは最終ピッチにかかっている。 元々は最終ピッチは Micah Finish を取る予定だったものの 標準のルートにすることにする、という。 確かに、Micah Finish へのトラバースも高度感があって 怖いから分かる。

ならば写真を撮らなくては! ここからなら、横からのいいアングルで 撮れるチャンスだ! ザイルで自己確保を取って、Christmas Curry の 最終ピッチを登るルーク、そしてアンディの写真を何枚か撮ることに 成功した。残念ながらできはいま一つだったが……。

この後、クローディアの薦めで、VSの One Step in the Clouds を登ることに。クローディアは何年も前に登ったことがあるそうだ。 2ピッチで登る。 1ピッチ目はクローディアのリードで、2ピッチ目が僕。 僕のリードの頃には、日が傾いている。急がなくては……。 そんな中、自然なラインを取ったところ、VD の Hail Bebe にオフルートしてしまったようだ。僕は気付かなかったが、 フォローのクローディアが後で指摘してくれた。 もっとも、時間がかなり押していたことを考えると、 (意図的では全くなかったとはいえ)正しい選択だったと言えよう。

11/03


情報編

プラス・エ・ブルニン

プラス・エ・ブルニン (Plas Y Brenin) は、北ウェールズはスノウドニアの Capel Curig(村)にある The National Mountain Centre (国立山岳センター)である。 ここでは、年間通して、山歩き、登攀登山、カヤックなど幅広い山岳スポーツ に関する色々なセミナーや(実地・屋内)教習コースが開催されていて、 その類のものとして、英国最大のメッカとなっている。

毎週金曜夕方(晩)には無料の講演会が開かれているので、 もしこの地域に来ることがあれば、出席してみることを お薦めする。英国らしく、バーは完備しているので、お酒の 一杯も飲める。

また、センターには屋内壁もあるので、雨の日の昼間に遊びに 来るのもよいだろう。

参考リンク

http://www.pyb.co.uk/
プラス・エ・ブルニン (Plas Y Brenin) の公式ウェブページ

タイム・テーブル

2008/10/30-17 North Wales/Snowodonia 山行タイム・テーブル
時刻 行動 高度(m) 温度(℃) 歩数(複歩)
(計器) (地図)

表注:
高度の表記で (s) は高度計をその高度にセット。 なお、高度計は、TechTrail/AltiTech-2 を使用。 歩数は、その前の項目からの歩数[複歩]。

2008/10/30
(Leicester → Llanberis (山小屋))
14:47 Leicester 発
19:24 Hut着
23:10 就寝
2008/10/31
(Tremadog)
06:45 起床
10:03
10:43 Tremadog 13
13:00 Gilljo 終了 17
17:00 The Fang 終了 8
17:50 駐車場発
パブ
19:35 Hut着
24:20 就寝
2008/11/01
(Llanberis Pass/Carreg Wastad)
07:15 起床
10:25
10:50 駐車
12:00 7
16:10頃 8
17:15 Hut着
24:25 就寝
2008/11/02
(Tremadog → Llanberis/Serengeti → Leicester)
09:30
11:30 11
16:00 8
19:40 Hut着
25:00 就寝
2008/11/03
(Llanberis → Leicester)
09:40 起床
12:35
17:35 自宅

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まさ