△第58号: ピーク地方で最も『遠い』岩場
- 発行日
- 2007/09/28
- 発行者・筆者
- まさ (坂野正明)
まさです。
10日前の週末、友人と彼の娘さんと夕方にカヌーで運河に行きました。 西空に夕陽が沈むのを見ながらの幻想的なカヌー行の後、
林の横にカヌーをもやいで暗闇での焚火のバーベキュー。 そして、星空の下のカヌーでの運河下り。
暗闇で僕と二人ゆっくり櫂を漕ぐ中、友人が低い声でカヌーの歌を 唄っていたのもまた雰囲気。 心が奪われる、素晴らしい経験でした。
英国でもそんな遊び方もあるんですね。 日本の沢登りを思い出したものでした。
さて、イングランドに戻ってきた今回は、ピーク地方の ドブストーンズ・トーに岩登りに行った記録から入ります。 1時間以上歩く必要があるので、ピーク地方の主要な岩場の中では 最も遠い部類に入ります。 パッキングの重さを事前に気にしなかったもので (おまけに僕のザックにはアイス・スクリューまで紛れ込んでいて。 無駄、無駄、無駄ぁぁぁ〜〜)、余計に歩くのに時間がかかってしまいましたが、 それもまた御愛敬。快晴の下、 静かな岩登りが楽しめました。 併せて、(ついに!)英国岩登りの難易度について紹介します。 お楽しみ下さい。
目次
登山記録編 〜〜 ピーク地方で最も『遠い』岩場 〜〜
今日、ここドブストーンズ・トー(Dovestones Tor)の三本目で、 ここの目玉と目される 20m の HVS 5a、 Great Buttress を僕のリードで登る。ガイド本では、この難易度でピーク地方最高のルートの一つ、 と声が大きい。登らいでか。
取付直後から、とにかくオーバーハングの連続。休めない。 中間支点も妥協できないから筋肉疲労が溜る。途中、中間支点を 6つ取った 後、ちょっとした窪みに達する。
この上が核心か? 途中のホールドは見える。 しかし、その最後にあたる、岩棚の部分への乗り越しは? うーむ、登ってみないとそれは分からない。 今までに相当消耗しているとは言え……、今の場所も依然オーバーハング、 片腕を交互に休めることができるだけ。 つまりあまり「休み」過ぎるとかえって疲れる。中間支点に 体重を預けて休む誘惑を退け、気力を奮い起こしていざ挑戦。
予定通り、岩棚に腕がかかるところまでは問題ない。ところが、岩棚にホールドが ない —
グリット石ではよくある話。手どころか両腕全て使って、最大限の 摩擦を確保。しかし、それでもちょっと心許ない……。 大丈夫か?
摩擦を信じて体をせりあげる! 左足を蹴る。せりあげる……あっ、 左足が何かスタンスにかかった。ラッキー。これで大丈夫。岩棚に無事達して
完全休息。ほっ。
その左足スタンスが見えていなかったのは甘かった。 結果オーライとしよう。十分な休息の後、
この後の上部はさほど問題なく登り切った。
このルート、高度感溢れるいいルートだった。途中、完全休息が取れた岩棚まで、 下から 15mかそこら、ほとんどずっとオーバーハングのなかなか スタミナの要求されるルート。ホールド(核心は別?)も中間支点もほとんど完璧だから 確かに HVS か。いや、HVS でこれだけのルートが登れるのは、素晴らしい。 噂に違わず、今までに登った中で最高級の HVSと認める。はるか眼下に池を望む 景観の中、楽しい岩登りのドブストーンズ・トーだった。
△以上、記録の一部。全文は、以下に載せました。
http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/record/uk/20070414_dovestones.jis.html
登山ミニ知識編 〜〜 フリークライミングの難易度 (その三) 〜〜
(第53号「フリークライミングの難易度 (その二)」からのつづき。)
第53号で、英国の岩登りでは、難易度が 二つの値、形容難易度(adjectival grade)と技術難易度 (technical grade)で表される、と書きました。以下が、 形容難易度を、簡単な方から並べた表です。
| 略記 | 名称 | 直訳 | 注 |
| E | Easy | 易しい | ほとんど使われることはない |
|---|---|---|---|
| M | Moderate | まあまあ | |
| D | Difficult | 難しい | |
| HD | Hard Difficult | 困難で難しい | 使われないことも多い |
| VD | Very Difficult | 非常に難しい | |
| HVD | Hard Very Difficult | 困難で非常に難しい | |
| MS | Mild Severe | 少々厳しい | 使われないことも多い |
| S | Severe | 厳しい | |
| HS | Hard Severe | 困難で厳しい | |
| MVS | Mild Very Severe | 非常にとは言えないまでも厳しい | 使われないことも多い |
| VS | Very Severe | 非常に厳しい | |
| HVS | Hard Very Severe | 困難で非常に難しい | |
| E1 | Extreme 1 | 極端(に厳しい) 1 | Extremely Severe の略 |
| E2 | Extreme 2 | 極端 2 | |
| … | Extreme … | … | |
| E11 | Extreme 11 | 極端 11 | 2007年夏現在の最高難度 |
表記としては、M や D では短過ぎて混乱を招く虞がある時には、 Mod、Diff、VDiff, HVDiff, Severe などがよく使われます。VS (HS, MVS) と HVS とは、 文字通り短縮表記(発音)されることの方が一般的という印象です。 一方、Extreme は、ほぼ必ず数字と一体のこともあり、現実には Extreme と綴られることはまずありません。例外は、 HVS以下と対比させて E1 以上の難易度の総称として使われる時です。
この難易度が最初に制定された頃(20世紀初め?)には、Difficult (難しい) と されたからこそ、そのようになっているわけですが、現実には Difficult の ルートは、現代ではそう大したことはありません。恐怖感をどう克服するか 次第ですが、技術的には、大抵の人がさくさく登れる程度の難易度です。 今まで見てきた印象では、素人でも Severe までは登れる人が多いですね。 運動神経がよければ、(ルートにも大きくよりますが)素人でも Very Severe までは 落ちずに登れても驚きません。
次回は、技術難易度について解説します。お楽しみに。 (…つづく)
Webページ更新情報
- この記事は、以下にも載せました。
http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/magazine/backnumber/eu058.html
次回予告
次回は… 「250m の垂壁登攀 (トレバン山東壁)」
See you later!
◎発行: まさ
WWW page: http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/
email: alpin…@s…
このメイルマガジンは以下のサイトのシステムで発行しています。
- めろんぱん
- http://www.melonpan.net/
- melma!
- http://www.melma.com/
- まぐまぐ!
- http://www.mag2.com/
メイルマガジンの登録・解除は以下のページからどうぞ。
http://alpiniste.hp.infoseek.co.jp/magazine/
お便りについて。
歓迎します! お便りはマガジン上で紹介させてもらうかも知れません。 ハンドル名(と差支えなければ居住都道府県)をお書き添えください (無指定の時は平仮名略字表示にします:「世界の環境ホットニュース」 方式)。逆にもし紹介して欲しく無い場合はその旨、明記下さい。
