チョーク (クライミング)

クライミングの世界で「チョーク」とは、(ボルダリングも含めた) ロック・クライミング一般に使われる滑り止め用の粉のことを指します。 器械体操や重量挙げでも使われると聞きます。

黒板に使われるチョークと語源は同じで、チョーク岩(Chalk; 日本語は 「白亜」)です。実際、昔は、チョーク岩を砕いたものが使われていたと聞きます。 チョーク岩の脆さは天下一品で、指で簡単に砕けます。英仏海峡の英国側の ドーバー海岸の白亜の岩壁は有名な観光地になっています。 アックスとクランポンとで登ることが可能な岩、という事実から、 どれほど軟らかいかが想像できるでしょうか。 現在では、クライミング用としては、(石から切り出すのではなく) 炭酸マグネシウムを工業的に生成したものが普通です。

ロック・クライマーやボルダラーが腰周りにつけている「チョークバッグ」は、 粉末状のチョークを保持するためのものです。チョークバッグ自体が ファッションになっている雰囲気もなきにしもあらずですね。 アウトドアでは、熟練クライマーは粉末状のチョークをチョークバッグの中に 直接入れて使用することが多いです。一方、屋内クライミングジムでは、 粉末状のチョークを直接入れたものは禁止されている場所が多いです。 混雑した閉鎖空間でチョークの粉末が飛散して不快な思いをしたり 健康上の障害がでることを避けるためです。ただし、 球状のきめ細かい布袋の中にチョークの粉を詰めた 「チョークボール」の使用は通常認められています。 チョークボールをチョークバッグの中に入れて保持します。

チョークを液体の中に溶かした「液体チョーク」も市販されています。 特に汗かきの体質の人には好んで使用する例がしばしば見かけられます。 ただし、液体チョークは成分にアルコールが入っているものが多く、 皮膚への影響が気になる、あるいは問題になる例もしばしばあるので、 万人向けではありません。 また、屋内ジムの場合、使用禁止されている場所もあるので要注意です。 これは、液体チョークの種類によっては、ホールドを(化学的に)損傷する 可能性があるから、と理解しています。個人的には、夏場の海岸の岩登りでは (でのみ)「液体チョーク」を重宝しています。日焼け止めを塗ってべたべたに なった手の脂は、粉末チョークくらいでは落ちませんが、液体チョークだと かなりスッキリするものですから。

チョークの使用は、基本的には、余分な水分(と若干の脂分)を吸い取らせることで摩擦を向上させるのがその最大の目的です。 だから、原則として、靴や足場となる岩に対して使用する事はありません。 初級・中級者の中にはチョークを万能滑り止めと勘違いしてか、靴にパフパフしている人を見かけることもありますが…。

一旦、全ての水を吸い取ったならば、余分なチョークは、ホールドについたきめ細かい砂と変わりありません。 だから、(水分も脂も)乾いているならば、ホールドについたチョークは少なければ少ないに越した事がありません。 そういった余分なチョークを落とすための(歯ブラシに似た)ブラシを持参するのは、特にボルダラーには常識です。 チョークバッグにはそのためのブラシ留めがついているのが普通です。 スポーツクライミング用のクリップスティックにも、(手が届かないホールドを掃除できるように)ブラシ留めがついているものもあります。

なお、自然の岩場でも、土地によっては、チョークの使用に制限がつくこともあります。 たとえば、マムート社の(欧州の)クライマーのチームが 2010年に英国を訪れた時、 彼らが去った後に岩場に残されたチョークの跡が非常識だ、 と地元のクライマーから多くの非難を集めました (UKC のニュース)。 同社の宣伝も兼ねてのイベントだったでしょうに、かえって恥をさらす結果になったのでした (その後、掃除に帰ってきましたが、それでもまだ全然汚い、と批判は続きました)。 知らない土地にクライミングに行く場合は、意識しておいてよいポイントでしょう。

また人によっては、自然の岩場ではチョークの使用によい顔をしない人もいます。 実際、オンサイトにおいては、ホールドにチョークの跡があるか無いかは、困難さに大きな(時には決定的な)影響を与えます。 それもあり、目立ちにくい色(灰色など)にしたチョークの同等品も市販されています (たとえばメトリアス社の 「Eco Ball」)。 ただし、残念ながら、相対的に高価であるだけでなく、水分を吸い取るという性能において、 通常のチョークに劣っていますね……。

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